≪玉木雄一郎が斬る!≫年金制度改革の欺瞞と、納税者の負担が増す「毒入りあんこ」の正体

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国民民主党代表玉木氏 政治・経済

≪玉木雄一郎が斬る!≫年金制度改革の欺瞞と、納税者の負担が増す「毒入りあんこ」の正体

年金だけで生きていけない氷河期世帯が多数

塩田:年金制度改革ですが、今回は基礎年金(国民年金)の底上げが最大の焦点で、石破政権は最初、参院選を控えて、厚生年金の流用による負担増に懸念を示す自民党内の抵抗に配慮して、4月17日に当初案から骨格部分を外して、基礎年金の底上げを事実上、見送る法案を用意しました。

批判が強かったので、公明党、立憲民主党と3党で話し合い、立憲民主党案を丸のみして、基礎年金の底上げを盛り込んだ年金制度改革法案で合意して、5月30日にその法案が衆議院を通過しました。

玉木:就職氷河期世代で、若いころに正社員になれず、ずっと非正規で働いていた方は厚生年金に入っていない。そのまま国民年金(基礎年金)だけで老後を迎えたら、明らかに生活保護より下です。今のまま行くと、基礎年金の支給額がたぶん3割カットになる。生きていけないんです。この低所得者の年金対策は、今の日本の年金制度の最大・唯一の課題です。これを何とかしないと大変です。

今年は5年に1回の財政検証の年で、私は5月の党首討論で、石破首相にその点について聞きました。制度改正して、基礎年金を少し底上げして金額を保障するという改革をしようとしたら、政府は4月17日に、当面、厚生年金が少し減るので、選挙に不利だといって、その部分だけごっそり抜いて、年金制度改革法案を出してきた。私はあんこを抜いたまんじゅう、あんこを抜いたあんぱんだと思いますね。

そうしたら、立憲民主党が自民党、公明党と組んで「あんこ」を入れたと彼らが主張する修正案の採決を強行してきた。国民民主党はカナダの年金制度を参考に、裕福な高齢者の基礎年金への税金投入を減らし、所得の低い高齢者に回す「世代内支え合い」の仕組みを入れるべきだと主張し、法案も提出しましたが、無視されました。

この「自・公・立」の修正案を、メディアが「基礎年金の底上げ」とか「あんこを入れる」などと報道しているのは大きな間違いだと河野太郎さんが批判しましたが、私もそのとおりだと思います。基礎年金の半分は税です。その底上げには税金が必要です。

「年金は100年安心」と言いながら、わずか20年で税金を投入してまで見直さなければならなくなった年金制度の現状を、自民党だけでなく、立憲民主党も追認したのです。将来の税負担が組み込まれているという意味で、河野さんの言う「毒入りあんこ」であることは間違いありません。

「税金の財源のあて」を自民党も立憲民主党も示さないのは無責任です。
しかも「自・公・立」の年金改革案は5年後の財政検証を踏まえた後に行われるかなり先の話です。どうせ先送りするなら、中途半端な税負担だけを3党だけで決めるのではなく、基礎年金の最低保障機能をどう引き上げるのか、所得の高い高齢者の年金にまで税金を投入する必要があるかなど、本質的な改革に向けた超党派での議論を深めるべきでした。

塩田:国民民主党は「手取りを増やす」と主張して、早くから所得税の基礎控除額の引き上げによる「壁」の撤廃や、ガソリン税の暫定税率の廃止、その点に関する「トリガー条項」の撤廃を唱えてきましたが、それらの問題に対する取り組みは。

ガソリン税の暫定税率の廃止はやる気の問題

玉木:引き続き求めていきます。暫定税率の廃止は2024年12月に決めたのだから、いつやるかだけです。来年度や再来年度ではなく、今でしょう。5月22日からガソリンの価格を抑えるために、補助金を使って段階的に引き下げて1リットル当たり10円を限度に下げることになりました。

でも、その財源があるんだったら、期間を半分に縮めたら20円下げられる。10カ月で10円下げる補助金を集めれば、半年間で暫定税率を廃止して25円下げる財源はあるはずです。それを今、やるべきです。その後は補正予算を組んだり、年末の税制改正につなげていけばいいのです。要はやる気の問題です。

だから、野党7党でガソリン暫定税率を7月から廃止する法案を6月11日に提出しました。衆議院は与党が過半数割れしていますから、衆議院通過の可能性もあるのですが、自民党と公明党が委員会を開かせず妨害しています。この国会で決着がつかなかったら、参院選で「力を貸してほしい」と、もう一回、国民に問うしかありません。

所得税の「103万円の壁」は、われわれは「178万円」を主張してきて、実際には 162万円まで上げましたが、対象となるのは全体の5%未満の人だけ。物価高騰で困っているのは、所得の低い人だけではなく、中所得者も含めてみんな困っているのだから、所得制限をなくして、一律控除額を 178万円まで引き上げていくことを求めたい。他党とも、政策本位で連携できるところとは連携していきます。

 

塩田:もう一つの焦点の選択的夫婦別姓の問題については、基本的にどんな姿勢ですか。

玉木:これまでいろいろな人の話を聞いてきましたけど、結婚前の姓をそのまま使いたいというニーズは明確にあります。不便を感じている方の不便を直していくことが一番、大事です。家族も多様な形態があり、多様な選択ができるようにする。現在のように夫婦どちらかの姓に統一することを選ぶ人は選んだらいい。いろいろな事情で、別の姓でという人はそれを選べる仕組みを作っていくことが大事です。

一方で、家族の一体感が崩れるといった点を心配する方がいる。家族の一体性とか、家族のアイデンティティを証明する仕組みとして、戸籍制度は残す形にすることが、バランスが取れたやり方かなと思います。

