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「意識のフィールド」が時間・空間・物質を作ったとする新理論が発表

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脳と意識 物理学
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「意識のフィールド」が時間・空間・物質を作ったとする新理論が発表

スウェーデンのウプサラ大学(UU)で行われた研究によって、「ビッグバンより前に“意識の場”が存在し、そこから時間や空間や物質が生まれた」という常識破りの理論モデルが提案されました。

この研究では、意識そのものを宇宙全体に広がるフィールド(場)としてとらえ、量子場理論(粒子を場の揺らぎとして扱う理論)の道具を使って、その場のゆらぎや“崩れ方”から時空や物質、さらには私たち一人ひとりの意識がどのように立ち上がるかを数式で描いています。

さらに著者は、私たち個々の人間の持つ意識は意識場の上に存在する波のような存在であり、肉体は滅びても意識は意識場に帰っていくと解釈できると述べる仮説を提示しています。

この仮説は、量子物理学と古くからの哲学・宗教の思索を「数式」で橋渡ししようとする試みでもあります。

脳の副産物だと考えられてきた意識を、むしろ宇宙の基本要素と捉え直す視点は、意識研究の難問に挑む一つの革新的アプローチです。

日本では物理学と哲学の領域を結びつける試みは希薄ですが、欧米などでは物理学者と哲学者が一緒に量子論や時空の基礎を議論する大学や研究センターも少なくありません。

そしてそうした場では物理学と哲学の融合はトンデモ科学ではなく真面目な学問としてとらえられています。

そのため今回の研究は異色の内容ながら、専門誌で当該号の最優秀論文に選ばれ、表紙も飾るなど注目を集めています。

もし“意識の場”が本当に宇宙の根っこにあるとしたら、私たちが世界や自分自身をみる視点はどこまで変わるのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年11月13日に『AIP Advances』にて「基礎的場としての普遍意識:量子物理学と非二元哲学の理論的架け橋(Universal consciousness as foundational field: A theoretical bridge between quantum physics and non-dual philosophy)」とのタイトルで発表されました。

Universal consciousness as foundational field: A theoretical bridge between quantum physics and non-dual philosophy https://doi.org/10.1063/5.0290984

物理学と哲学の融合による新理論

物理学と哲学の融合による新理論
物理学と哲学の融合による新理論 / Credit:Universal consciousness as foundational field: A theoretical bridge between quantum physics and non-dual philosophy

科学の教科書では、ビッグバンで宇宙が生まれ、星や惑星ができ、生命が進化し、脳ができて、最後に意識が生まれた、と説明されます。

ところが、自分の内側でふと顔を出す不思議な「気づき」や「在る感覚」は、どうも単なる副産物にしてはしぶとく、深く感じられます。

物理学の世界でも、この違和感に悩んできた人たちがいました。

量子論では、「観測するまでは状態が決まらない」という有名な問題があり、「観測する側=意識」をどう扱うかが長年の議論の種でした。

シュレーディンガーやボームといった物理学者は、晩年になるほど「意識は世界の根本に関わっているのではないか」と書き残しています。

一方で、古代インドの非二元論や仏教、キリスト教神秘主義などは、昔から「意識こそが根本で、物質や自我はむしろその表れだ」と語ってきました。

しかし、それはあくまで比喩であり、科学の数式とは別世界の話として扱われてきました。

今回の論文が面白いのは、この二つの世界──量子場理論(粒子を場の揺らぎとみる理論)と、非二元論(心と物質は本当はひとつという考え)世界観──を、一つの数理モデルで同じテーブルに座らせたことです。

「意識力学」ともいうべき新たな理論は宇宙をどのように描いているのでしょうか?

