ヨーグルトもプロバイオティクス製剤も「腸に良い」と言われるものすべてが「善玉腸内細菌を腸に定着させることはできない」
その現実を考えて、腸内細菌が破壊されないことを重視すること
破壊された腸内細菌環境を完全に復活させることは不可能
米エポックタイムズ紙で、「腸内細菌叢ががんリスクを高める仕組み – そしてバランスを取り戻すためにできること」というタイトルの記事を読みました。
記事そのものは、腸内細菌環境がどのように壊れるかなどがわかり、興味深いものですので、ご紹介させていただこうと思うのですが、ただ、こういう「腸内細菌関係」の記事において、
「やや絶望的なひとつの定説」
があるのです。
たとえば、エポックタイムズの記事には、腸内細菌環境を改善するためとして、
> ラクトバチルス・ロイテリやラクトバチルス・ガセリといった有益な微生物は、人間の腸内に自然に存在するだけでなく、特定の食品、サプリメント、プロバイオティクス製剤を通して補充することも可能だ。
等の記述がありますが、それらに善玉菌が含まれているとしても、
「腸に定着することはない」
のです。
もちろん、服用しているときや、それらの食品を摂っている限りは、確かに腸内細菌環境を比較的良好に保てるのかもしれないですが、服用をやめた途端(おおむね 1週間くらいで)それらの善玉は「すべて消えてしまう」のです。
私がこのことを知ったのは、少し前ですが、それ以降も論文などで調べますと、これ以外の答えはないのですね。
たとえば、AI も、このように答えています。
太字、大文字はすべて回答のオリジナルのままです。
Grokへの質問:ラクトバチルス・ロイテリなどの有益な微生物は、ヨーグルトやプロバイオティクス製剤などで「腸に定着」するものなのでしょうか? 一時的なもののように思えるのですが。
Grokの回答:
ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)をはじめとするプロバイオティクス菌は、「腸に永久に定着する」わけではありません。
一時的な通過菌(transient) であり、摂取を中止すれば数日〜 2週間程度で便から検出されなくなります。
結論:「定着」はしません。一時的な効果です。
科学的根拠(簡潔に)
定着性:ヒトの腸内細菌叢は個人特有で安定。外来菌(プロバイオティクス)は「ゲスト」として一時的に滞在。
ラクトバチルス・ロイテリの場合:摂取中は腸管上皮に付着し、免疫調整・病原菌抑制などの効果を発揮。摂取中止後 3〜14日で消失(研究多数)。
例外:乳児期(生後数ヶ月)に摂取すると一部が定着する可能性あり(腸内フローラ形成期のため)。成人ではほぼ不可能。
効果の持続:菌自体は消えるが、代謝産物(短鎖脂肪酸、再uterinなど) や免疫記憶が数週間残る場合あり。
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参考文献(代表例)
1. Walter et al., 2001 (Appl Environ Microbiol)
→ L. reuteri DSM 17938 を成人被験者に投与 → 摂取中は検出、中止後 1週間で消失。2. Frese et al., 2013 (mBio)
→ 母乳由来 L. reuteri は乳児腸に定着しやすいが、成人は不可。3. McNulty et al., 2011 (Sci Transl Med)
→ プロバイオティクスは腸内フローラの「構成」を変えず、機能(遺伝子発現)だけ一時的に変える。
上の参考論文は、「1」はこちら、「2」はこちら、「3」はこちらにあります。
ですので、食べ物でもサプリでも、口から取り入れるもので、腸内細菌環境を保持し続けるには「永劫に摂取し続けなければならない」ことになります。
つまり、
「腸内細菌環境は、良くすることよりも、壊さないことのほうが大事」
ということです。
一度壊れた腸内細菌環境は、完全に元に戻ることはないと考えていいと思います。もちろん、それだけに日々の食生活を考えることは大事ですが、「壊さないこと」が大事であり、特に、今は子どもの頃から腸内細菌が破壊される生活が普通です(過剰な薬投与や、過剰な衛生/殺菌環境)。
薬と腸内細菌環境については、以下のような過去記事があります。
