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どこに行ってももう買えない…中東エネルギー危機で韓国の家庭を襲う「ゴミ処理袋不足」という大問題

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ゴミ袋 エネルギー

どこに行ってももう買えない…中東エネルギー危機で韓国の家庭を襲う「ゴミ処理袋不足」という大問題

日本でも今後は生活の死活問題になって行く。

なぜ今ゴミ袋なのか

「スボン大乱」 — 中東発のエネルギー危機が高まる中、韓国のインターネットを沸かせている新造語だ。

「スボン」とは韓国語でゴミ袋を意味する「スレギ・ポントゥ」の略称である。韓国には、自治体が指定した従量制の専用袋を使用しなければゴミを回収しないという独特のゴミ処理文化がある。サイズによって価格が異なり、指定外の袋を使えば回収自体が拒否される。韓国人の日常において、ゴミ袋は炊飯器や歯ブラシと同じくらい欠かせない生活必需品だ。ところが今、その袋(スボン)がスーパーの棚から姿を消しつつある。

by Gettyimages
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昨日、仕事帰りに自宅近くのスーパーにゴミ袋を買いに行った。何気なくレジ横の売り場に向かったが、どこか様子がおかしい。いつも山積みになっていた袋の束が、ぽっかりと空いていた。「ゴミ袋、ありますか?」と尋ねると、店主は黙ってレジの下を開け、一束を取り出した。

「買いだめする人が多くて、お一人様一束までにしているんです」

一瞬、耳を疑った。よりによってゴミ袋を買いだめ?

わが家は人数が少ないため、普段は10リットルサイズを使っている。しかし、私の手は思わず20リットルの束へと延びていた。「次はいつ買えるかわからない」という不安がよぎったのだ。他人の買いだめを批判しながらも、必要以上に大きな袋を選んでいる自分もまた、その列に加わっていたのであろう。

幸い、私の住む地域はまだマシな方のようだ。SNSには「100枚以上確保した」という自慢げな投稿から「どこへ行けば買えるのか」という切実な問い合わせまで、ゴミ袋に関する書き込みが溢れている。ママ友掲示板や地域コミュニティは、いつの間にか「ゴミ袋在庫情報センター」と化していた。「〇〇町のコンビニに20リットルの在庫がある」「あちらのスーパーはまだ購入制限がない」といった情報がリアルタイムで飛び交う。

在庫のある店を共有するその姿は、新型コロナパンデミック初期にマスク一枚を求めて奔走していた当時の奇妙な熱気を彷彿とさせる。

ナフサ2倍高騰

なぜ、よりによってゴミ袋なのか。答えは「ナフサ(Naphtha)」にある。

韓国・蔚山の石油精製施設 by Gettyimages
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原油の精製過程で得られる石油化学の基礎原料であるナフサは、ビニールやプラスチック、合成繊維など、私たちの身の回りにあるほぼすべての製品の出発点だ。ゴミ袋の原料であるポリエチレンも同様である。バレルあたり68ドル水準だったナフサ価格は、中東情勢の不安直後、138ドルを突破して2倍以上に跳ね上がった。韓国のナフサ輸入量の約70%が、紛争の中心地であるホルムズ海峡を通過する。

原料高騰に耐えかね、工場は悲鳴を上げ始めた。現在、韓国の主要石油化学企業の稼働率は60%台まで急落している。麗水(ヨス)、蔚山(ウルサン)、大山(テサン)の韓国3大石油化学コンビナート全域で、大小の工場の生産が相次いで中断されており、業界は今月末から来月中旬を、在庫が底をつく「デッドライン」と見ている。在庫が枯渇すれば、連鎖的なシャットダウンは不可避である。

問題はゴミ袋だけではない。ナフサショックは私たちの食卓までも脅かしている。インスタントラーメンや菓子の袋、ペットボトルなど、スーパーの陳列棚を埋め尽くす食品パッケージのすべてが同じ原料から作られているからだ。包装材の価格上昇は、約3ヶ月のタイムラグを経て加工食品全般の納品価格引き上げにつながるという分析も出ている。

「スボン大乱」は単なるハプニングではなく、韓国の産業サプライチェーン全体が揺らいでいるという危険信号なのだ。

危機のたびの「5部制」

事態の深刻化を受け、韓国政府も慌ただしく動き始めた。真っ先に目を引いた措置は「自動車5部制」だ。車両ナンバーの末尾数字に応じて特定の曜日の運転を制限するこの制度は、まず公的機関の車両を対象に施行され、民間への拡大も検討されている。

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コロナパンデミックの当時も、韓国政府はマスク不足を解消するために「マスク5部制」を実施した。出生年の末尾に応じて購入できる曜日を指定したのである。あの時のマスク5部制が、今度は自動車5部制として帰ってきた。危機のたびに「5部制」を持ち出す国――どこか切なさを感じつつも、それだけ危機が深刻であるという証左でもある。

 

電力供給の側面でも緊急対応が続いている。政府は既存の原子力発電所の稼働率を引き上げ、LNG(液化天然ガス)供給に支障が生じた場合に備え、石炭火力を弾力的に運用することを決めた。春の定期点検を前倒ししたり、あるいは見送ったりするという「強硬策」まで講じているのだ。

物価対策も並行して進められている。政府は石油製品の最高価格制を導入し、公共料金を凍結。民生物価特別管理品目に指定された物品への割引支援を拡大することにした。ナフサなどの重要品目の需給状況を密着点検し、追加補正予算も迅速に編成・執行する方針だ。

トランプ流のツケが同盟国に

結局、「スボン大乱」は、資源に乏しい韓国が直面したサプライチェーンの素顔をそのまま映し出している。 日本でも、国民的スナックであるポテトチップスの生産ラインが止まり、トイレットペーパーの品不足が発生するなど、庶民の日常が大きく揺らいでいるとの報道を目にした。

トランプ米大統領、3月2日 by Gettyimages
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同盟の安全よりも目の前の得失を優先するトランプ流の取引主義が、中東の不確実性を増幅させ、そのツケはそっくりそのまま、韓国や日本のようなエネルギー輸入国の家計へと回ってきた。

韓国や日本で起きている騒ぎは、力の論理が支配する国際政治構造の中で、ミドルパワー(Middle Power)の国民が甘受すべき不便の、「ようやく入り口」に過ぎないかもしれない。中東の紛争がホルムズ海峡を越え、韓国と日本の庶民の日常までをも揺さぶる時代だ。

イラン戦争勃発からまだ1か月、早くもエネルギー危機はテレビニュースの中だけの経済指標ではなく、今まさに自分の財布から出ていく生活費の問題となっているのだ。

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