北欧での「子どもの記憶障害」の爆発的な増加に関する報道から知る、子どもの脳の問題が全世界で深刻化しているかもしれないこと。原因はおそらく「複合」的
ノルウェーでは、記憶力の低下を理由に医師の診察を受ける人が増えている。5歳から14歳までの子どもたちの受診件数は、近年ほぼ3倍に増加している。
子どもの記憶障害が数年で300%増加
スウェーデンの報道メディアが、「北欧で子どもたちの記憶障害が爆発的に増えている」という報道を伝えていました。
特に、ノルウェーでは、5歳から 14歳の子どもの記憶障害(実際に病院を受診した数)が、2019年以来、3倍に増加していると報じられています。
たった 5年間で、子どもの記憶障害の数が 3倍に増えるというのは普通のことではないですが(本来なら、子どもの記憶障害自体があまり一般的ではないものでもあります)、原因なくして、こういう事態にはならないわけですので、何かの理由がありそうです。
今回はノルウェーの報道をご紹介しますが、記事には何人かの専門家が出てきますけれど、原因として想定している理由はさまざまです。
公衆衛生研究所の研究者は「コロナ感染が原因の可能性」を述べ、脳と神経の専門家は、「スマートフォンやソーシャルメディア」を挙げ、他の神経学の専門家は、「長期のコロナ後遺症」を述べています。
あるいは、スウェーデンの報道では、「放射線防護財団」という組織の意見を取り上げていて、「5Gなどの放射線の影響」を説明しています。たとえば、以下のように書いています。
5Gの健康への影響に関する事例研究においても、記憶障害は最も多く報告されている影響の一つだ。また、携帯電話基地局の近くに住んでいると、記憶障害、集中力の低下、頭痛などの報告もよく見られる。
放射線防護財団は、記憶障害による受診件数の増加と同時期に、放射線量が急増したと指摘している。同時に、同時期には子どもと大人の両方でスマートフォンの使用頻度が増加し始めた。
ノルウェーの報道のグラフを見ますと、子どもの記憶障害は、確かに、2021年はやや多く増加していますが、それでも、2020年から徐々に…といった感じで段階的に増えています。
ノルウェーで医師から報告された5歳-14歳の記憶障害の数の推移
これが、「 2021年から突如として増え始めた」というのなら、たとえば、ワクチンなど何らかの具体的な理由も出てきそうですが、あまりにも正しく段階的に増加しているので、何ともいえない感じです。
ただ、専門家の一人が記事で述べていた「コロナ感染が記憶障害と関係している」とするのは、やや無理な部分があるかもしれません。
というのも、たとえば、以下は約 4年前の報道ですが、2021年8月にインドのムンバイで行われた調査では、
「市民の約 90%が新型コロナの抗体を持っていた」
ことがわかっています。
インドのムンバイ市民、約90%が新型コロナ抗体を保有
インドの金融の中心地ムンバイで、市民の 90%近くが新型コロナウイルスの抗体を持っているとの調査結果が発表された。
同市は 8月から 9月上旬、8674人の成人を対象に、抗体の有無を調べる 5回目の血清調査を実施。対象者の約 65%はワクチンを接種済みだった。
結局、当時は、自然感染、ワクチン曝露をどちらも加えると「ほとんどの人が感染していた」わけです。ですので、感染が直接、記憶障害に結びつくとすれば、もっと多くの人がそのような後遺症を持っていても不思議ではないような気はします。
ただ、自然感染とワクチン曝露の大きな違いのひとつは、
「 mRNA とスパイクタンパク質の強度」
です。
通常の、つまり自然の mRNAの平均寿命(半減期の中央値)は「約 2分」です(サイエンス誌より)。
しかし、新型コロナの mRNA が「 2年間、体内に残留していた」事例をカリフォルニア大学の研究が突き止めています。以下にあります。
・[衝撃]新型コロナのRNAが「2年も体内に残留している」ことを突きとめたカリフォルニア大学の研究。…それは自然由来なのか、それとも「人工」由来なのか
In Deep 2023年9月20日
この研究では、自然感染経由の mRNAと、ワクチン由来の mRNA のどちらも検出されたという不思議な状況となっていましたが(どちらも人工といえば人工なので不思議ではないのかもしれないですが)、mRNA と共に、ワクチン由来のスパイクタンパク質は、壊されたコラーゲンを修復する力をもつ「プロリン」というものの構造が二重になっていて、つまり、スパイクタンパク質の強度がとても高くなっていて、簡単には壊れません。
そういうことで、影響度の違いは、自然感染とワクチン曝露では異なるのですけれど、しかし、先ほどのノルウェーのグラフを見る限り、2021年が特別の契機のようには見えないですので、結局「いろいろな要因」が重なっているのかもしれません。
まず、ノルウェーの報道をご紹介します。
爆発的な増加:記憶に苦しむ子どもたち
Eksplosiv økning: Barn sliter med hukommelsen
nrk.no 2025/06/13