・これらのあまりにも一般的な薬が腸内細菌環境を永続的に変化させる。特に子どもへの投与には注意を
In Deep 2025年10月9日
実はこの記事を書いた頃から「サプリやプロバイオティクスの腸への定着性」を調べ始めました。
ちなみに、上の記事に出てくる「腸内細菌環境を長く変化させる薬剤」は主に以下です。
・抗生物質
・抗うつ剤
・ベンゾジアゼピン(抗不安剤や睡眠薬等)
・プロトンポンプ阻害剤(胃酸を止める薬)
・ベータ遮断薬(狭心症や頻脈性不整脈の諸症状を改善する薬)
・ステロイド
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs/一般的な鎮痛剤)
あと、カナダの微生物学者たちが、パンデミックへの対策が「子どもたちの腸内細菌環境を蝕んでいる」ことを述べていたことをご紹介した記事は以下にあります。
・カナダの微生物学者たちが「パンデミックでの過剰衛生や社会的距離が特に子どもたちの腸内細菌環境に影響を与えており、長期間の重大な健康上の影響を残す」とした警告を発表
In Deep 2021年2月4日
一部のワクチン(mRNAコロナワクチンなど)が、腸内の善玉菌、特にビフィズス菌を著しく減少させることを判明させた研究をこちらの記事でご紹介したこともあります。
ともかく、現代の社会は、腸内細菌環境を破壊しやすい環境であるわけで、そこから見直さないと、今後の若い人たちの健康も厳しい状態になっていくと思われます。
そのあたりを考慮しながら、エポックタイムズの記事を読まれていただければ幸いです。ご紹介する記事には、「どのようなものが腸内細菌を破壊するか」も簡潔に書かれています。
腸内細菌叢ががんリスクを高める仕組みと、バランスを取り戻すためにできること
How Gut Microbes Drive Cancer Risk–and What You Can Do to Restore Balance
Epoch Times 2025/10/26
栄養価の高い食品を食べ、有害な化学物質や添加物を避け、薬の使用を見直すことで、より健康な腸を作る。
52歳のリンダさんは更年期を迎えた時、ほてりや睡眠障害は覚悟していたが、持続的なむくみ、倦怠感、そして体の奥底に何か異常があるような感覚は予想していなかった。
腸内細菌叢の検査で、もう一つの問題が明らかになった。それは小腸における有害細菌の過剰増殖だった。
「これはますます多く見られる現象です」と、心臓専門医のウィリアム・デイビス博士は述べている。
「女性は加齢とともに、特に更年期中および更年期以降、マイクロバイオーム (腸内微生物叢)が有害な方向に変化することがしばしばあります。この変化は、炎症、ホルモン代謝、さらにはがんリスクにまで深刻な影響を及ぼす可能性があります」
腸内微生物叢:重要な役割を果たす隠れた生態系
腸には、消化、栄養吸収、免疫機能、健康な腸内バリアの維持に中心的な役割を果たす、数兆個の微生物(細菌、真菌、その他の生物)が生息している。
しかし、現代のライフスタイルは時とともに、この繊細な生態系を蝕んでいく。加工食品、保存料、塩素処理された水、乳化剤、抗生物質、グリホサート、そしてストレスは、微生物の多様性を徐々に侵食する可能性がある。
最も顕著な変化の一つは、プロテオバクテリアの増殖だ。プロテオバクテリアは、便による汚染や炎症に関連する微生物のことだ。「私はこれを『アメリカの糞便化』と呼んでいます」とデイビス氏は言う。「結腸に生息する微生物が、本来は存在すべきではない小腸に侵入しているのです」
小腸内細菌異常増殖症(SIBO)として知られるこの病態は、広範囲に及んでいる。慢性的な低レベルの炎症と関連しており、特定のがんのリスクを高める可能性があることを示唆する証拠が増えている。
腸内細菌ががんリスクに与える影響
「がんのリスクは遺伝子だけの問題ではありません」とデイビス氏は述べた。「私たちの体内に生息する微生物も関係しているのです」
小腸は栄養素の吸収を目的としている。この領域で糞便中の微生物が過剰に増殖すると、すぐに死滅し、エンドトキシン (内毒素 / グラム陰性菌の細胞壁に由来するリポ多糖)を血流中に放出する。この状態はエンドトキシン血症と呼ばれる。