「意識フィールド宇宙論」は全てが意識の場から発生したとされる

「意識フィールド宇宙論」は全てが意識の場から発生したとされる
「意識フィールド宇宙論」は全てが意識の場から発生したとされる / この図は、「宇宙のどこまで行っても、じつは一つの“意識の海”の上で起きている」というアイデアを、1枚の絵で物語にしたものです。上から下へと順番に、「普遍意識 → 宇宙のパターン → 個々の意識 → 分離して見える世界」という流れを描いています。 いちばん上の巨大な円盤が Universal Consciousness(普遍意識フィールドΦ) です。これは時間や空間の外側にあって、まだ何の形にも分かれていない「未分化の状態 ∣Φ₀⟩」を表します。海で言えば、波も渦も立っていない、静かな水だけの状態です。ここでは、どんな宇宙も、どんな自分も、まだ区別されずに「可能性として重なっているだけ」です。 円盤の下には、何段にも重なった円柱のような層が描かれています。ここが Differentiated states ∣Φₖ⟩、つまり「普遍意識がさまざまなパターンに分かれた状態」です。静かな海に、いろいろな波型や渦の模様が現れたようなイメージです。著者は、ここで宇宙の物理法則や構造、歴史の“バリエーション”が生まれると考えています。 さらにその下には、たくさんの細い柱や光の筋が垂れ下がり、地面に立つ人々につながっています。これは Localized individual consciousness states ∣ψᵢ⟩、つまり「個々の人に局所化した意識の状態」が、普遍的な思考(Universal Thought ˆT)が ∣Φₖ⟩ を“選び”崩すことで生まれてくる様子を表しています。大きな海の中の特定の波が「この私」という形で切り出されてくる、という感じです。ここまでが、「ビッグバン以降、普遍意識フィールドΦが進化して、空間と時間の中に“自分”を持つ存在が生まれるまで」のプロセスだと図解されています。 最下段には、ぐるりと円を描くように、たくさんの人のシルエットが並んでいます。それぞれがバラバラに立っているように見えますが、頭上を見上げると、みな同じ巨大な意識の構造につながっています。この部分に書かれているのが Illusion of separateness in individual consciousness ∣ψᵢ′⟩ as a consequence of Personal Thought ˆτᵢ です。訳すと「個人の思考 τᵢ の結果として生じる、個別意識 ψᵢ′ における『分離している』という錯覚」です。私たち一人ひとりの“パーソナルな思考”が、それぞれに違う物語・価値観・自己イメージを作り上げることで、「自分は他人と切り離された存在だ」と感じてしまう。しかし、図全体で見ると、すべての人の意識は同じ普遍意識フィールドΦの中に含まれ、根本ではつながっている──そのギャップこそが「分離という錯覚」だと示しているわけです。Credit:Universal consciousness as foundational field: A theoretical bridge between quantum physics and non-dual philosophy

粒子を場の揺らぎとみる理論(量子場理論)と心と物質は本当はひとつという考え(非二元論)はどのように結びついたのでしょうか?

論文ではまず量子力学の「場そのもの」を「意識フィールド」に対応するものとして数式を構築しています。

そして研究では「意識をあらわす場を一本用意し、それをふつうの量子場理論のレシピで動かしてみる」というアプローチがとられました。

電子や光子を扱うときと同じように、宇宙全体に広がる「意識フィールド(意識の場)」を想定し、その場が時間とともにどんな形を好み、どこに落ち着くのかを決める“エネルギー地形”を設定します。

