最近の情勢緊迫化を受けて、トマホーク巡航ミサイルでロシアを恫喝するアメリカ
ロシアとウクライナの停戦に失敗した今、トランプはロシアへの攻撃の手を激化させている。
Brian Berletic
2025年10月17日
New Eastern Outlook
トマホーク巡航ミサイルをウクライナに配備するワシントンの最新計画は、アメリカが終結を望んでいると主張してはいるものの激化し続ける紛争の危険なエスカレーションを示しており、本当の平和の追求ではなく「ロシアの手を広げさせる」アメリカのより広範な戦略を示唆している。

ここ数週間、ロシア奥深くのエネルギー生産施設を狙うアメリカ主導のドローン作戦が明らかになりつつあるのを受け、ウクライナに長距離トマホーク巡航ミサイルを配備する可能性についてドナルド・トランプ大統領が繰り返し言及しているが、これは全てロシアを欺き「ミンスク3.0」凍結を企てたアメリカの企みが完全に失敗した後のことだ。
予想通りの緊張激化は、交渉の席でなく、ウクライナの戦場での紛争を終わらせるには、近未来から中期的未来にかけて軍事作戦を継続する必要があるのをロシアにとって裏付けるものになった。
トマホーク巡航ミサイル導入は現在の戦争の更なるエスカレーションになるだろう。ジョー・バイデン前大統領が戦争を不必要に開始したと非難するとともに、そもそも大統領選挙運動中「24時間」以内の戦争終結をトランプ大統領は約束していたのだ。
これはアメリカがエスカレートさせ続けている戦争でもあり、これはウクライナを通じてロシアに対し戦われているアメリカの代理戦争だと現アメリカ国務長官マルコ・ルビオ自身も述べている。
それぞれの強みを生かしながら、物質的、軍事的、政治的な力の限界に近いところでアメリカとロシアは活動している。
国家安全保障上の狙いを追求すべく、アメリカの挑発行為に対してロシアは忍耐強く粘り強く対応してきたが、トマホーク巡航ミサイルは、ロシアと欧州、あるいはアメリカとの間の直接紛争の誘発に一歩近づくことを意味する。
狙いの継続が予想される中での、予想可能なエスカレーション
トランプ政権は紛争を終わらせたいと主張していたものの、そのつもりは全くなく、中国封じ込めを優先して紛争を凍結しようとしただけだった。疲弊したウクライナ軍を再編し、欧米諸国の軍事産業生産が十分増強されたらロシアとの戦争を再開しようとしたのだ。
2024年の選挙前でさえ、当時アメリカ副大統領候補だったJ・D・ヴァンスは、ロシアとの代理戦争よりも中国との戦争を優先し、アメリカが中国との対決に資源を向けられるよう、既存戦線に「強力に要塞化された非武装地帯」の設置を狙っていた。実際に紛争を解決するわけではなかった。
2024年のアメリカ大統領選挙後、2月ブリュッセルの欧州諸国に送った指令で、軍事産業生産とウクライナへの兵器輸出を倍増させるとともに、実質的に「ミンスク3.0」 による紛争凍結を実施すべく、欧州および非欧州の部隊がウクライナに入る準備をするようピート・ヘグゼス国防長官は欧州諸国に指示したが、この指令は 「ミンスク3.0であってはならない」と明確に主張していた。
またヘグゼス長官は、ロシアのエネルギー生産と、それが「ロシア戦争機械」に資金を提供する役割についても言及し、次のように主張した。
ロシアの戦争機構に資金を与えるエネルギーの価格を下げるべく、ロシアのエネルギー生産を標的にする手段として、アメリカ・エネルギー生産と制裁についてヘグゼス国防長官は公に言及したが、その後、このアメリカ政策目標を推進するためロシアのエネルギー生産を攻撃したウクライナ・ドローンは、アメリカ自身が監視し、アメリカの諜報・監視・偵察(ISR)により可能になったとファイナンシャル・タイムズが暴露した。ISRなしで、このようなドローン攻撃は不可能だ。
FT記事はロシア深部へのドローン攻撃におけるアメリカの役割を確認したものの、決して新事実を暴露するものではなかった。
