AIやSNSの自殺念慮の理由が多すぎるこの世の中で「インターネット・アクセスが突然この世から消えたらどうなる?」と考える最近
インターネットにアクセスできなくなったら情報のない砂漠に放り込まれたも同然の状態になる。頼りはテレビと新聞・ラジオだけ?いきなり、昭和20年代に引き戻される。
インターネットが突然消え去った日
先日、米メディア PC MAG で、2022年に海底火山の噴火により、インターネットケーブルが「完全に切断された」トンガのそのときの様子が述べられている記事を読みました。
「火山噴火でこの国の脆弱なインターネットケーブルが切断され、生活は1880年に逆戻りした」というタイトルの記事で、以下のように始まります。
PC MAG の記事より
オーストラリア東方の小さな島国トンガは、瞬く間に停電とインターネット接続の喪失に見舞われた。噴火は2022年のパンデミックの最中に発生したため、航空便はすでに運休状態だった。
トンガは公式に孤立無援の状態となり、外界との物理的・デジタル的な接続は途絶え、助けを求める手段も失った。海中では、ケーブルの中央部分が海に流され、切断された両端は深淵で翻弄されていた。
結構間長い記事なんですけれど、その後どうなったかというと、以下のようにありました。
PC MAG の記事より
「当初トンガは、ブロードバンドインターネットが普及する前の 1980年代のような状況に逆戻りするのではないかと考えていました」
今週発売された新著『波の下のウェブ』でその全容を語るサマンサ・スブラマニアン氏はこう語る。
「しかし、実際には(1980年代どころか)彼らは 1880年代、トンガに初めて電信線を敷設した頃に戻ったようです。船で訪れる訪問者をたまに受け入れる程度だった頃です。」
住民たちは、昔に遡り、銀行取引には紙の記録管理(クレジットカードなし)に頼り、戸別訪問で互いに話し合い、自らの食料を育てていた。
庭のホースほどの太さの海底ケーブルは、海底を蛇行しながら伸びており、推定値にもよるが、インターネット・トラフィックの 95%から 99%を輸送している。
インターネットで繋がれた世界のほぼあらゆる側面を支えており、その重要性はますます高まっている。
「過去 10年間で、インターネットは私たちの生活の中心になりました」とスブラマニアン氏は言う。
「今では、私たちの生活にはケーブルが欠かせないものが多く、インターネットが遮断されれば大惨事になるでしょう」
噴火後の最初の数日間は、トンガの住民約 10万人にとって最も困難な時期だった。電話もメッセージも一切できず、死者数の確認に苦労した。
「最初の 48時間は大混乱でした」
スブラマニアン氏は、住民たちが蒸し暑い天候の中、戸別訪問をして互いの様子を確認したと語った。
「一番の不安はインターネットが使えるかどうかではなく、皆が生きているかどうかでした。ある政府関係者は、この時のことを私に話しながら、涙をこらえきれませんでした」
食料の購入にクレジットカードは使えなくなり、ATM も機能しなくなったため手持ちの現金も底をつきた。政府はトンガのメインストリートに食料配給所を集中的に設置した。
そこで人々は、何を買ったかを手書きで記録し、信用で品物を「購入」していた。
ババウ島の人々を含め、農村部に住む人々は自らの食糧を栽培し続けており、これは中央集権的で近代的なシステムへの依存度が低い人々がいかにして最も回復力があったかを示す一例だ。
このトンガのインターネット・アクセスは、イーロン・マスク氏から提供された Starlink インターネット端末により、公共施設などでは復活しましたが、海底火山よる海底ケーブルの損傷が完全に復旧したのは、1年4カ月後でした。
この間、トンガの人々は、少なくとも個人の家でのインターネット利用はできない状態が続いていたようです。
この記事そのものは、「現代社会でインターネット接続が突然遮断されることへの脅威」を書いたものですが、私などは、
「たまには、こういうのを経験するのもいいのかもなあ」
などと思ってしまった次第です。
トンガは、他の国と比較すると、もともとインターネット利用やスマートフォンの普及率も高いほうではなく、データでは、2025年時点では以下のようになっています。
> 2025年の初めの時点でトンガでは 6万8千人がインターネットを利用しており、オンライン普及率は 58.5%だった。
このように、インターネット普及率が高い国ではないですが(日本における個人のインターネット利用率は 85%)、それでも、インターネット遮断時には一時的に大きな影響を受けたようです。
なお、トンガのスマートフォン接続率は、総人口の 89.0%に相当するとありますので、携帯の普及率は高いようです(音声通話が多いと見られる)。
このトンガの話は、何だか唐突だったかもしれませんが、最近、以下のようなふたつの記事を書いていて、「インターネットが個人に悪い影響を与える部分のほうが目立ってきている気がする」と最近、つくづく思うからです。
