「ナフサに頼りすぎていた」——中東情勢の余波が秋田・大館の事業者たちを変え始めている
ナフサ派生商品からの脱却を模索して行かないといけない時代
中東情勢の緊迫化に端を発したナフサ供給の停滞は、いま日本各地の中小企業の現場にじわじわと届いている。包装資材、塗料、接着剤、ラッピング用紙、薬のシート——石油化学を起点とする無数の「日用素材」が、3月以降、入荷の遅れと値上げの両方に見舞われている。
ただ、秋田県大館市で5社の経営者を訪ねて聞こえてきたのは、「困っている」という嘆きの声だけではなかった。むしろこの局面を、これまで当たり前にしてきた仕入れや包装、業界構造そのものを問い直す“きっかけ”として受け止めようとする、現場の前向きな思考のほうだった。
◆「皆さんに行き渡るために」——燃料商の供給責任
最初に話を聞いたのは、市内でガソリンスタンドを5店舗、隣接する小坂町に1店舗運営する株式会社工藤米治商店の田山洋平社長だ。LPガスや住宅設備も手がけ、冬場は灯油、現場には軽油と、地域のエネルギーを日常的に支える存在である。

8bitNews「【現場の声】中東情勢が直撃 市内企業で今、何が起きているのか」より
足りないのは、生活者向けのガソリンや灯油そのものではないという。「重油や工業用オイル、エンジンオイルといった潤滑油が、メーカーから『今ちょっと出せない』と言われている」。重油の主な行き先は工場と病院。「医療機関にはできる限り回してほしいという声もある。制限されている中で、お客さんは大勢いらっしゃるので、皆さんに行き渡るためにはどうするか、そこを考えながらやらなきゃいけない」。
潤沢ではない物資をどう公平に届けるか。発注を「絞って絞って」という日々の判断のなかに、地域インフラを担う事業者としての姿勢が滲む。直近ではホルムズ海峡からタンカーが出たというニュースもあり、「ある程度のいいニュースなのかな。これを起点に、当たり前のように単価が下がって、エネルギー供給が普段通りに戻ったらいい」と、慎重ながら平常への回帰に期待を寄せた。
◆「簡易包装でやるスタイル」——125年続く老舗の発想転換
創業1900年、125年の歴史を持つ和菓子店株式会社山田桂月堂の四代目・山田暦人店主が見せてくれたのは、お菓子を包む袋やケースだった。25円ほどだった包装資材が、メーカーから「今後30%以上値上げする可能性がある」と告げられたという。8

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他社に切り替えようと問い合わせれば、「不足しているので新規のお客様には出せません」という返事が返ってくる。八方塞がりに見える状況のなかで、山田さんは静かに視点をずらしてみせた。
「ちょっと考え方を変えて、こういう包装資材をなるべく使わないように、簡易包装でやるスタイルとかも考えていかなきゃいけないなと思っています」。
包装資材が3割上がっても、菓子の価格を3割上げることはできない。6月1日からの値上げも、200円の品で「270円とか、それくらいの1割の値上げぐらいしか、なかなかできない」。看板商品である人気のもなかも、贈答用ケースに入れて売る形が定番だが、「ここの包装資材が上がったら、そこも考えていかないといけない」。
125年、四代続いてきた店の歴史のなかで、「包む」という和菓子文化の前提そのものを見直すかもしれない局面が、いま訪れている。
◆「業界構造そのものをどう支えるか」——建設業のジレンマ
首都圏マンション向けに住宅用ドアを製造する株式会社フレックスの野村匠社長は、塗料・接着剤・PPバンド・ラップといった資材の発注が「一時的に停止させてください」と相次いで通告される状況に直面している。在庫で「6月末くらいまではなんとか持つかな」というぎりぎりのラインだ。

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価格の上昇幅は10〜45%。「30%上がっている、40%上がっているという話を、ほかの会社さんからもよく聞く」。
野村社長が指摘したのは、建設業特有の構造だった。
「材料屋さんは価格改定がそのまま反映される。でも建設業はスパンが長いので、今上がったものをすぐ反映できない。前の値段で飲んでね、でも入ってきた材料はもうすでに値段が上がっています、と。そこが結局、製造メーカーの方に押し付けられやすくなる業界構造なのかな」。
それでも、お客様への値上げ交渉は続けるという。「お客様からしても厳しいというのは理解しているので、我々の理論だけで、いたずらに値段を上げてくれなきゃ出しませんとは言えない」。
そのうえで野村社長は、視線を一段引き上げた。「個別の企業の努力でなんとかなりがたいところを、政府などに支援してもらえると助かるなと思います」。中小製造業が単体ではどうにもできない構造の歪みに、社会全体の議論で光を当ててほしい——という静かな提言である。
◆「ナフサに頼りすぎていた」——花屋からの素材論
3代目として地元で47〜50年続く花屋を営む有限会社アバフローリストの野田光平代表のもとには、ラッピング用紙、セロハン、リボン——花を「贈り物」として仕立てるための資材が、15〜20%値上がりしながら、しかも期限通りに届かないという状況が押し寄せている。