アメリカが2014年にウクライナ政府を転覆させた直後、アメリカ中央情報局(CIA)がウクライナに職員を派遣したのを、昨年ニューヨーク・タイムズが認めた。それ以来、CIAは基地網を構築し、ウクライナ諜報部隊全体を訓練し、2022年に開始されたロシアの特殊軍事作戦(SMO)に対するものを含むウクライナ諜報活動を指揮してきた。
CIAはアメリカのISRを利用してロシアへのドローン攻撃に関与するSBU等のウクライナ諜報機関を監督しているのだ、これらの攻撃をアメリカ自身が実行しているに等しい。
つまり、トランプ大統領が8月にロシアのプーチン大統領を「和平交渉」のためアメリカアラスカ州に招待した時点で、トランプ政権は既にロシアのエネルギー生産を標的としたドローンによる徹底攻撃作戦を開始しており、ロシアのエネルギー産業と経済両方を麻痺させ、事実上の「ミンスク 3.0」 の枠組みの下での停戦にモスクワを屈服させることを狙っていた。
これを実現できなかったアメリカは、進行中のアメリカ主導のロシア深部攻撃の範囲と影響を拡大するためウクライナへのトマホーク巡航ミサイル配備で脅迫するなど更にエスカレーションを続けている。またロシア・エネルギー輸出の海上輸送に対する脅威も高まっている。
トマホーク:危険ではあるが決定的ではない
射程距離最大2,500キロのトマホーク巡航ミサイルは、モスクワを遙かに越える標的を攻撃可能で、ロシアのニジニ・タギル市にある伝説的なウラル・ヴァゴン・ザヴォード戦車工場まで攻撃対象にできる。またトマホークは、より多くのロシアのエネルギー生産施設を危険にさらすことになる。更に、ウクライナ無人機やミサイルによる攻撃の射程内にある施設に対し、トマホークは遙かに大型で破壊力も大きい弾頭を搭載しており、より大きな被害を与えられる可能性がある。
2019年に第一次トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するまで、トマホークは海軍の水上艦艇や潜水艦から発射され、1990年代の湾岸戦争からのアメリカ侵略戦争、2000年代初頭のアメリカのアフガニスタンとイラクへの侵略と、2011年以降のアメリカのリビアとシリアに対する戦争で重要な役割を果たした。
トランプ政権のINF条約離脱後、トマホークを発射できる地上発射ミサイルの開発と配備が始まり、現在アメリカ陸軍が中国に向けてフィリピンを含む各地に配備しているタイフォンや、アメリカ海兵隊が昨年まで試験用に開発し放棄していた長距離射撃(LRF)ランチャーが生産された。
米海兵隊は、アジア太平洋地域の島嶼部で活動する厳しい環境下でのLRF発射装置使用が困難なことを理由に、小型で短距離の海軍攻撃ミサイルを発射する海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム(NMESIS)を採用した。実用段階のLRF発射装置は、早ければ来年にも米陸軍で試験運用することが検討されており、ロシアに向けトマホークを発射するための最有力候補としてウクライナに配備される可能性もある。
LFRランチャーは、ランチャー1台につきMk 41垂直発射システム(VLS)セルを一つしか使用しない(タイフォン・ランチャーはセルを4つ使用)。そのためミサイルを発射するたびに再装填が必要になる。米軍が保有する他のトラック搭載型と併用される可能性があるが、ウクライナからロシアに向け一度に発射できるトマホークはごく少数に限られる。
通常、厳重に防御された標的には大量のトマホークが必要になるが、これは2017年にアメリカがシリアのアル・シャイラート飛行場攻撃で、最大59発のトマホーク巡航ミサイルを使ったことからも明らかだ。
ウクライナの地上発射装置からこれほどの規模の斉射を行うのは不可能なため、アメリカはトマホークと西欧諸国の空中発射巡航ミサイル、無人機、デコイを組み合わせる可能性が高い。これら性能の低い兵器は、トマホーク発射前に波状的に発射され、ロシア防空網を崩壊させようとするだろう。
同様戦術はイギリスのストームシャドウやフランスの同等ミサイル(SCALP)など西側諸国の空中発射巡航ミサイルと組み合わせて使用され、限定的成功を収めていまる。