「エンドトキセミアは、体内でゆっくりと燃える火を灯すようなものです」とデイビス氏は述べた。「炎症を促し、老化を加速させ、代謝を阻害し、がんのリスクを高めるのです」
研究によると、乳がんの女性は、腸内で糞便性細菌が過剰に増殖し、循環内毒素のレベルが高く、エストロゲンを有害な方法で代謝する腸内微生物が多いことがわかっている。
炎症とホルモン代謝の変化が相まって、腫瘍の増殖を促す内部環境が作り出される。「これらの微生物はエストロゲンをより発がん性の高い形態に分解する可能性があります」とデイビス氏は述べた。「これは乳がんの真の危険因子です」
エストロゲンは乳房内のがん細胞上の受容体に結合し、増殖を促すため、成長刺激剤として作用する可能性がある。
エストロゲンとマイクロバイオームのつながり
閉経後、体内のエストロゲン (女性の身体の成長や生殖機能の発達を促す女性ホルモン)濃度は自然に低下するが、特定の有害な腸内細菌はベータグルクロニダーゼと呼ばれる酵素を生成するため、依然として重要な役割を果たす。ベータグルクロニダーゼはエストロゲンを再活性化し、がんの成長を刺激し続けることができるのだ。
「乱れたマイクロバイオームは健康状態を反映するだけでなく、積極的に健康を形作ります」とデイビス氏は述べた。「微生物がエストロゲンを脱抱合すると、乳がんを引き起こしやすい形に変換されてしまうのです」
これが、閉経後に乳がんのリスクが急激に上昇する理由の一つだ。問題はホルモンレベルの低下だけではない。体内でそれらのホルモンがどのように代謝されるかにも関係している。
乳がんが最も明らかな例だが、腸内細菌叢の異常とがんの関係は乳房以外にも広がっている。
・大腸がん:フソバクテリウム・ヌクレアタムなどの特定の口腔内微生物が大腸に移動し、腫瘍の成長を促進することがある。
・子宮内膜がんおよび子宮がん:エストロゲン代謝の乱れはホルモン感受性組織に影響を及ぼす可能性がある。
・全身性炎症:内毒素血症は、他の臓器における腫瘍の発達を促す内部環境を作り出す可能性がある。
現代生活が腸にダメージを与える理由
現代社会の進歩は快適さと便利さをもたらす一方で、有害な細菌を促進し、腸の健康を阻害する食事や環境要因も意図せず持ち込まれている。
・加工食品
クッキー、チップス、ソフトドリンク、冷凍食品といった超加工食品には、ポリソルベート80やカルボキシメチルセルロースといった乳化剤が含まれていることが多い。
(※訳者注)ポリソルベート80は、食品の乳化剤として使われる他、ワクチンの添加物としても使われています。こちらの記事をご参照くだされば幸いです。ポリソルベート80が使われている食品のタイプはこちらに一覧があります。一般的に「乳化剤」としか書かれていないので、どんな乳化剤かはわからないと思います。
デイビス氏によると、これらの化合物は腸の保護粘液層を薄くし、腸内細菌叢を有害な細菌へと向かわせるという。
多くの製品には、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤が含まれている。これらの防腐剤は食品の鮮度を保つ働きがあるが、腸内で抗菌作用を発揮し、有益な細菌に悪影響を及ぼす。
「残念ながら、アメリカ人の食生活は超加工食品に傾倒してしまっています」とデイビス氏は述べた。
2021年から 2023年にかけて、アメリカ人は 1日の摂取カロリーの約 55%を超加工食品から摂取したと推定されており、若者の間ではその割合はさらに高くなる。
・毒素と医薬品
ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は、ノンスティック調理器具や防水製品に含まれる、いわゆる「永遠の化学物質」であり、体内に残留してホルモンバランスを崩す。
除草剤ラウンドアップの有効成分であるグリホサートは抗生物質として作用し、有益な細菌を殺しながら有害な細菌には影響を与えない。アメリカ疾病対策センター(CDC)の検査によると、アメリカ人の 80%以上の尿中にグリホサートの残留物が検出されている。
H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬といった一般的な胃酸抑制薬は、口腔内の細菌が下方に移動し、胃や小腸に定着するのを許す可能性がある。「口腔は大腸に次いで微生物の密度が高いのです」とデイビス氏は言う。
