PR

450万円のロレックスを購入して預託→半年で支払いが止まり、連絡も途絶え

スポンサーリンク
詐欺 社会問題

450万円のロレックスを購入して預託→半年で支払いが止まり、連絡も途絶え

トケマッチ」だけではない「高級時計詐欺」の実態を、被害者が語る  「紹介者に相談すると“自己破産”を勧められ…」

 2025年に首謀者が逮捕された高級時計のシェアリングサービス「トケマッチ」の詐欺事件は、18億円とも見られる被害額、そしてその巧妙な手口で、社会を震撼させた。もっとも、高級時計の購入、運用を餌に金を騙し取る詐欺の手法はさほど珍しいことではなく、15年ほど前から繰り返されてきたという。ジャーナリストの多田文明氏が、被害者の証言を元に、相次ぐ高級時計詐欺の実態を詳らかにし、警鐘を鳴らす。

【多田文明/ジャーナリスト】

 ***

被害者は推計650人

 昨年12月26日、高級腕時計のシェアリングサービスをうたい、金銭の詐取を繰り返していた「トケマッチ」の元代表が、逃亡していた海外から帰国して逮捕されました。詐欺の手口は悪質で、高級腕時計を所有者から預かり、第三者に貸し出すことで預託料が得られるとうたいます。しかし、実際には高級時計はほとんど貸し出さず、預かった時計を買い取り店などで売却して、2021~2024年の3年間で約18億円のお金を騙し取っていました。2024年1月末にサービスを停止しましたが、CMなどでシェアリングサービスをうたい、多額の報酬を得られるとの触れ込みだったことから、自らのクレジットカードを使い、高級腕時計を買い預けた被害者も少なくありませんでした。被害者は約650人と推計されています。

トクリュウの関与も

 契約を交わして高級腕時計を預けさせ、一定期間お金を払い、突然、会社を飛ばして消える。こうして高級腕時計をだまし取る手口は「トケマッチ」だけが行っていただけではありません。

 15年以上前から繰り返されている詐欺の常套手段のひとつであり、「トケマッチ」がサービスを停止した数か月前にも、高級時計の代理購入を募集していた関東にある会社が、突然に時計の代金の支払いをしなくなる事件が起きています。被害は数億円にも上るといわれています。

 取材をするなかで、3年ほど前にも別の被害が発生しており、このケースではトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)も絡んでいたこともわかってきています。詐欺行為を目論む者たちが、次々に高級腕時計の取り引きに参入してきていることがうかがえます。

ロレックス

被害者・田尾さん(仮名)が実際に購入した450万円のロレックス時計(被害者提供) (他の写真を見る

約320万円の被害

 田尾さん(仮名・30代男性)は、約320万円の被害に遭いました。きっかけは、仲の良い友人(仮名・鈴木)から、LINEで「ロレックスの案件がある」と誘われたことでした。喫茶店で会うことになりましたが、この時、鈴木だけではなく、彼の上の立場にあたる坂垣(仮名)も同席して説明が行われたといいます。

「ロレックスを購入し、それを預けてくれれば、高値で転売をして利益を得られる。報酬として10万円支払います。購入代金の分割分はもちろん、毎月会社から振り込みます」

 躊躇する田尾さんに対して、鈴木は「絶対、信用ある人やから大丈夫」「何かあったら、すべての責任を自分が取る」と太鼓判を押しました。紹介者が友人で「責任を持つ」といわれたことで信用してしまい、関西にあるA社との契約に同意します。

半年後に止まった支払い

 田尾さんは、指定されたお店で自分のクレジットカードを使い、24回払いの形で約450万円するロレックスの時計を購入して、彼らに渡しました。その際、報酬として、10万円を受け取ります。その後、月々20万円の時計の代金も払われ続けることで安心していましたが、半年後に突然、支払いが止まります。

 驚いた田尾さんは、A社のカスタマーセンターにLINEで連絡をしました。すると驚くべき答えが返ってきました。

「(あなたの時計の)シリアルナンバーを確認しましたが、弊社で受け取っておりません 」

 しかし契約書は確かにA社となっており「一度でも支払いが滞った場合は、時計本体の返還、および残金の全額支払いを行う」旨が明記されています。

■「弊社に届いておりません」

 田尾さんは必死に全額を戻すように訴えました。しかし、対応は鈍く、窓口の担当者の名前を聞いても教えてすらくれません。その後も、田尾さんは「返金を求める」メッセージを繰り返し送りました。A社からの返信をみると、B男という見知らぬ人物の名が出てきます。

「弊社はB男から時計を買い取っていた(中略)契約書も弊社に届いておりません」

「B男が捕まったことにより、向こう(B男)が買い取りの際に作成していた購入リストに誤りがなかったかを時間をかけて整合性を確認しておりました」などです。

別会社からの入金

「ネオリバース」3

摘発された「トケマッチ」の運営会社「ネオリバース」のHP (現在は閉鎖)(他の写真を見る

 このB男の名をネットニュースで調べると、スマホを不正契約する闇バイト募集を主導的にしていたとして詐欺の容疑で、過去に逮捕されていたことがわかりました。この他にも、同一人物と思われる男が、新型コロナのPCR検査の虚偽申請をして補助金を詐取した不正受給にかかわって逮捕された報道も出ており、この人物がA社との間に入って、高級腕時計詐欺のスキームにかかわっていた疑いが浮上しました。

