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ホルムズ海峡迂回パイプライン、容量が圧倒的に不足 LNGは代替輸送手段なし

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ホルムズ海峡 エネルギー

ホルムズ海峡迂回パイプライン、容量が圧倒的に不足 LNGは代替輸送手段なし

先日、政府が迂回ルートの原油到着と広報していたが、原油容量が圧倒的に不足していて需要を満たすことは出来ない。

米国とイスラエルが2月28日にイランへの攻撃を開始すると、ペルシャ湾に位置するエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥った。現在、保険金が支払われているが、その金額は損害額のごく一部に過ぎない。

同海峡を迂回(うかい)する代替ルートの輸送能力は、必要量に対して著しく不足している。ホルムズ海峡に代わる既存の石油輸送ルートは、平常時に同海峡を通過する日量約2000万バレルのうち、せいぜい13~28%を穴埋めできるに過ぎない。楽観的なシナリオでさえ、その上限は3分の1程度にとどまるとみられている。パイプラインへの40年にわたる投資が約束した輸送量と、実際の輸送量との間の乖離(かいり)は、国際エネルギー市場における最大のリスクだ。

ホルムズ海峡を迂回する石油輸送ルートは3つあるが、それぞれに大きな制約がある。サウジアラムコ、アブダビ国営石油会社(ADNOC)、カタール・エナジー、シェル、トタルエナジーズといったエネルギー企業から、トラフィグラやビトルといった商社に至るまで、あらゆる関連企業がまさに今、危機に直面している。

サウジアラビアの東西パイプライン

ホルムズ海峡を迂回するルートの中核を成すのは、サウジアラビアを東西に走るパイプライン「ペトロライン」だ。同パイプラインはサウジアラビア東部アブカイクから紅海沿岸のヤンブー港に延びる全長1201キロの複線システムで、日量500万バレルの原油を輸送している。天然ガス液(NGL)のパイプラインを原油輸送用に転用する措置は、2019年のドローン(無人機)攻撃によりアブカイクで日量570万バレルの生産が停止したことを受けて初めて試験的に導入されたもので、これにより供給能力は同約700万バレルにまで増加する。サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル最高経営責任者(CEO)は10日、ペトロラインがフル稼働状態であることを確認した。ヤンブー港の輸出量は約3倍になった。

パイプラインは期待通りの成果を上げたが、ターミナルは期待に応えられなかった。ヤンブーの2つの港湾施設の名目上の積載能力は日量450万バレルだが、戦時下の実際の積載能力は同300万バレル程度にとどまる。潮位の変動により、超大型タンカーの入港は1日2回、各4時間ずつに制限される。船舶追跡データによると、3月の最初の2週間、超大型タンカーの大部分が36時間を超える停泊遅延に見舞われた。

ホルムズ海峡を迂回する他の2つのルート

アラブ首長国連邦(UAE)のハブシャン・フジャイラ・パイプラインはホルムズ海峡を完全に迂回して、UAEの首都アブダビで産出されるムルバン原油を380キロ先のオマーン湾まで輸送する。輸送能力は日量150万バレルで、最大180万バレルまで対応可能だ。中東危機発生前の稼働率は71%だった。余剰輸送能力は44万~73万バレルだ。しかし、これはADNOCにとっては重要だが、国際市場にとっては意味を持たない。

イラク北部キルクークからトルコ南部地中海沿岸のジェイハンを結ぶパイプラインは、名目上の輸送能力は日量160万バレルだが、15億ドル規模の仲裁紛争を巡り、2023年3月に操業が完全に停止された。米国が仲介した合意により、2025年9月に日量15万バレルの輸送が再開された。ホルムズ海峡の危機により、緊急の修復工事が行われた。イラクは現在、同パイプラインを通じて日量約25万バレルの原油を輸送しているが、これは同国がかつて、ペルシャ湾に近い南東部バスラから輸出していた量の6%程度に過ぎない。トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、1973年にイラクと結ばれたパイプライン協定が2026年7月27日に失効すると発表した。トルコは通過料金の増額を求めるとともに、仲裁による罰金の免除とパイプラインのバスラまでの延伸を求めている。同パイプラインは最悪のタイミングで、再び操業停止に陥る可能性がある。

迂回ルートを持たないカタール

最も深刻な被害を受けているのはカタールだ。世界の液化天然ガス(LNG)取引量の5分の1に相当する年間約8000万トンというカタールのLNG輸出量の100%は、同国北部ラスラファンからホルムズ海峡を経由して出荷されている。カタールはドルフィン・パイプラインを通じてUAEやオマーンに天然ガスを供給しているが、これは地域の電力網向けであり、国際市場向けではない。輸出に関しては、ホルムズ海峡経由以外に選択肢がない。LNGには極低温液化施設が必要となる。

カタール・エナジーは4日、不可抗力を宣言した。イランによるミサイル攻撃で、LNG生産能力の約17%が損なわれた。修復には3~5年を要する。トタルエナジーズ、シェル、エクソンモービル、コノコフィリップス、ENIの各社が参画し、2030年までに生産量をほぼ倍増させることを目指していたが、計画は無期限に中断された。

すべてを物語る数字

ペトロラインの余剰輸送能力は日量260万~500万バレルで、フジャイラ・パイプラインは同44万~73万バレル、キルクーク・ジェイハン・パイプラインは同25万バレルだ。だが、ペトロラインの実質的な輸送能力は、ヤンブー港によって日量約300万バレルに制限されており、パイプラインが輸送可能な同700万バレルには達しない。ターミナルの制約を考慮すると、現実的な追加輸送能力は合計で日量260万~550万バレルの範囲となる。これを、国際エネルギー機関(IEA)が推計するホルムズ海峡の通常の通過量である日量約2000万バレルで割ると、13~28%となる。一方、カタール産LNG輸送の迂回ルートは存在しない。

こうした状況の中、IEAは過去最大規模となる計4億バレルの石油備蓄の放出を表明したが、これで賄えるのは数週間であり、数カ月ではない。これは構造的な問題を解消する手段ではない。

これが単なる価格ショックに終わるか、あるいは大規模な危機に発展するかは、その持続期間による。イランがホルムズ海峡に敷設したとされる機雷の除去だけでも数カ月を要するだろう。迂回ルートで穴埋めできる割合が13~28%で、LNGの代替輸送手段が全くない状況下では、操業停止が1週間長引くごとに、供給の混乱が既存の設備では解決できないエネルギー不足へと発展する。

forbes.com 原文) 

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