市場の崩壊が起きる可能性について考えてみる
うん、国債
新総裁決定後の今日 2025年10月6日、日経平均は狂乱の上昇となり、2,175円の上昇という、歴代4位の上げ幅を見せました。
その一方で、円はほとんどの主要通貨に対して円安方向に向かい、日本の長期国債の利回りは大きく上昇しました。
これに対して、ブルームバーグは、「日本国債「ショック」、米英債市場にも波及の可能性」というゴールドマンサックスの指摘を報道していましたが、クリス ・マッキントッシュ氏というヘッジファンドの資産運用を担当している人は、最近の記事で、
「債券市場が崩壊すれば、大惨事となるだろう」
と書いていますが、なぜ、債券という私たちにはあまりのなじみのないものが重要なのかというと、以下のようにわかりやすく述べています。
記事「パン、サーカス、そして債券危機:世界的な清算の始まり」より
国債とは単なる借用書だ。国が投資家から資金を借り、利子を付けて返済することを約束するものだ。
その政府がその資金を愚かなことに費やし、その返済能力が疑わしくなると、今度はその国債を買うほど愚かな新たな投資家を見つけるのが難しくなる。そして投資家は、今や明白になったリスクを補うために、より高い利回りを求める。
国債市場が非常に重要な理由は、住宅ローン金利、自動車ローン、企業信用、上場株式市場およびプライベートエクイティ市場、そして愚かな再生可能エネルギープロジェクトへの貸出金利など、あらゆるものに影響を及ぼすからだ。
あらゆる場所で利回りが上昇すると、あらゆる場所で資金コストが上昇する。そして、中央銀行が短期金利を一時停止または引き下げると、長期金利は低下する傾向がある。
…そして、市場は相互に結びついているため、ストレスは世界中に広がる。
日本は世界で最も重い債務を抱えており、対 GDP 比は 250%を超えている。長年にわたり、日銀はイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)によって利回りの上限を定め、実質的に利回り上昇の上限を制限してきた。
しかし、世界的な圧力を受けて、日銀は政策転換を余儀なくされ、30年債利回りは初めて 3%を突破した。そして今、利回りはさらに急上昇している。
ここまでです。
国債の利回りが上昇することは、住宅ローン金利、自動車ローン、企業信用など、さまざまなものに影響を与えるということが重要な部分のようです。
そういう中で、日本の長期利回りは著しく上昇し続けていて、今後も利回りは上昇する方向しか見えません。
日本の40年物国債利回りの推移(2012年から今日まで)
investing.com
今日の市場を見ていると、
「何かが近いのだろうなあ」
とは思いますが、それが何かはわかりません。
債券利回りの上昇と関係するといえば、たとえば、アメリカの銀行の「未実現損失」、つまり含み損の額は、現在 60兆円規模です。
2025年第2四半期までの米国の銀行の未実現損失の推移(現在 3850億ドル)
BDW
いよいよ、いろいろなことが「崖のギリギリまで来ている」という感じはするのですが、どういう展開となるのかはわかりません。
アメリカの QTR Fringe Finance というメディアが、「金融の糞山への競争」というすごいタイトルの記事を掲載していましたが、これはあくまで、アメリカの話ですけれど、いろいろとギリギリの状態であることがわかります。
その記事をご紹介したいと思います。
あらゆる指標や指数が、アメリカの金融や市場が非常に行き詰まっていることを示しています。立ち直ることができるのかもしれないですが、立ち直ることができない場合、金融にしろ市場にしろ平穏を維持することは困難だと思われます。
ここからです。なお、オリジナル記事では、数字などについての引用元を明記してありますが、ここでは割愛しています。
金融の糞山への競争
Race To The Financial Dung Heap
QTR Fringe Finance 2025/10/05
ほんの数週間前に書いたように 、私は(そして今でもそう思っているが)、多くの点で 2008年を彷彿とさせる新たな市場の崩壊は、実質的に規制されていない 4兆ドル (600兆円)の不正資金市場ファンドとなっている暗号通貨やステーブルコインのせいで起こる可能性があると考えている。
