国民に確実にツケを払わせる…「コロナ対策費77兆円」国がそろばんをはじく恐怖の返済シナリオ

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財務省 コロナウイルス

国民に確実にツケを払わせる…「コロナ対策費77兆円」国がそろばんをはじく恐怖の返済シナリオ

酷税が国民をさらに苦しめ、果ては日本沈没か?

(プレジデントオンライン))

PRESIDENT Online 掲載

新型コロナのパンデミックの終わりが見えた。そんな声が聞こえ始めたが、見えないのは借金返済法だ。医師の筒井冨美さんは「国が計上したコロナ対策費は2020年度だけで約77兆円と報道されている。これは東日本大震災の復興予算(約10年で約32兆円)などに比べても異次元の額であり、国債でまかなわれている。要返済だが、具体的な返済計画を国は明示していない」という。筒井さんが推測した77兆円返済の3つのプランとは――。

■終わりが見えたコロナ禍、見えない借金返済法

新型コロナウイルス(以下コロナ)が発見されて2年余りが過ぎた。

2022年9月14日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は「先週1週間の世界の死者数が2020年3月以来最も低かった」として「新型コロナウイルスの世界的な大流行について、終わりが見えてきた」と述べた。

日本国内でも、2020年春ごろに比べてニュースの扱いは明らかに小さくなった。2020年春には全国で約500人の新規感染者数に対して毎日トップニュースで扱われ、「全国一斉休校」「厳しい行動制限」「レインボーブリッジの警告ライトアップ」などが行われたが、2022年夏には約20万人の新規感染者数にもかかわらずニュースの扱いは小さくなった。

背景にあるのは、「ワクチン接種の普及」「感染者数は増えたが重症者は減った」そして「一般市民もコロナに慣れて恐怖感が薄れた」などが考えられる。

また、2022年2月に始まったウクライナ紛争の影響も少なくないだろう。連日のように伝えられる戦死・虐殺・暴行などのニュースはコロナ禍が色褪せて見えるような悲惨なものが多い。資源不足による世界的インフレも終わりが見えない。

個人的には「人間の持つ警戒心」には上限があり、新しい警戒対象が出てくれば古い警戒対象への関心が薄れていくように思う。

2011年の「福島の原発事故」への警戒心がコロナ禍によって色褪せてしまい、2022年7月に正式決定された「原発処理水の海洋放出」がさほど注目されなかったようなものである。

日本政府が2020年度に計上したコロナ対策費は約77兆円と報道されている。これは東日本大震災の復興予算(約10年で約32兆円)などに比べて異次元の巨額であり、その多くは国債でまかなわれている。要するに借金してバラまいた金なので、いずれ返済する必要があるが、具体的な返済計画は明示されていない。

そこで今回はコロナ対策費の大借金を日本国民はどのような形で返済させられるのか予想してみた。

■【77兆円の返済法1:収入を増やす(増税/社会保障費値上げ)】

借金返済となればまず考えるべきは収入アップだろう。国の収入アップ、つまり「増税」と「社会保険料の値上げ」である。

▼増税:復興特別所得税に準ずれば「5.1%増×24年間」

2011年の東日本大震災に対する復興支援を目的に、2013年から復興特別所得税が全所得者に義務付けられるようになった。基準所得税額2.1%分を納付する義務があり、これは2037年まで継続の予定である。確定申告書の、「復興特別所得税」欄に相当する(復興特別税には復興特別住民税や復興特別法人税もあるが、計算簡略化のために割愛)。

32兆円の復興予算に対して、復興特別所得税は「2.1%増×24年間」と定められている。ということは、77兆円に対して同じ期間の所得増税で返済するならば単純計算で「5.1%増×24年間」となり、日本の現役世代の労働者は「東日本大震災の借金返済」に加えて5.1%の追加増税を求められることとなる。

▼社会保障費をさらに値上げ

選挙のたびに多くの候補者が「消費税減税(あるいは廃止)」を公約に掲げるように、「増税」は不人気政策の筆頭に挙げられる。しかしながら、日本の少子高齢化は改善のめどがつかず、医療介護年金などの社会保障費も増大する一方である。

よって、政治家や官僚は「法律改正が必要で大反対されやすい増税」よりも、「あまり目立たない社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険料など)値上げ」によって辻褄を合わせる傾向が強い。「給料明細書の額面は上がってゆくけど、手取りは増えないなぁ」と疑問や不満を抱く現役ビジネスパーソンも多いはずだ。

さらに、社会保障サービスの受益者は高齢者世代が中心であるのに比べ、負担者は現役世代が中心となり、現在の現役世代が老いた時に現在の高齢者同様のサービスが受けられるかどうかははなはだ疑わしい。

2022年ごろからは団塊世代が後期高齢者の仲間入りし、今後、急激な社会保障費の値上げが予想されている。さらに、前述したようなコロナ対策による借金返済分の負担も求めるとなると、おとなしい日本人といえども素直に受け入れてもらえるとは思えない。

■【77兆円の返済法2:節約】

一般家庭が家計収支の改善や住宅ローンなどを返済する際に、真っ先に取り組むのは節約だろう。医療費関連では、2022年10月から、一定以上の所得のある後期高齢者の医療費の自己負担が1割から2割になる。それによって、高齢者が通院する率を少し抑えようという狙いもあるのではないか。

