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PAを何カ所も探し… 深夜の高速道路で休む場所がないトラック運転手の苦悩と異様な光景

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深夜のPA混雑 社会問題
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PAを何カ所も探し… 深夜の高速道路で休む場所がないトラック運転手の苦悩と異様な光景

その背景には高速道路深夜割引が関係している

平日夜の高速道路を中心に、トラック運転手の休憩場所が不足していることが問題となっている。サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)は夕方から駐車枠が埋まり、明け方まで慢性的な混雑が続く。特に関東から関西にかけては混雑が激しく、駐車枠の外に止まる車も珍しくない。輸送の効率化などにより高速道路を利用する車が増加する一方、労働時間の厳守などが重なり、負担はドライバーにのしかかる。

どこも混雑「休憩とることが苦痛」

午後11時過ぎ、神奈川県中井町の東名高速中井PAは大型トラックで埋め尽くされ、エンジン音が響いていた。駐車枠が空いておらず通路に止めるトラック、止める場所が見つからずそのまま本線へ合流していくトラック―。人々が眠りにつく時間に異様な光景が広がっていた。

運送会社フジトランスポート松山支店の長距離運転手、中越一樹さん(39)は「(現在の混雑状況だと)休憩をとることが苦痛になっている。PAやSAを何カ所も探してやっと止められるかなというところ。走行する車線のぎりぎりに路駐している人もいて、そこを通過するとトラックのミラーが当たりそうで本当に怖い」と話す。

休憩場所の拡充は「職場環境の問題」

トラック運転手は国の定める「改善基準告示」によって、連続運転時間は原則4時間以内で、休息は最低でも継続9時間とることなどが細かく定められている。もし休まずに走行して事故を起こせば、重大な責任を問われることになる。ドライバーにとって、休める場所を探すことは切実な問題なのだ。

高速道路網の発達や労働時間の制限、輸送の効率化を受けて、近年、大型車の高速道路利用は増加している。ネクスコ東日本など高速3社によると、車種別の平均通行台数は、平成25(2013)年度は中型車、大型車、特大車合計で1日平均約136万台に対し、令和6(2024)年度は約169万台にまで増えた。

各高速道路会社は、駐車枠の増設や短時間限定駐車マスの導入などを進め、運転手の休憩場所の拡充を図っている。全日本トラック協会の担当者は「(運転手にとって)高速道路は職場。職場環境の問題を改善していかないと若い人が入ってこない。ドライバーがいつでも自由な時間に休憩が取れるよう国に休憩施設の拡充を要望している」と話すが、抜本的な改善には至っていない。

午前0時、深夜割引を待つ“群れ”

休憩場所の不足と同じく問題となっているのは、深夜割引の適用をめぐる時間調整だ。

午前0時前。東名高速道路上り線の東京料金所(川崎市宮前区)には、大型トラックがずらりと列をなしていた。日付が変わると、号砲が鳴ったかのように一斉に動きだし、5分ほどで列は消えた。

高速道路料金は、午前0時から午前4時の間に少しでも走行すれば全区間の利用額が3割引きとなる。このため、運転手は手前のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で時間を調整して高速道路を降りる。

ネクスコ3社はこうした状況を踏まえ深夜割引制度の見直しを予定している。割引適用時間を午後10時から翌午前5時までに拡大し、時間内に走った分のみ3割引きにする。また400キロを超える走行については長距離割引の適用を拡大する。

見直しは当初、今年3月末に予定され、その後に7月頃へと延期されたが、システム開発の遅れやシステム障害対策のためさらに延期されている。具体的な運用開始時期は今後改めて告知されるという。

新たな制度が始まれば「午前0時待ち」は解消される見込みだが、割引適用時間帯に走行した距離の分だけが割引対象となるため、夜に高速道路内のSAやPAで休息をとる運行ではほとんど適用されず、実質的な値上げとなる。また午後10時の割引適用時間前まで時間調整を行う車がSAやPAにあふれる可能性もある。

荷主と運送会社の力関係

高速道路での休憩場所や深夜割引の問題はなぜ起こるのか。原因の一つに、荷主の立場が強く、運送会社は従わざるを得ない力関係があるという。物流ジャーナリストの坂田良平氏は「運送会社は自分たちでビジネスデザインを決めることができない。荷物を出す側と、受け取る側の荷主間で決まる。高速道路料金を負担してくれない荷主もいる」と話す。

関東から関西への輸送歴10年で、現在は事務方の業務を行う30歳の運送会社社員は「荷主がどうしても早く荷物を欲しいという場合は、こちらも荷主に運賃(の割り増し)を交渉していかなければならない」と考えているという。

今日頼んだものが、明日届く便利な世の中になった。こうした物流を支えているのが、全国を巡る長距離トラックだ。街が眠りにつく深夜の高速道路で作り出される不思議な光景はこの先、どこへ向かうのだろうか。(文・写真 相川直輝)

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