しかし、ここ 1、2週間の商業用不動産、民間信用、サブプライム自動車ローンに関するニュースの見出しを見ていると、全土的な「金融の糞山への競争」に新たなリーダーが現れていないとは思えない。
私のように集中力が非常に短い人のために、例や図表を使って、このケースをできるだけ明確かつ簡単に説明してみよう。
まず、商業用不動産だ。パンデミックの発生は、レストランやスタジアムを空っぽにしただけでなく、オフィス不動産の基盤そのものを空っぽにした。
リモートワークによって、かつては防弾仕様だったビルは一夜にして座礁資産と化し、家主は空室、家賃の暴落、そしてもはや採算が取れない数十億ドルの負債を抱えることになった。そして、私たち(米国の商業用不動産)はまだ立ち直れていない。
ムーディーズ・アナリティクスによると、2025年半ばまでに米国のオフィス空室率は過去最高の 20.7%に上昇した。CMBS の延滞率は 8月まで 6か月連続で上昇し、全体で 7.29%、オフィス ローンでは 11.66%に達し、いずれも過去最高を記録した。
(※) オフィス担保CMBSというのは、商業用不動産に対する融資をまとめて証券化した金融商品だそうです。
不動産額の再評価は容赦ない状況が続いており、次々と報道の見出しを飾っている。
ニューヨークでは、ハドソン・ヤード近くのナインス・アベニュー440番地にある 18階建てのオフィスビルが、2025年4月に 1億ドル (約 150億円)強で売却された。これは、2018年の 2億6900万ドル (約 400億円)から 62%も下落したことになる。
サンノゼでは、ソブラト・オフィスタワーが 2025年 5月に 6,370万ドルで売却され、評価額 1億 6,310万ドルから約 61% 下落した。
ヒューストンでは、シェブロンが 2025年6月にノーブル・エナジーの旧本社ビル を1,820万ドルで売却したが、これは以前の評価額約 1億3,000万ドルに比べると破格の値段だった。
サンフランシスコでは、ダウンタウンのフリーモント通り199番地にあった空きビルが 2025年7月に 1億1,130万ドルで売却されたが、これは数年前の同等のビルの売却価格を大きく下回るものだった。
また、2025年8月には、マンハッタンのワン・ワールドワイド・プラザが 3億4,500万ドルで再評価された。これは 2018年の時価総額のわずか 20%に過ぎず、貸し手は 5億ドル (約 750億円)近くの損失に直面する可能性がある状況だ。
銀行も例外ではない。2025年第2四半期時点で、銀行の有価証券の未実現損失は依然として 4,000億ドル (約 60兆円)近くに達している。規制当局はすでに、銀行の空白を埋める影の融資であるノンバンク CRE 融資が、システム全体にショックを伝播させ、増幅させる可能性があると警告していた。
(※)ノンバンク CRE 融資とは、銀行以外の金融機関の商業用不動産融資です。
MSCI のデータによれば、2025年初頭までに不良債権額は 1160億ドル (約 17兆円)に上り、過去 10年で最高額となった。長らく最も安全な分野と考えられてきた集合住宅セクターでさえ、ひずみを見せている。
そこから、機関投資家の 1.7兆ドルの投資対象であるプライベートクレジットに目を移してみよう。だが、この投資は限界に達しつつある。フィッチによると、プライベートクレジットで資金調達した米国中規模企業のデフォルト率は、2023年の 3.6%から 2024年には 2倍以上に上昇し、8.1%に達する見込みだ。
(※)プライベートクレジットとは、借り手(主に企業)と民間の貸し手(主にファンド)が直接契約を結ぶ形で行われる融資です。
ファンドは、契約条件の免除、期限延長と見せかけの借り換え、現物支払いの調整などにより、多くの問題を抱えた借り手を生き延びさせてきた。しかし、融資が数四半期にわたって滞留すると、貸し手はしばしば鍵を差し押さえようとする。
先週のある日、パークアベニューのバーで座っていると、銀行業界の若い男性二人が隣に座った。
20代後半から 30代前半くらいの彼らは、仕事の話を始めたので、私も加わり、2杯目のマティーニを飲んだ後、身を乗り出して率直に尋ねた。
「 CRE 業界やプライベートクレジット業界の実情は実際のところどうなんだい?」