・毎週50万人以上のチャット型AIユーザーが精神病と自殺念慮の兆候を示しているという報道。そこから思い出す「AIと悪霊」の類似性
In Deep 2025年11月2日
・3歳以下でスマートフォンを所有すると、後に「自殺願望、攻撃性、幻覚」などを含む若年成人時の精神衛生状態の極端な悪化と結びつくことが10万人を対象にした研究で判明
In Deep 2025年7月28日
リンクした記事の下のほうのスマートフォンというのは、スマートフォンそのものというより、主にソーシャルネットに関係したものです。
リンクの上の記事は、OpenAI 社の AI である CgatGPT に関してのものですが、最近、
「 OpenAI 社に対して、AI が身内等を自殺に誘導したとして、7人から訴訟を起こされている」
ということが明らかになっています。
以下のような出来事です。
OpenAI、ChatGPTがユーザを自殺に導いたとして7件の訴訟を起こされる
OpenAI Hit With 7 Lawsuits Alleging ChatGPT Coached Users to Suicide
Epoch Times 2025/11/07
訴訟の一部は、自殺する直前にChatGPTと長時間の会話を交わしていた4人のユーザーを代表して起こされた。
ChatGPT の開発元 OpenAI 社とその創設者サム・アルトマン氏は、AI チャットボットが心理的に操作的で、複数の人を自殺に追い込んだとして 7件の訴訟に直面している。
11月6日にサンフランシスコとロサンゼルスの州裁判所に提起された訴訟では、OpenAI 社が GPT-4o (ChatGPTの新しいモデル)を急いで市場に投入し、感情的に有害な会話からユーザーを保護するための安全対策とプロトコルを適切に導入しなかったと主張している 。
訴訟によると、この AI チャットボットは、人間のような共感的な応答といった没入型機能を通じて最大限のエンゲージメントを実現するように設計されており、ユーザーのメンタルヘルスの悩みを悪用していたとされている。訴状には、不法死亡、自殺ほう助、そして複数の製造物責任、過失、消費者保護に関する請求が含まれている。
ソーシャルメディア被害者法律センターの創設弁護士であるマシュー・バーグマン氏は、ChatGPT によってツールと仲間の境界線が曖昧になっていると述べている。
バーグマン氏は以下のように述べた。
「 OpenAI 社は、年齢、性別、経歴を問わず、ユーザーの感情を揺さぶるように GPT-4o を設計し、ユーザーを保護するために必要な安全対策を講じずにリリースしました。彼らは、メンタルヘルスよりも市場支配を、人間の安全よりもエンゲージメント指標を、倫理的な設計よりも感情操作を優先したのです」
7件の訴訟は、自殺直前に ChatGPT と長時間のやり取りをしていた 4人のユーザーを代表して提起されたものだ。
被害者は、テキサス州在住のゼイン・シャンブリンさん(23歳)、ジョージア州在住のアマウリー・レイシーさん(17歳)、フロリダ州在住のジョシュア・エネキングさん(26歳)、オレゴン州在住のジョー・チェカンティさん(48歳)だ。
原告のジェイコブ・アーウィンさん(30歳)、ノースカロライナ州在住のハンナ・マッデンさん(32歳)、カナダのオンタリオ州在住のアラン・ブルックスさん(48歳)は、訴訟で名指しされた、精神的に有害なやり取りの被害者だ。
訴訟によると、ChatGPT は、感情的な危機の際にユーザーを専門家の助けを求めるよう導くのではなく、場合によっては、感情に訴える応答を通じてユーザーを運命的な決断に導く自殺コーチとして機能したとされている。
原告らは、GPT-4o の開発者が市場投入を急ぐあまり、Google の AI アシスタント Gemini のリリースに先んじて、数ヶ月に及ぶ重要な安全性テストを省略したと主張している。
OpenAI 社の GPT-4o は 2024年5月にリリースされたが、Gemini の複数のバージョンは昨年を通してリリースされている。
テック・ジャスティス法律プロジェクトのエグゼクティブディレクターであるミータリ・ジェインは以下のように述べた。
「 ChatGPT は、人間が現実を操作・歪曲するために開発した製品です。人間を模倣することで信頼を獲得し、どんな犠牲を払ってでもユーザーのエンゲージメントを維持しようとします」
「これらの事例は、AI 製品が感情的虐待を促進するように構築される可能性があることを示しています。これは人間が行うべき行為ではありません。」
OpenAI 社の広報担当者はエポックタイムズ紙の取材に対し、訴訟の詳細をより深く理解するために提出書類を検討中だと述べた。
