英国、イラン戦争の影響による「食糧不足に対する最悪のシナリオ」を想定して準備を進める
食料と二酸化炭素
ホルムズ海峡の閉鎖が、「食糧危機と関係してくる」ということについては、たとえば、多くの肥料がこの海峡を通過していたことや、あるいは、エネルギー価格の上昇そのものが農業生産にダメージとなるということなどが言われてきました。
たとえば、農業にも使われる重油などは、現時点ですでに不足が著しいようで、「重油の調達困難により各地で入浴施設が休業や営業縮小」という日本の報道もあるほどです。
しかし、今回ご紹介させていただく 英 BBC の記事「英国は最悪のシナリオを想定して食糧不足への備えを進めている」では、
「二酸化炭素の不足」
を中心として書かれていました。
「どういうことかな」と思いましたら、工業用二酸化炭素は、天然ガスを原料とするアンモニアや肥料生産の副産物として生成されるものなのだそうです。
ヨーロッパの多くでは、工業用 CO2 の多くは、天然ガスを原料とするアンモニア/肥料生産の副産物として生成される。ホルムズ閉鎖で LNG 供給が減少し、天然ガス価格が急騰すると、肥料プラントの稼働率が低下し、CO2副産物も減少する。過去の欧州ガス危機(2021-2022年)でも同様の CO2 不足が発生し、屠殺場停止や食品不足の懸念が出た。
動物の屠殺にも使われるようです。
そして、その二酸化炭素は、以下のように、食品の鮮度を維持し、保存期間を延ばす目的で重要な役割を果たしているのだそう。
・食品の包装袋や容器内の空気を二酸化炭素に置き換えることで、酸素を排除し、好気性菌の増殖や食品の酸化を防ぐ
・バナナやリンゴなどの野菜・果物において、呼吸作用を抑制するために二酸化炭素濃度を高くして保存する
・殺菌・防カビ効果
このように、パッケージされた食品には広く使われているようで、つまり、海峡の閉鎖が長引いた場合、すでに現在起きつつあるナフサ不足による「パッケージそのものの価格上昇や枯渇」に加えて、二酸化炭素が不足になった場合、それを使った衛生的な梱包が難しくなる、というようなことが考えられそうです。
農業への打撃による食糧生産そのものへの影響もある上に、梱包の問題にも関わってくるようで、ホルムズ海峡閉鎖が長引いた場合、食糧問題は、ほぼ確実に起きてくる可能性が高そうです。
BBC の記事です。
イラン戦争が続く中、英国は最悪のシナリオを想定して食糧不足への備えを進めている
UK prepares for food shortages in worst case scenario as Iran war continues
BBC 2026/04/17

政府関係者が作成した最悪のシナリオによると、イランとの戦争が続けば、英国は夏までに鶏肉や豚肉を含む食料不足に直面する可能性がある。
政府筋は BBC に対し、ホルムズ海峡の閉鎖が継続し、一部の動物の屠殺や食品保存に使用される二酸化炭素(CO2)の供給が途絶える事態を想定した計画を立てていると語った。
環境・食糧・農村地域省の報道官は、戦争の影響に対処するため、企業と緊密に連携していくと述べた。
「合理的な最悪のシナリオは、専門家が用いる計画ツールであり、将来の出来事を予測するものではない」と彼らは付け加えた。
米国とイスラエルがイランに対して広範囲にわたる攻撃を開始して以来、イラン政府は石油と天然ガスの輸送にとって重要な水路であるホルムズ海峡を事実上封鎖することで対応し、ガソリン、ディーゼル燃料、肥料の価格が高騰している。
英タイムズ紙が、ホルムズ海峡が閉鎖されたままの場合、英国産業にどのような影響が出るかについて、高官らがシナリオのリハーサルを行っていたと報じたことを受け、ピーター・カイルビジネス相は、二酸化炭素不足は「 現時点では」懸念事項ではないと述べた。
「今は、人々は現状のまま生活を続けるべきだ」と彼はスカイニュースに語った。
食品業界のリーダーたちは政府の反応に同調し、中には品不足よりも価格上昇を懸念していると述べる者もいた。
テスコの最高経営責任者である ケン・マーフィー氏は、このスーパーマーケット大手の生産者、供給業者、製造業者は、今のところ供給リスクを指摘していないと述べた。
「我々は非常に良い状態にある」とマーフィー氏は述べたが、食料価格がどうなるかについては 「明らかに不安定で予測不可能な状況なので、どうなるか分からない」としてコメントを控えた。
セインズベリーやプレットなど、200以上の大手ブランドを代表する英国小売協会は、政府が緊急時対応計画を実施することを期待していると述べ、小売業者はサプライチェーンの混乱への対応経験があると付け加えた。
「しかし、中東情勢はインフレ圧力をさらに高め続けており、小売業者は既に国内政策による大きな新たなコストに直面している」と広報担当者は述べた。
食品飲料連盟などの他の業界団体は、12月までに食品インフレ率が 9%に達すると予測しており、農業産業連盟(AIC)は肥料価格の上昇について懸念を表明している。
AIC の代表であるジョー・ギルバートン氏は、肥料価格の高騰は「秋の作付け決定に影響を与える可能性がある」と述べた。
「肥料や燃料費が高騰しすぎると、食糧危機に陥る可能性がある」
先月、全国農民組合は、キュウリとトマトの価格は今後 6週間で上昇する可能性があり、他の農作物や牛乳の価格も今後 3~ 6ヶ月で上昇する可能性があると述べた。
トビー・ハリス卿は、英国が脅威や課題によりよく備えるための政策を推進する独立機関である国家準備委員会の委員長を務めている。
彼は BBCラジオ4 に対し、「国際情勢が英国に影響を与え続ける中で、様々なシナリオの下で我々がどのように対処できるかを検証すればするほど、状況は良くなるだろう」と語った。
中東での戦争を受けて、政府は先月、 2025年9月に休止していたエンスス社のバイオエタノール工場を一時的に再稼働させた。この工場は二酸化炭素、再生可能燃料、タンパク質飼料を生産している。
同工場の広報担当者はBBCに対し、「当面の間、国内の需要を満たす二酸化炭素を生産し続けることができると確信している」と述べた。
英国の二酸化炭素の大部分はヨーロッパから輸入されているが、企業が肥料を製造する際に副産物として発生することも多く、肥料の製造には天然ガスが必要となる。
今週初め、国際通貨基金(IMF)は、この戦争が世界経済を景気後退に陥れる可能性があり、先進国の中では英国が最も大きな打撃を受けるだろうと警告した。
ドナルド・トランプ米大統領は、週末にイランとの戦争終結を目指す交渉が決裂し、米国がイランの港湾を封鎖する事態となったことを受け、今週中に協議を再開する可能性があると示唆した。
レイチェル・リーブス首相は水曜日 (4月15日)、米国がイランとの外交交渉を打ち切り、軍事衝突に突入したことは「間違い」だったと述べた。



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