9月までに日本大暴落がやってくるかもしれない

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汚れた日本列島 政治・経済

9月までに日本大暴落がやってくるかもしれない

ついに日本大暴落の条件がそろってしまった。選挙の結果はどうであれ、解散総選挙あるいは内閣交代あるいは経済政策の大幅変更となる。そして、トランプ関税がトリガーとなって世界的な経済凋落となる。

20日に投開票が行われる参議院選挙も「日本大暴落」のきっかけになりうる(撮影:尾形文繁)

ついに日本大暴落の条件がそろってしまった。

2025年7月から9月、どこかで「株・債券・為替」の日本大暴落となる確率は50%以上あると思う。理由は4つある。

「大暴落のきっかけ」となりそうなイベントがありすぎる

【理由1】まず、明確なきっかけになりうるものがあるからだ。それも複数ある。

きっかけになる候補の1つ目は国内政治。選挙。日本の参議院選挙は7月20日(日)投開票だが、連立与党過半数割れでも、そうでなかったとしても、政治的に非常に危険な状態となる。

過半数割れなら、衆議院は内閣総辞職か解散か、いずれにせよ、新しい自民党総裁となるか、あるいは自民党以外の議員を迎えて新連立を組むか、あるいは現在の野党が連立政権を作るか。いずれのシナリオでも、経済政策の大幅な変更を強いられるだろう。消費税に関する、何らかの減税となるだろう。これは国際金融市場では、格好のニュースとなり、日本売りを浴びせられるだろう。

もし参議院が与党過半数維持でも、改選議席では大幅過半数割れだから、今回の選挙で「国民は現政権を否定したことになる」という理屈が優勢となり、経済政策の大幅な変更圧力が来るだろう。

「小泉(進次郎農水相)備蓄米バブル」は、投票行動には影響は小さかったことになり、また、その材料は出尽くしで、備蓄米で流れが変わったかどうか見極めきれず、躊躇していた野党も内閣不信任案提出に踏み切る可能性が高いだろう。大義は、参議院選挙では、過半数がノーだったのに、何の政策変更もない、国民の意思を反映していない内閣ということになるからだ。そうなると、自民党側も総裁選を行い、トップを交代して選挙に臨むことになろう。

選挙の結果はどうであれ、解散総選挙あるいは内閣交代あるいは経済政策の大幅変更となる。内閣が変われば経済政策大幅変更で、いずれにせよ、財政支出は大幅拡張となり、日本売りの格好の機会となろう。

本当に困っているのはアメリカだ

理由1の「2つ目のきっかけ」となりうるのは、アメリカ。「トランプ関税」の本当の結末。それとアメリカの財政問題だ。

トランプ関税で日本は大騒ぎだが、本当に困っているのは実はアメリカだ。書簡を送った国々が8月1日までにどの国も譲歩しなかったらどうするのか。多分、誰も譲歩しないだろう。

ドナルド・トランプ大統領は、「TACO」(=トランプは口だけの弱虫だ)という批判をはねのけるためにも、関税をかけてくるだろう。関税がかかった瞬間にアメリカ株は下がり、世界中の株価は下がるだろう。マーケットは総弱気相場になり、弱いものから攻撃される。それは米国債と日本国債、ドルと円だろう。

財政の信頼性も失われ、結局、関税収入は最初だけで、減少していったときに米国債の売りが起きるだろう。これも世界リスク資産全面安相場になる。

そもそも、トランプ政権自体が崩壊するだろう。今が、トランプ政権開始後、相対的にはましな状態だ。一時的な凪の様相を呈している。しかし、関税だけでなく、外交もこのままでは終わらない。ブラジルへの相互関税50%はめちゃくちゃすぎる。イラン攻撃だけ成功したからと言って、勘違い、自信過剰になったトランプは、今度こそ窮地に陥る。

理由1の「3つ目のきっかけ」となりうるのは、日米の金融政策。日銀は極めて難しいかじ取りを迫られている。アメリカは、ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の後任の早期指名。独立性への疑義。FRB内部の分裂といったことだ。

