「25%」から「15%」に…やっぱり「タコ」だった「トランプ関税」 “見返り”に日本が渡したもの

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アメリカ

「25%」から「15%」に…やっぱり「タコ」だった「トランプ関税」 “見返り”に日本が渡したもの

“TACO”とは『Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)

トランプ流交渉術

 トランプ関税が世界経済をかき回している。「関税を引き上げる」というトランプ大統領の発言を受けて株価が急落し、その後、部分的な関税撤回を受けて株価が急回復するというパターンがその典型だ。いまやトランプ大統領は“TACO”(タコ)呼ばわりされている。「やる」「やる」と脅しをかけながらも実際にはひっこめてしまうトランプ大統領の“二枚舌”を表す言葉だ。

 経済部記者がこう解説する。

「 “TACO”とは『Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)』の頭文字をとって、フィナンシャル・タイムズ紙が皮肉を込めて作った造語です。トランプ大統領は高関税をちらつかせながらも市場の反応が悪くなると引き下がるという姿勢を繰り返しているので、そんな態度を揶揄(やゆ)する言葉として世界中で流行っています」

 トランプ大統領が4月9日に相互関税を発動すると、世界中の株価が大暴落。慌てたトランプ大統領はわずか13時間後に相互関税の上乗せ部分について90日間停止することを表明し、株式は急速に買い戻された。マーケットの反応を絶えず気にしている証拠だろう。

 その一方で、トランプ大統領は7月7日に日本からの全輸入品に対して25%の関税を課す方針を正式に通告した。当初、示していた24%の関税率を上回る数字で、その発動日が8月1日に迫っていた。ところが、市場参加者の間では「報復関税の発動は再び先送りされるのでは」「日米で妥協案が示されそうだ」などといった楽観論も多く、皮肉なことに“TACO”への期待感さえ漂っていた。

 実際、トランプ米大統領は22日、日本に対する相互関税は15%になると表明。当初の25%より低い数字になったため市場は、安堵し日経平均株価は急騰した。またしても“TACO”が繰り返されたというわけだ。これで安心ではなく、まだ懸念もある。

「トランプ大統領を侮ってはいけない。関税引き下げの見返りとして日本はアメリカに対し5500億ドルの投資や、農産物市場の開放を飲まされた。日本政府に対しJAからは怒りの声が上がっており、自民党への逆風になっている」(証券アナリスト)との指摘がその典型だ。

米財政収支が急回復

 “TACO”に振り回される世界経済。とはいえトランプ流交渉術には意外な効果も。ほとんど注目されていないが、トランプ大統領の相互関税の発動で米財政収支が急回復しているのだ。

「米財務省が5月に発表した4月の財政収支は、前年同月に比べ23%増の2580億ドルと良好な記録となりました。これは4月に中国からの輸入品に対する関税率を145%、その他の国と地域に10%の基本税率を課した結果です。

 5月は赤字となりましたが、前年同月比9%減の3160億ドルと赤字幅が縮小し、6月は270億ドルの黒字。トランプ大統領の関税発動で関税の総収入が過去最高クラスを記録していることが黒字化の理由です」(前出の証券アナリスト)。

 アメリカの財政赤字は、高齢化による社会保障費や金利上昇に伴う国債の利払い費の増加などにより慢性化していた。特に今後30年間で財政赤字と公的債務が著しく増加すると警鐘が鳴らされている。その慢性赤字が関税発動によって通年でも黒字化するとしたら劇的な変化だ。トランプ大統領を“TACO”呼ばわりして侮るのは一面的かもしれない。

「アメリカに輸入される日本製品に25%の関税を課す措置をめぐって、日米では意見の衝突がありました。もし8月1日に発動されれば、強烈な打撃を受ける懸念があったため、日本政府は合意を急いだのでしょう。日本車が米産業を衰退させた張本人だとするトランプ大統領の姿勢は変わらない。日本側としては関税率を下げるために大幅な妥協を余儀なくされたわけです」(同)

 大方の予想を裏切って成功をみせたかのような関税効果。自身の政策に自信を持つトランプ大統領が、さらに強気に出る事態も予想できる。ただ、アメリカ経済も今後、混乱に陥るとの見方は多い。

「米労働省が毎月発表する雇用統計はそれほど悪化していないのに、SNSでは失業者の悲鳴や再就職できない若者の怒りの映像が大量にアップされています。これらは米国の雇用環境の急激な悪化と雇用統計への疑義を示しており、だからこそトランプ大統領はFRBのパウエル議長に利下げ圧力をかけているのです。

 しかし、関税発動による物価の上昇が避けられない中で、利下げを実施するとインフレが激化する恐れが強い。そうなると米株価と米ドルは急落し世界中の株価も暴落するでしょう。もっとも、米ドル急落で円高になれば輸入物価が安くなり日本の庶民の生活にはメリットが出てくるかもしれません」(前出の経済部記者)

 世界経済の行方には波乱が待っていそうだ。

 

デイリー新潮編集部

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