【中島 茂信】備蓄米放出への疑問…日本人の大半が知らない「令和のコメ騒動」真の原因、「衝撃データ」を公開する

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令和の米騒動 食糧問題

【中島 茂信】備蓄米放出への疑問…日本人の大半が知らない「令和のコメ騒動」真の原因、「衝撃データ」を公開する

米不足が続けば外米輸入となり、安い海外米に日本米は太刀打ちできなくなり、農家の廃業が起こり日本は米の自給が出来なくなる。

小泉進次郎農林水産大臣が備蓄米を放出している。前農林大臣が出したものも含め、数字上は80万トンもの備蓄米が放出されたようだ。5キロ2000円の備蓄米で市場をジャブジャブすると豪語する「小泉劇場」は熱烈大歓迎。けれど、疑問を呈する人物がいる。元農林水産大臣の山田正彦だ。表参道など全国各地でトラクターデモを行なった「令和の百姓一揆」の発起人・山田が示したデータからは、「令和のコメ騒動」の真の原因と自公政権の失策が見えてきた。

 

「令和のコメ騒動」の要因が一目瞭然

自身が作成した資料『日本の食料自給率を達成するために』をめくりながら、元農林水産大臣で弁護士の山田正彦は語り始めた。

4ページ目を開いた瞬間、太文字のタイトルとグラフが目に飛び込んできた。農林水産省統計から山田が作成したグラフだ。青字が主食用米の生産量、赤字が消費量を記している。

「このグラフを見れば、『令和のコメ騒動』が起こった要因がひと目でわかります」

タイトルにもあるように、『4年前(2021年)からコメの消費量が生産量を上回る』ことが明らかなグラフだった。グラフには各年の数字が書かれていないが、4年間の生産量と消費量は以下の通り。

2020(令和2)年の生産量は約723 万トン、消費量は約714 万トン

2021(令和3)年の生産量は約701 万トン、消費量は約702 万トン

2022(令和4)年の生産量は約670万トン、消費量は約 691万トン

2023(令和5)年の生産量は約661万トン、消費量は約705万トン

2020年の時点では、生産量のほうが消費量よりも圧倒的に多かった。ところが、2021年には生産量と消費量がほぼ拮抗する。翌2022年には消費量が生産量を上回り、2023年になるとその差はより顕著になり、約44万トンの開きが出てしまった。

減反を続けた政府の責任

コメ不足の兆候は、2021年の時点で既にあったことをこのグラフが如実に示している。

「このことを大半の日本人が知らないのではないでしょうか」

前兆があったにもかかわらず、政府は減反を続けた。

「減反すべきではなかったのに、減反させてきた政府の責任でコメ不足になった。『令和のコメ騒動』は、政府の失政で起こったと断言できます」

2024年夏頃、コメ売場からコメが消えた。あの光景を忘れられる日本人はいないはずだ。にもかかわらず、政府は「コメは余っている」としらを切り続けた。「9月に新米が出れば、コメ不足は解消する」と主張し、備蓄米の放出を拒んだ。

重い腰をあげたのは、コメ不足になってからほぼ半年後。2025年2月に備蓄米の放出を決定する。

「農林水産省は、コメの生産量と消費量をひとつにしたグラフを作っていないのだろうか」

素朴な疑問を抱いた山田は、このグラフを2025年6月に作成した。

米の供給量のカラクリ

実際、農林水産省にはこのようなデータがないのだろうか。

「存在するはずですが、見せないようにしていたのかもしれません」

東京大学大学院特任教授の鈴木宣弘は続ける。

「私も2021年の段階でコメの消費量が生産量を上回っていたことをデータで確認していませんでした。生産量と消費量を単体で比べることはまずありません。なぜなら、ある年の供給量は、その年の生産量と、10月末時点の在庫量を足した『総供給量』で示すからです」

鈴木は、鞄から『コメ生産量、需要量、10月末在庫の推移』と題するデータを取り出した。

同データにある2019年から2023年の総供給量と需要量を比べると、総供給量に十分余裕があったことがわかる。令和のコメ騒動が起こった2024年でさえ、まだ若干2万トンの余裕があった。

「在庫がたくさんある場合、農林水産省は生産を減らして供給量をしぼります。在庫を減らさないと過剰在庫を抱えることになるからです」

次に2019年から2023年の生産量と10月末在庫を見てみよう。年々徐々に生産量が減っている。10月末在庫はどうか。2022年と2023年はそこそこあったが、2024年の10月末在庫は50万トンを切った。

2023年以降、10月末在庫が減少しているのは、「減り続ける生産量を補うために在庫を食いつぶしてきた結果だ」と鈴木は説く。

6年連続で生産量が減り続けたワケ

では、なぜ2019年から6年連続で生産量が減り続けたのか。農民連ふるさとネットワーク(以下、農民連)の湯川喜朗によれば、2020年のコロナ感染拡大に伴う行動制限で、「コメの過剰在庫が生まれたからだ」というのである。

どういうことか、順を追って説明してもらった。

「2020年はコメ在庫がジャブジャブで、翌2021年は米価が大暴落する見通しでした」

農民連は、2020年の段階で当時の安倍内閣に「過剰在庫を備蓄米として買い入れてほしい」と要請したが、拒否された。

結果、過剰在庫で米価が暴落。2021年産米の概算金は、60キロ7000円台にまで落ち込んだ農協もあるという。

「米価維持のために政府は、2021年と2022年の2年間で50万トン以上の減産を農家に押しつけました。『米価が下がって困るのは農家だ、だったら減産しろ』ということでした」

