アメリカの子どもの死亡リスクは、他の先進国の子どもより80%高いことを報告した米国医師会雑誌の論文
心も体も病んでいるアメリカの子どもたち
JAMA (米国医師会雑誌)に掲載された論文により、アメリカの子どもたちの、あまりにも不健康な状態が明確になったことが伝えられています。
調査は、2007年から 2023年までの傾向を示したものですが、この間に、アメリカの子どもたちの健康状態は大幅に悪化しており、数値だけの要約で書きますと、現在は以下のようになっています。
JAMA に掲載された論文にある数値
・アメリカの乳児は 1歳の誕生日を迎える前に死亡する可能性が他の先進国より約 80%高い
・1歳から 19歳までの子どもでは、子どもの死亡原因の第一位が「銃器」による負傷
・3~ 17歳の子どもで、少なくとも 1つの慢性疾患を抱える割合は約 46% (要するにほぼ半分の子どもが何らかの慢性疾患を抱えている)
・子どものうつ病の大幅な増加。高校生の約 40%が、持続的な悲しみや絶望感を訴えている。
・5人に 1人の子どもが肥満に悩まされている。
・7人に 1人の女子は 12歳未満で初潮を迎えている。
ちなみに、ここに「 7人に 1人の女子は 12歳未満で初潮を迎えている」という項目がありますが、これの何が問題なのかというと、
「初潮が通常より早く始まった場合、その子たちに、後のガンや心血管疾患、糖尿病、自己免疫疾患などのリスクが著しく高くなる」
ということが研究でわかっているのです。これについては、以下の記事で書いています。
・アメリカの大規模研究で「女の子たちの初潮開始が以前よりずっと早くなっている」ことが見出される
In Deep 2024年6月3日
ともかく、現在のアメリカの子どもの死亡率は、他の先進国(18カ国が対象)と比較すると、80%高いことが判明したという研究でした。かなり大きな数字です。
ご紹介する米エポックタイムズは、その理由として、不健康な食事や、スマートフォンやソーシャルメディアの使用の頻度が上がったこと、そして、経済格差などを上げていますが、
「それは他の国でも同じ」
ということがあります。
不健康な食事は、日本の若者ではスタンダードですし、スマートフォンやソーシャルメディアの使用の頻度に関しては、主要国はどの国でも同じように以前と比べて大幅に使用時間が拡大しています。
経済格差というのは、まあ、よくわからないですが、しかし、それが、アメリカの子どもの死亡率が他の先進国より 80%以上高いという理由付けとなるかどうかは不明です。
実際には、アメリカの子どもたちが他の国と比較して「ダントツに多く受けているある医療的予防措置」が関係しているとは思うのですが、話が複雑になりますので、ここではふれません。
アメリカ人の子どもの心身共に不健康ぶりがよくわかる研究について、エポックタイムズ紙の記事をご紹介します。
アメリカの子どもの死亡リスクは、他の先進国の子どもより80%高い
US Children Face 80 Percent Higher Risk of Death Than Peers in Wealthy Nations
Epoch Times 2025/07/17
アメリカでは、肥満、慢性疾患、精神衛生問題の増加により、1日あたり54人、乳幼児の死亡が増加している。
アメリカの子どもの死亡率は他の裕福な国々をはるかに上回っており、新たな研究によれば、アメリカの乳児は 1歳の誕生日を迎える前に死亡する可能性が他の先進国より約 80%高く、子どもの死亡率は他の 18カ国の同年代の子どもより全体的に 80%も高いことがわかった。
JAMA 誌 (米国医師会雑誌)に掲載された調査結果は、アメリカの小児の健康状態について憂慮すべき実態を浮き彫りにしている。
健康危機の範囲
2007年から 2023年までの健康傾向を調査したこの包括的な研究は、アメリカが他の裕福な国の死亡率に匹敵した場合に予想される数と比較して、アメリカでは毎日 54人も多く子どもの死亡が発生していることを明らかにした。
乳児の場合、早産と乳幼児突然死症候群が死亡率の上昇につながっている。1歳から 19歳までの子どもでは、銃器による負傷や自動車事故による死亡率が他の先進国をはるかに上回っており、現在、銃器はアメリカの子どもの死亡原因の第一位を占めている。
この危機は死亡率だけにとどまらない。国の死亡統計や大規模な健康調査など、8つの主要なデータソースを分析したこの研究では、測定されたすべてのカテゴリーにおいて、アメリカでは健康状態が悪化していることが明らかになった。
慢性疾患は急増しており、2023年の子どもが慢性疾患を患う可能性は、2011年の子どもと比較して 15~ 20%高くなっている。3~ 17歳の子どものうち、少なくとも 1つの慢性疾患を抱える割合は約 26%から 46%に上昇し、約 20ポイントの増加となった。
肥満の蔓延も深刻化している。現在、5人に 1人の子どもが肥満に悩まされており、7人に 1人の女子は 12歳未満で初潮を迎えている。
睡眠不足、慢性的な痛み、活動制限など、少なくとも 1つの身体症状を経験している 5歳から 17歳までの子どもの割合は、20%から 30%に増加している。
アメリカの子どもたちのメンタルヘルスは急激に悪化している。うつ病の症状は驚くべき速さで増加しており、2023年までに高校生の約 40%が、持続的な悲しみや絶望感を訴えている。
アメリカの健康状態の衰退の原因は何なのか
単一の健康問題に焦点を当てたこれまでの研究とは異なり、この研究の包括的なアプローチは、複数の要因がどのように収束して小児の健康上の緊急事態を引き起こしているかを明らかにしている。
他の高所得国と比べて医療費をほぼ 2倍支出しているにもかかわらず、アメリカは依然として健康状態が悪化している。この調査に付随する論説では、アメリカ人は他の裕福な国に比べて長らく健康状態が悪く、以前は主に成人に見られていたものの、現在では小児にも広がっていると指摘されている。
アメリカの早産率は、糖尿病や妊娠前高血圧などの母親の慢性疾患、不健康な体重、喫煙、アルコールや薬物の乱用により、史上最高値に達している。
アメリカ人成人の 93%は代謝的に不健康であり、慢性疾患の蔓延と代謝の不健康を反映している。アメリカでは毎年、妊婦の 10人に 1人から 20人に 1人が妊娠糖尿病を発症しており、スクリーニング方法にもよるが、アメリカとカナダではヨーロッパと比較して有病率が高くなっている。
また、アメリカは慢性疾患の負担が最も高く、肥満率は経済協力開発機構(OECD)平均のほぼ 2倍となっている。
スマートフォンやソーシャルメディアの使用が増えると、睡眠パターンが乱れ、身体活動が減少し、孤独、うつ病、肥満につながる連鎖反応が生じる。
研究者たちは、この研究では結果を社会経済的地位、人種、民族性で分類していないものの、これらの格差が重要な要因である可能性が高いと指摘している。JAMA誌の論説では、「米国は OECD 加盟国の中で子どもの貧困率と所得格差が最も高い国の一つである」と指摘しており、貧困は家族が肥満を助長する安価で高カロリーな食品や、事故リスクを高める古い車に頼ることにつながると付け加えている。
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