PR

トイレットペーパーやラップ「パニック買い」に注意喚起 

スポンサーリンク
トイレットペーパー 買い占め

トイレットペーパーやラップ「パニック買い」に注意喚起

原料が足りているのに「品不足」が発生する理由を徹底解説

 経済産業省は公式Xで「イラン情勢の直接の影響はありません」と発信し、トイレットペーパーの購買について冷静な行動を呼びかけた。原料が十分でも不足が起こるとしたら、要因は何か。

【写真】コロナ禍、トイレットペーパーが売り切れた商品棚

*   *   *

■「増産余力も十分」

「(トイレットペーパーの)原料は国内回収古紙やパルプで、中東依存のものはほぼないため、直接の影響はありません。増産余力も十分にあるため、購入にあたり正確な情報のもと冷静なご判断をお願いします」

 中東・ホルムズ海峡の事実上の「封鎖」を受け、経産省は3月19日、公式Xにこう投稿した。一部SNS上にトイレットペーパーやラップ、ごみ袋など日用品の供給を不安視するも声があったためとみられる。

 経産省が警戒するのは、実際には不足していないのに買い占めが起きる「パニック買い」だ。需要が急増すれば流通が追いつかず、結果として実際にトイレットペーパー不足を招き、他の商品にも連鎖しかねない。

■「うわさ話」が発端で買い占めに

 経産省の担当者は、1973年の第1次オイルショック時のトイレットペーパー騒動を引き合いに出す。

「当時の買い占めは、大阪の主婦の『うわさ話』が発端でした」

 73年10月、大阪・千里ニュータウンのスーパーにトイレットペーパーを求める行列ができ、それが報道されると買い占めは全国へ拡大した。 「今はSNSがありますから、誤情報が広がるスピードは当時とは比べものになりません」(経産省の担当者)

■コロナ禍では「パニック買い」

 トイレットペーパーの約97%は国内生産だ。メーカーで構成される日本家庭紙工業会の担当者はこう話す。

「ホルムズ海峡情勢の影響は全くなく、生産・出荷は順調です」

 かつては乾燥工程に重油を使うことが一般的だったが、現在はほとんど使われていないという。

「大手製紙メーカーは、パルプ製造時に出る副生成物『黒液(こくえき)』を燃料にしています」(日本家庭紙工業会の担当者)

 黒液とは、木材チップをパルプに加工する際、木の樹脂などが溶け出した真っ黒な液体のこと。これを燃料として再利用している。

 燃料の一つにLNG(液化天然ガス)もあるが、輸入元(2025年)はオーストラリア(39.7%)、マレーシア(14.8%)などで、中東への依存度は原油(約90%)に比べて大幅に低い。

では、石油由来のポリエチレンなどの包装材はどうか。

「包装用の袋が不足しているという話は、会員メーカーからは一切ありません」(同)

 コロナ禍では、「品不足のマスクとトイレットペーパーの原料は同じ」というデマが拡散し、トイレットペーパー販売のPOSデータは一時前年比で約260%に跳ね上がり、「まさにパニック買いの状況でした」と、担当者は振り返る。

「今回は3月中旬、一時前年比141%まで上昇しましたが、3月下旬には同90%台前半まで下がりました」(同)

 仮に包装材が不足した場合はどうするのか。

「段ボール箱に包装せずに入れて出荷するなど、代替手段はあります」(同)

■石油化学製品は足りているのか

 石油由来の製品はほかにもある。たとえば、「家庭用ラップ」はどうか。

「サランラップ」を製造する旭化成は、取材に対しこう回答した。

「現時点では減産などの生産調整を行う予定はなく、直ちに一般のご家庭でのご使用に支障が出るような状況にはございません。SNSなどで見られるような急ぎ買い集めを行っていただく必要はないと考えています」

「クレラップ」を製造するクレハも「石油由来の原料は確保できており、通常通り生産している」と説明する。

■石油化学製品全体で「2カ月程度」の在庫

 ポリエチレンなどの原料である「ナフサ」(軽質ガソリン)は、実質中東に依存している。ナフサは原油を精製して作られるが、日本はナフサの44.6%を中東から輸入(24年)。国産も39.4%あるが、ほとんどが中東産原油を国内で精製したものだ。

 現在、石油化学メーカー各社はポリエチレンの材料となるエチレンを減産している。

 日本の主要な石油化学メーカー25社で構成される「石油化学工業協会」の担当者によると、イスラエルと米国がイランへの攻撃を開始した2月末の時点で、「ポリエチレンやポリプロピレンといった主要な原料は3カ月半~4カ月程度の在庫がある」。

 石油化学製品全体でも「国内需要の2カ月程度」の在庫があるという。

 しかし、「2カ月程度」であれば、4月末ごろには在庫は底をつくのではないか。そんな懸念に、経産省の担当者は、こう説明する。

「『2カ月程度』とは通常の在庫量で、出荷した分を製造しながら継ぎ足していきます」

 中東からの原油輸入はほぼ途絶えているが、政府は3月16日から民間備蓄、同26日から国家備蓄の放出を開始した。

「北米や南米など、中東以外からの代替調達を急いでいます」(同)

 現時点で石油化学製品の供給不足は起きていないという。

■地域により状況に大きな差

 中東産原油の途絶による影響は地域で大きく異なる。米国は世界最大の産油国で、イラン情勢を受けガソリン価格は上昇しているが、石油化学製品の供給への影響は限定的だ。欧州も北海(英国・ノルウェー)産や米国産の原油が下支えし、中東からの石油製品減少の影響は小さい。

 一方、中東原油への依存度が最も高いアジアでは、供給不安と価格高騰が市民生活を直撃している。バングラデシュでは発電燃料不足で工場が停止し、衣料品の出荷が滞る。パキスタンでは輸送燃料の欠乏で食品や医薬品の配送が遅れ、フィリピンやベトナムでも物流停滞から日用品やプラスチック製品の供給が不安定化している。

 これに対して、日本は254日分(昨年末時点)という世界有数の原油の備蓄量を確保していたため、東南アジアのような燃料不足や生活物資の混乱は、現時点で日常生活にはほとんど及んでいない。

 しかし、「不安」は人々の行動を乱れさせる。どんな製品も、「パニック買い」による欠品は避けたいものだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)

コメント

タイトルとURLをコピーしました