PR

駐日イラン大使が「一水会」で講演

スポンサーリンク
イラン 戦争

駐日イラン大使が「一水会」で講演

「米国といくら交渉しても最終的な結末は戦争」「イラン国民にとって尊厳が財産」

 ペイマン・セアダット駐日イラン大使が10日、愛国団体「一水会」の主催する「一水会フォーラム」で講演し、50年近くにわたる米国からの制裁を踏まえ、「米国側といくら交渉してもその最終的な結末は戦争である。米国の現在の政権には、非常に認知的な秩序がある」と米国を非難する一方、「イランの選択は決して戦争ではない。イラン国民にとっては尊厳(Dignity)が大きな財産」と語った。

IMG_3239
講演するセアダット駐日イラン大使(2026.9.10、東京都渋谷区内で筆者撮影)

 同行したレザー・ムササデ参事官は、「米国がイスラマバード覚書(MOU)上の義務の履行に戻るなら、イランもその義務の履行に戻る」と述べ、いつでも再交渉の門戸を開いている意思を示した。
 
 セアダット大使は外交官として日本に4度、通算20年超滞在する親日家。イランのアラグチ外相も2007年から4年間、駐日イラン大使を務めており、同国が日本を重視している一端が見える。

 初めに木村三浩代表が、以前からセアダット大使の講演を待望していたことを明かし、「日本では米国発のニュースが多く、ホルムズ海峡の問題をめぐりイランがどのような形で米国と交渉しているのか、そういうことが伝わらず、一方的なイラン悪玉論のようなものが横行しているように思う。大使は一貫して平和・真実を求め皆さんと共にお話ししたいとおっしゃっていた。平和を求める真実をお話ししていただきたい」とあいさつした。

 セアダット大使は、「皆さん、こんばんは」と日本語で語り掛けた。現在の世界が西側中心で単独行動主義が目立っていることを嘆く。

 「現代社会が直面している問題というのは、非常に自己中心的な政策、そして横暴なやり方、それは戦争、制裁、追加関税、さらには市場操作、さらには一方的な利益追求が含まれる。一部の大国がむさぼり、無法地帯の中にあり、自らを国際法や国連憲章、さらにはジュネーブ海洋法4条約を含む国際人道法よりも上位にあるというふうに自らを誇らしげに語っている」

 そして「ある国とは言うまでもなく米国」と名指しした上で、「何ら挑発のない状態での不当な戦争を仕掛け、それを国民に対して押し付け、戦争犯罪を犯し、さらに文明をも崩壊させる、石器時代へ戻すと脅している」と非難した。

 女子小学校や結婚式を開いていた民家などへの攻撃に触れ、「米国はこれまでも多くの戦争犯罪を犯してきた」として、民間乗客290人が死亡した1988年のイラン航空655便撃墜事件や、CIAとMI6がイランのモサデク政権を転覆させた1953年のアジャックス作戦、さらに2015年に成立したイラン核合意を米トランプ大統領が3年後、一方的に離脱したことを挙げる。

 現在の情勢として、核問題をめぐり25年6月にイランと米国がオマーンの仲介の下、外交交渉を行っていたさなかの同月13日、何ら挑発を受けていないにもかかわらず、米国はイランに攻撃を仕掛けてきた経緯を説明。

 「そして4日目、トランプ大統領はイランに無条件降伏を迫った。しかし、その8日後には、米国側は一転、イランに対して無条件停戦を懇願した」

 今年2月27日にはオマーンの仲介の下、米国と再び交渉の場に戻った。そこには、国際原子力機関(IAEA)事務局長も参加していたという。しかし翌28日、米国とイスラエルはイランに対して突如、攻撃を始めた。

 「何ら差し迫った脅威がないにもかかわらず、イランに対して奇襲攻撃を開始した。当初彼は、イランの最高指導者はじめ、指導部を暗殺することによって1、2週間で体制を崩壊させることができる考えていた。この戦争で3500人ものイラン人の命が失われ、4万人以上が負傷した。その中には168名の児童も含まれる。非軍事的な文民的な社会インフラさえ標的となった」

 さらに「この対イラン攻撃は、攻撃の起点がペルシャ湾岸地域であり、ホルムズ海峡からもミサイルが発射されたこと。戦争の前日、2月27日までにはホルムズ海峡における自由で安全な船舶の航行は完全に確保されていた」と強調した。

 これに対するイラン側の反撃について、「わが国は当然の自衛権を発動した。これは国連憲章第51条に定められている自衛権を行使をしたもの」と説明。同条は武力攻撃が起きた場合、安保理が必要な措置を取るまでの間、個別的または集団的自衛権の行使を認めている。

 ペルシャ湾岸地域の一部の国々に対しても言及した。「なぜ、あなた方の国は自らの領土に米軍基地を置き、その基地から自らの領土・領空を使って米国軍がイランに対して攻撃をする許可を与えたのか。こうした国々も我々に対して、その責任を問われる必要がある」。