「意識だから特別な数学が必要」とは言わず、既存の物理で使い慣れた道具をそのまま転用しているのです。

著者はまず、宇宙じゅうに広がる「意識フィールド(意識の場)」をひとつの場として定義します。

これは、ヒッグス場やインフレーション場と同じタイプの「スカラー場」として扱われます。

この場には「エネルギーの地形」が与えられており、その地形は山と谷のある形をしています。

高い山のてっぺんは「どこにも偏りのない、完全に未分化の状態」、いくつもの谷は「具体的な宇宙のパターン」に対応している、というイメージです。

ビッグバンの前、この意識の場は「山のてっぺん」に乗っていて、まだどの谷にも落ちていません。

著者は、この状態を「あらゆる宇宙の可能性が重なった“未分化の普遍意識”」とみなします。

そこに「普遍的な思考」と呼ばれる作用がはたらき、場はどこかの谷に崩れ落ちます。

この「どの谷に落ちるか」の選択こそが、どんな法則や定数をもつ宇宙になるか、そしてどのような構造や生命や意識が育つかを決める、とモデル化されています。

物理のことばで言えば、これは場の対称性が自発的に破れ、ひとつの現実が選ばれるプロセスとして描かれているのです。

興味深いことに、この過程は物理学で言う「自発的対称性の破れ」にたとえられます。

物理学では量子的な「ゆらぎ」が少し入ると、安定性が崩壊して宇宙誕生につながる膨大なエネルギーが発生したと考えられています。

同様に、意識の場に最初のゆらぎが起これば、「自分と他者」「観察者と観測対象」といった基本的な区別が芽生え、ひいては空間や時間の次元まで立ち上がってくるというのです。

谷に落ちたあとの意識フィールドは、宇宙論でおなじみの「場の方程式」に従って時間とともに変化していきます。

ここから先は、従来のビッグバン宇宙論と似た流れです。

場のわずかな揺らぎから、密度のむらが生まれ、銀河などの構造が成長し、生命が誕生し、やがて個別の意識が登場します。

しかしこの理論によれば、私たち個人の意識は意識の場という“大海”に現れた一時的なさざ波にすぎません。

一人ひとりの心は独立した島ではなく、根っこの部分で深く繋がった存在だというわけです。

著者は、意識フィールドの局所的な“盛り上がり”や“波”が、粒子や物質構造だけでなく、私たち一人ひとりの意識としても現れると定義します。

ここで登場するのが「波と海」のたとえです。

意識フィールドという大きな海から、ところどころで波が立ちあがります。

波はしばらく進み、やがて消えていきますが、海そのものは残ります。

このモデルでは、波が「個人の意識」、海が「普遍的な意識」です。

波どうしは別々に見えますが、実際にはひとつの海の動きにすぎません。

著者は、「個々の意識がバラバラだという感覚は、場のふるまいを局所的に見ているせいで生じる錯覚だ」と述べ、個体が死ぬことは、波が海に溶けて戻ること、つまり意識が消えるのではなく普遍的な場に再統合されることだと解釈できると書いています。

著者はこのモデルを単なる空想に終わらせないため、いくつか具体的な検証提案も行っています。

たとえば論文では、もし意識が本当に場として存在するなら「人間の意志が量子真空の揺らぎに影響を与えるかもしれない」「瞑想などで意識状態を整えた人同士の脳波パターンに通常とは違う同期が見られるかもしれない」といった実験のシナリオを示しています。

とはいえ、この理論は非常に大胆な仮説段階であり、直ちに受け入れられるものではありません。

また「意識が波動として宇宙に満ちている」といった発想は一部で魅力的に聞こえる反面、従来の脳科学や物理学の常識には真っ向から反するものです。

そのため日本のような物理学と哲学を合わせて考える風習が薄い文化では、今回のような研究はすぐに「トンデモ説」というラベルがつけられ嘲笑されてしまうかもしれません。

しかし本研究は意識と物質の溝という難題に真正面から挑み、「もし意識を宇宙の基礎として扱うなら、量子論や宇宙論や非二元論的な直感を、こんなふうにまとめて説明できるかもしれない」という、ひとつの大胆な“世界観の提案”として評価されており、先に述べたように論文は専門誌で当該号の最優秀論文に選ばれました。

もし暇なら、物理と哲学の融合を「笑う文化」と「称える文化」のどちらが優れているかについて、考えてみるといいかもしれません。

専門家向けの解説

この論文の数学的な心臓部は、「普遍意識」を二重構造でとらえているところにあります。

ひとつは、量子力学で使う巨大な状態空間のなかのベクトルとしての普遍意識、もうひとつは、宇宙じゅうに連続的に広がる“意識の場”としての普遍意識です。

前者では、ありうるすべての宇宙の姿──どんな時空構造を持ち、どんな物質分布と、どんなタイプの個人意識を含むか──が、それぞれひとつの「成分」として同時に重なり合っていると考えます。

