沖縄でゾンビのように路上を徘徊する若者が大量発生している。裏にいるのは台湾黒社会。凶悪マフィアによる薬物汚染が日本に迫っている――。

台湾マフィア幹部が取材に応じた

パソコンのオンライン画面上に現れた短髪痩身の男性。同席する通訳を介して記者が挨拶をすると、男性は「你好(台湾語のこんにちは)」とにこやかに返した。笑顔ではあるが、その眼光は鋭い。

「これは、うちの組織が台湾国内で製造している『ゾンビタバコ』の原料の映像です。こっちは、中国で作っている容器の動画だね。シャブだとこれ」

インタビューが始まると、映像を画面上に表示しながら、次々と危険ドラッグについて説明をしていく。淡々とした口調に、隠す素振りは見られない。

この男性は、台湾最大のマフィア組織「竹聯幇(チクレンホウ)」の幹部・A氏である。匿名を条件に取材に応じたA氏から明かされたのは、日本で急速に蔓延している危険ドラッグの実態、そして、その裏で蠢いているのが台湾マフィアであるという衝撃的な事実だった――。

「違法薬物報道」が相次いでいる

今年に入り、日本国内で違法薬物に関する報道が相次いでいる。6月、日経新聞は中国犯罪組織の手掛ける違法ドラッグ「フェンタニル」の密輸拠点が名古屋に存在しているとのスクープ記事を掲載。本来、「フェンタニル」は麻酔性鎮痛剤として医療現場で使用される成分だが、アメリカでは悪用によって中毒者が激増。毎年、4万人以上の死者を出す大きな社会問題となっている。

「少量で死に至ることから、フェンタニルは『史上最悪の麻薬』『小さな悪魔』とも呼ばれています。その流通拠点が日本国内に存在していたとあり、警察にも驚きが広がりました。日本でも流通しているのか、しているのならその量はいかほどか。入念に捜査を進めています」(捜査関係者)

さらに9月には、福岡県警が大麻由来の違法ドラッグの密輸事件に絡み、関係先としてサントリーホールディングス前会長の新浪剛史氏(66歳)の家宅捜索を行っていたことが判明した。捜査を受け、新浪氏は会長職とともに、経済同友会代表幹事を辞職する事態にまで発展した。

そして違法薬物疑惑は、芸能界にまで波及している。

「10月には厚労省関東信越厚生局麻薬取締部、通称マトリが女優の米倉涼子(50歳)の自宅へガサに入っていたと週刊文春が報道しました。家宅捜索では違法薬物が複数押収され、マトリが本格的な捜査を続けているとされています」(全国紙社会部記者)

「ゾンビタバコ」が爆発的に蔓延

なかでも警察が警戒を強めているのが、現在、沖縄県を中心に爆発的に蔓延している危険ドラッグ「ゾンビタバコ」である。

ゾンビタバコの主原料は「エトミデート」という医療用麻酔。この成分をリキッド状にしたものを電子タバコで吸引する。使用すると多幸感に包まれる一方、手足がしびれ、混濁状態へと陥る。フラフラと歩いたり、痙攣しながら路上にうずくまる姿が「ゾンビ」を連想させることが、名前の由来だ。

乱用すれば、依存症だけでなく、重篤な臓器障害を引き起こすリスクもある。

「中国や台湾では’23年頃に乱用が問題となり、規制対象となった。日本では’24年頃から沖縄で出回るようになり、10~20代の若者を中心に使用者が増えてきました。今年に入るとさらに流行は広がり、沖縄各所で奇声をあげたり、痙攣したりする若者が続出。しかしこれまで、日本ではエトミデートを取り締まる法律がなく、県警も注意喚起することしかできなかった。野放し状態が続いていたのです」(前出・捜査関係者)

そこで厚労省は、今年5月にエトミデートを指定薬物に認定。以降、沖縄県警は使用者10人を検挙するなど、本格的な摘発に動き始めた。

その努力も虚しく、ゾンビタバコは警察の想定を上回るスピードで広まっている。

「10月10日、九州厚生局麻薬取締部と大分県警が、エトミデート約100グラムを密輸したとして中国籍の男3人を逮捕したと発表しました。3人はいずれも関東地方に住み、成田空港に到着した荷物の中にエトミデートを忍ばせていた疑いがかけられている。沖縄だけでなく、関東にもゾンビタバコが広がっている可能性があるのです」(同前)

後編記事『【台湾マフィア「竹聯幇」幹部に独占取材】沖縄で「ゾンビタバコ」を蔓延させた「驚きの密輸方法」』へ続く。

「週刊現代」2025年11月10日号より

【つづきを読む】【台湾マフィア「竹聯幇」幹部に独占取材】沖縄で「ゾンビタバコ」を蔓延させた「驚きの密輸方法」