ノルウェーでは、記憶力の低下を理由に医師の診察を受ける人が増えている。5歳から14歳までの子どもたちの受診件数は、近年ほぼ3倍に増加している。
脳研究者のマルテ・ロア・シヴェルトセン氏は、この状況の進展を懸念している。
ノルウェー公衆衛生研究所の研究者および統計学者であり、ノルウェーの疾病状況の監視を担当しているリチャード・オーブリー・ホワイト氏は、以下のように述べる。
「こんな事態は見たことがありません」
彼は、国内の一般医や救急室からの報告を通じて、私たちノルウェー人を苦しめる病気の概要を把握している。
過去 5年間で、ノルウェーでの記憶障害に関する医師の診察件数が急増した。
2019年には合計 41,722件の医師の診察が登録された。
2024年までにこの数は 98,910件に増加した。これは 2倍以上だ。
この増加は、5~ 14歳の子どもを含むすべての年齢層に適用されるが、この 5~ 14歳の年齢層では、記憶障害による医師の診察件数が、2019年から、ほぼ 3倍に増加している。
「このような急激な数字の増加はこれまで見たことがありません」と、約 10年間疾病監視に携わってきたホワイト氏は言う。
脳研究者は子どもの発達を懸念している
ドラメン病院の神経科の医師であり、研究責任者のマルテ・ロア・シヴェルトセン氏は以下のように言う。
「私は非常に心配しています。これは非常に不快な数字です」
シヴェルトセン氏は、若者の脳の健康に関しては、いくつかの曲線がマイナス方向を指していると考えている。
多くの若者が精神的に苦しみ、ADHD や自閉症と診断される子どもたちも増えている。
シヴェルトセン氏は原因は複雑だと考えているが、可能性のある要因をいくつか指摘している。
「私の考えでは、私たちが生活の中に、それは以前にはなかったライフスタイルや何かを取り入れてきたことは否定できません。それは膨大な時間を奪っています。スクリーン(スマートフォンやタブレットなど)の使用やソーシャルメディアの要因について私は考えています」
子どもたちや若者の間でスマートフォンの使用が増えていることが、専門家の間で懸念を引き起こしている。
ノルウェー保健局は最近、親、子ども、若者に向けたスクリーンタイムに関する新たなアドバイスを発表した。子どもがスクリーンを頻繁に使用すると、脳内の接続とネットワークが特に影響を受けるという。
シヴェルトセン氏は以下のように言う。
「それ(スマートフォンの使用)は、本能の観点からこれまで私たちが選択してきた他の事柄よりも優先されています。すると、私たちは選択を迫られる状況に陥ります。あれをするべきか、それともこれをするべきかと考えますが、 結局スクリーンを選ぶことになるのです」
シヴェルトセン氏は、慢性的なストレスは脳機能を低下させるという。彼女は、脳の健康を保つ秘訣は実はとてもシンプルだと考えている。
「記憶力、精神状態、注意力、そして社会的な機能は向上させることができます。活動的であること、十分な睡眠をとること、良好な人間関係を築くこと、そして他の人と直接会ってコミュニケーションをとることで、これらの能力は向上するのです」
COVID-19との関連の指摘
研究者のリチャード・オーブリー・ホワイト氏も原因は複雑だと考えているが、COVID-19が有力な説明であると指摘している。
「 COVID-19 の流行から 3~ 6か月後、記憶障害に関する一般開業医の受診が増加しています。これは、COVID-19 の晩期障害が大きな役割を果たしているのではないかという懸念を引き起こします」とホワイト氏は述べる。
ホワイト氏は、パンデミックが始まって以来、医師への受診も急増し、疲労に関しても同様の傾向が見られると警告していた。
ホワイト氏によると、COVID-19 を経験すると神経学的および心理的後遺症が出るという強力な証拠があるという。
彼は、パンデミックが発生して以来、記憶障害による医師の診察が毎年増加していると指摘している。
ノルウェーの研究者らも以前に、コロナ感染は記憶力を低下させる可能性があると結論付けている。
しかし、はっきりした理由は分からない
「なぜこのようなことになっているのかは分からない」とノルウェー公衆衛生研究所のプレベン・アーヴィツランド地域局長代理は言う。
ノルウェー公衆衛生研究所はこのような長期的な変化の解釈には慎重であると彼は言う。
アヴィッツランド氏によると、この数字は、記憶や疲労に悩む人の数について何も語っていないという。
また、一般開業医の間で症状や診断コードの使用が増えたことも増加の原因かもしれないと彼は考えている。
「一般開業医の数が増え、診察件数も増加しました。また、一般開業医のコード選択の習慣にも変化があった可能性があります。これらの変化は、必ずしも症状や疾患の発生率の変化を反映しているわけではありません」
この増加はパンデミックと同時期に発生したが、ノルウェー公衆衛生研究所はこれに関連性を見出しているのだろうか。
アーヴィツランド氏は以下のように言う。
