積み上げてきた平和国家、一瞬にして瓦解 歴史に刻まれるであろう2.8総選挙の暗黒とこの国の行く末(下)
公明党と立憲が合併した中道改革連合とは何だったのか?単なる旧公明党の延命策だったのでは?
今度の選挙結果の悪夢は与党で衆院の3分の2を制してしまったことだ。参院はまだ少数与党だが、衆院で3分の2の議席があれば、どんな法案でも通せる。参院で否決されても衆院で再議決できるからだ。
となると、高市がおぞましい法案に次々着手、片っ端から成立させてしまう懸念がある。維新との連立合意に明記されているスパイ防止法や国旗損壊罪などは朝飯前でやるだろう。
「その伏線ともいえるのが村上誠一郎前総務相に対する仕打ちです。今度の総選挙で、自民党は村上氏を四国ブロック10位に下げた。ふつうならば勝ち目はなく、村上排除が露骨でした。村上氏といえば、2013年の秘密保護法の採決では唯一棄権した筋金入り。その前のスパイ防止法にも反対を貫いている。こうした法案を通すのに邪魔だから排除した。裏を返せば、それだけ成立に本気だということでしょう」(政界関係者)
村上は当時、反対の理由について、人権と国益のどちらを優先するかの比較や拡大解釈の余地があることを挙げていた。最初はスパイ取り締まりだったのが、気が付けば一般国民まで対象が広がってしまう。戦前の治安維持法のようなことにもなりかねないと危惧していた。それは今も変わらない。まして、高市の場合、国旗損壊罪とセットになる。こちらは国旗に敬意を払えという“強制”だ。要するに、「人権よりも国家」が高市の理想なのである。こんな法案がどんどん通ったら、息苦しい社会になる。言論統制まで一瀉千里だ。
「かつての自民党にはスパイ防止法にもきちんと反対する議員がいた。宏池会を中心とした真正保守派です。そうした議員が高市政権の右傾化に歯止めをかけられるか。一縷の望みを託していますが、かけられなければ、一気に危険な方向に行きかねません」(保阪正康氏=前出)
勝たせすぎたとほぞを噛んでももう遅い。
投票日直前のトランプ米大統領のSNS投稿には驚かされた。
〈選挙結果は、日本の将来にとって非常に重要だ〉〈完全かつ全面的な支持を表明することを光栄に思う〉
内政干渉甚だしいが、高市にとっては支持拡大の後押しになった可能性が高い。
「トランプ大統領の訪日時、高市さんは米空母の上でぴょんぴょん跳びはねた。あれを見て、『これなら日米同盟は安泰』と考えていた人にはプラス効果になったでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏= 政治学)
トランプは、3月の訪米を予定している高市と同19日に首脳会談を行うとも表明した。米国側は高市の国賓待遇を検討しているという。強いリーダーが好きなトランプだ。選挙で圧勝した高市を歓待し、訪日時以上に持ち上げるのだろう。
だが、これに喜んでいたら日本は高い代償を払わされる。トランプの目的は明確だからだ。
米国は今秋に中間選挙がある。トランプは目に見える成果が欲しい。高市は5500億ドル(約86兆円)の対米投資を具体化させられることになる。そして防衛費の大幅増だ。安倍時代以上の武器爆買いも約束させられることになりかねない。
米国が先月公表した「国家防衛戦略」で日本を含む同盟国の防衛費について、これまで言われてきたGDP比3.5%どころではなく、同5%を求める方針が明記された。GDP比5%は実に30兆円。年間の社会保障費と同水準だ。借金大国の日本のどこにそんなカネがあるのか。
「GDP比2%への増額もそうでしたが、さらなる増額も米国に言われる前に日本が“自主的”に決めることになるのでしょう。増額分は国債と増税で賄うしかないが、自民単独で衆院の3分の2の議席を持ってしまったので何でもできる。行き着くところは、大軍拡大増税。笑顔の高市さんに国民の多くが騙され、どこに連れていかれるかもわからず、白紙委任状を渡してしまったということです」(五十嵐仁氏=前出)
中道改革連合の大惨敗で立憲民主党出身者は死屍累々。さらに共産党は4議席にとどまり、れいわ新選組もわずか1議席。リベラル勢力は風前の灯だ。
これ実は、大勝利を収めた自民党内においても言えること。投開票日前日、立憲の辻元清美参院議員がSNSに「ある自民党の大物議員から電話があった」として、こんな投稿をしていた。
「高市総理はひとりで決めたがる。数を取らせたら、ますます調子にのって、自分の独断で何でも決めてもいいと思う危険性がある」
世論人気は圧倒的だが、仲間が少なく独断専行の高市に対し、自民党内では遠巻きに距離を置く空気があった。今回の解散総選挙にしても、高市は選挙の仕切り役の幹事長にすら相談せず、党内をも欺くような決め方に、水面下では不満が充満していた。しかし……。
「310議席を超える圧勝ですから、もはや自民党内で高市首相にモノ申す人はいなくなる。面従腹背でしょう。自分の身分は保障された。目を付けられて敵視されたら大変、といったところです。しかし、これで『 政治とカネ』の問題はウヤムヤになり、自民党の旧態依然の体質は残る。党の活力は失われていく」(政治評論家・野上忠興氏)
中道の野田と斉藤の両共同代表は、新党を「政界再編の一里塚」として、選挙後に自民党内の保守リベラルの議員を糾合する絵も描いていた。だが、「ここまで負ければ、中道はそれどころじゃない。国会の活力もなくなります。日本の政治はますます内に籠もっていく。国民はこれでいいのでしょうか」(野上忠興氏)。
開票を受けた8日のテレビ中継で、高市は「一緒にやろうよと言ってくださる政党がありましたら、ぜひ、ご一緒にやらせていただきたい」と呼びかけた。かつての安倍1強を超える「高市1強」に、リベラル勢力は憤死、ゆ党の国民民主党や参政党はすり寄っていくだろうから高市に敵ナシ。大政翼賛会のやりたい放題を止める術はない。近いうちに有権者は後悔することになるだろう。



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