ホワイトカラーには分かるまい! 「尿意と戦うドライバー」の過酷な日常
6割超が直面する「途中停車できない」リアルな現場
コープみらい放尿事案の現実
先日、個人宅向けの食品配送を行うコープみらいの宅配サービスで、配送委託先のドライバーが食品保冷用の発泡スチロール製ボックス(配送用器材)に放尿していたことが明らかになった。
同社が2026年5月6日に公表した報告書によると、ドライバーは配送中に車両の荷台で尿意を感じ、そこにあった廃棄予定のボックスに排尿した。その後、蓋をして床に置いたが、作業の途中で足元の置き場がなくなったため、別の利用者に届ける予定のボックスの上に重ねてしまったという。放尿のあったボックスには穴があり、そこから尿が漏れ、下のボックスに移って中の冷蔵商品を汚した状態で配達されていた。
その結果、届いた商品が黄色い液体に浸かり、尿のようなにおいがすることに気づいた利用者が同社へ連絡し、この問題が発覚した。世間では、「食品を入れる箱に放尿する」という前例のない行為に強い不快感が広がる一方で、
「トイレに行く余裕もないほど配達に追われているのではないか」
といった同情の声も出ている。
ただし、このドライバーに同情する見方には慎重であるべきだ。同社は配達区域ごとに公衆トイレの場所をまとめた地図を用意していたという報道もある。実際、同社の報告書でも今回の件を組織全体の問題として受け止め、配送ルート上のトイレの事前確認や、緊急時に立ち寄れる施設の一覧の整備と周知をあらためて進めるとしており、働き方の見直しや安全面の確認を進めている。もし本当にトイレ休憩すら取れないほど業務が逼迫しているのであれば、同様の行為が他のドライバーからも出ているはずだが、そうした事例は確認されていない。
以上を踏まえると、今回の出来事はごく一部のドライバーによる例外的な行為として見るのが妥当である。
尿ペットボトルの不法投棄
しかし一方で、以前からドライバーの行いをめぐって問題が指摘されている。ドライバーが、用を足した尿を入れたビニール袋やペットボトルを道路脇に捨てるという問題である。
これは道路の清掃に関わる人たちに不快感を与えるだけではない。尿がたまり、限界を超えたペットボトルが破裂することもあるとされる。こうした不法投棄は、トラックが休憩のために停車しやすい道路の路肩や、高架下の空き地、インターチェンジやジャンクション(JCT)の周辺などで見られる。
本稿の執筆にあたり、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は、複数の運送会社の経営者に意見を聞いた。回答の表現には違いがあるものの、趣旨はおおむね共通している。
・こうした事例は、モラルを欠いた一部のドライバーによるものであり、例外的な行動だということ
・ただし、生理的な理由から尿を我慢できず、立ち小便をしたという話自体は現場で耳にすることがあること
補足しておく。近年では、100円ショップでも尿を固めて処理できる袋が販売されている。そうした準備がなく、ビニール袋やペットボトルを使ったとしても、それを捨ててよい理由にはならない。まして、それらは仕事で使う道具であり、客の商品を運ぶ通い箱でもある。食品を運ぶための箱の中で用を足す行為は、到底認められない。
物流の現場に関わる人の多くは、こうした行為が業界全体の姿だと受け取られることを強く懸念している。そのため、こうした行為にははっきりとした批判の声が上がるのである。
トラック駐車場所の絶対的不足
一応断っておくが、非常時のトイレの問題は別の話である。とりわけ長距離輸送を担うドライバーは、一度は車がまったく動かないような異常な渋滞を経験しているはずだ。そのときに問題になるのが排泄の問題である。
1992(平成4)年前後だと記憶しているが、筆者は当時トラックドライバーとして働いていた千葉県流山市の営業所から名古屋まで走っていた。東名高速を順調に進んでいたものの、上郷サービスエリアの手前で急に渋滞に入り、車がまったく動かなくなった。関ヶ原付近の大雪が原因で、大規模な渋滞が起きていた。
最終的に、この渋滞から抜け出せたのは14時間後だった。停車していた場所は上郷サービスエリアから3kmほどの地点だったため、歩いて行くこともでき、トイレも使えた。ただし、サービスエリアやパーキングエリアが近くにない状況であれば、路肩で済ませるしかなかっただろう。