彼らの表情が変わり、答えは明らかだった。一人はただ首を横に振った。もう一人は、そのまま 「誰もが契約を破っている」と言った。
「みんなの目標が水増しされている状態で入札に臨んだらどうなるんだ?」と、一番近くにいた男に尋ねた。 「救済措置が必要になるだろう」 と彼は言った。
そして、こんなことを言っているのは酔っ払った 28歳の若手銀行員だけではない。
数日前、CNBC に出演した PIMCO の敏腕幹部を見れば、彼は公的信用市場と民間信用市場の両方が警告信号を発していると実質的に認めている。
公的債券市場では、企業が効果的に再編できないために大規模な債務不履行が発生している。一方、民間信用市場では、多くの借り手がすでに現金利息の返済に苦しみ、生き延びるために「現物支払い」に頼っている。
彼は、借り手はコストは高いが柔軟性のある民間融資か、経営難に陥れば返済不能となる安価な公債のどちらかを選ばざるを得なくなっており、システム全体の脆弱性が高まっていることを浮き彫りにしていると指摘する。
同時に、資産運用会社は手数料圧力にさらされており、リスク管理のためだけに AI などの効率化ツールに頼っている。
これらを総合すると、債務不履行の増加、借り手の窮屈さ、貸し手による条件の引き締めが示され、信用収縮の典型的な状況となっている。
こうした事態が起こる兆候は、これまでもいくつかあった。2024年には、米国の企業倒産件数が 2010年以来の最高水準に達し、ブラックストーンから中堅企業に至るまで、プライベートクレジット・マネージャーはワークアウト・チームを積極的に拡大した。上級リストラ専門家の報酬パッケージは 150万ドル (約2億2000万円)にも達した。
貸し手が債務ポジションを通じて所有権を差し押さえるディストレスト・フォー・コントロール取引は、2022年以前の水準と比較して 3倍に増加した。流動性への懸念も表面化し、2025年9月までに、一部のファンドは報告された利回りを支えるために、二次市場でローンポートフォリオを売却するようになった。
ボストン連銀でさえ、民間信用の拡大がシステムリスクをもたらすのではないかという疑問を提起し、2000年の 460億ドルから 2023年までに約 1兆ドルに急増すると指摘した。
9月下旬のファースト・ブランズ (※ 自動車部品メーカー)の破産は、100億ドル (約 1兆5000億円)を超える負債、 オフバランス債務 、売掛金が二重担保されていたのではないかという疑問を抱え、その脆弱性を浮き彫りにした。
2025年第2四半期の自動車ローンの 90日延滞率は 5%に達し、前年同期比で 12%以上増加した。サブプライム自動車ローン担保証券(ABS)の純損失は 1月時点で 9.44%だった。中古車の卸売価格が高止まりしたため回収率は低迷し、マンハイム指数(中古車価格指数)は 9月も前年比 2.2%上昇した。
同じく 2025年9月には、信用力の低い借り手や書類不備のある借り手に特化した大手サブプライム自動車ローン会社、トリコロール・ホールディングスが破産を申請し、清算すると発表した。
連邦検察は、同社が倉庫型金融業者に同一担保を複数回提供していた疑惑を捜査していた。フィフス・サード、JPモルガン、バークレイズなどの大手銀行は、数億ドル規模の潜在的損失に直面した。
8月初旬には、別のサブプライムローン業者であるオートモーティブ・クレジット社が、新規融資を突然停止した。サブプライム自動車 ABS 市場は約 800億ドル (約 12兆円)で、サブプライム住宅ローン市場よりもはるかに小さいが、その影響は紛れもなく存在している。
いつものように、過去 5年間の金融緩和はリスクを隠しただけで、完全に消し去ることはなかった。2025年までに、AAA 格付け、永久ファンド、そして巧妙な引受は、より厳しい現実に取って代わられた。空っぽのロビー、増加する債務不履行、そして差し押さえ。
最終的には、銀行員たちがあの夜バーで話していた救済措置が実現するかもしれない。しかし、それは「大惨事」のような急激な債務削減によって株価が急落し、救済措置が取られるという事態が起こった後にしか実現しないだろう。
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