「パンデミックは、子どもや若者の日常生活だけでなく、一般開業医の診療にも多くの混乱をもたらしました。COVID-19 との因果関係、あるいはパンデミックへの対応との関連性を評価するには、他の方法を用いたさらなる研究が必要でしょう。例えば、学校生活の変化などがその例です」
アヴィツランド氏は、記憶障害の急増は 2020年に始まったと指摘するが、疲労と記憶障害の両方による医師の診察の増加はパンデミックの数年前から始まっていたという。
「将来的には、子どもや若者の健康と医療サービスの利用状況をモニタリングすることが重要です。ノルウェー国内および国際的に、より多くの研究が必要です」
ニューヨークのマウント・サイナイ医療システムの神経科学教授であるデビッド・プトリノ氏は、ロング COVID (コロナの長期の後遺症)の影響を述べる。
プトリノ氏は最近、ノルウェーの保健当局に対し、今後数年間で国民の病状が悪化するだろうと警告した。
彼は、繰り返し感染すると脳や神経系に影響を及ぼす可能性があることを示す研究に言及している。
「認知機能障害が増加するでしょう」とプトリノ氏は言う。
ここまでです。
原因のようなものたち
そういえば、一昨日でしたか、
「電磁波が密集した家庭の赤ちゃんは発達遅延のリスクが高まる」
ことについてのムンバイでの研究について、以下で書きました。
・Wi-Fiなど無線電磁波が密集した家庭の赤ちゃんは「発達遅延のリスクが3倍になる」ことが研究で判明
地球の記録 2025年8月26日
小さな子どもの場合は、スマートフォンや Wi-Fi の無線電磁波の、特に「脳と神経」への影響は、かなり高いようで、記憶障害は基本的に、脳や神経の問題と関わっていると考えますと、各家庭の無線電波の使用状況なども調べてみると、また何かわかるかもしれませんね。
あと、ソーシャルメディアからの直接的な影響はともかくとしても、スマートフォンを操作する場合、どうしても「かなり顔に近くデバイスが位置する」こともあります。
まさか 1メートル顔から離してスマートフォンを操作する人がいるとも思えず、場合によっては、20センチ、30センチの距離で操作をするようにも思います。
このような行動が長時間続けば、「弱い子ども」の場合は、影響はあるかもしれません。何しろ、若い世代はスクリーンタイムがものすごく長いですから (アメリカの事例で、8歳から18歳までの子どもは平均して 1日7時間半をスマートフォンやゲーム、パソコンなどに費やしている)。
ノルウェーといえば、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」と診断される十代の女性が 2020年以来、劇的に増加したという報告も以前ありました。
2010年-2022年までのADHDと診断された女性の推移
ノルウェー公衆衛生研究所,地球の記録
記憶障害とは関係ないですが、ノルウェーでは「心臓血管薬を使用している15歳から44歳」の数も、最近飛躍的に増加しています。
ノルウェーで心臓血管薬を使用している15歳〜44歳の推移
(2013年 – 2023年)
BDW
また、ノルウェー医薬品庁は 2023年に、「ワクチン接種後に副作用による治療を受けた人の数は 6万2000人」と発表しています。
・ノルウェー(人口540万人)でワクチン接種後から治療を受けた人は 6万2000人。うち 8000人が重症
BDW 2023年9月28日
人口 540万人の国で、6万人が副作用の治療を受けたという、この率 (乳幼児は接種していないので、率は実際には最も高い)は大変なもので、日本なら、およそ 140万人にあたります。
ですので、こちらの影響も確かにあるのだろうとはいえ、それでも、理由は何であろうと、「子どもの記憶障害が急増している」という現実は壊滅的なものだとは思えます。
なお、このような数字が出ているのは、
「ノルウェー保健当局がきちんとそのような数を公式に発表している」
からです。
ノルウェーだけが何か特別悪い状況ということではなく、おそらくは、主要国全体で起きていることのような気はします。
同じ北欧のスウェーデンも、若い人たちの健康の問題は深刻のようで、「スウェーデンの女子高生の4人に1人が体調不良」という報道を以前ご紹介したことがありました。
・「スウェーデンの女子高生の4人に1人が体調不良」という報道から見える世界的な「若年層の機能不全化」の進行と「弱い個体の死」
In Deep 2024年5月24日
これらすべての原因は、ひとつに限定できるものではないにしても……ああ、そういえば、マスクの後遺症というのも含まれそうです ← 小さな子どもの脳の酸欠は不可逆的な脳の成長阻害と関係します。
ともかく、この数年は、特に若い人たちが身体とメンタル両面で衰弱していっている状況があらゆるデータからわかります。
その原因が複数にわたる可能性が示されているという点では、複合災害という言葉が当てはまるのかもしれません。
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