腸内細菌が「永遠に分解されない化学物質」PFASを「食べて」急速に体内から除去することがケンブリッジ大学の研究により判明
PFASを食べる細菌たち
永遠に分解されない化学物質といわれる PFAS は、今や地球上に広がっていて、環境中から、PFAS を排除することは、もはや不可能となっていますが、英ケンブリッジ大学の研究で、
「特定の腸内細菌が、PFAS を体内から迅速に排除する」
ことがわかりました。
ネイチャー誌に掲載された論文はこちらにあります。
「食べて排除」という表現はやや不正確で、正確には、「細胞内に吸収して、そのまま排便と共に排出される」ということのようです。
マウスでの研究では「腸内にその特定の細菌を移植」しておこなわれました。
ヒトでも、それらの細菌を常在菌として持っている場合もあれば、そうではない場合もあるようです。
科学者たちは、この特定の腸内細菌を「サプリ」として開発し、それを摂取することで、体内からの PFAS の除去を促すことを計画しているようですが、ただ、サプリで大量にその細菌を導入するという方法には異論もあります。
どんなものでも、人為的に微生物を体内に導入した場合、何らかの予期しない作用が出ることはあり得ます。
それでも、特定の細菌が「 PFAS を食べて排除する」という作用を持つことを知ったということ自体が興味深かったです。
エポックタイムズの報道です。
腸内細菌は体内の「永遠の化学物質」を除去するのに役立つかもしれない
Gut Bacteria Could Help Remove ‘Forever Chemicals’ From Body
Epoch Times 2025/07/12
ケンブリッジ大学の研究者らは、PFAS を最大 75 パーセント吸収できる腸内細菌を発見した。
研究者たちは、9種の腸内細菌が体内の有害な化学物質の解毒を助け、がんやその他の重篤な病気と関係のある PFAS を急速に吸収することを発見した。
「これは、腸内細菌が人体の健康にとって有益な新たな役割、つまり体内から有害な PFAS を除去するのに役立つ役割を明らかにしました」と、ケンブリッジ大学 MRC 毒性学ユニットのメンバーで本研究の主任著者であるキラン・パティル氏はエポックタイムズに語った。
細菌の働き
ネイチャー・マイクロバイオロジー誌に掲載されたケンブリッジ大学の研究では、周囲から最大 75%の毒性 PFAS (パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)を吸収できる 9種の細菌が特定された。
PFAS は、ノンスティックフライパンや防水衣類から化粧品や食品包装に至るまで、数千もの消費財に使用されている合成化学物質だ。環境中で分解されにくいことから「永遠の化学物質」とも呼ばれ、人体に蓄積し、様々ながん、肝障害、免疫系障害との関連性が指摘されている。
現在、人体から PFAS を除去する承認された治療法は存在しないため、この発見は公衆衛生にとって重要なものとなる可能性がある。
研究チームは、バクテロイデス科の 6種、オドリバクター・スプランクニカス、パラバクテロイデス・ディスタソニス、パラバクテロイデス・メルダエを含む、2種類の一般的な PFAS 、パーフルオロノナン酸(PFNA)とパーフルオロオクタン酸(PFOA)を吸収できる 9種の細菌種を特定した。
これらの細菌をマウスに投与すると、すぐに化学物質を吸収した。
腸管から排泄される際に、永久に残る化学物質も一緒に排泄された。曝露後数分以内に、細菌は様々な濃度の PFAS 化学物質の 25~ 74%を吸収した。
研究者たちは、細菌が細胞内に PFAS を集めて保護的な塊を作る方法は、化学物質が細胞にダメージを与えるのを防ぐ生存メカニズムだと考えている。
マウスが増加する PFAS レベルにさらされるにつれて、細菌は一定の割合で毒素を除去し続け、腸内で天然のフィルターとして機能する可能性があることを示唆した。
治療の可能性
このアプローチの有効性は、PFAS 化合物の具体的な種類によって異なるとパティル氏は述べた。
短鎖 PFAS は尿を通してすぐに体外に排出される。しかし、長鎖 PFAS は体内に何年も留まり、大部分は排便を通して排出される。そのため、パティル氏によると、主に便を通して排出される PFAS 化合物には、バクテリアの利用が最も効果的だ。
このバクテリアは、欧州や米国の水サンプルで見つかったものと同様の非常に低い曝露レベルでも効果があることが証明されており、現実世界での応用の可能性を示唆している。
研究者たちは、これらの有益な細菌を増やすプロバイオティクス・サプリメントの開発を計画しており、これはヒトの PFAS レベルを低下させる新たな方法となるだろう。しかし、有望ではあるものの、その効果はまだヒトで直接検証されていない。
安全に関する考慮事項
医療専門家は、この研究結果にもかかわらず、注意を促している。この研究には関与していない、認定家庭医学・整骨医のジョセフ・マーコラ医師は、新たな細菌株を人間の腸内に導入する際には、慎重な実施が重要であると強調した。
研究に使用された細菌は健康な人間の体内にすでに存在する種から採取されたものだが、よく知られている微生物であっても、腸内全体のバランス、免疫システム、既存の健康状態に応じて異なる働きをする可能性があるとマーコラ医師はエポックタイムズに語った。
「幸いなことに、これらの菌は外来種ではなく、すでに多くの人の体内に自然と生息していますが、しかし、サプリメントやプロバイオティクスで菌の数を増やすと、無謀に行うと微生物のバランスが崩れる可能性があります」
ニューヨークのノースウェル・ヘルスの救急医で、この研究には関わっていないカム・アリ博士は、有毒な PFAS を蓄える細菌を私たちのマイクロバイオームに加えると、他の有益な細菌を破壊したり、体が食物や薬を処理する方法に影響を与えたりするなど、「意図しない結果」が生じる可能性があると警告した。
「このような介入の安全性を理解するには、長期にわたる人間での研究が必要です」と彼はエポックタイムズに語った。
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