英国の病院が「あまりの病人の多さ」に対応が困難に。ブリストルでは複数の病院が医療上の重大インシデントを宣言
英国民保険サービスが破綻しつつある
イギリスで、患者の多さに対応仕切れず、プリストルという街の複数の大病院が「重大インシデント」を宣言するという事態になっています。
重大インシデントという言葉は、本来は、航空、鉄道などの分野で、事故に至らなかったが、重大な事故が発生するおそれがあったと認められる事態ですが、医療機関で宣言されるのは珍しいです。
なぜ、こんなことになっているのかというと、少し前に英インディペンデント紙が「迫り来る NHS の冬の危機 病院がハルマゲドンに直面」というタイトルの記事を上げていまして、NHS というのは、英国の国民保険サービスですが、それが破綻しかかっているという内容でした。
その記事を読むと、現状がわかります。
つまり、「病気の人が多すぎる」ようなのです。
いくつかインディペンデント紙から抜粋しますと、
> 病院のベッドが満床となり、重症患者は医師の治療を受けるために、仮設の病棟(戸棚、オフィス、廊下など)に送られる。また、待合室で何日も過ごさなければならない患者もいる。
とか、
> 今年はすでに病院は「驚くほど」多くのインフルエンザと新型コロナの患者に対応しており、その一因は「非常に懸念される」インフルエンザの流行時期の早さ、救急外来の需要の急増、そして人員削減にある。
などとあり、感染症の流行が著しいことを報じていますが、しかし、これはまだ、インフルエンザなどの本格的な呼吸器感染症の流行期の前の 10月の話であり、今後、さらに爆発的に患者数が増えるとみられています。
もともと英国の医療体制は、やや破綻気味で、2022年には、「救急車待ちが地域的に2日以上になっている」ことをご紹介したことがありますし、また、パンデミック以降、さまざまな病気が以前とは比較にならないほど増えていることがよく報じられています。
以下のような記事にあります。
・英国:ガン患者の急速な増加により医療対応が危機に。医師たちは「史上最大の癌クライシス」だと述べる
地球の記録 2022年12月17日
・イギリスで心臓治療の長期待機者の数が「3年間で350倍超の劇的な上昇」を示していると英国心臓財団が警告
地球の記録 2023年5月23日
まあ……なぜ、こんなことになっているかの明確な理由は不明ですが、英国は、世界で最も多くの国民が「 DNAワクチン(アストラゼネカ社のウイルスベクタータイプ)」を打った国でもあり、それが影響しているのだとすれば、今後、長期間にわたり、このような問題は拡大していくと思われます。
本格的な病気の時代ですね。
ブリストルの医療機関の重大インシデントについての英ミラー紙の報道です。
ブリストルの病院は「重大な圧力」により稀な重大インシデントを宣言
Bristol hospitals declare rare critical incident over ‘significant pressures’
mirror.co.uk 2025/10/30

ブリストルとウェストン・スーパー・メアの複数の病院で、需要の高まりによる「著しい圧迫」により、重大な事態が宣言された。
ブリストル大学病院・ウェストン NHS 財団トラストは、この事件が同トラスト傘下の全病院に影響を与えていると発表した。対象となるのは、ブリストル王立病院、ブリストル王立小児病院、セント・マイケルズ病院、ウェストン総合病院だ。
このインシデントは、病院への需要が急増した後に宣言された。本日発表された声明の中で、ブリストル大学病院・ウェストン NHS 財団トラスト病院のマネージングディレクター、スチュアート・ウォーカー教授は次のように述べる。
「ブリストル大学病院・ウェストン NHS 財団トラストは、システム全体にわたる深刻な圧力が病院に影響を与えていることを受け、本日 2025年10月30日に重大インシデントを宣言しました。ブリストル NHS グループ内のすべての施設で、現在、非常に高い需要が発生しています」
ブリストル NHS グループ内の全施設で、現在、非常に高い需要が発生している。緊急の医療支援が必要で、どこに行けばよいか分からない場合は、NHS 111 に連絡してほしい。
NHS (国民保険サービス)は、重大インシデントを「混乱のレベルにより組織が重要なサービスを提供する能力を一時的または恒久的に失い、患者が被害を受けた可能性があり、または環境が安全でなくなり、通常の運営機能を回復するために他の機関からの特別な対策と支援が必要となる、あらゆる局所的なインシデント」と定義している。
これは、ウィラル大学教育病院 NHS 財団トラスト傘下のアロー・パーク病院が、「進行中の問題」の調査のため、選択的処置を一時停止せざるを得なくなった数日後のことだ。財団はその後、新たな器具の購入や近隣の NHS 組織からの機器の借用など、対策を講じている。
ミラー紙系列のリバプール・エコー紙が閲覧した内部メールによると、NHS トラストは混乱への対応のため、地域内の他の NHS トラストにも支援を求めている。患者たちはエイントリー病院とチェスター伯爵夫人病院に転送されたとみられる。
10月22日にウィラル大学教育病院 NHS 財団トラストの職員に送られたメッセージには、次のように書かれていた。
職員の皆様へお知らせいたします。ここ数日、滅菌サービス部門において手術器具に影響を及ぼす問題が発生しています。患者の安全は常に最優先事項であり、この問題の調査のため、先週、選択的活動を一時停止するという苦渋の決断を下しました。昨日の午後、トラストで重大インシデントが発生したと発表されました。このインシデントに対処するための指揮統制体制を整えています。
患者への影響を最小限に抑えるため、病院は追加の手術器具を導入し、地域のパートナーと協力してさらなる物資の確保に取り組んでいる。



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