AIを使うほど人間は「機械的」になる? 学術誌が指摘する”ロボトイド人間性”という新概念
AIを使っているつもりが逆にAIの指示に従う人間になり、思考がアンドロイド化していく。
チャットボットとの会話が日常に溶け込んだ今、その相手をこなすうちに人間自身の振る舞いが静かに変質しているという指摘が、学術誌に掲載された。
英国・スウェーデン・デンマークの研究者らがまとめた理論的枠組みによれば、AIとのやり取りを重ねるほど、人間の思考や行動が機械的な様式へと引き寄せられていくのだという。人間がAIに合わせて姿を変えていく、そんな逆転現象の中身を見ていこう。
「ロボトイド人間性」という新概念
バーミンガム大学のインジ・トラル=マンソン氏、リンネ大学のセルジェン・オズトゥルクジャン氏、オーフス大学のジャン=ポール・ド・クロ・ペロナール氏らの研究チームは、学術誌『AI & Society』に理論論文を発表した。
論文で提示されたのが「ロボトイド人間性(robotoid humanness)」という概念だ。人間が機械に読み取りやすい形式、機械のペース、機械的な論理へと適応していく中で生じる、新たな変化の兆しを指す言葉だという。研究チームはこの枠組みをもとに、今後の実証研究を呼びかけている。
チャットボットが人間を”歪んだ鏡”に映す3段階
研究チームが示したプロセスは3段階で構成される。まず消費者がチャットボットとの対話という「合成された社会的現実」に足を踏み入れる。次に、チャットボットが統計分析に基づいて消費者のアイデンティティを解析し、実像とは異なる「歪んだ反映」として利用者に映し出す。そして最終的に、その歪んだ反映が消費者自身の行動を、より機械的なものへと押し流していくという流れだ。
オズトゥルクジャン氏は「機械学習とAIはこのプロセスを増幅させ、利用者の入力内容に基づいてロボットのような振る舞いを調整していく」と説明している。
自己像への影響、理論段階でも軽視できない指摘
研究チームは、AIとの接触が続くことで人間が機械的なコミュニケーション様式を内面化していく可能性があり、それが自己認識や自己肯定感に影響を及ぼしかねないと懸念を示している。
現時点ではあくまで理論的な枠組みであり、実証的な検証はこれからの課題だ。とはいえ、便利さを求めてAIに歩み寄っているつもりが、いつの間にか人間の側がAIのロジックに合わせて変わっているのだとしたら。
私たちが「使いこなしている」つもりのテクノロジーは、案外もう一歩先まで踏み込んでいるのかもしれない。



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