SMOの過程で西側諸国がウクライナに移譲した他の多くの兵器同様、トマホークの小規模配備は、近い将来、より多くのミサイルと、より改良され、より多数の地上発射システムを送ることにより拡大される可能性がある。
これらの中には、米軍が既に既存のタイフォン代替を探しているものも含まれる可能性がある。記事「オシュコシュ地上配備型トマホーク発射装置が姿を現す」で、現在配備されている非常に扱いにくいタイフォンや、機動性は高いものの性能が限られているLRF発射装置と比較して、最大4発のトマホーク巡航ミサイルを搭載可能な遙かに機動性と自律性に優れた地上発射装置の開発についてNaval Newsが報じている。記事はこれらシステムの実用化時期には言及していないが、有人型は1~2年以内に開発・試験され、その後自律型システムが導入され、その間LRF発射装置が使用される可能性がある。
本当の隘路になっているのはアメリカ軍需品の年間生産量で、それは今後も続くだろうが、トマホーク巡航ミサイルも例外ではない。
トマホーク・ミサイルの年間生産数はわずか55発から90発に過ぎないとロイター通信が最近の記事で指摘した。これに対し、ロシアは同等の巡航ミサイル「カリブル」を年間300発から360発、その他数百種類の巡航ミサイルやゲラン2などの長距離攻撃ドローンを数万機生産していると推定される。2023年、2022年のSMO開始以来、ロシアはウクライナに向けて合計7,400発のミサイルと3,700機のドローンを発射したとの別のロイター通信記事は報じている。
ロシアのミサイルとドローンによる作戦がウクライナに及ぼす影響と、ロシアの遙かに広大な地理的規模とロシア産業およびエネルギー生産の規模を考慮すると、ロシアの軍事、産業、エネルギー生産に同様またはそれ以上の規模で重大な影響を与えるには、同数かそれ以上のミサイルとドローンが必要になるだろう。
現在進行中のアメリカ主導の深部攻撃がロシアのエネルギー生産に及ぼす影響については様々な報告がある。トマホーク巡航ミサイル導入は、この影響を増大させる可能性が高いが、どの程度まで影響が及ぶかは未だ不明だ。
トマホークの有無にかかわらず、エスカレーションは続く
アメリカがウクライナにトマホークを配備するかどうかに関わらず、アメリカはロシアとの代理戦争をエスカレートさせ続けるだろう。今年二月、ピート・ヘグゼス国防長官が明らかにした通り、徐々に低下するウクライナの戦闘能力によって生じた空白を埋める準備をアメリカは欧州に促している。
アジア太平洋地域で中国との対立が激化しているのを受けて、アメリカは資源を向け直そうとしているが、一方、ウクライナでの代理戦争の監視も続けている。最新例としては、ロシアのエネルギー生産施設を狙った長距離ドローン攻撃作戦が挙げられる。
ウクライナと欧米支援諸国がこの紛争の流れを変えられる可能性は低いと多くの専門家が同意しているが、早くも2019年にランド研究所が発表した「ロシアに手を広げさせる」 と題する論文で、そもそもウクライナが勝つ見込みがほとんどないことが明らかにされていたのは注目すべきだ。
論文題名が示唆する通り、狙いは単に「複数圧力点に沿ってロシアの手を広げさせる」ことで、ウクライナはその一環に過ぎない。2022年にSMOが始まって以来、アメリカはロシアがウクライナに注力しているのにつけこみ、ロシア軍の介入で停滞していたシリア政権転覆戦争を再開し、シリア政府打倒を図った。シリア崩壊は、ロシア同盟国イランと米イスラエル直接紛争への道を開くために利用されている。イランも今や中東において不安定な孤立状態にある。
ロシアのエネルギー部門への進行中の攻撃(トマホーク巡航ミサイル使用の可能性を含む)は、それ自体でロシアとの戦争に「勝利」することはないが、ロシアを更に「手を広げさせる」という、より大きな戦略に貢献するだろう。
ロシアへの過剰攻撃や、分業や戦略的順位付けを通じて、近隣諸国におけるロシア権益を削ぐ戦略をワシントンは継続するだろう。同時に、ロシアは軍事力と産業力の拡大を継続し、中国、北朝鮮、イランといった同盟諸国と協調して対応することで、まずユーラシア大陸と、それ以遠の地域におけるアメリカの干渉を麻痺させ、その後、撤退させて、アメリカ戦略を凌駕しようとするだろう。