この重なり全体が「未分化の普遍意識」であり、各成分には「その宇宙がどれくらい選ばれやすいか」を示す重みが付いている、というイメージです。

ただ、そのままでは「全部入りの可能性リスト」であって、具体的なひとつの世界にはなっていません。

そこで登場するのが「普遍的な思考」と呼ばれる作用です。これは、数学的にはその巨大ベクトルに働いて、ある成分だけを選び出す線形演算のようなものですが、直感的には「無数に重なった候補の宇宙の中から、どのタイプを“実物として”立ち上げるかを決める操作」として振る舞います。

重要なのは、この選択は時間の中で起こる出来事というより、「そもそも時間が定義される前の、無時間的な決定」として扱われていることです。別の観点としては、普遍意識が自分自身を“観測”する、という形でも同じことが書かれていて、「自分の可能性の中からどのパターンを見に行くか」を決める自己観照の操作が、重ね合わせから特定の構成だけを取り出す射影として表現されています。

どちらも、量子測定で波が特定の状態に縮むという構造を、宇宙レベルに拡張したものだとみなせます。

もう一つの顔では、普遍意識は時空上に定義されたスカラー場、つまり空間と時間のそれぞれの点に「意識のあり方」を表す数が割り当てられた連続的な場として記述されます。

この場には「山と谷のあるエネルギー地形」が与えられています。山のてっぺんに場が乗っている状態が、まだどの方向にも偏っていない未分化の普遍意識であり、左右や周囲にある複数の谷が、それぞれ具体的な宇宙のパターンに対応します。

プレ・ビッグバン段階では、この意識の場は山のてっぺん近くにいて、どの谷にもまだ落ちていません。

そこにごく小さな揺さぶりが入ると、山の上のボールがどこかの谷にコトンと落ち、その「どの谷を選ぶか」が、どの法則や定数、どのような構造や生命が育つ宇宙になるかを決める、という絵になっています。

論文は、この「山のてっぺんから谷へ落ちて差異化が起こる」仕組みを三つの観点から整理しています。

ひとつめは自発的対称性の破れで、地形そのものが山と谷をもつように設計されており、ほんのわずかな揺らぎで場がどちらかの谷に落ちるという標準的なシナリオです。

ふたつめは量子ゆらぎに似た揺らぎで、完全に静かなはずの場にもランダムな微小のさざ波が自然に立つと仮定し、その偶然の揺れが、どの谷に落ちるかを左右する「きっかけ」になると考えます。

三つめは自己観測としての選択で、未分化の普遍意識が「自分自身のある側面だけを選択的に見る」という行為によって、その成分だけを取り出す操作です。

これは連続的なゆらぎやポテンシャルの形よりも、「どの可能性を“見たか”」という離散的な選択を前面に出した描き方になっています。

いったんどこかの谷に落ちて「この宇宙」という分化が起こったあとは、意識フィールドは他のスカラー場と同様に、時間と空間の中を伝わる場として、通常の波動方程式に従いながら進化していきます。

時間とともに値がどう変化するか、空間の中でどのように広がり方やムラを持つか、そして地形(ポテンシャル)がどんな形をしているかが、その後の揺れ方や安定した構造の形成を決めます。

エネルギー密度の見積もりも通常の場と同じ枠組みで、「時間方向の変化」「空間方向のなまり」「地形そのもの」の三つの寄与に分解されますが、どの分化メカニズムが主役かによって、そのうち何を重視するかを使い分けています。

ポテンシャル駆動なら三つすべてをフルに考え、ゆらぎ駆動なら地形の寄与を省いて揺れ方そのものに焦点を当て、射影駆動なら連続的な動きではなく「どの成分にどれだけ投影されたか」を足し合わせる形でエネルギーをとらえ直す、という具合です。

