スペインで30年ぶりに発生したアフリカ豚熱(豚コレラ)の遺伝子解析の結果、研究室から漏洩したウイルスである可能性が浮上
ゲノム分析により、実験室からの漏洩の可能性が高まる
今年11月に、スペインで「30年ぶりにアフリカ豚熱(旧アフリカ豚コレラ)が発生した」という報道がありました。
これにより、大部分のスペイン産の豚肉や豚肉加工食品の輸出が停止されました。スペインは豚肉および関連製品の世界第 3位の生産国であり、毎年約 300万トンの豚肉および関連製品を 100カ国以上に輸出しているとされています。
2025年11月30日の報道より
スペインのカタルーニャ州で、 30年ぶりにアフリカ豚熱の発生が報告された。11月29日、同国の農業大臣は、経済的影響を軽減するため、豚肉輸出証明書の3分の1を凍結したと発表した。
AFP通信によると、アフリカ豚コレラは人間には無害だが、豚に対しては感染力が強く致命的であり、発生すればスペインの豚肉産業に深刻な損害を与える可能性がある。
日本も、スペインからの輸入は多く、農林水産省によると、2024年度のスペインからの豚肉の輸入量はおよそ 17万8000トンと国別で 3番目に多く、輸入量全体の18%を占めていますが、11月下旬から、スペイン産の豚肉の輸入は完全に停止されています。
日本の場合、特に問題となるのは、NHK の報道によると、生ハムなどの加工肉のようです。
このスペインでの 30年ぶりのアフリカ豚熱の発生が実験室からの漏洩が原因だった可能性があるとスペイン農業省が述べたことが報じられていまして、そうだとすると、なかなか厄介な話ですが、遺伝子分析により、この病原体がワクチン開発や実験研究で使用された株と「非常に類似」していることが確認されたとのことです。
アフリカ豚熱はあくまで動物同士だけの感染となるウイルスで、人間には感染しませんけれど、こういうウイルスの漏洩(かもしれない)出来事は、病原体が広がりやすい現在の冬期ですと、他にも出てこないとも限らないかもしれません。今は、世界中で機能獲得研究が拡大し続けています (参考記事)。
米ロイターの報道です。
スペイン当局、アフリカ豚熱の発生は実験室からの漏洩が原因かどうかを調査中
Spain probes whether swine fever outbreak was caused by lab leak
reuters.com 2025/12/06
スペイン農業省が最近のアフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)の発生は実験室からの漏洩が原因の可能性があると発表したことを受け、カタルーニャ州政府は、バルセロナ郊外の研究センターを調査すると発表した。
欧州連合(EU)最大の豚肉生産国であるスペインは、市郊外の丘陵地帯で 13頭のイノシシがウイルス検査で陽性反応を示したことを受け、貿易相手国に安心感を与えようとしている。この病気は人には無害だが、豚やイノシシにとっては致命的となる可能性がある。
スペイン農業省によると、マドリードの研究所によるゲノム配列解析の結果、この株は 2007年にジョージアで初めて検出され、現在研究やワクチン開発に広く使用されている株と「非常に類似」していることが判明した。欧州で発生した他の症例は、異なる遺伝子グループに属している。
「ジョージアで流行したものと類似したウイルスの発見は、その発生源が生物学的封じ込め研究施設にある可能性を排除するものではない」と農業省は述べた。
これまでカタルーニャ当局は、今回のスペインのウイルス発生は、汚染された豚肉が含まれる食物、おそらくトラック運転手が海外から持ち込んだサンドイッチを食べたことで広がったのではないかと疑っていた。
しかし、遺伝子解析からは、その可能性が排除された。
同省は「報告書は、ウイルスの起源が現在感染が発生しているいずれの国からの動物や動物製品でもない可能性があることを示唆している」と述べた。
声明では漏洩した可能性のある研究所名は明らかにされていない。
しかし、カタルーニャ州の農業担当トップ、オスカル・オルデイグ氏は、州政府が国費で運営する動物衛生研究センターに対する調査を開始すると述べた。
このセンターはバルセロナ自治大学に隣接しており、発生後に当局が設定した 6キロの隔離区域内にある。オルデイグ氏は、他の研究所も調査対象になる可能性があると述べた。
国際獣疫事務局は 2017年に動物衛生研究センターをアフリカ豚熱の研究センターに指定した。
研究所はコメント要請にすぐには応じなかったが、ニュース検証ウェブサイト Maldita.es に対して、同研究所が感染源であるという証拠は見つからなかったと語った。
経済協力開発機構(OECD)によると、アフリカ豚熱ウイルス「ジョージア2007」株はアルメニア、アゼルバイジャン、ロシア、ベラルーシに広がり、2014年には EU 東部諸国に到達した。
2018年に中国に到達し、甚大な被害をもたらした。中国の豚肉生産量は 2019年に 27%減少した。



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