アメリカとロシアは共に、物質的、軍事的、政治的な力の限界に迫り、それぞれの強みを活かしながら活動している。ロシアの強みは軍事力と工業生産にあるように見えるが、アメリカは軍事力を世界規模で展開するのに長けており、世界の情報空間をほぼ独占し、標的にした国を政治的に威圧し、掌握する強力な能力も依然有している。
どちらがより強い持続力を持ち、自国の強みを最も効果的に活用しながら敵国の強みを無力化できるかによって将来の世界秩序は決まるだろう。ロシアと同盟諸国が伝統的軍事力と産業力を強化し、アメリカの政治的干渉と情報空間の独占に効果的に対抗できるようになる前に、アメリカとその属国ネットワークは、ロシア軍事産業力に匹敵、あるいは凌駕できるのだろうか。時が経てば分かるだろう。
Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/10/17/us-threatens-russia-with-tomahawk-cruise-missiles-amid-latest-escalation/
———-
Judge Napolitano – Judging Freedom
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
RANDの「ロシアに手を広げさせる」記事にいては、当ブログには
2022年8月31日
F. William Engdah記事翻訳がある。
2025年10月17日
New Eastern Outlook
トマホーク巡航ミサイルをウクライナに配備するワシントンの最新計画は、アメリカが終結を望んでいると主張してはいるものの激化し続ける紛争の危険なエスカレーションを示しており、本当の平和の追求ではなく「ロシアの手を広げさせる」アメリカのより広範な戦略を示唆している。

ここ数週間、ロシア奥深くのエネルギー生産施設を狙うアメリカ主導のドローン作戦が明らかになりつつあるのを受け、ウクライナに長距離トマホーク巡航ミサイルを配備する可能性についてドナルド・トランプ大統領が繰り返し言及しているが、これは全てロシアを欺き「ミンスク3.0」凍結を企てたアメリカの企みが完全に失敗した後のことだ。
予想通りの緊張激化は、交渉の席でなく、ウクライナの戦場での紛争を終わらせるには、近未来から中期的未来にかけて軍事作戦を継続する必要があるのをロシアにとって裏付けるものになった。
トマホーク巡航ミサイル導入は現在の戦争の更なるエスカレーションになるだろう。ジョー・バイデン前大統領が戦争を不必要に開始したと非難するとともに、そもそも大統領選挙運動中「24時間」以内の戦争終結をトランプ大統領は約束していたのだ。
これはアメリカがエスカレートさせ続けている戦争でもあり、これはウクライナを通じてロシアに対し戦われているアメリカの代理戦争だと現アメリカ国務長官マルコ・ルビオ自身も述べている。
それぞれの強みを生かしながら、物質的、軍事的、政治的な力の限界に近いところでアメリカとロシアは活動している。
国家安全保障上の狙いを追求すべく、アメリカの挑発行為に対してロシアは忍耐強く粘り強く対応してきたが、トマホーク巡航ミサイルは、ロシアと欧州、あるいはアメリカとの間の直接紛争の誘発に一歩近づくことを意味する。
狙いの継続が予想される中での、予想可能なエスカレーション
トランプ政権は紛争を終わらせたいと主張していたものの、そのつもりは全くなく、中国封じ込めを優先して紛争を凍結しようとしただけだった。疲弊したウクライナ軍を再編し、欧米諸国の軍事産業生産が十分増強されたらロシアとの戦争を再開しようとしたのだ。
2024年の選挙前でさえ、当時アメリカ副大統領候補だったJ・D・ヴァンスは、ロシアとの代理戦争よりも中国との戦争を優先し、アメリカが中国との対決に資源を向けられるよう、既存戦線に「強力に要塞化された非武装地帯」の設置を狙っていた。実際に紛争を解決するわけではなかった。
