「いまだ市場にない絆創膏をつくろう」

開発・設計を主導したのは3名の社員。そのうちリーダーは、のちに社長となる人物だ。彼らがまず挑んだのは、テープそのものの刷新だった。

当時は、塩化ビニル素材の救急絆創膏が主流で飽和状態だったという。「でも、いまだ市場にはないものをつくろう、まったく新しい絆創膏をつくろうと、素材そのものから見直したのです」

テープ素材に選ばれたのは、高密度ウレタン不織布。従来のウレタン不織布と比べ、約半分の細さの繊維だった。繊維の太さは約15ミクロン。極細化で密度を上げ、キメの細かさでやわらかさを生む。しかも全体にエンボス(凹凸)をほどこし、テープの触感を人の肌に近づけた。

「目指したのは、限りなく素肌に近づけることでした。人の肌に近い摩擦ができたので、貼った指で紙もめくりやすくなるんです。手を洗ったり、入浴後も早く乾きます。また、特殊製法の高密度ウレタン不織布を突き詰めていくことで、これまでにないフィット感を実現しました」

しかも色にも妥協しない。不織布はもともと白色だが、できるだけリアルな肌に近づけるため、200色の明度の異なるベージュ色から最も皮膚になじむものを厳選したという。「貼ったことを忘れるくらいに目立たない色。実際に、皮膚よりやや明るい色が選ばれました」

【図表】「ケアリーヴ」の色相
画像提供=ニチバン

はがれにくいのにはがしやすい

さらにそこへ、ニチバンの本業である粘着剤の技術が投入された。これぞ長年テープを手がけてきた老舗の真骨頂といえる。富田さんが笑った。

「“のり”はわが社の得意分野です。水に強く、はがれにくい。それでいて、はがすときは痛くない。素材と粘着剤の組み合わせを無数に試した結果、3年の月日が経ちました」

はがれにくいのに、はがしやすい。一見、矛盾するこの条件を、素材と粘着剤の微調整で成立させた。しかもムレにくさを実現するために、角質中の水分量の測定データを基に、最適なバランスを追求した。絆創膏を使う人が何にいらだち、何に満足するかを、徹底的に商品に落とし込んだのだ。

それだけではない。傷口に当たるパッドの素材と設計も変えた。

「血液をよく吸いとる吸水性の高いパッドです。はがすときに痛くないよう、ネット状の薄膜を重ねてあります。それが水仕事ではがれてしまったら元も子もないので、パッド上下の粘着部分をミリ単位で広げた。これで、ぐっとはがれにくくなりました」

ネーミングにはメッセージが込められた。「ケアリーヴ」、つまり「傷をやさしく守る(ケア)木の葉(リーフ)」である。商品のテーマカラーは「緑」に決まる。

「絆創膏にテーマカラーがあるなんて想像もしなかった」という当時20代の富田さんは、「これは売れる。いや、売れないはずがない」と武者震いがしたという。