われわれとしては、親族関係を公に証明する現行の家族戸籍の制度は残す。戸籍の筆頭者をきちんと定めて、原則として、家族というチームの長は戸籍の筆頭者で、そのチームのメンバーの姓は、基本的にはチーム長と同じにする。結婚前の姓を使いたい人は、何らかの形で戸籍にそれを付記して、それに法的効力を持たせる。そういう内容の法案を、われわれは国会に提出しています。

この問題は各党で話し合ってまとめることができるかどうかです。キーポイントは公明党です。公明党も選択的夫婦別姓の容認には賛成だけど、今、参院選が近いので、かなり自民党にも気遣っている感じですね。

不信任案提出なら可決の可能性

塩田:通常国会の会期末は6月22日ですが、日曜なので、事実上の閉幕は6月20日となりそうです。その後に参院選が控えている今年は、会期延長はないと見られていますが、国会の終盤で、野党側が内閣不信任決議案を出すのかどうか。衆議院規則によれば、不信任案は提出者と50人以上の賛成者が必要で、立憲民主党以外の野党各党は、国民民主党も含め、単独では提出の権利がありませんが。

玉木:立憲民主党がどういう判断をするか。ただ、今までと違って、通らないことが分かっていて「年中行事」で出していた過去のケースとは違って、可決の可能性が高い。

 

塩田:不信任案可決の場合、憲法第69条で、首相は衆議院解散か内閣総辞職を選択する。

玉木:石破さんは総辞職しないと思いますよ。民意を問うと言って解散すると思う。立憲民主党の野田佳彦代表にその準備ができているかどうか。今、一番、悶絶しているのは野田さんでしょう。われわれは受けて立ちますよ。「勝負は今ではない。参院選の後の次の衆院選だ」と言う人がいますが、1回の選挙を死ぬ気でやらないと、その次とかはないですよ。

立憲民主党も、不信任案を出せばいいんです。そのとき、われわれはどうするかは、今、明言はできませんけど、われわれは石破政権と最も厳しく向き合っている政党の一つです。そこは厳しく対応します。

塩田:石破政権が少数与党の第2次内閣で再スタートを切って7カ月半が過ぎました。

石破政権には決断する政治がない

玉木:ウーン、と思います。与党は参院選で負けますよ。

塩田:与党が参院選で負けると、衆院選に続いて国政選挙2連敗です。国民から2度も「信任せず」という判断を突きつけられれば、石破首相は持たないのでは。

玉木:2連敗なんですよね。財源の問題など、いろいろ言って、「103万円の壁」も中途半端、消費税減税もできない、ガソリンの暫定税率廃止もしない。決断する政治がないという気がしますね。

石破首相は、われわれが税収の上振れ分で所得税やガソリン税を減税しろと言うと、そんな財源はないと言いつつ、選挙前になったら、現金をばらまくためには税収の上振れ分を使うと言う。あまりにご都合主義です。税金を取って現金で配るには、手間も事務費もかかります。そんな無駄遣いするくらいなら、初めから税金を取らない減税にすべきです。

 

塩田:去年の衆院選の直後、一時的に石破政権と政策別の協議で「与党でも野党でもない関係」を作り、友党的立場に立ちましたが、現在の石破政権との立ち位置は。

玉木:石破内閣とどう連携するかは、その前に去年12月に暫定税率は廃止すると決めた。所得税の税額控除でも 178万円を目指すと言った。その幹事長間の合意すら、約束を果たしてくれない。これでは政権運営の協力や連携はできません。まずその約束を満たしていただくのが先ですよ。

塩田:参議院の国民民主党で党籍を持つ議員は、今年の参院選の改選組が4、非改選組が5ですが、参院選では国民民主党は勝敗ラインをどう見ていますか。

玉木:参議院では21人以上であれば、予算を伴った法案を単独で提出できます。非改選議員と合わせて21議席の政党になりたい。そのために16議席以上取りたいです。

塩田:見通しはありますか。

玉木:頑張るしかないです。とにかく1回の選挙が正念場で、動きを止めたら死んでしまう。思い、政策を訴え、1議席でも多く取れるように、「もっと手取りを増やす熱い夏」にしたい。

塩田:参院選の全国比例代表は、本来、「非拘束名簿式」だったのに、選挙区の定数是正で2県合区が始まった後に、自民党の主導で「非拘束名簿式」の例外として「特定枠」制度が認められ、前回の2022年の参院選では、れいわ新選組も活用して話題になりました。国民民主党はこの特定枠制度を使う計画はありますか。

玉木:今のところ、使う予定はありません。

首相になれば2035年までにGDP1000兆円を目指す

塩田:最後に、国民民主党は将来、政権与党になり、玉木代表自身は「首相」を明確に意識している、と映ります。首相になれば、どんな政治を目指しますか。

玉木:まず国家ビジョンを明確に出したい。GDP1000兆円を2035年までに目指すという中期的なビジョンを明確に示したい。経済政策さえ間違えなければ、必ずそこに行きますから、それから逆算して、やるべきことを積み上げていく。若い世代や現役世代が将来に希望を持てる国にしなければなりません。

ほかには、もう一回、日本を科学技術立国にしたい。日本は資源のない国だから、人と技術で生きていくしかない。例えば大学向けの科学技術予算は、中国はこの20年間で24倍ぐらい、韓国が6倍ぐらい、アメリカも3倍ぐらいですが、日本は 0.9倍で、1割も減らしています。科学技術力を落としているので、けちけちせずに科学技術関連予算を倍にしたい。

ですが、今は選挙結果がどうなるか分かりませんから、とにかく1議席でも増やして、少しでも影響力を持てるような政治勢力になる。現段階ではそれしか言えません。

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