日銀は、ほぼ利上げができないだろう。輸入物価上昇、人件費上昇による倒産が少しずつでてきた。世界の景気もピークアウト、株価も波乱含みとなれば利上げに踏み切る度胸はないだろう。

そうなると、仕掛ける側としては円を売り浴びせやすくなる。このような身動きが取れない状況での政策決定会合は、毎回、利上げするにせよ、しないにせよ、タカ派かハト派、少なくともどちらか一方からの攻撃を受けることになる。仕掛ける側にとっては、そのときの相場の雰囲気で何度でもチャンスがあるから、余裕をもって仕掛けられる。

アメリカのFRBは、もっと危ない状況だ。トランプ大統領が露骨に利下げ介入、人事介入する姿勢を見せている。介入した瞬間、ドル売り、米国債売りが仕掛けられるだろう。

さらに悪いことに、ハト派でもタカ派でもない、トランプ大統領に媚びる「孔雀派」が執行部、ボードメンバーに出てきてしまっている。これは組織が内部崩壊する典型的なパターンだ。

この場合は、ドル売り、米国債売りで、ユーロ高となるだろうが、日本は、日本国債が米国債に合わせて売り込まれ、これとセットで円も売り込まれるだろう。ドルと円が世界最弱通貨1位と2位になる。この数カ月、すでにそうなっているが、さらにはっきりするだろう。このように、暴落のきっかけとなるイベントの候補がこれだけあれば、どれかは爆発する。

マグマが十分にたまってしまった

【理由2】4つのうち2つ目の理由は、火がついたら爆発するマグマが十分にたまっていることだ。すなわち、市場環境が暴落のおぜん立てを整えてしまったのだ。株価は上がり切った。あとは下がるしかない。

トランプ大統領の就任前よりも、現在のほうが、経済状態がいいという理由はない。それにもかかわらず、株価は、2月以降のトランプショックの反動で、むしろ高くなってしまっている。これはどこかで調整される。

また、ロジックから言っても、いいとこ取りをしている。トランプ関税は結局かからない。トランプはTACOだ(やる度胸がない)。一方、減税法案に対する財源は関税で賄うということで、財政懸念は後退している。さらに、FRBへの人事介入で、市場は大幅利下げを織り込んでいる。

しかし、FRBへの人事介入というショックには目をつぶっている。それが起きた瞬間には、ドルも米国債も信認を失い暴落するはずだ。

欧州も、ドイツの国防費増加をきっかけに財政緊縮主義の放棄を歓迎しているが、それは、結局軍事支出であるということは、長期的には地政学リスクによる経済、社会の悪化で、むしろ経済にもマイナスである。そのうえ、財政拡大で金利上昇だけが残る。財政負担がどこかでくる。欧州は、多様な国の集まりだから、弱いところが必ずあり、財政は攻められることになる。

つまり、株式も債券も世界的な暴落が起こる準備を完了したのが現在の市場の状態だということだ。

日本ももちろん同じで、株価は上がりすぎ、財政懸念は、以前よりも多くの債券投資家がリスクと認識している。暴落の準備は着々と整えられているのである。

そこへ、第1の理由で述べたきっかけのうちのどれかが火をつける。その火が大災害となる燃料を現在のマーケットは溜め込んでいるということだ。

「日本売りの条件」がそろった

【理由3】理由の3つめは、日本売りの条件が、大局的にもそろったということだ。これは21世紀に入ってからは初めてのことだ。この25年、日本売りが囁かれながらも、実現しなかったのは、この大局条件がそろっていなかったからだ。

その大局的な条件とは以下の2つだ。まず、政治家も国民も投資家も、円高ではなく、「円安」を恐れるようになったということだ。やっと「普通の」国になったのである。

円安によるインフレ、物価対策が唯一最大の選挙の争点だ。そして、日本にネガティブなニュースが出れば、投資家も円売り、国債売りでまず反応し、それが株安を呼ぶのが当然のスパイラル的下落となっている。円安なら株高、ということはもはやまったく成立しない。