 田尾さんに半年間の時計代金を振り込んできた相手を尋ねると、「A社ではなく、別の会社からでした」とのことでした。この種の詐欺トラブルで多いのは、代金の振り込み元契約した会社ではなく、別会社からというケースです。もしこのような場合、詐欺の可能性を疑うことが必要です。

 田尾さんが、繰り返し返金をせまると、A社の担当者は「私たちは皆様と一度たりともお会いしたことがございません。どのような説明を受け、時計を契約されているかもわかりません(中略)納得いかない方は、B男もしくは紹介者に責任を取ってもらってください」という対応でした。

続く二次被害

 このやりとりから2年以上経ちますが、お金は戻ってきていません。会社のHPもアクセスできなくなり、電話をかけてもつながらない状況です。

 さらに田尾さんの被害は続きました。田尾さんは、前述の鈴木から「被害者らが多くいるので、集団訴訟をしようとする話がある」とグループLINEで招待されました。被害者はほぼ全員が同じ時期に支払いをされなくなったといいます。

 その中心人物は「集団訴訟をするのに2万円を払ってください」といいました。「少しでも返金してもらえれば」の思いから、田尾さんはお金を払いました。しかしその人物もやがて連絡がとれなくなったといいます。被害者らは、二次被害を受けていますが、ネット上ではなりすました人物が存在しますので、こうした詐欺的行為が起きがちになります。

 田尾さんは、LINEでつながった他の被害者らとともに、A社の経営者に会いに行ったそうですが「ここに時計がないから払えない」を繰り返すばかりで、十分な説明はなかったそうです。

自己破産が一番早い

「ネオリバース」5

摘発された「トケマッチ」の運営会社「ネオリバース」のHP (現在は閉鎖)(他の写真を見る

 田尾さんはもちろん、「全責任を取る」といっていた、紹介者である鈴木にも連絡をしています。しかし、「俺が契約しているわけでも、お金を借りているわけでもなく、紹介してしまったことに罪はあるけど、(弁護士に相談したら)全額払う義務がないって言われた」として、返金をしない姿勢を示しています。

 さらに「自己破産して借金を消すのが一番早いと言っていた」との連絡もしてきています。

 鈴木も詐欺犯とグルだった可能性もあり、田尾さんは、金銭をだまし取られた上に、友人に裏切られたショックも重なり「うつ病」になってしまい、「死のう」と思った時もあったといいます。田尾さんは会社経営をしていましたが、それもうまくいかなくなってしまっています。

マルチ商法的な手口

 鈴木は田尾さんとのメッセージのやりとりのなかで、次のようなシステムの説明をしています。ここからは、この詐欺行為にマルチ商法的な手法が使われていたことがわかります。

「時計貿易1次代理店」と題されたものには、中古店にてロレックスの「購入代行を促して頂き」「24回払いで購入して頂く」となっています。ブローカーへのバックは購入金額の「7%」とあります。まさに鈴木や坂垣はこのブローカーの立場にあたるものと思われます。

 さらに「クライアントに渡す金額は代理店の皆様にお任せします。相場5~10万のお渡し」と報酬額も指示されており、まさに田尾さんもこのマニュアルに沿った形での勧誘を受けていたことがわかります。

 ブローカーの取り分は「7%」とありますので、450万円の時計を代理購入する人がいれば、31万5000円を受け取れるわけです。

 A社とのやりとりにも出てきたB男は闇バイトで主導的役割だったとして逮捕されています。そうした人物を介在させた結果、被害が起きてしまったとすれば、A社は当然、会社として責任を負うべきであり、被害を受けた人たちへの説明責任をしっかりとすることも必要ですが、果たされていません。

 このように、会社と契約を結ばせ、本人のクレジットカードで高級腕時計を買わせて、それを預かり、振り込みを一斉に止める。そして自己破産させ、泣き寝入りさせる方向にもっていく。その裏では、勝手に時計を売却して、悪意ある者たちが利ザヤを稼ぐ。こうした詐欺が横行している実態があります。

 今回の被害者10人ほどが、警察に相談に行っていますが、被害届は受理されていません。この手口では、最初から時計をだまし取る目的をもって行っていると思われますが、会社形態で行っているため、警察からは、単に会社の経営がなりたたくなって、時計の代金の支払いがなされていないだけであり、「民事不介入」と言われるケースが多く、捜査が十分に行われていない状況もあります。

「トケマッチ」の元代表は逮捕されていますが、このスキームでお金をだまし取ったとみられる他の事件の首謀者らの多くは野に放たれている状況です。この手口による被害の増加の懸念が高まっています。

 

多田文明(ただ・ふみあき) ジャーナリスト
2000年代よりルポライターとして悪徳業者の勧誘にのり、潜入取材してきた。それをもとに、著書『キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった』(彩図社)を出版して、テレビ番組化された。詐欺・悪質商法に詳しい犯罪ジャーナリストとして活動。1987年から約9年間、旧統一教会の信者だった経験をもとに、教団の被害実態についての取材を続けている。近著に『新興宗教ぶっちゃけ話 入信したら、こうなった。』(清談社Publico)、『人の心を操る 悪の心理テクニック』(イーストプレス)。電子書籍として『元信者が告発 統一教会解散命令の真実 政治の不作為がもたらした40年の闇』(CLAP)がある。

デイリー新潮編集部

コメント

タイトルとURLをコピーしました