7つの遺伝子変異を持つ新しい変異H3N2インフルエンザが、数十年で最悪の流行を引き起こす可能性。英国の専門家は「今季は4人に1人が感染する」と警告
過去数十年で最悪の流行になる可能性
例年より 1カ月以上早くインフルエンザの流行が始まっていて、例えば日本では、11月6日の時点で、「学級閉鎖のクラス数が 3000件近く」になっています。
2025年8月28日〜11月6日までの学級閉鎖クラス数
Kiyohime Okami
この学級閉鎖には、コロナも含まれているようですが、圧倒的に多いのはインフルエンザのようです。
以下は、2024年と今年 2025年の患者数の推移の比較です。
インフルエンザ患者数の推移の昨年と今年の比較
nippon.com
なぜこんなに早い時期に、そして急速に流行が拡大しているかというと、現在流行しているインフルエンザ株が、
「 H3N2 の変異株」
であることが大きいようです。
今年 6月に変異が確認されていたものですが、それにより平年とは異なる流行の状況を作り出している模様。
まだ流行の初期とはいえ、東京都の例を見ますと、圧倒的に若い世代での流行となっていて、80%以上が 19歳以下となっています。
感染確認患者の80%以上が0歳から19歳
東京都感染症情報センター
この変異株に関して世界中の専門家たちが警鐘を鳴らしているとする医学メディアの報道をご紹介します。普通の医学メディアの報道ですので、「ワクチン接種を勧めている」のですけれど、現在の変異株は、
「今季のインフルエンザワクチンの開発が終わった後に現れたもの」
ですので、まあ……実効的な意味合いは、あまりなさそうです 。
ある病院のサイトにも以下のようにありました。
インフルエンザワクチンは、毎シーズンの流行株予測に基づいて株が選定されます。しかし2025年6月に出現したH3N2の新変異株(サブクレードKと呼ばれる系統)は、ワクチン株選定後に生じたため現在のワクチンに含まれるH3N2株と完全には一致しない可能性があります。実際、カナダなど各国の専門家も「現在流行中のH3N2は、今年のワクチン株と比べて大きく異なる」と指摘しており、ウイルスの構造変化によってワクチンと流行株の“ギャップ”が広がっていると報告されています。
また、インフルエンザワクチンには抗原原罪という「従来株の免疫記憶が変異株の抗体応答を妨げる現象」があり、どのみち効果的ではない(あるいは逆効果)の部分は強いです。
それと共に、今回ご紹介する記事の中にある以下の文脈も、よく理解できます。
> COVID-19 mRNAワクチンへの以前の曝露により、すでに多くの人が免疫機能障害や免疫不全の問題を抱えているため、この新しいインフルエンザは深刻な世界的な健康脅威をもたらす可能性がある。
これについては、IgG4 抗体だとか、感染症が拡大する理由はいくらでも述べられますが、今回の本題とはあまり関係ないですので、ふれません。
接種と免疫の関係は以下の記事などにあります。
・子どもや若者たちの現在の「極端な免疫低下」は、どこかで止まるのか、それとも止まらないのか
In Deep 2023年6月10日
また、最近は世界中で以下のような、ややリスキーな「機能獲得研究」が盛んですので、そういうこととも関係したウイルスも紛れてくる日もありそうです。
・韓国の研究所が哺乳類に対して100%の致死性を持つ鳥インフルエンザを作製
地球の記録 2025年6月14日
ともあれ、今季は過去にないようなインフルエンザの流行となる可能性が高く、対策は…まあ特にないですが、皆様もお気をつけください。
ここから報道です。
7つの遺伝子変異を持つ新しい変異H3N2型インフルエンザウイルス株が、数十年で最悪の世界的なインフルエンザの波を引き起こす可能性がある
New Mutant H3N2 Flu Virus Strain With 7 Genetic Changes Could Unleash Deadliest Global Flu Wave in Decades!
