移民の強制送還の影響で、アメリカの農場では著しい労働力不足がすでに発生しており、最大で作物の70%が失われる見込み

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アンリかの放置された農場 アメリカ

移民の強制送還の影響で、アメリカの農場では著しい労働力不足がすでに発生しており、最大で作物の70%が失われる見込み

移民当局が今のようなやり方を続ければ、農場だけでなく、建設業や造園業にも影響が出ると思われます

労働力不足の懸念が現実に

アメリカの現政権の政策により、移民関税執行局 (ICE)による不法移民の強制捜査や強制送還が積極的に進められている中で、

「アメリカの農場で働いている人の大部分が移民たち」

であることから(農場労働者の約 70%が移民)、作物の収穫に大きな影響が出る可能性について、1カ月ほど前に、以下の記事で取り上げました。

アメリカで不法移民の農業労働者がいなくなることで、畑の作物が腐り続けている
地球の記録 2025年7月9日

 

 

今、それが現実となってきていまして、アメリカの各地で、

「農作物が収穫しきれずに農場で腐っていっている」

という事態が起きていることが報じられています。

日本もそうですが、今の一般的なアメリカ人は、農業に従事するのを好まない人が多く、移民が排除された状態で以前と同じような労働量を確保することは大変なことのようです。

そして、今後さまざまな作物において収穫期に入っていった際に、どのようなことになるのかという懸念が生じているようです。アメリカでは、農業だけではなく、かなりの部分の労働力(造園業や建設業など)が移民によって成り立っていたという現実があり、先行きは難しそうです。

最終的に、アメリカ自身の食料供給や食料価格などにも影響を与えると考えられます。

オレゴン州の状況について、CNN がレポートしています。

 


強制送還の影響:農家によっては労働力の半分を失い、今度は作物も失っている

Deportation fallout: This farmer lost half his workforce. Now he’s losing his crop too
CNN 2025/08/07


多くの農家は季節労働者に宿泊施設を提供しているが、しかし、そのような小屋は今年は空室が続いている。

イアン・チャンドラー氏の果樹園では、木々のサクランボが腐りかけている。オレゴン州の農家が「ミイラ化した」と呼ぶ、黒ずんで縮れ、食欲をそそらないサクランボが、枝々に重く垂れ下がっている。

これらのサクランボは、本来なら市場や店で買い物客を誘惑するために数週間前に収穫されるべきだった、もしくは、シャーリー・テンプルのモクテルの飾りとして、光沢がありふっくらとして、ほとばしる甘さを期待させるように加工されるべきだった作物たちだ。

 

チャンドラー氏の 125エーカーの桜の木のほぼ 4分の1が収穫の損失に見舞われたが、これは悪天候や病気や疫病のせいではなく、単に果実を摘む人がいなかったためだ。


チャンドラー氏の木に実った、摘み取られていないチェリー。
25万ドル (約3700万円)以上の収入減になると見積もっている。

チャンドラー氏は、ポートランドから約 90分のワスコ郡にあるCEファーム・マネジメントという農場で、忠実な季節労働者を育ててきたと語った。

毎年同じ人々が来てくれて、出産のお知らせやクリスマスカードで連絡を取り合っているという。しかし今年はその半数が来ず、近隣住民の多くも収穫作業員を急いで探しているという。チャンドラー氏によると、結局、25万ドル から 30万ドル (約 4400万円)の収入が木々の上で腐っていくことになるという。

「運営側の収入が減るのは当然ですが、もし(労働者が)ここにいたら収穫できたはずの労働者の収入も減ることになります」と彼は語った。

「残念なことに、シーズンの初めは、私たちの労働力の出身地である南カリフォルニアで非常に厳しい移民取り締まりが行われていた時期と重なり、移住を希望する人々に萎縮効果をもたらしました」

チャンドラー氏が雇っていた収穫作業員たちは、西部と北西部の収穫期に同行するラテン系がほとんどだ。しかし、移民関税執行局(ICE)による都市や職場への強制捜査、拘留、さらには国外追放によって、犯罪歴のない多くの人々が捕らえられたため、今年は労働力が劇的に減少したという。

 

作物が収穫に向けて熟すにつれ、この状況はアメリカ全土で繰り返されている。アメリカ農務省の推定によると、雇用されている農作物労働者の 42%は就労許可のない不法移民だ。さらに 26%は、市民権または永住権を取得した移民だ。