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野田さんは、もっとも示唆的な言葉のひとつを口にした。
「ナフサに頼りすぎていたところは、やっぱりどの業界でもあると思う。それに代わるものを、開発でもないけれども、そういう風にしていっていただけたら助かるなと思います」。
短期的には仕入れ値上昇分の補填がありがたい。けれど、もっと根本的には——と、野田さんはラッピング用紙を手にしながら続けた。「これに代わるもの。今回のきっかけに、別の素材で同じようなものを作れないかな、と」。
危機を「素材を見直す入口」として捉え直す視点。それは花を扱う仕事に長く向き合ってきたからこそ生まれる発想なのかもしれない。
◆「もしかしたらガラス瓶に戻るかも」——薬局現場の予測
最後に話を聞いた有限会社クローバー薬局の和田一幸専務取締役は、医薬品の供給不足という、市民生活に直結するテーマを語ってくれた。在宅訪問にも力を入れる、高齢化最先端の地域に根を張った薬局である。

8bitNews「【現場の声】中東情勢が直撃 市内企業で今、何が起きているのか」より
ナフサ不安に端を発し、軟膏チューブの一部はすでに製造停止・出荷停止の通知が入った。さらに先のリスクとして、薬のPTPシートそのものがナフサ由来であることを、和田さんは挙げる。
「シート自体が作れないとなると、薬の商品がなくなりますよね。ちょっと一時代前になるような、ガラス瓶に薬を詰めて患者さんにお渡しする形になるのかな、と」。
ビニールパウチも、おそらくその頃には不足している。「そうすると、紙に薬を入れてお渡しすることになるのかな、なんてことが叫ばれるようになってきました」。
病院の注射器、目薬の容器——プラスチック由来の医療資材は、想像以上に広い。それでも和田さんの口調は、悲観というより、すでに「次の段階」を冷静に見据えているように聞こえた。素材が変われば、渡し方も、患者との関わり方も変わっていく。その準備を、現場のほうが先に始めようとしている。
◆不足の時代に問われるのは、“元に戻ること”ではなく“どう変わるか”
中東情勢の緊迫化は、確かに地方都市にも影響を及ぼしている。だが、大館で出会った事業者たちの言葉から伝わってきたのは、ただ苦境を嘆く声ではなかった。

8bitNews「【現場の声】中東情勢が直撃 市内企業で今、何が起きているのか」より
限られた供給をどう配分するか。包装を減らせないか。別の素材に置き換えられないか。価格転嫁が難しい構造そのものを見直せないか。医療の現場を守るために、今のうちから何を備えるべきか。
それぞれの問いは異なるようでいて、根っこではつながっている。これまで当たり前だった仕組みが揺らぐ中で、なお仕事を続け、地域を支えるために、何を変えられるのか。大館の現場では、その模索がすでに始まっていた。
マイコメント
今は表立った混乱は生じていませんが、各企業の現場ではひっ迫した状況が発生して
いるようで、この品不足が現実に表面化する可能性が高いと思われます。
今回の記事で特に地方ではじわじわとその影響が浸透してきていることを感じます。
政府はナフサは確保していると言っていますが、現場レベルではすでに製造元がバル
ブの栓を数割閉めている状況なので、当然末端では品不足が生じるはずです。
果たして、その影響が現実になるのはいつごろなのか?
おそらく夏ごろには危ないのではないかと思われます。
ただ、その前にホルムズ海峡に停泊を余儀なくされている船舶が動けば解消に向かう
と思われますが、動き始めても実際に日本に入ってくるのはその1か月後です。
それから工場生産をフル稼働と言う流れを考えても正常化には半年近い月日を要する
ことが想定されます。
今、動けば夏には間に合います。
動かなければすれ込むだけです。
しかし、支配層の思惑を考えればホルムズ海峡封鎖が解除される可能性は低いのでは
ないかと思われます。
なぜなら、彼らは世界的な経済混乱と食料不足による飢餓で人口を減らすことを目的
としているからです。
しかし、何らなの要因で彼らの目的が未遂に終わる可能性も残されています。



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