thailandmedical.news 2025/11/11

新たなインフルエンザ変異に対する世界的な懸念が高まる
保健専門家たちは、すでに数力国で急速に感染が広がり始め、10年以上ぶりの最悪のインフルエンザシーズンになるとの懸念を引き起こしている H3N2 インフルエンザウイルスの新たに変異した株に対して警鐘を鳴らしている。
7つの異なる遺伝子変異を伴うこの変異株は、日本とイギリスの両方で異常に重篤な症例と関連付けられており、疫学者たちは数週間以内に世界中に広がる可能性があると報告している。
すでにアジアとヨーロッパの一部の病院では、特に高齢者や免疫力が低下している人の間で、インフルエンザ関連の入院が急増していると報告されている。世界中の政府や保健当局が状況と脅威を軽視しようとしているにもかかわらず、死亡率はすでに上昇している。
まだ発表されていない予備研究では、これらの新しい H3N2 株は神経栄養性 (神経細胞の生存、成長、機能維持に役割を果たす)がより強く、消化管の組織に対する向性も示すことが示されている。
SARS-CoV-2 ウイルスや COVID-19 mRNAワクチンへの以前の曝露により、すでに多くの人が免疫機能障害や免疫不全の問題を抱えているため、この新しいインフルエンザは深刻な世界的な健康脅威をもたらす可能性がある。
さらに懸念されるのは、専門家たちが、この新しい株は進化的行動の点で非常に「不安定」であり、現在も変異していると警告していることだ。H5N1 も循環しているため、再集合イベントが発生した場合、「時限爆弾」を抱えていることになる。それでも、世界中の政府と保健当局は、新たな脅威を軽視または隠蔽しょうとしている。
英グラスゴー大学のアントニア・ホー博士とフランシス・クリック研究所の世界インフルエンザセンターのニコラ・ルイス教授によると、変異株は予想よりも早く表面化しており、通常の季節性インフルエンザウイルスよりもはるかに伝染力が強いと見られている。
報道では、専門家たちが、この新しい H3N2 亜型は感染力が強いだけでなく、過去の感染やワクチン接種で獲得した免疫に対しても部分的に抵抗性があることを明らかにしている。
変異したH3N2株がより危険な理由
H3N2 インフルエンザウイルスは歴史的に H1N1 株よりも重篤だが、この新しい変異株はさらに攻撃的であるように見える。ケンブリッジ大学とオックスフォード大学の科学者たちは、早くも 6月に検出されたこれらの7つの変異により、ウイルスが抗体を回避し、ヒト細胞内で効率的に複製する能力が高まったことを確認している。
この株の再生産数(R値 / 1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す指標)は 1.2 から 1.4 に上昇しており、これは感染者 100人あたり約 140人に感染を広げる可能性があることを意味する。通常のインフルエンザの流行期には 120人にとどまる
この感染速度の速さと、ウイルスの出現時期(通常のインフルエンザのピークの約 5週間前)の早さが相まって、ワクチン接種が間に合わなかった人が多い。専門家は、早期の発症により、集団免疫が発達する前に数百万人がウイルスに感染する可能性があると答告している。
さらに、変異株が出現する数ヶ月前に設計された現在のインフルエンザワクチンは、この株との相性が悪く、ワクチンの効果が低下するのではないかという懸令が生じている。
症状と健康リスクは変異によりさらに深刻化
H3N2 インフルエンザウイルスに感染した患者は、高熱、激しい筋肉痛、胸の不快感、極度の疲労感など、より激しく長引く症状を報告している。
ウイルスによって引き起こされる炎症は、しばしば肺機能を低下させ、酸素供給を減少させ、肺炎、敗血症、臓器炎のリスクを高める。オーストラリアと日本の医師たちは、高齢者や免疫不全患者において、回復期間が異常に長く、心筋炎、脳炎、呼吸不全の症例が増加していることを観察している。
オックスフォード大学パンデミック科学研究所のクリストフ・フレイザー教授をはじめとする専門家は、特にCOVID-19後の免疫力の低下とワクチンの効果低下を考慮すると、今年の流行は人口のはるかに多くの割合、おそらく 4人に 1人が感染する可能性があると警告している。
フレイザー教授は「今年のインフルエンザシーズンは数十年で最悪のシーズンになる可能性が高い」と強調した。
世界の保健当局が警戒を強化
欧州、北米、アジアの公衆衛生機関は、ワクチン接種の即時開始を強く求めている。
英国の国民保健サービス(NHS)は「インフルエンザワクチン接種SOS」を発令し、200万件以上のワクチン接種予約がまだ空いている。しかし、研究者たちは、ワクチンは不完全ではあるものの、感染の重症化を軽減し、入院を減らすことができることを認識している。
英国保健安全保障庁のメアリー・ラムゼイ博士は、部分的な免疫獲得でさえ「高リスク群の重症化や死亡を防ぐ上で依然として重要」であると述べている。
一方、日本では、地域的な感染拡大を抑制するため、完全なロックダウンではなく、対象を絞った対策として、一時的な学校閉鎖を実施した。
ケンブリッジ大学病原体進化センターの専門家は、ウイルスの初夏の変異サイクルは非常に異例であり、通常のインフルエンザシーズンが始まる前に感染拡大を加速させた可能性が高いと指摘している。世界的な気温低下と人々の屋内で過ごす時間の増加に伴い、感染拡大は激化すると予想される。



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