「これは非常に悲痛な状況です」と OpenAI 社は書面による声明で述べた。「私たちは ChatGPT を訓練し、精神的または感情的な苦痛の兆候を認識して対応し、会話を落ち着かせ、人々を現実世界でのサポートへと誘導しています。私たちは、メンタルヘルスの臨床医と緊密に連携し、繊細な瞬間における ChatGPT の対応を強化し続けています」
さらに OpenAI 社は、地域特有の危機対応リソースやワンクリックホットラインへのアクセスを拡大し、デリケートな会話をより安全なモデルにルーティングし、長時間の会話におけるモデルの信頼性を向上させたと指摘した。また、ウェルビーイング (身体的・精神的・社会的に満たされた状態)と AI に関する評議会に専門家チームを編成した。
ここまでです。
先ほどリンクしました記事にもありますように、ChatGPT のユーザーだけで、毎週 50万人以上が精神病と自殺念慮の兆候を示しているという会社発表の現実がある中で、勝訴などに進んだ場合、次から次へと訴訟がなされる可能性もあります。
自死まで至らなくても、精神を破壊されたユーザーがかなり多いことを「AI精神病の津波が起きている」という記事で取り上げています。
アメリカはこういう場合の賠償額が桁違いに大きなケースもありますので、OpenAI 社の企業経営にもあまりいい話ではないですよね。
被害を受ける人たちの数の率は大きくはなく、ユーザーの 0.07%が深刻な精神的健康の緊急事態の兆候を示していると、OpenAI 社の CEO は述べていますが、何しろユーザー数が 8億人などと公表されていますので、小さな率でも、影響を受けた実数は数十万人などになってしまう。
しかし、
「自死の増加の原因はそれだけとは言えないよなあ」
とも、つくづく思います。これは、自死者全体の数が増えているという意味ではなく、特定の年齢層や、特定のユーザーなどの話です。
若者の自死の急増の中で
最近だけでも、自死について、日本と韓国だけでも以下のような報道をたくさん見かけることがありました。
・日本の2024年の10代から30代のすべての年齢層で「死因の第一位は自殺」
・2024年の日本の小中高生の自殺者数が529人で過去最多に
また、今年の夏には「子どものデジタル依存は自殺念慮リスクの上昇につながる」という研究論文をご紹介したこともありました。
もちろん、若い人には、アメリカなどでは薬物乱用の問題や、日本なら市販薬のオーバードーズなど、他の問題もあるでしょうけれど、しかし、どうも「インターネット絡みと見られる自死が多いような気がする」ことは事実です。
AI チャットにも、ソーシャルメディアにも、ユーザーに見られるのは「依存」であり、先ほどの論文を紹介していた記事には以下のようにありました。
「研究:子どものデジタル依存は自殺念慮リスクの上昇につながる」より
本研究の主任研究者であるユンユ・シャオ博士は、精神崩壊の予測因子は、使用時間ではなく中毒性にあると強調している。シャオ氏は、「こうした若者は自殺行為や自殺念慮を報告する可能性が著しく高い」と述べた。
ビデオゲームも同様の傾向を示した。41%の子どもが強い依存を示し、ソーシャルメディアは 3分の1の子どもを巻き込んでいる。これらのプラットフォームはスロットマシンを模倣するように設計されており、神経報酬系を悪用している。
その結果は悲惨だ。うつ病、不安、攻撃性、そして最も悲劇的なのは自殺だ。自殺は現在、プレティーンの死因の第5位となっている。
アメリカでは、プレティーン (10歳〜13歳くらい)の自死が死因の5位と書かれていますけれど、日本はプレティーンの死因の 1位が自死ですからね。
こういうことは、トンガのように、「国家全体で、比較的長期間インターネット接続が遮断される」みたいなことになって、それで数値が変動するなら、理由付けにもなりそうな気はします。
しかしまあ、実際には、日本のような高度で広範なネットワークが築かれている国では、一部の海底ケーブルの切断くらいで全国的なインターネットアクセスの遮断などは起こりようがないですけれども。
(その可能性があるとすれば、超巨大な太陽フレアによるコロナ質量放出の直撃か、EMP 攻撃を受けた時くらいですかね ← どちらでも、ほぼすべてのインターネット網が回復不能なダメージを受けます)
インターネットは 21世紀以降に急速に発達して、日本などの主要国の、特に若者には 100%必要な文明となっていますけれど、実際には、ほんの 30年前には「日常生活にはなかったもの」ですから。少なくとも、今のような実用性はほぼない時代でした(当時、私はインターネットをしていましたけれど、くだらない用途ばかりでしたよ)。
たった 30年とはいえ、世界の変わり方の激しさに感嘆するやら悲嘆するやら。
というような、やや雑談となってしまいました。





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