その16時間断食、本当に大丈夫?ファスティングで痩せる人・注意が必要な人
高齢者が陥るファスティングの罠
「16時間食べないと痩せる」
「1日1食にするとオートファジーが働いて若返る」
「食べる回数を減らせば健康になる」
最近、こういった“ファスティング”の話をよく耳にするようになりました。
実際、間欠的断食(intermittent fasting:IF)には、体重減少や血糖などの代謝指標を改善する可能性があります。
でも、ここで大切なのは、
「食べない時間が長ければ長いほど健康になる」わけではない
ということ。
今回は、最新の研究をもとに、ファスティングの「光」と「影」を分かりやすく整理してみます。
そもそも「ファスティング」にはいろいろある
ひとくちにファスティングといっても、方法はさまざまです。
代表的なものは、
16:8法:1日のうち16時間は食べず、8時間以内に食事をする
5:2法:週5日は通常通り食べ、週2日は摂取カロリーを大きく減らす
隔日断食:断食日と通常食の日を交互にする
1日1食(OMAD:One Meal A Day):1日1回だけ食べる
長時間断食:24〜72時間以上食べない
などがあります。
この中で比較的研究が多いのは、16:8のような時間制限食(TRE:Time-Restricted Eating)です。
ワクチン後遺症治療でも16時間断食を勧めてきました。
2025年に報告されたアンブレラレビューでも、間欠的断食、特にTREは、過体重・肥満の成人における体重管理や代謝改善の選択肢になりうるとされています。
ファスティングの「光」
① 体重や体脂肪が減る可能性がある
ファスティングのもっとも分かりやすいメリットは、体重減少です。
食べられる時間が限られることで、結果として1日の総摂取カロリーが減りやすくなります。
そのため、
体重
BMI
腹囲
体脂肪
などが改善する研究が複数あります。
ただし、ここはとても重要。
ファスティングだから特別に痩せるというより、
「結果として食べる量が減る」ことが体重減少に大きく影響している
と考えたほうがよさそうです。
② 血糖やインスリン抵抗性が改善することがある
間欠的断食では、
空腹時血糖
インスリン抵抗性
HbA1c
などが改善する可能性があります。
特に注目されたのが、2024年にJAMA Network Openに掲載された2型糖尿病患者を対象とした研究です。
新たに診断された過体重・肥満の2型糖尿病患者405人を対象に、16週間の「5:2法+ミールリプレイスメント」を行ったところ、HbA1cの改善がメトホルミン群、エンパグリフロジン群より大きかったと報告されました。
ただし、
「ファスティングは糖尿病の薬より優れている」
と単純化してはいけません。
この研究は新規診断例を対象とした特定の食事介入であり、すべての糖尿病患者にそのまま当てはめられるわけではありません。
③ 脂質や血圧などが改善する可能性も
研究によっては、
中性脂肪
LDLコレステロール
血圧
肝機能関連指標
などの改善も報告されています。
ただし、すべての研究で一貫しているわけではありません。
全体としては「一部で改善」という程度に理解しておくのが適切です。
一方で、ファスティングには「影」もある
ここからが、個人的にはむしろ大切だと思います。
① 1日1食=健康、ではない
「1日1食にすればオートファジーが働いて健康になる」
という話を聞くことがあります。
確かに断食により、エネルギー代謝が糖中心から脂肪酸やケトン体利用へと切り替わる、いわゆる「メタボリックスイッチ」は起こります。
しかし、人間でオートファジーを増やすことが、そのまま病気を減らしたり寿命を延ばしたりするというところまで、臨床的に確立しているわけではありません。
特にOMAD(1日1食)はかなり極端な方法です。
健康な成人を対象とした短期間の研究では体重や体脂肪の減少がみられた一方、空腹時血糖の上昇や食後インスリン反応の遅延、血圧・LDLコレステロール上昇などが報告された研究もあります。
つまり、
「食事回数が少ないほど健康」ではありません。
② 筋肉まで減る可能性がある
ダイエットで一番避けたいことの一つが、
脂肪だけでなく筋肉まで落ちること。