農林水産省は、2020年10月16日、2021年産の主食用米の需給見通しを公表した。その翌日、日経新聞が掲載した記事を抜粋する。

需給安定のための妥当な生産量は679万トンと20年産の収穫見通しより56万トン(8%)少なく、改正食糧法が施行された04年以降では前年比で最大の減少幅を提示した。

生産量は人為的に減らされた

改めて鈴木が示した『コメ生産量、需要量、10月末在庫の推移』を見てほしい。

生産量は「減った」のではない。人為的に「減らされた」のだ。政府の手で。需給安定のために減産を押しつけた結果、10月末在庫が2022年以降減少している。コロナがあけていくにつれ需要が増え、鈴木が指摘するように「在庫を食いつぶし」ていった。

コロナ禍で米価が暴落したにもかかわらず、政府は余剰米を買い取ろうとせず、「需給安定のため」に56万トンの減産を行なった。それらがコメ不足と米価高騰の引き金になった。

元農林水産大臣で弁護士の山田がいうように、令和のコメ騒動は政府の失策以外なにものでもない。湯川の試算によれば、2025年の生産量は679万トン、10月末在庫は23万トンになる。2026年は生産量も10月末在庫も増える見込みだが、今年2025年をどう凌ぐか、凌げるのか。

減った備蓄米は補充できるのか

現在、小泉進次郎農林大臣が備蓄米の放出を行なっている。前農林大臣が放出した分も含め2025年7月現在、報道に従えば80万トンの備蓄米が放出されるようだ。政府は備蓄米を100万トン保管しているとされるので、残りは10万トンから20万トン。減った備蓄米を補充しなければならないが、できるのだろうか。湯川に答えてもらおう。

「政府は、毎年1月に備蓄米の入札を行なっています。今年は1月の時点で入札を4月頃に延期。その後の5月の記者会見で、延期ではなく当面中止にしました。需給状況に変化がない限り、中止するそうです」

コメ不足と米価高騰のなかで入札を行なったとしてもコメが集まる保証もなければ、政府がいくらでコメを買えるのか未定のため、入札を当面中止したと考えられる。

「生産量を増やさせ、余剰分を備蓄米に当てない限り国産米で100万トンの備蓄米を復活させることは不可能。ミニマム・アクセス米(無税または低い関税で輸入できるコメ)であれ何であれ、外米で補うしかないはずです」

政府としてまだ明言していないが、備蓄米だけでなく、主食用米にも外米を増やしていこうとしているようだ。

2024年には77万トンのミニマム・アクセス米が入ってきており、アメリカから34.6万トンが輸入された。「危惧していることがある」と元農林水産大臣の山田が話してくれた。

「私が農林水産大臣在任中もその前もその後も、アメリカ米の輸入だけは阻止してきた。絶対に入れさせないと自民党とも話をしてきたし、輸入しない政策を自民党が続けてくれるものだと思ってきました。でも、小泉農林水産大臣は入れそうな気がしてなりません」

5キロ2000円の備蓄米など論外

鈴木も小泉農林水産大臣の動向を注目している。

「生産が回復するような政策を打てばいいのにやろうとしません。トランプ関税で国産車を守るためにコメを生贄にせざるを得ないストーリーをつくりあげているのではないでしょうか」

5キロ2000円の備蓄米など論外だと鈴木は語る。

「備蓄米でジャブジャブにするといっていますが、輸送費などを国費でまかない、備蓄米の価格を無理やり下げた気がしてなりません」

「小泉劇場」を観ていると市場を備蓄米でジャブジャブにしようとしているようだが、湯川の試算によれば、前農林水産大臣が放出した分も含め、業者に売られた備蓄米は80万トンどころか、62万トン程度。

小泉農林水産大臣が放出した備蓄米(随意契約米)に限っていえば、まだ30万トン程度。その販売実績はというと、農林水産省が2025年6月30日に更新したデータによれば、小売事業者(通信販売を含む)にはわずか3万1943トンしか出回っていない。

備蓄米放出を手放しで評価する前に

「備蓄米を80万トン放出する」だとか、「備蓄米を5キロ2000円で販売する」だとか、威勢のいい発言と数字だけがひとり歩きをし、小泉農林水産大臣の株価が上昇している。けれど、よく考えてほしいと湯川は語尾を強めた。

「元を正せば、自公政権の減産押付けがコメ不足と米価高騰を招きました。100%政府の責任です。このことを国民は再認識すべきです」

最後に山田に質問した。今後、もしアメリカ米がなだれ込んだら日本はどうなるか。

「大豆と小麦のようになります。コメを作りたくても作れなくなる。日本のコメの方が高い。安いアメリカ米を買えばいいという風潮になります」

農家の平均年齢は約70歳。あと5年コメを作り続けられるかどうかの瀬戸際。消費者の我々からすれば、これからも国産米を食べられるかどうかの土壇場だといえる。

貴方は、日本のコメと農家を守りたいかどうか。それがいま、問われている。

(文中は敬称略)

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