つまり、前回の記事「日本の財政問題で流される『5つのうそを暴く』」(6月28日配信)の最後で引用した黒田(東彦・前日銀総裁)書簡における「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」という表現は、現在、成り立たない。もはや、日本は「普通の」後進国、つまり、自国通貨の為替レート変動によって経済が揺れ動く「普通の」「小国」になったのだ。

経済学でいう小国とは、市場で受け身に行動する国のことである。寡占的な力をもって市場に影響を与えるのが「大国」である。だから、日銀直接引き受けや、日銀特融などを行えば、テクニカルには名目上のデフォルト(債務不履行)は回避できるが、実質的には財政破綻する。

国債の民間取引はフリーズし(誰も買わないから)、財政破綻時と同様の財政再建策により国際金融市場の信認を回復するのが急務となる。つまり、実質上のデフォルト、実質財政破綻である。さらに、1992年の英国のポンド危機、2022年のトラスショックを見れば、実質財政破綻となる前に、財政危機は簡単にやってくる。

そして、2025年の現在、イギリスは、トラスショックと同じ財政懸念から国債暴落危機再燃の気配があるし、日本も同じだ。そして、トラスショックのときに比べれば、この先、急に回復する(2022年はコロナショックからの回復過程)という期待もストーリーも存在しない。

日本も、いまや国民も政治も円安を望まなくなった。ということは、日本売り、円売りで、日本を慌てさせることができる。だから、円安で海外投機勢が仕掛けることができる。株安円安で仕掛けて、債券もその流れなら売り浴びせられる。海外投機家が、日本売りをトリプル安で仕掛けられる大局的条件が整ったのだ。

欧州系金融機関が最大の新発長期国債落札者に

さらに、もう1つのとどめの条件まで成立してしまった。これは、この5月のことだ。いまや、ドル円でドルの調達が困難になっていることから、ドルを手放して円建て日本長期国債で運用すると利回りが5%をはるかに超え、米国債をはじめ、多くの欧州国債を上回る利回りが得られるようになってしまったのだ。

これは、貿易収支が大幅赤字になっていることが背後にあり、金融市場においては、さらにドルが大幅に不足していることがある。この結果、この利回りを求めて、日本の長期債、超長期債を海外勢が取引するだけでなく(取引高は従来海外取引者が主要勢力だった)、投資家として保有することになった。この5月は、欧州系金融機関が最大の新発長期国債落札者となったのだ。

となると、日本国債の暴落で、海外勢も現物の長期国債を売る主体として登場する、ということだ。彼らは、為替安、国債安となれば、すぐに売ってくる。日本国内の国債投資家と違って、純粋に価格、利回りとリスクのバランスで、市場の変化に敏感に反応して売買するのだ。こちらでも、日本市場は、「普通の」国債市場になったのだ。

こうなると、トリプル安となれば、それが加速して、長期国債もガンガン売られる。為替と株では海外投機家に支配されても、国債市場では、しぶとい、郵貯、かんぽ、生保、年金勢が買ってくるというのがこれまでの国債市場だった(その結果、日本国債売りを仕掛けた海外投機家は、これまでは常に敗退してきた)。だが、こちらも世界の流れに支配されてしまうようになったのだ。

これら2つの大局的条件がそろってしまっては、なすすべはない。後は、暴落がいつ起きるか、おびえながら待つしかない。

世界経済は今後確実に悪化に向かう

【理由4】理由の4つ目は、世界経済が、今後、確実に悪化に向かうことだ。これは、何度も書いているので今回は省略するが、関税が世界経済にプラスのはずはない。さらに、トランプ大統領のTACOも、そう言われることに反発する本人も、不確実性を増幅させるばかりだ。不確実性の高まりという意味では、4月と何も変わっていない。

