消費減税で「日本の信頼がなくなる」 自民党内部でも分裂が 一方、賛成派は「トランプとディールがしやすくなる」
理由なんかどうでもいい!理由いかんにかかわらず減税したくないだけ
補正予算案を断念して追い詰められた石破茂首相(68)が今、平成元年に導入されて以来、一度も実行されたことのない「消費税減税」に手をつけようとしている。国の財政に大きな影響を及ぼす、減税という“禁断の果実”を巡ってうごめく政界の内幕をリポートする。
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東京・永田町の首相官邸には、正面玄関と別に裏口が2カ所ある。そのうち1カ所は、政治部記者が張り付いていることは少なく、訪問者は官邸の主と秘密裏に面会ができるという。
4月15日午前、その裏口に黒塗りの車数台が人目を避けるように静かに吸い込まれていった。自民党の森山裕幹事長(80)、小野寺五典政調会長(64)ら党執行部の面々である。彼らが参集したのはトランプ関税への対応の協議のほか、ある重大な決断を石破茂首相に促すためだった。政府・与党は物価高や米国の関税措置への対策として国民に現金を給付するための補正予算案を検討していたのだが、出席者の一人は石破氏に、
「国民の理解が得られていません。野党も現金給付案には否定的です。補正予算案の成立は困難でしょう」
そう告げたという。新聞各紙に「給付断念」などの見出しが躍ったのは、その2日後のことだった。
石破首相は「周囲にボヤいていた」

モスクワにあるユニクロ(
)政治部デスクが言う。
「給付案は森山・財務省ラインで主導したものです。給付額は3万円から5万円まで幅があったのですが、仮に5万円を全国民1億2000万人に配ると6兆円ほどの財源が必要になります。財務省が税収の上振れ分を加味しながら、赤字国債に頼らずに組めると試算したのが最大で5万円の給付案だったのです」
自民党執行部は当初、通常国会で補正予算を成立させて、7月後半の参院選までに給付を実現すれば即効性のある選挙対策になると考えていた。しかし、予想外のことが起きる。各社の世論調査で給付案への反対が賛成を大幅に上回ったのだ。
政治ジャーナリストの青山和弘氏が明かす。
「石破首相は周囲に“なんでこんなに給付金の評判が悪いのだろう。いざ配れば、国民の皆さんに受け取ってもらえるはずなのに”とボヤいていました」
「消費税減税大合唱」
石破氏ら執行部は最終的に、冒頭に紹介した場面の協議を経て現金給付案・補正予算案の断念に至ったのだが、代わりに現在、与野党間で取り沙汰されているのが「消費税減税案」である。
「自民と連立を組む公明党内では食料品などを対象に消費税率を時限的に引き下げる案が浮上しています。また、日本維新の会も8%の軽減税率が適用されている食料品の消費税率を2年間0%に引き下げることを提言しているほか、国民民主党や共産党は一律5%への引き下げを主張しています」(前出のデスク)
まさに「消費税減税大合唱」といった状況なのだ。
日本維新の会の前原誠司共同代表(63)に尋ねると、
「賃上げが物価上昇に追いついておらず、国民一般の生活はどんどん苦しくなっています。食料品の消費税が0%になれば、皆さんに安心感を持ってもらえるはずです。必要な財源は(年間)4.8兆円ですが、税収の増加分で賄える。食料品は必需品なので、減税の時限措置が明ける前の駆け込み需要も起こりづらく、経済への悪影響も抑えられます」
立民も「消費減税派が多数派を形成」

日産本社(
)一方、野党第1党の立憲民主党はどうか。
「野田佳彦代表(67)は旧民主党政権時代に首相として段階的に消費税を10%まで引き上げる三党合意を推し進めた当事者であり、消費減税に反対の立場です。しかし、江田憲司元代表代行(69)や小沢一郎総合選対本部長代行(82)らが軸となり、消費減税派が多数派を形成していきました」(前出のデスク)
枝野幸男最高顧問(60)は野田氏の窮地に、
「減税ポピュリズムに走りたい人は、別の党をつくればいい」
と、言及。“助け舟”を出した格好だが、
「枝野最高顧問の発言は“何様だ”と党内から反発を招き、かえって減税派が勢いを増す結果となりました。執行部内でも、小川淳也幹事長(54)や辻元清美代表代行(65)らが賛成派に回ったと聞いています」(立民関係者)
枝野氏の発言は「看過できない」
立民内の消費減税派の旗頭、江田元代表代行に話を聞いた。
「今年4月から食料品だけでも、実に4000品目以上が値上がりしています。お米も昨年同時期の2倍以上の価格で、エンゲル係数は急上昇している。今は財政再建を叫ぶ時ではありません。物価高に苦しむ国民生活を救うことこそが最優先の課題ではないでしょうか。そのためにわれわれは食料品をターゲットにして、ピンポイントで消費税を0%にすることが有効だと考えています」