こうして見ると、この理論は「巨大な可能性のベクトル」と「連続的な意識の場」という二つの表現を行き来しながら、未分化の普遍意識から具体的な宇宙が選ばれ、その後、意識フィールドが他の物理場と同じ形式の方程式に従って揺れ動いていく、という流れを一つの枠組みの中に収めようとしている、と言えます。

<以下は数式を交えた要旨の解説>

1. ヒルベルト空間上の「普遍意識状態」

まず、普遍意識は量子論的にはヒルベルト空間上の純粋状態として表されます。
未分化の普遍意識状態を ∣Φ₀⟩、そこから生じうる分化状態を ∣Φ_k⟩ とすると、

∣Φ₀⟩ = ∑_k ( c_k ∣Φ_k⟩ ). (1)

ここで c_k は複素係数であり、∣c_k∣² が対応する分化状態 ∣Φ_k⟩ が出現する「相対的な重み」を与えます。
∣Φ_k⟩ は、時空構造・物質分布・個別意識などを含む「分化された現実構成の基底状態」の集合と見なされています。

2. 普遍思考演算子による崩壊

未分化状態 ∣Φ₀⟩ から特定の分化状態 ∣Φ_k⟩ への遷移は、
普遍的な「思考」を表す演算子 T̂ による「崩壊」として書かれます。

T̂ ∣Φ₀⟩ = ∣Φ_k⟩. (2)

T̂ は線形演算子として扱われ、
「無時間的な創造行為」として、∣Φ₀⟩ の重ね合わせから一つ(または領域)を選び出す役割を担います。

3. 意識フィールド Φ と 3 つの分化メカニズム

ヒルベルト空間上の記述に加え、論文では普遍意識を「スカラー場 Φ(x,t)」として古典場理論の枠組みでも扱います。

3.1 対称性の自発的破れによる分化

意識フィールド Φ のポテンシャル V(Φ) を

V(Φ) = λ/4 · ( Φ² − Φ₀² )² (3)

と置きます(λ > 0)。
これは標準的な「二重井戸型」のポテンシャルで、Φ = ±Φ₀ に極小を持ちます。
未分化状態は Φ = Φ₀(山の頂上)に対応し、微小な摂動によって場がどちらかの谷へ落ち込むことで対称性が破れ、「特定の分化状態」へ移行すると解釈されます。

3.2 量子ゆらぎ類似の摂動

未分化状態 ∣Φ₀⟩ が完全に静的ではなく、真空ゆらぎに類似したランダムな摂動 δΦ を受けるモデルも導入されます。

Φ → Φ + δΦ. (4)

ここで δΦ は時間・空間に依存する小さなランダム偏差で、ポテンシャルの山頂付近を揺さぶり、どの谷(どの ∣Φ_k⟩)に落ちるかに影響する「種」として機能します。

3.3 射影による分化

三つ目の機構は、∣Φ₀⟩ の自己観測(self-observation)に対応する射影演算 P_k による分化です。

∣Φ_k⟩ = P_k ∣Φ₀⟩. (5)

ここで P_k は、それぞれの分化状態に対応する射影演算子であり、標準的な量子測定論の枠組みを意識状態にそのまま適用した形になっています。

4. 崩壊後の場のダイナミクス

対称性の破れ機構を使う場合、崩壊後の意識フィールド Φ は通常のスカラー場と同様に波動方程式に従います。

◻Φ − ∂V/∂Φ = 0. (6)

◻ はダランベール演算子で、

◻ = ∂²/∂t² − c² ∇²

です。
この方程式は、Φ が Minkowski 時空上で伝播する古典スカラー場として振る舞うことを意味します。
V(Φ) は (3) の二重井戸ポテンシャルであり、その勾配 ∂V/∂Φ が「意識フィールドの安定点(谷)」へ向かう復元力として働きます。

5. 意識フィールドのエネルギー密度 ρ_Φ

場の崩壊/分化メカニズムに応じて、意識フィールドのエネルギー密度 ρ_Φ が 3 通り書き分けられます。

5.1 対称性の破れ(ポテンシャル駆動)