2024年のアメリカ大統領選挙後、2月ブリュッセルの欧州諸国に送った指令で、軍事産業生産とウクライナへの兵器輸出を倍増させるとともに、実質的に「ミンスク3.0」 による紛争凍結を実施すべく、欧州および非欧州の部隊がウクライナに入る準備をするようピート・ヘグゼス国防長官は欧州諸国に指示したが、この指令は 「ミンスク3.0であってはならない」と明確に主張していた。
またヘグゼス長官は、ロシアのエネルギー生産と、それが「ロシア戦争機械」に資金を提供する役割についても言及し、次のように主張した。
トランプ大統領は、効果的外交を更に推進し、ロシア軍事力を支えるエネルギー価格を引き下げるため、アメリカのエネルギー生産を解放し、他国にも同様行動を促している。エネルギー価格低下とエネルギー制裁のより効果的執行はロシアを交渉の席に引き込むのに役立つ。
ロシアの戦争機構に資金を与えるエネルギーの価格を下げるべく、ロシアのエネルギー生産を標的にする手段として、アメリカ・エネルギー生産と制裁についてヘグゼス国防長官は公に言及したが、その後、このアメリカ政策目標を推進するためロシアのエネルギー生産を攻撃したウクライナ・ドローンは、アメリカ自身が監視し、アメリカの諜報・監視・偵察(ISR)により可能になったとファイナンシャル・タイムズが暴露した。ISRなしで、このようなドローン攻撃は不可能だ。
FT記事はロシア深部へのドローン攻撃におけるアメリカの役割を確認したものの、決して新事実を暴露するものではなかった。
アメリカが2014年にウクライナ政府を転覆させた直後、アメリカ中央情報局(CIA)がウクライナに職員を派遣したのを、昨年ニューヨーク・タイムズが認めた。それ以来、CIAは基地網を構築し、ウクライナ諜報部隊全体を訓練し、2022年に開始されたロシアの特殊軍事作戦(SMO)に対するものを含むウクライナ諜報活動を指揮してきた。
CIAはアメリカのISRを利用してロシアへのドローン攻撃に関与するSBU等のウクライナ諜報機関を監督しているのだ、これらの攻撃をアメリカ自身が実行しているに等しい。
つまり、トランプ大統領が8月にロシアのプーチン大統領を「和平交渉」のためアメリカアラスカ州に招待した時点で、トランプ政権は既にロシアのエネルギー生産を標的としたドローンによる徹底攻撃作戦を開始しており、ロシアのエネルギー産業と経済両方を麻痺させ、事実上の「ミンスク 3.0」 の枠組みの下での停戦にモスクワを屈服させることを狙っていた。
これを実現できなかったアメリカは、進行中のアメリカ主導のロシア深部攻撃の範囲と影響を拡大するためウクライナへのトマホーク巡航ミサイル配備で脅迫するなど更にエスカレーションを続けている。またロシア・エネルギー輸出の海上輸送に対する脅威も高まっている。
トマホーク:危険ではあるが決定的ではない
射程距離最大2,500キロのトマホーク巡航ミサイルは、モスクワを遙かに越える標的を攻撃可能で、ロシアのニジニ・タギル市にある伝説的なウラル・ヴァゴン・ザヴォード戦車工場まで攻撃対象にできる。またトマホークは、より多くのロシアのエネルギー生産施設を危険にさらすことになる。更に、ウクライナ無人機やミサイルによる攻撃の射程内にある施設に対し、トマホークは遙かに大型で破壊力も大きい弾頭を搭載しており、より大きな被害を与えられる可能性がある。
2019年に第一次トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するまで、トマホークは海軍の水上艦艇や潜水艦から発射され、1990年代の湾岸戦争からのアメリカ侵略戦争、2000年代初頭のアメリカのアフガニスタンとイラクへの侵略と、2011年以降のアメリカのリビアとシリアに対する戦争で重要な役割を果たした。
トランプ政権のINF条約離脱後、トマホークを発射できる地上発射ミサイルの開発と配備が始まり、現在アメリカ陸軍が中国に向けてフィリピンを含む各地に配備しているタイフォンや、アメリカ海兵隊が昨年まで試験用に開発し放棄していた長距離射撃(LRF)ランチャーが生産された。
