マイナ保険証に医師が悲鳴「トラブル減っていないので、メリットない」
8月から完全移行「マイナ保険証」に医師が悲鳴…「現場にとってはメリットがまったくない」
あと4ヵ月で保険証は期限切れ……いつまで放っておいても大丈夫? 移行しないと「10割負担」ってホント?
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大きなデメリットとは
一方、デメリットとして最も大きいのは、病院や薬局の受付で、マイナ保険証による本人確認がスムーズにできない恐れがある点だ。渋澤氏が続ける。
「マイナ保険証がある方は、病院や薬局の受付にあるカードリーダーで本人確認のために顔認証をします。
しかし、この顔認証のおかげでトラブルが頻発しています。幼児や高齢者、車椅子の方にとってはカメラの位置が高すぎたり、画面に顔が収まらなかったりする。そもそも、視覚障害者の方には大きな負担です。
もちろん、顔認証がうまくできなくても、4桁の暗証番号を入力すれば本人確認はできますが……。画面の操作が難しい方もいますし、3回連続で間違えるとロックされてしまう。もしロックされると、解除するためには役所に出向かなければなりません」
実際、本人確認を補助するために、家族や介護士などが病人に同行するケースも多発しているという。
さらに、利用者側ではなく病院や薬局など施設側のシステムに不具合が出て、本人確認ができない場合もある。マイナ保険証を使う人は、万が一に備えて資格情報のお知らせ(前出の資格確認書とは別の書類。’24年以降に交付済み)を携帯してもいいだろう。もし手元にない場合は、加入する健保や自治体に問い合わせよう。
医療機関の7割がマイナ保険証のトラブルを経験
デメリットは他にもある。マイナ保険証の登録をしたマイナカードを紛失した場合、再発行に約1ヵ月かかる点だ。なお、急ぎの場合は約1週間で発行できるが、事前に予約したうえ、役所の窓口に出向いて申請しなければならないことが多い。
有効期限があることにも注意しよう。マイナカードは10年ごとに、カードに搭載された本人確認に必須の電子証明書は5年ごとに、それぞれ更新手続きのためにわざわざ役所の窓口に出向かなければならないのだ。
なお、マイナンバーの情報漏洩も年間334件(’23年度)から2052件(’24年度)へと大幅に増加している。
マイナ保険証によるトラブルは患者だけでなく、病院や薬局などの医療機関にとっても大きな負担になっている。
前述した通り、顔認証カードリーダーによる本人確認がうまくいかないとき、医療機関のスタッフが補助することは珍しくない。そもそもカードリーダーの機器は導入こそ補助金で賄えるものの、その後のメンテナンス費用は医療機関が負担するのだ。
山崎外科泌尿器科診療所院長の山崎利彦氏が語る。
「マイナ保険証のおかげで、煩瑣な事務作業やスタッフの対応など、医療機関の負担は増えています。
現在でも、約70%の医療機関がマイナ保険証に関するトラブルを経験している。運用が始まってから数年が経過しているにもかかわらず、トラブルが全く減っていません。
マイナ保険証にメリットがあるかと問われれば、現場の医師としては『ない』と言わざるをえないのです」
使うかを賢く判断しよう
全国に100万人以上いるとされる、訪問診療の患者を主に診ている医師・平野国美氏は、別の視点から語る。
「訪問診療の患者さんは、一人暮らしや認知症、足腰が不自由な方々が中心です。
彼らにマイナ保険証への切り替えやカードリーダーによる本人確認などを求めるのは極めて困難です。目を開けることすら難しいとか、暗証番号を覚えられない方がたくさんいるからです。
健康保険証であれば、現場で確認して、すぐに診察して処方箋を出すことができます。しかし、マイナ保険証による本人確認ができない場合は、事務スタッフが半日かけて保険者番号を調べなければならないこともあるのです」
現状では、利用者と医療機関にとって、運用上の稚拙さや技術的な不備、配慮の足りない設計が目立っていることは否定できない。しかし、利用者にメリットが皆無というわけでもない。前出の渋澤氏は、「本人の状態によって、マイナ保険証を使うかどうか判断すればいい」と語る。
「もし、ご自身やご家族が、ある程度のカード管理ができ、暗証番号の入力や顔認証に対応できる状態であれば、私はマイナ保険証への移行を積極的にお勧めします。
一方、カードリーダーの操作が困難だったり、むしろストレスだったりする場合は、無理をせず資格確認書を賢く利用してください」
大切なのは、自分や家族の事情に合わせて、マイナ保険証を使うかどうかを柔軟に決めることなのだ。
「週刊現代」2026年4月13日号より



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