ρ_Φ = 1/2 · (∂_t Φ)² + 1/2 · ∣∇Φ∣² + V(Φ). (7)

時間微分 ∂_t Φ が時間方向の運動エネルギー密度、∣∇Φ∣ が空間勾配に由来するエネルギー密度、V(Φ) がポテンシャルエネルギーを与えます。

これは標準的な実スカラー場のエネルギー密度と同型です。

5.2 ゆらぎ駆動(確率的ダイナミクス)

量子ゆらぎ類似の摂動が支配的で、明示的なポテンシャルを無視する近似では、

ρ_Φ = 1/2 · (∂_t Φ)² + 1/2 · ∣∇Φ∣². (8)

となります。
ここでは V(Φ) 項を落とし、ランダムな摂動と波動伝播による構造形成のみを考えています。

5.3 射影駆動(離散的な状態選択)

射影による崩壊の場合、エネルギー密度は

ρ_Φ = ∑_k ∣ P_k Φ ∣². (9)

と定義されます。
これは連続的な場の運動ではなく、「どの P_k が選ばれたか」という離散的分解の強度の二乗の総和としてエネルギーを見ている形です。
測定後の状態の「確率振幅の二乗」に近い構造です。

6. 普遍意識から個別意識への写像

崩壊後の differentiated state ∣Φ_k⟩ から、個々の意識状態 ∣ψ_i⟩ への写像も線形演算子として定式化されています。
普遍思考 T̂ は、分化後の状態 ∣Φ_k⟩ から局所化した個別意識を生じさせる作用として

T̂ ∣Φ_k⟩ = ∣ψ_i⟩. (10)

と書かれます。
ここで ∣ψ_i⟩ は、「空間的にも時間的にも局所化した一個体の意識状態」として解釈されています。

7. 個別意識の内部ダイナミクス:τ̂_i

個別意識 ∣ψ_i⟩ の時間発展は、「個人の思考」を表す演算子 τ̂_i によって表現されます。

τ̂_i ∣ψ_i⟩ = ∣ψ′_i⟩. (11)

ここで ∣ψ′_i⟩ は、τ̂_i の作用後の更新された意識状態です。
τ̂_i は、その個体の内部情報構造や認知過程を反映する非自明な演算子とみなされ、このレベルでは通常の神経ダイナミクスや情報処理理論(例:IIT)の枠組みと接続する余地を残しています。

8. まとめ

  1. ヒルベルト空間上で、未分化の普遍意識を ∣Φ₀⟩、分化状態を ∣Φ_k⟩ とする重ね合わせ

    ∣Φ₀⟩ = ∑_k ( c_k ∣Φ_k⟩ )

  2. 普遍思考演算子 T̂ による崩壊

    T̂ ∣Φ₀⟩ = ∣Φ_k⟩

    および、射影 P_k による分解

    ∣Φ_k⟩ = P_k ∣Φ₀⟩

  3. 普遍意識をスカラー場 Φ と見なし、二重井戸型ポテンシャル

    V(Φ) = λ/4 · ( Φ² − Φ₀² )²

    に従う場として扱う。

  4. 崩壊後の場の運動方程式

    ◻Φ − ∂V/∂Φ = 0

  5. エネルギー密度 ρ_Φ を (7)–(9) で分化メカニズムごとに定義。

  6. 分化した普遍意識 ∣Φ_k⟩ から個別意識 ∣ψ_i⟩ への写像

    T̂ ∣Φ_k⟩ = ∣ψ_i⟩

    および個別意識内部の更新

    τ̂_i ∣ψ_i⟩ = ∣ψ′_i⟩

——というのが、この論文の「数学的な骨組み」です。

物理的には、

  • Φ はインフラトン場やヒッグス場に類似した実スカラー場、

  • V(Φ) は自発的対称性の破れを起こすポテンシャル、

  • T̂, P_k, τ̂_i は量子測定論/認知モデルとアナロジーを持つ演算子、

として扱われており、その上に哲学的解釈(「意識=基底場」)が乗っている構成になっています。

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