特に40代、50代以降では重要です。
加齢に伴って筋肉量は自然に減りやすくなるため、そこに過度な食事制限が加わると、サルコペニアにつながる可能性があります。
2026年のレビューでも、中高年者における間欠的断食と除脂肪量について研究されていますが、現時点ではエビデンスが十分に固まったとは言えません。
だからこそ、
体重だけを見るのではなく、筋肉量や筋力も見る
ことが大切です。
特に注意してほしい人
ファスティングを自己流でやらないほうがいい人もいます。
特に、
糖尿病治療中の人
機能性低血糖症の人
高齢者
低体重の人
フレイル・サルコペニアがある人
妊娠・授乳中の人
摂食障害の既往がある人
腎臓病など基礎疾患がある人
などです。
なかでも糖尿病患者さんは要注意です。
糖尿病の人は「薬の調整」が最重要
インスリンやSU薬など、低血糖を起こしうる薬を使用している場合、
普段と同じ量の薬を使ったまま食事だけ抜くと、低血糖を起こす危険があります。
一方、SGLT2阻害薬では、脱水や摂取不足、長時間の絶食などの条件が重なると、正常血糖ケトアシドーシスへの注意が必要です。
INTERFAST-2というランダム化試験では、インスリン治療中の2型糖尿病患者を対象に間欠的断食が検討されていますが、食事指導や血糖モニタリングを行ったうえで実施されています。
つまり「糖尿病でもできる」という意味ではなく、安全管理を前提に行われた研究です。
糖尿病の人がファスティングをする場合は、
自己判断で薬を減らしたり、食事だけを抜いたりしない
ことがとても重要です。
じゃあ、どんなファスティングが現実的?
研究全体を見ると、「24時間、48時間、72時間……」と断食時間をどんどん延ばす必要はありません。
むしろ一般の方が試すのであれば、16:8など、比較的穏やかな時間制限食のほうが現実的です。
たとえば、
朝8時〜夕方4時
朝10時〜夕方6時
など、8〜10時間程度の食事時間をつくり、それ以外はカロリーのあるものを摂らない方法です。
ただし、「8時間なら何をどれだけ食べてもいい」という話ではありません。
ファスティング以上に、
十分なタンパク質
野菜・食物繊維
過度な精製糖質を控える
適正な総摂取カロリー
運動、とくに筋トレ
といった基本のほうが大切です。
年齢が上がるほど「痩せる」だけを目標にしない
若い人であれば、多少体重が落ちても比較的筋肉を維持できることがあります。
しかし、50代、60代、70代と年齢が上がるにつれて、
体重が減った=健康になった
とは限らなくなります。
たとえば、
体重−5kg
でも
筋肉−3kg
だったら、必ずしも良い減量とは言えません。
高齢者では特に、
体重
体脂肪
筋肉量
握力
歩行速度
食事量
などを総合的にみる必要があります。
「痩せること」よりも、
動ける体を維持すること
のほうが重要になる年代があります。
ファスティングを始める前に確認したいこと
少なくとも、
現在の体重・BMI
血圧
空腹時血糖・HbA1c
腎機能・肝機能
服用している薬
筋肉量や筋力
栄養状態
などは確認しておきたいところです。
糖尿病治療中や高齢者、基礎疾患のある方については、医師や管理栄養士と相談しながら行うのが安全です。
まとめ
ファスティングは「魔法の健康法」ではありません。
でも、上手に使えば、体重管理や代謝改善の選択肢の一つにはなり得ます。
現在の研究では、特にTREを中心に体重・代謝面のメリットが示されている一方、長期予後や高齢者の筋肉への影響など、まだ十分に分かっていない部分があります。
「何時間食べないか」よりも、「誰が、何を食べ、どんな状態で行うか」が大切。
と伝えたいです。
1日1食や長時間断食が合う人もいるでしょう。
でも、
「16時間断食が流行っているから」
「オートファジーが体にいいと聞いたから」
という理由だけで、万人が同じ方法を行う必要はありません。
特に糖尿病のある方、機能性低血糖症の方、副腎疲労の方、高齢者、低体重の方は、メリットよりリスクが上回る場合があります。
ファスティングの前に、自分の体の背景を知る。
これが一番大切なのではないでしょうか。



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