米海兵隊は、アジア太平洋地域の島嶼部で活動する厳しい環境下でのLRF発射装置使用が困難なことを理由に、小型で短距離の海軍攻撃ミサイルを発射する海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム(NMESIS)を採用した。実用段階のLRF発射装置は、早ければ来年にも米陸軍で試験運用することが検討されており、ロシアに向けトマホークを発射するための最有力候補としてウクライナに配備される可能性もある。
LFRランチャーは、ランチャー1台につきMk 41垂直発射システム(VLS)セルを一つしか使用しない(タイフォン・ランチャーはセルを4つ使用)。そのためミサイルを発射するたびに再装填が必要になる。米軍が保有する他のトラック搭載型と併用される可能性があるが、ウクライナからロシアに向け一度に発射できるトマホークはごく少数に限られる。
通常、厳重に防御された標的には大量のトマホークが必要になるが、これは2017年にアメリカがシリアのアル・シャイラート飛行場攻撃で、最大59発のトマホーク巡航ミサイルを使ったことからも明らかだ。
ウクライナの地上発射装置からこれほどの規模の斉射を行うのは不可能なため、アメリカはトマホークと西欧諸国の空中発射巡航ミサイル、無人機、デコイを組み合わせる可能性が高い。これら性能の低い兵器は、トマホーク発射前に波状的に発射され、ロシア防空網を崩壊させようとするだろう。
同様戦術はイギリスのストームシャドウやフランスの同等ミサイル(SCALP)など西側諸国の空中発射巡航ミサイルと組み合わせて使用され、限定的成功を収めていまる。
SMOの過程で西側諸国がウクライナに移譲した他の多くの兵器同様、トマホークの小規模配備は、近い将来、より多くのミサイルと、より改良され、より多数の地上発射システムを送ることにより拡大される可能性がある。
これらの中には、米軍が既に既存のタイフォン代替を探しているものも含まれる可能性がある。記事「オシュコシュ地上配備型トマホーク発射装置が姿を現す」で、現在配備されている非常に扱いにくいタイフォンや、機動性は高いものの性能が限られているLRF発射装置と比較して、最大4発のトマホーク巡航ミサイルを搭載可能な遙かに機動性と自律性に優れた地上発射装置の開発についてNaval Newsが報じている。記事はこれらシステムの実用化時期には言及していないが、有人型は1~2年以内に開発・試験され、その後自律型システムが導入され、その間LRF発射装置が使用される可能性がある。
本当の隘路になっているのはアメリカ軍需品の年間生産量で、それは今後も続くだろうが、トマホーク巡航ミサイルも例外ではない。
トマホーク・ミサイルの年間生産数はわずか55発から90発に過ぎないとロイター通信が最近の記事で指摘した。これに対し、ロシアは同等の巡航ミサイル「カリブル」を年間300発から360発、その他数百種類の巡航ミサイルやゲラン2などの長距離攻撃ドローンを数万機生産していると推定される。2023年、2022年のSMO開始以来、ロシアはウクライナに向けて合計7,400発のミサイルと3,700機のドローンを発射したとの別のロイター通信記事は報じている。
ロシアのミサイルとドローンによる作戦がウクライナに及ぼす影響と、ロシアの遙かに広大な地理的規模とロシア産業およびエネルギー生産の規模を考慮すると、ロシアの軍事、産業、エネルギー生産に同様またはそれ以上の規模で重大な影響を与えるには、同数かそれ以上のミサイルとドローンが必要になるだろう。
現在進行中のアメリカ主導の深部攻撃がロシアのエネルギー生産に及ぼす影響については様々な報告がある。トマホーク巡航ミサイル導入は、この影響を増大させる可能性が高いが、どの程度まで影響が及ぶかは未だ不明だ。
トマホークの有無にかかわらず、エスカレーションは続く
アメリカがウクライナにトマホークを配備するかどうかに関わらず、アメリカはロシアとの代理戦争をエスカレートさせ続けるだろう。今年二月、ピート・ヘグゼス国防長官が明らかにした通り、徐々に低下するウクライナの戦闘能力によって生じた空白を埋める準備をアメリカは欧州に促している。