同僚のドライバーは、首都高速の辰巳JCT上で事故による通行止めに巻き込まれ、5時間ほど動けなくなった。この同僚は周囲への配慮から、トラックに積んでいた段ボールで簡易のトイレを作った。これが車内に閉じ込められていた人たち、とくに女性から感謝され、後日会社には複数の礼の電話や手紙が届いたという。
このような非常時に、やむを得ず立ち小便などをしてしまうことについては、ある程度は理解してほしい面もある。ただし一方で、特に都市部ではトラックを安心して止められる場所が非常に少なく、それがドライバーの排泄の問題を難しくしている。
待機場所不足を招いた都市設計
トラックドライバーが最も負担に感じているのは、待機場所を見つけるのが難しいことだという。物流スタートアップのHacobu(東京都港区)が約1500人のドライバーを対象に行った「【2026年】トラックドライバー実態調査」の結果である。
調査では、61.7%のドライバーがこの点を挙げており、次に多い「給与が労働に見合わない」(53.8%)を7.9ポイント上回っている。3位は「休憩・トイレなどの環境が悪い」(36.3%)となっている。考えてみれば、飛行機、船、鉄道、バスといった主な輸送手段のうち、客や荷の積み下ろしを主に路上で行うのはトラックとタクシーだけである。
タクシーは停車時間が数分程度で済むが、トラックはそうはいかない。しかし日本の法令では、長い間、トラック輸送のための積み下ろし場所の整備が十分に求められてこなかった。その結果、路上での積み下ろしが広がった。
同じように、トラックを止めてトイレや食事、休憩を取る場所も限られている。筆者がドライバーだった当時は、担当エリアの中でトラックを止められるコンビニや飲食店を細かく覚えていた。日によって2tトラックと4tトラックを乗り換えていたため、車の大きさに合わせて駐車できる場所を把握しておく必要があった。これは体調の面でも影響が大きく、現実的に重要な問題だった。
細かい事情は省くが、職業ドライバーには法令で一定時間ごとの休憩が義務づけられている。また、時間指定のある集配先に入る前に待機時間が発生することもあり、その際にも安全に停車できる場所が必要になる。しかし、そうした場所は数が限られており、すでに先に来たトラックで埋まっていることも多い。そのため、6割を超えるドライバーが待機場所を見つけるのが難しいと答えているのである。
トイレ環境の改善に向けた課題
安全に待機できる場所が見つかっても、近くにトイレがあるとは限らない。最近では、トラックが止まりやすい場所を警察が見回り、駐車違反として取り締まることも増えている。
「エチケット袋で済ませればよい」と前に触れたが、正直にいえばこれは非常時に限るべきだ。車内で用を足すこと自体、気持ちのよいものではないし、エチケット袋では大きい方には対応できない。
こうした仕事中の排泄の問題は、事務職の人たちにはあまり意識されないかもしれない。しかしドライバーは、トイレのある場所をあらかじめ考え、その近くに車を止めて用を足すことを常に求められている。もし急な事態が起きて、しかも大きい方が我慢できなくなった場合には……これ以上の説明は控える。
排泄に関わることで人を不快にさせるような行為は、基本的に許されるものではない。この点は物流の現場に関わる人の多くも同じ考えだろう。ただし、ドライバーの多くが排泄に関して日々苦労しているのも事実である。そしてその背景には、行政の対応の遅れや社会の理解の不足といった面があることも知っておく必要がある。
現在、政府は将来を見すえた持続可能な物流のために、さまざまな対策を進めている。こうした取り組みは重要だが、ドライバーの排泄の問題にも目を向けてほしい。余談になるが、数年前に中継輸送の施設を取材した際、トイレがなくがっかりしたことがあった。
排泄は人の体の自然な働きであり、人の尊厳にも関わるため軽く扱うべきではない。とくに若いドライバーを増やしたいのであれば、大きな仕組みの話だけでなく、トイレのような一見小さな問題にも目を向ける必要がある。(坂田良平(物流ジャーナリスト))



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