「威勢がいいのはいつも最初だけ」小泉進次郎の「コメ劇場」が早くも閉幕で身内からあがる非難の声
徐々にメッキがはがれ素顔をさらけだす小泉。手の内が次第に明るみに出てきて、その正体がバレるJA解体ショー
スポットライトを浴び、注目を一身に集める進次郎。しかし、舞台袖から恨めしげに眺めている男たちの視線に、彼はまだ気づいていない。
全農を株式会社にしようとした過去
「福島県の豚のロースとカボチャのグリル定食です」
農林水産省の食堂から運ばれてきたランチを大臣室で頬張る様子を、得意げにSNSで発信するのは小泉進次郎農水相(44歳)。大臣室には、全国のコメ価格がリアルタイムで把握できるモニターが設置されている。
デイトレーダーが株価を確認するように、チカチカと光る数字を見つめる小泉氏。大臣室を訪れた自民党中堅議員は、その姿に新たな時代の到来を感じたという。
「進次郎さんは頑張っているし、よくやっている」
農水相として緊急登板し、「備蓄米を5kg2000円で店頭に並べる」と宣言した小泉氏は、就任から10日あまりで備蓄米を売り飛ばし、その言葉を実現させた。
そもそも小泉氏と農水行政との関わりは、’15年の自民党農林部会長就任がきっかけだ。当選同期の齋藤健前経済産業相(66歳)が語る。
「’13年に経産省出身の私が農林部会長に起用されました。その後任が進次郎さんだった。私も進次郎さんも異例の2期2年を務めました。当時の安倍晋三総理や、菅義偉官房長官は農協改革に熱心で、農水族とは毛色の違う異質な存在を入れることで、農政を抜本的に変えたいという狙いがあったのかもしれません」
小泉氏は農林部会長時代、JAの流通・商社機能を担う全国農業協同組合連合会(全農)の改革に取り組んだ。
「農産物の販売で大きな存在感を持つ全農の販売手数料や流通構造を問題視し、全農を競争原理が働く株式会社にしようとした」(農水省関係者)
威勢がいいのはいつも最初だけ
改革案は全農の反発を呼び、道半ばに終わったとの評価も根強い。ただ全農に肥料などの農業資材を安くさせ、自主改革に取り組ませる契機にもなった。齋藤氏が振り返る。
「ずば抜けた発信力があった。今回の備蓄米でも同じですが、やり方がうまい」
無制限に備蓄米を放出すると宣言し、コメの輸入拡大などにも言及。上昇し続けた米価を3週連続で引き下げた。発信力を生かし、石破政権の支持率回復にも貢献する。
「組織・団体に気を使いすぎて、消費者目線の改革が遅れている」「農家の経営感覚を高めていかないといけない」
小泉氏はそう既存の農政に否定的な態度をみせ、改革者として誰にも真似できない突破力をみせつける。
郵政民営化に取り組んだ父・純一郎氏譲りの劇場型の政治手法は物議を醸すが、まずは結果を出してみせた。
「今はマーケットを冷やすために大胆なことをやらないといけないタイミング。進次郎さんはまさにそれをやっている」(前出・齋藤氏)
その勢いはいつまで続くか。全農改革でも、威勢よくぶつかったのはよかったが、根回しや腹芸といった「寝技」に乏しく、思い描く結果にはならずじまいだった。
昨年の総裁選でも、ライドシェアや選択的夫婦別姓などを1年以内に実現すると派手なアドバルーンを上げたが、討論会を重ねるにつれ、底の浅さが露呈。自民党員は「進次郎総理」にノーを突きつけ、決選投票にさえ残らなかった。
「コメ劇場も威勢がいいのは最初だけ。いつもの進次郎のパターンだよ」
党内からは、そんな冷ややかな声も聞こえる。
かつての盟友が進次郎に放った文句
また派手に振る舞う小泉氏を苦々しい顔で眺めている人たちもいる。
「今の農政に、私は疑問を覚えざるを得ない」
6月の自民党山形県連大会でこう述べた鈴木憲和復興副大臣(43歳)。農水官僚出身の鈴木氏は、農林部会長代理として小泉氏を支え、時には2人で酒杯を交わした間柄だ。その盟友が「適正な報酬が得られる農林水産業とそれを支える消費者がいて、初めてこの国の食料安全保障と第一次産業は守られる」と語り、備蓄米放出に苦言を呈した。
小泉氏の前のめりな姿勢が、農水行政を誤った方向に導くのではないかという警戒感も高まる。農林部会長時代の小泉氏の後見人だった西川公也元農水相(82歳)もこう注文をつける。
「進次郎君には期待しているが、(農水行政の)歴史の積み重ねを意識してほしいね」
後編記事『あまりに大人げない…石破総理が人気急上昇中の小泉進次郎に嫉妬して放った「衝撃の言葉」』へ続く。
かわの・よしのぶ/’91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している
「週刊現代」2025年07月07日号より
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