労働統計局によると、4月以降、140万人が米国の労働力から離脱しており、そのうち 80万2000人が外国生まれだ。農業労働者は公式の月次雇用統計には含まれていないが、アナリストたちは移民政策が全国的に影響を及ぼしているという点で一致している。

この問題はドナルド・トランプ大統領の関心を集めており、大統領は火曜日(8月5日)の朝、CNBC との電話インタビューで農業部門への支援を約束した。

「私は農家のことを気にかけている。農家を愛している。彼らはこの国にとって非常に重要な存在であり、農家を傷つけるようなことは決してしたくない」とトランプ大統領は述べた。

ヴァンス副大統領は、望ましい解決策は機械による自動化だと述べているが、しかし、チャンドラー氏の農場は機械化していない。チェリーは手摘みで収穫するのが一番だと考えているからだ。

できれば、来年の収穫のためにすでに芽が出ているチェリーを摘み取らないよう、経験豊富な手摘みが望ましい。

地元でも雇用しているが、オレゴン州民は、夏休みの学生であれ、フルタイムの仕事を探している大人であれ、収穫以外の仕事、例えばバケツに入った農産物の検査やトラクターの運転といった仕事にしか就けないと彼は言う。

「私は 90年代、高校生の頃、チェリー業界で働いていました。そして 2011年にこの業界に戻り、現在に至ります。アメリカ生まれで、すでにこの仕事をしていて、この業界で働きたいと思っている移民の子どもでない限り、(この業界には)普通にアメリカで生まれた人たちはいないんです」と彼は言った。「そもそも存在しないんです」

しかしながら、チャンドラー氏に雇われた人は全員身分証明書と労働許可証を提示するので、誰が不法入国しているかはチャンドラー氏には分からない。

「私たちはこれらの労働者と長年良好な関係を築いてきました」と彼は言った。

「家族と話し、良好な関係を築き、彼らがさらに家族を紹介してくれる。そうやって労働力を構築してきました」

 

「安全のために」家にいる

今年オレゴン州の農場に行かなかった一人は、私たちに「リサ」と呼んでほしいと言ってくれた女性だ。彼女は DACA (若年移民に対する国外強制退去の延期措置)プログラムを通じて就労許可を得ているが、 DACA 更新に支障が出ることを恐れて、実名を伏せている。

彼女の 3人の幼い子どもたちは全員アメリカ市民だが、何十年も不法労働者としてアメリカで暮らしている母と継父のことを心配しており、(オレゴン州に行かず)カリフォルニアに留まっている。

「両親は農業の季節労働者なので、毎年夏にはオレゴン州へ出稼ぎに行って、チェリーの季節になると働きに行っていました」と彼女は言い、子どもたちも一緒によく一緒に出かけていたと付け加えた。「でも今年は、安全のために(出稼ぎに行かず)家にいることにしました」

チャンドラー氏は、自身と従業員が今シーズンに被る経済的損失を指摘した一方、リサ氏はチャンドラー氏のような小規模農家への影響を強調した。そして両者とも、連邦政府も損失を被るだろうと述べた。

 

「私たちが辞めたら、誰がその仕事をするんですか?」

オレゴン州の農地では、農家と経営者たちが士気維持に奮闘している。チャンドラー氏は陸軍歩兵将校として 6年間の勤務経験を活かし、かつてイラクで部隊を鼓舞したように、労働者たちの士気を高めようと努めている。

近くのベリー農園では、作業班の監督者マヌエル・ナバ氏が、収穫作業員チームが、果物 1コンテナにつき得られる報酬(収穫したブルーベリー 1バケツにつき約 5ドル)を欲しがっているが、同時に彼ら(労働移民)は尊重されるべきだとも感じていると語った。

「気温が 80度、85度 (摂氏 30℃前後)なのに、太陽の下でどれだけ一生懸命働いているか見てみてほしいです…もし彼らがこの仕事を辞めたら、誰が仕事をするんですか? これは大きな議論です。大変な仕事ですから」

ナバ氏は、こうした移民の取り締まりには幅広い影響があり、農業以外にも波及するだろうと警告している。ナバ氏の従業員の多くは、収穫のシーズンが終わると、クリスマスリース作りなど、様々な産業へと移動する。

「移民当局が今のようなやり方を続ければ、農場だけでなく、建設業や造園業にも影響が出ると思われます」と彼は語った。

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