マルチビタミンは「健康になった気がするだけ」という新しい研究が報告される

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マルチビタミン 医学

マルチビタミンは「健康になった気がするだけ」という新しい研究が報告される

マルチビタミンを摂っていても無意味というデータが・・・

乱れた食生活で偏りがちな栄養素は、マルチビタミンで補給しているから大丈夫。

そんな考え方をしている人は、多いのではないでしょうか。しかし、サプリメントの錠剤で本当に健康は保証されるのでしょうか?

ハーバード大学を始めとした医学研究チームがイギリスのオープンアクセス医学ジャーナル『BMJ Open』で11月4日に発表した新しい研究では、アメリカ全体で大規模に行われた健康調査から、マルチビタミン利用者と非利用者を比較したところ、測定可能な健康上の違いは見られなかったと報告しています。

しかし、これは本当にマルチビタミンが無意味であることを示しているのでしょうか? 普段マルチビタミンを利用している人は、そんな話信じたくないという人も多いでしょう。実はこうした研究にはいろいろと難しい問題が絡んでいるのです。

>参照元はこちら(英文)

健康上は無意味? マルチビタミンのメリット

体に必要なさまざまな栄養素の詰まったカプセル。

マルチビタミンは、身体の維持に必要とされるさまざまな栄養素の詰まった栄養補助食品として販売されています。

アメリカでは、マルチビタミン・ミネラル(MVM)を定期的に摂取している人は全人口の33%に達するという報告があります。

栄養素の欠乏は、さまざまな病の発症と関連すると言われているので、マルチビタミンの摂取によって栄養の偏りを解消することは、自然な行為と考えている人も多いでしょう。

しかし、医学の世界ではマルチビタミンが健康にとって本当に意味のあるものか疑問の声が上がっています。

過去にさまざまな検証が行われていますが、その多くがマルチビタミンの摂取による優位な健康上の違いを見いだせないと報告しているのです。

例えば2017年の研究では、高齢の男性医師を対象に長期間のマルチビタミン利用によるランダム化プラセボ対照試験を実施した結果、心疾患、心筋梗塞、脳卒中の死亡率の低下は見られなかったと報告しています。

ランダム化プラセボ対照試験とは、体格や性別に関係なくランダムに選んだ人々を、本物の薬を与えるグループと偽薬(プラセボ)を与えるグループに分けて、それぞれに現れる効果を比較する試験です。

これは一般集団を対象に行なった調査でも同様で、米国予防医療専門委員会は、心疾患などの予防にマルチビタミンは推奨しないと言っています。

成人の認知機能に対する影響でも、これは同様に効果がないと2013年の研究で報告されています。

悪影響はないけれど、特に健康上有益な効果もない

薬を飲めば健康になった気はする。

今回の研究では、2012年に米国連邦政府によって実施された2万1千人以上を対象とした健康調査データを分析しています。

この調査では約5000人がマルチビタミンを摂取していると回答しており、1万6000人が摂取していないと回答しています。

この参加者に自分自身の健康状態に対する主観評価を行ってもらったところ、マルチビタミンの利用者は、非利用者より30%高い割合で自分は非常に健康状態が良好だと回答しました。

しかし、高血圧、糖尿病、喘息、関節炎など10項目の長期的な健康問題の病歴、感染症、神経機能障害、筋骨格問題など、19の一般的な病気の過去一年間の状況、うつ病や不安障害などの心理的な問題を含めた健康状態を調査すると、マルチビタミンの利用者、非利用者にとくに差は見られませんでした。

つまり、マルチビタミンの利用者は自分を健康だと判断する傾向はあるものの、実際の医学的な状況を調べると特に優位な差はでないという結果になったのです。

研究者はこの結果について、マルチビタミンが効くという信念によるものか、またはマルチビタミン利用者はポジティブにものを考える傾向があるためではないかと話しています。

研究チームによると、マルチビタミンは特に悪影響もない代わりに、健康を改善させる効果もない、単なるプラセボ効果しか確認できない薬だというのです。

プラセボ効果だけではダメなのか?

気分良く過ごせるならプラセボにも意味はあるのでは?

プラセボ(偽薬)効果とは、特に効果のない薬を与えることで本人が良くなったような気になる現象をいいます。

これは不要な薬の処方を避け患者の心理を安定させるために、医療の現場でも実際に利用されている治療法です。

だとしたら、健康に対する不安を払拭してくれるマルチビタミンは十分意味のある薬なのではないでしょうか?