バランスを取り戻す:腸を第一に考える予防戦略
従来のがん予防は検査と治療に重点を置いているが、腸の健康は強力でありながら十分に活用されていない予防ツールだとデイビス氏は述べた。
1. 有益な細菌を再導入する
ラクトバチルス・ロイテリやラクトバチルス・ガセリといった有益な微生物は、人間の腸内に自然に存在するだけでなく、特定の食品、サプリメント、プロバイオティクス製剤を通して補充することも可能だ。
これらの菌株は、標的を絞ったプロバイオティクスカプセルや粉末に含まれることが多く、ヨーグルト、ケフィア、ザワークラウト、特定の培養乳製品などの発酵食品にも少量含まれている。
これらのプロバイオティクスは小腸に定着し、有害な細菌の増殖を抑制するのに役立つ。「これらの微生物を復活させることで、消化機能が改善されるだけではありません」とデイビス氏は言う。「炎症を軽減し、エストロゲンの健全な産生を回復させるのです」
(※ 訳者注) 先ほど書きましたように、定着はしても、その期間は長くて 2週間です。
2. 善玉菌に栄養を与える
イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ペクチンなどのプレバイオティクス繊維は、有益な微生物に栄養を与え、腸のバリアを強化する。
3. マイクロバイオームを阻害する要因を減らす
保存料、乳化剤、超加工食品、グリホサートなどの環境毒素を断つことで、腸内生態系の回復を促すことができる。「これらの現代社会における環境汚染は、私たちの腸内生態系をゆっくりと崩壊させてきました」とデイビス氏は言う。「これらを浄化することは、極めて重要なステップです」
4. 腸のバリアを強化する
健康な粘膜層は内毒素血症から体を守る。動物の皮や内臓肉に含まれる、あるいはサプリメントとして摂取されるヒアルロン酸は、アッカーマンシア・ムシニフィラなどの有益な微生物とともに、このバリアの回復を助ける。
実践的な第一歩
マイクロバイオームを再構築し、その保護バリアを強化するために実行できる手順はいくつかある。
・加工を最小限に抑えた、多様で繊維質が豊富な食事を摂る。
・発酵食品やプロバイオティクス菌株を積極的に摂取する。ガセリ菌は、更年期障害によく見られるほてりや寝汗を軽減することが示されている。
・善玉菌を増やすために、全脂肪乳製品またはココナッツミルクを使って自宅で「SIBOヨーグルト」を作る。デイビス氏は、自身の臨床経験から、毎日摂取することで最大 90%の症例で 4週間以内に SIBO が改善したと述べている。
・ヒアルロン酸、コラーゲンが豊富な食品(骨スープ、じっくり煮込んだ肉、骨髄など)、サプリメントなどで腸のバリアをサポートする。
・有害な細菌が腸内に侵入するのを防ぐために、口腔の健康を良好に保つ。
・不必要な抗生物質や微生物叢を破壊する添加物を避ける。
「これらは誰でも実践でき、費用も抑えられる実践的な対策です」とデイビス氏は述べた。「マイクロバイオームを守るのに処方箋は必要ありません」
がん予防の新たな視点
従来の腫瘍学では、がんが発症してから介入するのが一般的だ。デイビス氏は、腸内細菌叢の異常に早期に対処することが強力な予防策となり得ると主張している。
「がんが現れるのを待って、手術、放射線治療、化学療法で治療するだけなら、すでに戦いの半分は負けているようなものです」と彼は述べた。
「マイクロバイオームは、がん予防において欠けているピースなのです」
彼はまた、口腔の健康とがんの関連性を強調した。フソバクテリウムなどの口腔病原菌は腸に移行し、炎症の一因となる可能性がある。
「私たちは、身体をサイロ化して考えるのをやめなければなりません」と彼は付け加えた。「口、腸、ホルモン、そして免疫システムはすべてつながっているのです」
冒頭のリンダさんにとって、腸の健康を取り戻したことは大きな転機となった。腹部の張りが軽減し、活力が戻り、炎症マーカーも改善した。
「腸は消化だけを担っているわけではありません」とデイビス氏は言う。「腸は体の第一防衛線です。腸を大切にすることで、がんからも身を守ることができるかもしれません」




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