アジア太平洋地域で中国との対立が激化しているのを受けて、アメリカは資源を向け直そうとしているが、一方、ウクライナでの代理戦争の監視も続けている。最新例としては、ロシアのエネルギー生産施設を狙った長距離ドローン攻撃作戦が挙げられる。
ウクライナと欧米支援諸国がこの紛争の流れを変えられる可能性は低いと多くの専門家が同意しているが、早くも2019年にランド研究所が発表した「ロシアに手を広げさせる」 と題する論文で、そもそもウクライナが勝つ見込みがほとんどないことが明らかにされていたのは注目すべきだ。
論文題名が示唆する通り、狙いは単に「複数圧力点に沿ってロシアの手を広げさせる」ことで、ウクライナはその一環に過ぎない。2022年にSMOが始まって以来、アメリカはロシアがウクライナに注力しているのにつけこみ、ロシア軍の介入で停滞していたシリア政権転覆戦争を再開し、シリア政府打倒を図った。シリア崩壊は、ロシア同盟国イランと米イスラエル直接紛争への道を開くために利用されている。イランも今や中東において不安定な孤立状態にある。
ロシアのエネルギー部門への進行中の攻撃(トマホーク巡航ミサイル使用の可能性を含む)は、それ自体でロシアとの戦争に「勝利」することはないが、ロシアを更に「手を広げさせる」という、より大きな戦略に貢献するだろう。
ロシアへの過剰攻撃や、分業や戦略的順位付けを通じて、近隣諸国におけるロシア権益を削ぐ戦略をワシントンは継続するだろう。同時に、ロシアは軍事力と産業力の拡大を継続し、中国、北朝鮮、イランといった同盟諸国と協調して対応することで、まずユーラシア大陸と、それ以遠の地域におけるアメリカの干渉を麻痺させ、その後、撤退させて、アメリカ戦略を凌駕しようとするだろう。
アメリカとロシアは共に、物質的、軍事的、政治的な力の限界に迫り、それぞれの強みを活かしながら活動している。ロシアの強みは軍事力と工業生産にあるように見えるが、アメリカは軍事力を世界規模で展開するのに長けており、世界の情報空間をほぼ独占し、標的にした国を政治的に威圧し、掌握する強力な能力も依然有している。
どちらがより強い持続力を持ち、自国の強みを最も効果的に活用しながら敵国の強みを無力化できるかによって将来の世界秩序は決まるだろう。ロシアと同盟諸国が伝統的軍事力と産業力を強化し、アメリカの政治的干渉と情報空間の独占に効果的に対抗できるようになる前に、アメリカとその属国ネットワークは、ロシア軍事産業力に匹敵、あるいは凌駕できるのだろうか。時が経てば分かるだろう。
Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/10/17/us-threatens-russia-with-tomahawk-cruise-missiles-amid-latest-escalation/
———-
Judge Napolitano – Judging Freedom
SPECIAL-MUST WATCH] – Scott Ritter : Russia/Ukraine Today. 25:36
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
「中流消滅、7人に1人が「最下層、3人に1人となった非正規雇用の増加、日本の貧困率は15.4%と、G7中では米国に次ぐ高い水準、1993年に550万円だった世帯所得(年額)の中央値は、長期的に減少傾向が続き、2023年には410万円にまで落ち込んだ。(日経)
RANDの「ロシアに手を広げさせる」記事にいては、当ブログには
2022年8月31日
F. William Engdah記事翻訳がある。
モスクワでなく、ベルリンとブリュッセル発のヨーロッパのエネルギー・アルマゲドン
マイコメント
なぜか、世界的に戦争勃発の動きが活発化されているように思えます。
日本の新総理高市氏も防衛力増強を旗印に掲げており、2026年はもしかしたら
本当にドンパチが始まるのかもしれません。



コメント