しかし、医学は古来から続く呪いじみた意味のない治療の中から、確実に効果のある治療を選別することで発展してきたのです。

ほんの数百年前まで、医学の現場では瀉血(しゃけつ)という身体の血を抜く何の意味もない治療が平然と行われていました。

アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンはこの無意味な治療が原因で失血死したとも言われています。

プラセボ効果は、医療のレベルとしては祈祷師が病魔を払うおまじないをして患者が楽になったと言っている時代とやっていることが変わらないとも言えます。

そのため、医療の効果を研究する研究者たちは、その治療に本当に意味があるかどうか、つまりはプラセボ効果以上の効果がきちんと確認できるかどうかを必死で検証し、医療のレベルを下げないための努力をしているのです。

現代ではきちんと研究すれば、プラセボ効果以上のまともな効果が提示できる健康対策はいくらでも提案することが可能でしょう。

研究では、必要栄養素とミネラルを得るための最良の方法は、食品を介して摂ることであり、マルチビタミンがその代用になるという科学的な根拠は示せないと主張しています。

本来なら栄養素は商品からきちんと摂りたい。

アトランタのエモリー大学病院の栄養士マジュムダー氏は、「ビタミンやミネラルは単独では機能しないことが分かっており、それらは食品の中で相乗的に働いています。これら栄養素を食品から独立させた場合、同じ効果を得ることはできません」と語っています。

本当にマルチビタミンに効果はないの?

難しいのはホントのホントにマルチビタミンに効果がないと言えるのか? ということです。

今回の研究は、連邦政府によって全米で実施された健康調査のアンケート結果が根拠になっています。

これはマルチビタミンの効果を確認することが目的ではなく、アンケート項目にマルチビタミンの利用の有無を確認する項目があったので、そこを利用して各回答者の健康状態を比較したに過ぎません。

サプリメント業界団体の評議会で代表の1人を務めるアンドレア・ウォン氏は、この研究デザインについて、マルチビタミンを使用している(あるいは使用していない)と回答した人たちが、どの程度の頻度でどの程度のマルチビタミンを利用しているかは考慮されておらず問題があると述べています。

また、これまでの研究や今回の研究も、調査対象は高血圧や心疾患など、比較的大きな病気の発症状況を見ています。

しかし、マルチビタミンを利用する人は、普段の不規則な生活や偏った食事の補助を目的としている人が多く、実感している効果は、肌荒れがよくなった、疲れが取れやすくなった、口内炎にならなくなったという小規模の健康状態の改善が多く聞かれます。

これをプラセボ効果かどうか確認するのはかなり難しい問題です。

健康状態の変化は複雑な要因が絡むため、違いを確認したい要因だけを調査するというのは非常に難しいでしょう。

こうした研究では通常、普段から健康に気を使っていて、毎日自身の健康状態について詳細なレポートを提出できる医師などを対象に、目的の薬と偽薬を与えたグループに分けて調査を行ったりします。

そのため、不規則な生活でほとんどコンビニ弁当しか口にしないという忙しい社会人からマルチビタミンだけの効果を抜き出して、小さな健康状態の改善を見つけ出すのは至難の業でしょう。

それにこうした忙しい人達に、ボランティアの健康調査に参加してもらい、日々の健康状態の変化を細かく報告してもらうというのも難しいはずです。

実際、今回の研究では定期的にマルチビタミンを利用していると回答した人は、年齢が高く、世帯収入が高い傾向があり、女性、大学卒業者、既婚者、健康保険に加入している人が多かったと述べています。

マルチビタミンは利用するべきなのか?

今回の研究者たちは、マルチビタミンにお金を使うくらいなら、本当に健康に意味のあることにお金を使い、健康的な食事をして運動を心がけるべきだと話します。

しかし、医師や栄養士が推奨する健康的な生活や食事が、普段から実行できるなら苦労はないわけで、結局効果が怪しいと言われてもマルチビタミンをお守り的に服用するしかない人たちは多いでしょう。

プラセボ効果は偽薬と知っていても効果を発揮するという研究も以前に報告されているので、ここは気持ちだけでも健康になっておくほうが得なのかもしれません。

マイコメント

今回の記事でがっかりされた方もいらっしゃると思います。

何しろ、世の中ビタミン剤なんか薬局やドラッグストアに行けば山ほどあるし、その中の

どれかを一度は試してみた人も多いはずですから。

その効果がないとすれば、意味がないと言えるわけですが、ビタミン類を摂取しなくとも

良いというわけでもありません。

何かしらの手段で摂らないと身体の栄養バランスを欠き生き抜くことが困難になります。

多くのビタミン類は野菜や果物、あるいは肉類や他の食品から私たちは摂っていますが

問題は、こうしたビタミン類を豊富に入っている食品を摂っていない可能性があると

言う事実があります。

それはコンビニフードやジャンクフードの台頭が背景にあるからです。

こうした食べ物は元となる野菜を粉砕したり殺菌という名目で洗浄・消毒などによって

多くのビタミン類が失われていてほとんどカスのようなものを食べている可能性が

高いからです。

それはおのずとビタミン・ミネラルの不足を引き起こしますので、そうした人には

マルチビタミン類の摂取は有効ではないかと思います。

もし、十分な栄養の取れた食生活を送っている方なら必要ないと思います。



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