「関税で税収が上がり、アメリカにはプラスだ」という論者がいるが、ありえない。当初は、税収が上がるが、どんな関税がかかるかはっきりすれば、アメリカ国外の企業は長期的な戦略を練り直し、アメリカへの輸出を最小限にするようにして、残りは関税がかかっても構わない、という戦略に変えるだろう。アメリカ国内で代わりに生産できるかといえば、サプライチェーンの構築には5年は最低でもかかるから、結局輸入することになる。インフレとなるだろう。現地生産は一部にとどまり、結局コスト高がアメリカを襲うことになる。

「消費のほとんどはサービスだ」というが、それは経済をわかっていない。20%のセクターが大きく沈めば、全体も沈む。さらに、サービスセクターというのは、要はエンターテイメントが大半だから、懐が厳しくなれば、いちばんシュリンクするセクターだ。実際、高級ブランドの消費は、中国だけでなく、アメリカでも激減している。さらに『PBSNewshour』のような番組ですら、「節約ブームの裏側」(What’s behind a thrifting boom among American shoppers)というエピソードを放映している。世界もアメリカも、バブルブームは終焉したのだ。

日本企業と日本経済の利害が一致しなくなってきた

以上の4つの理由にもう1つ加えると、日本経済が分断というより、分裂してきたことがあげられる。日本企業と日本経済の利害が一致しなくなってきたのだ。

例えば、日本経済新聞電子版(7月7日付)にある、日本製鉄・橋本英二会長のインタビュー記事などがその証左だ。

橋本会長は私が尊敬する数少ない経営者であるが、しかし、彼のヴィジョンは実現しないだろう。なぜなら、中国を封じ込めることは不可能だからだ。そして、中国も必ず品質を上げてくる。

中国を敵視しようがしまいが、中国抜きでは、製造業も、今後はハイテク産業も、世界は成り立たない。それにもかかわらず、中国に入られないように、先にインドなどを押さえ、アメリカ、日本と押さえて、世界を制覇するというのは、世界一に日本製鉄はなれるかもしれないが、中国をつぶすことはできず、日本製鉄に肉薄して追いかけるライバルとなるだろう。

そうなったとき、日本製鉄の主要な市場はアメリカで、その次に日本となるだろう。

しかし、アメリカの市場では、同国政府がUSスチールの黄金株を握り、日本製鉄はさまざまな約束をしている。日本製鉄が生き残りを図ったとき、日本市場や日本のほかのメーカーはもちろん、日本経済よりもアメリカを優先させることになるだろう。日本製鉄のライバルは、ほかの日系製鉄会社となるだろう。橋本会長のヴィジョンが実現したとしても、状況は同じだ。つまり、日本経済と日本製鉄の利害は、現時点ですでに一致していないことが明白なのだ。

それにもかかわらず、石破政権は、日本製鉄のUSスチール買収を日本の国益だと思って行動してきた。残念ながらそうではないのだ。そして、それは石破総理が悪いのでも、橋本会長が悪いのでもない。日本政府と日本製鉄との利害が一致しないだけのことだ。日本政府や日本経済と日本の個々の企業の利害が一致することは、現代では難しくなっているだけのことだ。

トヨタ自動車も多かれ少なかれ同じだろう。日本市場とアメリカ市場でどちらが重要かはっきりしている。ただ、生産拠点や本拠地の社会をどう考えるか、トヨタと日本製鉄は違うだけのことだ。武田薬品工業はすでに国籍不明の企業になってしまった。グローバル企業ではなく、どこに軸があるかわからない企業になってしまったのだ。

今後、そのような企業ばかりになっていくだろう。そのとき、政治にリーダーシップがないどころか、全員が有権者の御用聞きになっている現状で、上述の【理由1】の点で述べた、政治の混乱、いかなるリーダーシップも不在のアナーキー政権が成立してしまったときに、財政破綻が起きると、もはや「日本は終わり」となってしまうのである。

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