負担増の高齢者側としては「医療費が倍になる」として、一部の高齢者は反対デモなどを行ったが、さほど盛り上がらなかったようだ。まあ、現役世代から見れば「高齢者医療費8割分の社会保険料を負担しつつ、自分が病気になったら自己負担3割」なのだから、同情する気になれないのは当然だろう。

その他、10月から「高額所得者の児童手当が廃止」などの節約政策が予定されているが、これも節約の一環と言えるだろう。

■【77兆円の返済法3:インフレで債務を圧縮】

借金返済について、一般家庭にはできない政府ならではの裏技がある。強烈なインフレによって債務を実質的に圧縮してしまうのである。仮に、物価が2倍になれば、実質的には借金が半額になるようなものである。

日本国内における実例としては、第2次世界大戦末期の軍事国債がこれに相当する。終戦直後の日本は、GDP比で200%を超える財政赤字を抱えていたが、その後のハイパーインフレによって、10年間で政府債務をGDP比15%程度に低下させ財政健全化を達成した。しかしながら、富裕層には「最高90%の財産税」が課せられ、一般庶民も年100倍以上(100%ではない)のインフレで貧困生活を余儀なくされたので、現代において推奨できる政策とは言えない。

2022年は正月から9カ月間で「1ドル約115→145円」と急激な円安が進行し、円の価値は21%も減ってしまった。他の先進国がインフレ対策として中央銀行による政策金利の利上げによる金融引き締め策を打ち出す中で、日銀はマイナス金利による金融緩和を継続しており、この金利差が存在している限り円安の進行は続きそうである。

この円安によってガソリンや食料品などの輸入品は実質値上げとなり、ウクライナ紛争による資源や飼料不足もあって、日常生活でも値上げを実感する機会が増えている。企業物価指数は18カ月連続で上昇し、2022年8月の速報値は前年比9.0%であった。

計算上は、年9%のインフレが8年間続けば物価は約2倍になり、政府債務は実質半分に圧縮されることになる。日本の金融緩和政策は「コロナ禍からの回復途上にある日本経済を支えるため」と説明されているが、「インフレによって政治家・官僚が非難されることなく政府債務を圧縮」という副次効果も狙っている気がしてならない。

インフレは「日本円や日本国債による資産を有し、年金で生活を送る高齢者」はダメージが大きいが、世代間格差が是正されるので、現役世代の中には収入減に直結する「所得増税」や「社会保障費値上げ」よりはマシな選択肢だと考える向きもあるかもしれない。

■【77兆円の返済法4:日本人の死生観をリセット】

2021年春には、「入院調整依頼に関するお願い」として、大阪府の医療系トップが公用メールで「当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも、年齢の高い方については入院の優先順位を下げざるを得ない」と発信したことが報道され、激しいバッシングを浴びた。

その一方で、匿名のSNSでは「若者優先は当然だ」「キャパ不足ならば仕方がない」などの意見が目立ち、匿名でないと議論できないことに問題の深刻さを感じる。

コロナ病床への入院も、単純に重症度のみで入院患者を選べば「80〜90代の認知症高齢者」が大部分となる。コロナ肺炎そのものが治癒しても要介護状態は続くことが多いので「家族の拒否」「介護施設不足」などで退院先を見つけられず、病床を長期間占拠して、“コロナ病床不足”は解決しない。退院後も「自宅―病院―介護保険」のたらい回しのような状態が続き、社会保障費の赤字国債も膨れあがる一方である。

2022年9月、英国エリザベス女王が死去したが、英王室は「安らかに息を引き取った」とのみ発表し、詳細な死因は公表されていない。逝去3日前にはトラス新首相を任命する姿が報道されたばかりであり、無粋で高額な生命維持装置もない、穏やかな最後だったのだと思われる。

そもそも、後期高齢者にとっての肺炎は「死因トップ4」に入る死因である。

2020年春、筆者はあるメディアからインタビューを受け、「今後のコロナ対策」を訊かれた。逼迫(ひっぱく)した医療の現場で従事する者として、また、医療費(社会保障費)が湯水のごとく使われている現状を知る者として、熟慮の上、「社会全体が、『高齢者の肺炎死は自然の摂理』と容認すべき時期かもしれない」と回答した。お金を負担する側にも限界がある。日本という国家規模の家計は真っ赤な状態だ。どこかで線を引かねばならないのではないか。そうした苦渋の気持ちを伝えたつもりだった。

しかし、筆者のこの発言は「政府は本当の死者数を隠蔽(いんぺい)している」「ロックダウンしないと死者数○○万人」といった先方の期待やシナリオに沿わなかったようで、ボツになった。

高齢者医療において「死は全力で回避すべきもの」と捉える限りは、コロナ禍は終わらず、現役世代の生活も苦しくなる一方だろう。国民の総意として、高齢者の肺炎死を「自然の摂理」と捉え、「延命より、安らかな最後」と解釈することが、「コロナ禍の終結」ひいては「社会保障費の健全化」への一歩となるのではないだろうか。

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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)
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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)

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