 そして、パキスタンとカタールの仲介の下、6月に交わしたMOUを説明。「この停戦合意の中には、あらゆる戦闘地域での戦闘行為の中止や、イランに対する海上封鎖の停止、ホルムズ海峡をイランの管理の下で再び開くこと、イランの対外資産の凍結解除などが含まれる」。

 しかし、トランプ大統領は署名から20日後、トルコのアンカラで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議の場で「MOU is over(イスラマバード覚書は終わった)」と宣言した。

 「であるからこそ、1つの結論を導き出す必要があります。米国側といくら交渉してもその最終的な結末は戦争であるということ。米国の現在の政権には、非常に認知的な秩序というものがある。この認知上の問題、混乱というものは、こういうことだ。すなわち、彼らがある国に対して戦争を仕掛けたり、制裁を科したり、あるいは追加関税を課そうとした場合には、必ず自ら米国側が勝利しなければならない。そして、相手側は必ず、降伏しなければならないという思い込みである」

 その上で、外交官としての35年のキャリアを踏まえ、「私は外交官として、常に規則・原則を守ってきた。すなわち、相手側がどのような国であれ、どんな人であれ、対等な立場で協議する。そして、相互の尊重に基づいて協議をする。そして、お互いに折り合いを付ける、一致点を見いだすために協議をするということ」

 イラン革命から50年近くの間、米国から制裁に遭っている実態と、それに伴う国内のインフレ、世界エネルギー市場の混乱に言及した後、「我々はこの世界経済ならびに世界エネルギー市場に対して安定性と予測可能性を取り戻す義務がある。戦争というものは、人類が犯し得る最も醜い現象。イランの選択は決して戦争ではない。イラン国民にとっては尊厳が大きな富であり、財産である」と結んだ。


米国がMOUの義務履行するなら、イランも戻る[ムササデ参事官]

 ムササデ参事官からは、国際法の観点からイランの立場を補足した。同参事官は、セアダット大使の大学時代の恩師でもある。

IMG_3244
国際法の観点から説明するムササデ参事官(2026.9.10、東京都渋谷区内で筆者撮影)

 2月28日からの米国・イスラエルによる最高指導者ハメネイ師暗殺や民間人殺害について、「仮に日本が交渉中に相手から一方的に攻撃されたらどのような反応を示すのか? 日本もイラン同様、抵抗し、自衛権を発動したと思う」と主張。

 自衛権の行使は国連憲章51条に基づく正当なものであるとする一方、米軍による空爆のみならず、同軍による海上封鎖は違法行為であると指摘した。具体的には、1958年採択の「ジュネーブ海洋法4条約」の1つ、「領海及び接続水域に関する条約」が定める無害通航権(Innocent passsage)を根拠に挙げた。

 「停戦を定めたMOUには、ホルムズ海峡を管理するのはイランの責務と明確に書かれている」とくぎを刺す。

 「トランプ大統領はフランスのベルサイユ宮殿でのG7の場でMOUに署名した20日後、『MOUは終わった』と語った。しかし、わが国の立場としては、米国がMOU上の義務の履行に戻るなら、イランもその義務の履行に戻ると表明している。この47年間と同様、イランは今後も国家主権ならびに国家の独立を守っていく」


「日本は原爆2発で体制変更」とイスラエル幹部

 会場から幾つか質問があった。福島伸享(のぶゆき)前衆議院議員は1月にイスラエルを訪問した際の体験を披歴し、「イスラエルと共存可能か」と尋ねた。福島氏によれば、イスラエルの幹部は「イスラム教徒の頭を変えなければい」と主張したという。日本の政治家たちが「そんなことは絶対にできない」と言うと、「日本は原爆を2発落とされて体制が変わったんじゃないか。だから、私たちはやるんだ」と返されたとのこと。

 セアダット大使は、4月7日のニューヨークタイムズの記事を引用した。ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪ね、トランプ大統領にイラン空爆を提案していたことを紹介。同記事によれば、オバマもバイデンにも同じ圧力をかけていたが、皆拒否してきたという。

 イスラエルは何百もの核弾頭を保有しながら、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、IAEAの査察も受け入れていない一方、グロッシー事務局長が3月、「イランは核保有を企図していない」と発表したことを紹介した。

 「イランの核疑惑は口実、でっち上げだ。2月28日からの戦争は国家存続の危機だった。なぜ、威嚇に使わなかったのか」と強調した。

 大使は「わが国こそ大量破壊兵器の被害国」だとし、1980年代のイラン・イラク戦争でフセイン大統領が化学兵器を用いたため、7万人以上のイラン人が後遺症に苦しんでいる実態を挙げた。

 「誰が与えた? 欧州諸国だ。インテリジェンス上の協力は米国がした。外交上の証拠が残っている」

 核兵器を使って相手国を屈服させる発想について、「そのような惨劇が許されるのか? 誰が許可する。良心はないのか」と全面的に糾弾すると、大きな拍手を浴びた。

IMG_3213
あいさつする木村代表(中央)と大使らイラン側職員(2026.9.10、東京都渋谷区内で筆者撮影)

コメント

タイトルとURLをコピーしました