(前略)
量子金融システムが「NESARA/GESARA」のバラ色の世界を実現してくれるそーですよ
(中略)
いつものように情報の出所はQAnonであるが、それは、多くの情報源からデマであることが判明しており、精査に耐えられるものではない。

NESARA(ネサラ)について、その危うさを最初に日本人に警告したのは、米国在住のジャーナリスト、ケイ・ミズモリ氏である。

ミズモリ氏は、2004年に出版された著書『世界を変えるNESARAの謎―ついに米政府の陰謀が暴かれる』で、NESARAという概念とシステムが生まれた恐ろしい背景と隠された目的について克明に説き明かしており、いち早く警鐘を鳴らした。

NESARA(ネサラ)の正式名称は、「National Economic Security and Recovery Act (国家経済安全保障改革法)」。
GESARA(ゲサラ)の正式名称は、「Global Economic Security and Recovery Act (地球経済安全保障改革法)」。

NESARAとGESARAの違いを簡単に言うと、前者が「米国内の借金チャラシステム」であり、後者が「世界規模の借金チャラシステム」ということになる。
(中略)
正統派「NESARA」は、1980年代にエンジニア兼教師のハーベイ・フランシス・バーナード(Harvey Francis Barnard)によって書かれ、それは、彼の著書 『Draining the Swamp: Monetary and Fiscal Policy Reform』(「沼の水を抜く 金融・財政政策改革」)で詳述されている一連の金融改革と税法の再編に関するコンセプトである。

バーナードは、連邦準備制度を廃止し、複利による貸し付けを禁止し、消費者債務を許し、ドルを金本位制に再ペグし、現在の所得税を撤廃して国の消費税を支持する大幅に見直された米国の金融システムを想像していた。 

バーナードは、「こんなに素晴らしい金融システムをワシントンD.C.が取り入れないはずがない」と強い信念に突き動かされて自分の著書を1,000部ほど印刷し、すべての連邦議員に送った。

彼は「これで米国民は、ペテンの借金システムから解放されるはずだ」と胸を弾ませていたが、現実はそうではなく、連邦議会の立法会議に導入されたことさえなかった。
(中略)
彼の著書から耳障りの良い言葉だけを抜き出して、これを焼き直したのが偽NESARAというわれている詐欺システムで、意外や意外、これが全米の人々を熱狂の渦にまきこんだのである。

この詐欺NESARAを創作したのは、シャイニ・グッドウィン(Shaini Goodwin)という女性活動家だった。

彼女は、それまで鳴かず飛ばずのスピリチュアル系女子(オカルト詐欺師)に過ぎなかったが、NESARAと投資詐欺とを組み合わせることによって、すべての人々が裕福になるという奇妙奇天烈な理論を振りかざすようになってから急に世間に注目されることになった。

バーナードのNESARA理論は、いちおう筋が通っているが、シャイニ・グッドウィンの偽NESARAは取り上げるのも馬鹿らしい虚構理論であり、これを真に受けるのは情報弱者以外にはいなかった。

しかし、如何わしい投資話とセットにすることで、多くの大衆の心をひきつけたのである。

今まで自宅で暇を持て余していたシャイニ・グッドウィンであったが、偽NESARAが一部の三文メディアに取り上げられると、あたかも時代の寵児であるかの如く世間の関心を集め、彼女のスケジュール表は、すぐに新聞・雑誌のインタビューやラジオ出演のオファーでいっぱいになった。

結局、シャイニ・グッドウィンの虚構がはがされていくにつれて、彼女に対する訴訟などが起こり、最終的には、家屋敷・資産のすべてを差し押さえられて、母親のトレーラーハウスで暮らすようになった。

シャイニ・グッドウィンは、詐欺師である。

にもかかわらず、QAnon信者の間では、NESARAがリバイバルヒットしているのである。

その理由の一つは、シャイニ・グッドウィンがやったのと同じように、暗号通貨投資詐欺とセットにしたことで熱狂的な信者たちが集まるようになり、さらに、そうした狂信者たちが詐欺話をSNSで拡散したことである。

これらのカルトは「NESARAを推進することによって世界を救う手助けがしたい」と口々に言うが、なんのことはない、暗号通貨で一儲けできるかもしれないという儚い夢を見せられている偽善者に過ぎないのだ。
(以下略)