生活道路のルールが9月1日から変わり、法定速度が時速60キロから時速30キロに引き下げられました。住民やドライバーはどう受け止めているのでしょうか。タクシー業界や運送会社への影響、速度の遅さによって懸念される点を取材しました。

■全国の一般道の7割を占める生活道路

9月1日夜。「いまいちピンとはきていない」「生活道路が分かりづらい…」。あるタクシー運転手は、頭を悩ませていました。生活道路の自動車の法定速度がこの日、時速30キロに引き下げられました。

生活道路とは、主に住宅街で道幅が狭く、中央線などがない道路。全国の一般道の約7割を占めます。

1日、東京・江戸川区の住宅地では速度の取り締まりが行われていました。引き下げの対象となるのは、制限速度の標識などがない、法定速度がもともと時速60キロだった場所です。

■子連れで歩き…「車が速いと怖い」

東京・江東区の住宅街を1日に取材しました。車がすれ違えないほど狭い道です。

70代の近隣住民
「(ここは)抜け道なので、状況を分からない人がぐんぐん走っていく。(30キロを超えているなという車は)あるある。(期待するのは)交通事故の減少ですよね」

40代の母親
「うれしい。(小学2年生の)子どもを連れて歩くことが多いので、車が速いと怖いところもあるし、ゆっくりになった方がうれしい。(子どもが)習いごとに1人で行っているので。60キロで走る人はなかなかいないと思うんですけど、上限は低い方がうれしい」

■住民が使う道路だからこその危険

法定速度が引き下げられたのはなぜでしょうか。自動車と歩行者が衝突した場合の、自動車の速度と歩行者の致死率を表した警察庁のデータがあります。

時速20~30キロの場合の致死率は0.9%ですが、50~60キロの場合は17.4%です。自動車の速度が時速30キロを超えると、歩行者の致死率が急激に上昇していることが分かります。引き下げは重大事故を防止するためです。

住宅街を走る車のドライブレコーダーの映像を見ると、突然子どもが目の前に飛び出してきました。なんとか危険は回避しましたが、急に自転車が飛び出してくる別の映像もあります。住民が使う道路だからこそ、危険があります。

■配送会社の代表「リズム変わる」

引き下げについて、生活道路を運転するドライバーたちはどう受け止めているのでしょうか。

あるタクシー運転手は1日、「(お客さんに)『スピードがもっと出ないのか』というような言葉をいただいていたが、これ(法定速度)が変わったことで30キロとはっきりいえる。(スピードを)出せないといえる」

千葉・松戸の配送会社はSNSで、ドライバーに今回の速度引き下げを周知していました。

代表
「配送の業務自体にはさほど影響はないとは思いますけど、30キロを守って配送するという部分がなかなか習慣付かないと、配送と速度を気にしながらの部分では、遅れではないが、配送のリズムが変わってきてしまうと思います」

実際に配送業務を担当しているドライバーの車に同乗しました。ドライバーは「いままで、ここからが生活道路だと意識してなかったので、きょうから配達する中で、幹線道路を曲がったところからは意識して取り組むようにしています」と語ります。

■配達の依頼が増える時期に懸念も?

この会社では個人宅への配達が中心のため、7~8割は生活道路を走行するということです。9月のこの時期は、1日に150個以上の荷物を届けるといいます。

配達の依頼が増えるのは、11月後半~12月。この時期に荷物が増え、移動距離が長くなった際に、懸念が出てしまう可能性もあるということです。

運送会社の代表
「生活道路が30キロになったと知らない人たちもいると思うので、30キロで走っていると速度が遅いということで、あおり運転などを弊社の車がされてしまう懸念はあります」

■「判断は難しい」「わかりづらい」

千葉・柏市で、車で自宅に帰るという家族に話を聞きました。

「乗っててここが確実に生活道路ですよとか、細い道なら分かりやすいと思うんですけど、分かりにくいところは分かりにくいので、そういったところの判断は難しいかなというのはありますね」

「いろいろ調べていたんですけど、『柏市 生活道路 地図』とか。検索してもちょっと分かりづらいなというのが印象で」

どこからが生活道路なのか判断が難しく、困惑していました。

■専門家「ドライバーの自覚が大事」

その分かりづらさは、交通心理学の専門家も指摘します。

九州大学大学院の志堂寺和則教授
「生活道路というのは定義がちょっと曖昧といいますか、ここからこうだよ、そうだよ、というのが分かりにくい。生活道路の法定速度が時速30キロに制限になっても、目立った変化があるわけではない。新しく標識が立ったというわけでもない」

「いかにドライバーの方が、生活道路はこんなにスピードを出してはいけないということを、自覚していただくというのが一番大事かなと思います」

警視庁は、「生活道路は子どもの通行も多く、事故を起こすと重大な事故に発展する。改正を広く周知していきたい」としています。

(9月1日『news zero』より)