江田氏は給付金を配るよりも、同額の負担で消費減税をした方が経済効果も2倍程度見込める試算があると指摘した上で、
「枝野さんは“減税ポピュリズム”なんて仰っていますが、それ、財務省用語なんです。立憲民主党は、党名に“民主”を冠しているにもかかわらず、党内の民主主義や言論の自由を認めないのは、完全なる自己否定でしょう。看過できない発言です」
党内が割れているのは自民党も同じ
4月18日、立民は経済財政部門・財務金融部門・税制調査会の第3回合同会議を開催したが、
「食料品の消費税を0%にするわれわれの案に多数の賛同が得られました。最終的には野田さんがどう判断するかですが、その判断次第では党内で一波乱、二波乱ありそうです」(江田氏)
野田氏は19日、消費減税の是非に関する党内議論について、GW前にも結論を出す考えを示した。しかしその結論によっては、過去に小沢氏が消費増税に反対して旧民主党を飛び出したように、“分裂”の展開となる可能性もあるのだ。
もっとも、党内が割れているのは自民党も同じだ。
「執行部は基本的に森山氏以下、財政規律を重んじており、そのほとんどは消費減税に反対の立場です。一方、石破氏と対立関係にある高市早苗前経済安全保障担当相(64)や参院の改選組からは公然と消費減税を求める声が上がり始めています」(前出のデスク)
「トランプ大統領ともディールがしやすくなる」
消費減税派の代表格、西田昌司参議院議員(66)が言う。
「私は消費税を廃止して、法人税率をかつての水準に上げるべきだと考えています。消費税の撤廃分の財源としては、それで対応できます。その上で、企業の戦略的分野への投資に対しては税制上の優遇措置を講じることも提言しています」
さらに、米国が消費税を“非関税障壁”と主張していることを念頭に、
「消費税をなくせば、トランプ大統領ともディールがしやすくなります」(同)
また、あの男も最近、消費減税派に転じたという。
「小泉進次郎元環境相(44)は先日、記者団に“生活が大変な方に対して、給付にしろ減税にしろ、何もしないでいいわけがない”と語っています。財政規律派だったのに、すっかり減税容認派になったといわれています」(前出のデスク)
「日本の信頼が一挙になくなる」
だが、党No.2の森山氏は消費減税にはあくまで反対の立場を堅持している。
森山氏本人が語る。
「消費税を減税するという話は、社会保障の財源との関係があり税制上大変なことであります。赤字国債を出さなければいけないような補正予算は今は組んだらいけないと思います。日本の信頼が一挙になくなりますから。日本の国債はランク付けが、G7の中では非常に低い。(格付けが)あと1ランクでも下がったら大変です。財政規律はしっかりと守っていかないといけません」
そしてこうも述べる。
「総理も財政規律は大切だと考えておられると思います」(同)
「消費減税包囲網が完成する」
しかし、さる自民党関係者はこう打ち明ける。
「石破氏は本来、財政規律派だったはずですが、最近、消費減税に強い関心を示していると聞いています」
前出のデスクが補足する。
「今や、消費減税に強く反対しているのは森山氏などの自民執行部と立民の野田執行部の一部くらいです。野田氏が減税派に転じれば、石破氏に対する消費減税包囲網は完成します。そうなれば無論、参院選の政策に自民だけが消費減税をうたわないわけにはいきません。石破氏はいやが応でも、消費減税を視野に入れざるを得ないのです」
青山氏もこう指摘する。
「現金給付が駄目になった今、選挙対策としてインパクトの強い物価高対策は消費減税しかありません。実際、石破首相自身は消費税の軽減税率引き下げの選択肢を排除していません。首相は参院選を見据えて、立民の出方をうかがっている状況です」
後編【「キャビアや大トロなどは課税とすべき」 消費減税の問題点を専門家が指摘 「消費税を下げるのは間違った発想」】では、専門家の立場から見た、消費減税の問題点について紹介する。
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一回減税に応じたら、なし崩し的に次の減税にも応じなければならないし、一回
下げると次の増税に歯止めがかかるという恐怖感から財務省が強力に拒んでいる
のが現実だろうと思います。
そして、石破首相が減税を検討し始めたとなると、遅かれ早かれ財務省が首相の
座から引きずり降ろし、増税賛成派の次の首相を模索しバックアップし始めるだ
ろう。
それがこの国の正体です。
一国の首相の座さえコントロールしようとする財務省。
もはやこんな省なんか必要ない。
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