「ナフサ危機」、10の疑問 ホルムズ海峡閉鎖で石化製品は不足しているのか
これは日経による政府擁護記事か?
原油から生まれ、プラスチックや衣類、医薬品にまで姿を変える――。石油化学製品の出発点となる「ナフサ」。ホルムズ海峡の緊張が高まり供給不安が意識される中、その動向は私たちの身の回りの製品にも直結する。石油化学工業協会(石化協、東京・中央)への取材などを基に、知っておきたい10のポイントを整理した。
1:そもそも「ナフサ」とは?
2:日本はナフサを主にどこから調達しているのか?
3:ナフサはどのようにして基礎製品になるのか?
4:どのような製品に使われているのか?
5:日本のナフサ調達構造の脆弱性は?
6:4月のナフサクラッカーの稼働率低下は中東危機によるものか?
7:4月の稼働率が特に低いのはなぜか?
8:石油化学製品の供給に影響は出ているのか?
9:サプライチェーンの川下での品薄の要因は?
10:ナフサの代替となる原料はあるのか?
1:そもそも「ナフサ」とは?
ナフサは原油を精製する過程で得られる石油製品の一種である。常圧蒸留装置において沸点の違いにより分離される留分のうち、約30~170℃で留出する軽質留分を指す。主に石油化学原料として用いられ、合成樹脂などの製造に使われるほか、ガソリンの原料にもなるため「粗製ガソリン」とも呼ばれる。
2:日本はナフサを主にどこから調達しているのか?
国内で生産されるナフサはガソリン用途に多く使われるため、石油化学向けには十分ではない。需要の約6割を輸入に依存している。主な調達先(2024年)はアラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタールなどの中東諸国で、一部は韓国などアジアからも調達している。
3:ナフサはどのようにして基礎製品になるのか?
ナフサは石油化学の出発原料であり、「ナフサ分解」によってエチレンなどの基礎化学品に変換される。分解を担う設備はナフサクラッカー(エチレン製造装置)とも呼ばれる。ナフサを水蒸気とともに800℃以上の高温で加熱し、熱分解すると、エチレンなどを含むガスが生成される。その後、急冷して反応を止め、圧縮・精製・低温分離を経てエチレンやプロピレンなどに分離される。生成物は複数同時に得られる「連産品」であり、収率の調整は可能だが、特定の製品だけを選んで生産することは基本的に難しい。
4:どのような製品に使われているのか?
ナフサ由来のエチレンなどは、合成樹脂、合成繊維、合成ゴム、洗剤、塗料、医薬品など幅広い製品の原料となる。合成樹脂の中でも、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニール樹脂は、幅広い分野で大量に使用されていることから「5大汎用樹脂」と呼ばれ、国内の合成樹脂生産量の約7割を占める。
代表的な用途としては、食品包装ではラップフィルム(塩化ビニリデン樹脂)や包装フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ペットボトル(ポリエチレンテレフタレート)、発泡トレー(発泡ポリスチレン)などに使われる。さらに浴槽(不飽和ポリエステル)や洗面器(ポリプロピレン)といった生活用品にも利用されている。自動車分野でも、ハンドル(ポリウレタン)、エアバッグ(ナイロン66)、バンパー(ポリプロピレン)、燃料タンク(ポリエチレン)など、多様な部材に用途が広い。
5:日本のナフサ調達構造の脆弱性は?
日本は石油化学用途のナフサ需要の約6割を輸入に依存し、その約7割を中東から調達している。このため、ホルムズ海峡の封鎖など地政学リスクの影響を受けやすい。また、国産ナフサも輸入原油を原料とするため、供給リスクを本質的に回避できない構造にある。
中国景気の減速で石油化学製品の需給にミスマッチ
6:4月のナフサクラッカーの稼働率低下は中東危機によるものか?
石化協は5月21日の会見で、4月の設備の実質稼働率が67.3%と過去最低水準になったと発表した。ただし、急激に落ち込んだわけではなく、中東危機以前から稼働率は低迷していた。
この背景について石化協の志村勝也専務理事は、「中国景気の減速により対中輸出が減少し、それに伴い、輸出品に使われるナフサ由来の石油化学製品の需要も弱含んでいた」と指摘する。一方で中国は設備増強によって石油化学製品の内製化を進め、アジア全体の供給は増加した。その結果、需給のミスマッチが続き、低稼働の状態が続いていた。
7:4月の稼働率が特に低いのはなぜか?
志村氏は「ナフサ不足の影響もあるが、主因は設備運用上の判断だ」と話す。ナフサクラッカーは一度停止すると再稼働に時間がかかる。稼働率を高めてナフサが不足し、完全に停止することになれば、石油化学製品の供給が途絶しかねない。このため稼働率を抑えて継続運転する戦略が取られている。
8:石油化学製品の供給に影響は出ているのか?
生産量は減少しているものの、在庫の活用により出荷はおおむね維持されている。例えば、低密度ポリエチレンは26年4月の生産量が前年同月比で27%減となった一方、出荷は4%減にとどまる。高密度ポリエチレンも同様に生産量は34%減だが、出荷は2%減と限定的だ。
ただし、前年同月にはなかった定期修理による生産設備の停止も生産減の一因であり、中東危機の影響のみで生産が減少しているわけではないことには注意が必要だ。志村氏は、「中東危機の影響で石油化学製品の出荷が極端に落ちていることはない。製品在庫も適正水準であり、供給不安になる状況ではない」と説明する。
一方で、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)は生産が前年同月比・前月比ともに減少しており、塗料などで品薄も指摘されている。BTXはナフサクラッカーからの副生成物でもあるが、主な供給源はナフサの接触改質で得られる改質生成油であり、ガソリン用途と競合する。このため、ガソリンとの生産調整の影響を受けやすく、エチレンなどに比べて供給減少が相対的に顕在化しやすい。
9:サプライチェーン(供給網)川下での品薄の要因は?
供給そのものより、サプライチェーンの途中での「目詰まり」が主因とみられる。石化協の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は5月21日の記者会見で、供給網の目詰まりの原因として、値上げや供給不安を見越した需要の前倒しや中間業者の在庫積み増し、さらに中東危機で輸入原材料が滞り国産への切り替えも難しくなっていることが重なっている可能性を指摘した。
工藤会長によると、実際に、3月や4月は「消費に近い商品では、対前年で3~4割増しの引き合いがあった」という。
10:ナフサの代替となる原料はあるのか?
エタンや液化石油ガス(LPG)といった他の化石燃料、バイオエタノールやバイオナフサなどの非化石原料、さらにはプラスチックの資源循環といったリサイクル原料などが代替として考えられる。
ただし、日本の既存設備はナフサの利用を前提に設計されており、代替原料の使用には大規模な設備投資が必要となる。政府が進めているグリーントランスフォーメーション(GX)や資源循環型社会を目指す取り組みは、環境対応にとどまらず経済安全保障や地政学リスク低減の観点からも重要性を増している。
岡山 幸誠
【関連画像】ナフサ需要の約6割を輸入に依存、その7割は中東だった。

マイコメント
今回の日経の記事は政府の要望による擁護記事だろうと思われます。
なぜなら、現場では不足しているのにその原因は中東からの輸入が減っていることが
一因だとしながらも中国の生産増強によりアジアでの需要が減ったため日本の生産を
抑えた結果だとしている。
アジアの需要が減った分を減産しているのであれば、国内の需要分は確保されている
はずだが、実際には足りていないというギャップがあります。
要するに中東からの輸入が減ったことが大きな要因ではないと述べているに等しい。



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