日本の人口減少がさらに加速しています。2024年、出生数は初めて70万人を割り込み、合計特殊出生率も過去最低を記録。さらに死亡数は過去最多を更新し、人口の自然減少幅は過去最大となりました。この危機的状況は、少子高齢化が加速度的に進み、社会や経済の基盤そのものが揺らいでいることを物語っています。果たして日本は、この「静かな消滅」の流れを止めることができるのでしょうか。

出生数68万人台へ急落、国家の活力源泉が枯渇する日

厚生労働省から『令和6年(2024年)の人口動態統計(概数)』が発表されました。まず、目を覆いたくなるのは出生数の惨状です。令和6年の出生数は、わずか68万6,061人。前年の72万7,288人から、実に4万1,227人もの減少です 。この数字は、統計開始以来、過去最少を更新。出生率(人口千人あたり)も5.7と、前年の6.0から低下 。国家の活力源泉が枯渇に向かっています。

女性一人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.15 。前年の1.20からさらに低下し 、人口維持に必要とされる2.07という水準からは絶望的なほどかけ離れています。この数字が意味するのは、将来の労働力不足、国内市場の急激な縮小、そして社会保障制度の崩壊という、悪夢のシナリオです。しかも、母の年齢階級別に見ると、すべての階級で出生数が減少しているという事実は 、社会全体の構造的な病理であることを物語っています。第1子出生時の母の平均年齢が31.0歳であることも 、晩婚化・晩産化が少子化に拍車をかけている現状を裏付けています。

このままでは、日本の経済規模は縮小の一途をたどり、国際社会における影響力も低下は避けられません。企業は深刻な人手不足に直面し、イノベーションを生み出す若い力も失われていくでしょう。そして、減り続ける現役世代が、増え続ける高齢者を支えきれなくなる日は、もはや目前に迫っているのです。

死亡数160万人超え、超高齢化社会の重圧が日本を覆う

少子化と並行して日本の危機を加速させているのが、高齢化の急進展です。令和6年の死亡数は160万5,298人と過去最多を記録し、前年から2万9,282人も増加しました 。死亡率(人口千人あたり)も13.3と上昇を続けています 。特筆すべきは、死亡者総数の実に8割が75歳以上の高齢者であるという事実 。これは、日本が世界でも類を見ないスピードで超高齢化社会へと突き進んでいることの動かぬ証拠です。

死因のトップ3は、悪性新生物(腫瘍)が23.9%、心疾患(高血圧性を除く)が14.1%、そして老衰が12.9%と続いています 。老衰が死因の上位を占め、その割合が増加していることは 、長寿化の陰で、医療・介護の需要が爆発的に増大していることを示しています。

この高齢者の増加は、医療費や介護給付費の際限ない膨張を招き、国の財政を危機的な状況へと追い込みます。現役世代の社会保険料負担は増すばかりで、手取り収入は伸び悩み、消費は冷え込み、経済の好循環など望めません。

人口自然減91万人超、静かに縮小し消滅へと向かう日本

出生数の激減と死亡数の増加。この二つの要因が組み合わさることで、日本の人口は凄まじい勢いで自然減少しています。令和6年の自然増減数は、マイナス91万9,237人 。前年からさらに7万0,509人も減少幅が拡大し、18年連続の減少、そして過去最大の減少幅という、破滅的な記録を更新しました 。この数字は、一年間で鳥取県や高知県の人口に匹敵する規模の人々が、この国から「消滅」したことを意味します。そして、この人口減少は全国すべての都道府県で進行しています。

国家の存立基盤そのものが根底から揺らいでいるなか、労働力の喪失は経済成長を阻害し、国内市場の縮小は企業の活力を奪います。税収は減少し、社会インフラの維持はますます困難になるでしょう。特に地方においては、集落の消滅、生活サービスの崩壊が現実のものとなりつつあります。このままでは、日本という国家そのものが、静かに、しかし確実に縮小し、やがては国際社会のなかで埋没してしまう未来すら否定できないのです。

婚姻件数が一時的に48万5,063組へと増加したことや 、離婚件数が18万5,895組へと増加したことなど 、家族形態の変化を示すデータもありますが、これらは少子高齢化という大きなうねりのなかで見れば、もはや些末な変動にすぎません。晩婚化を示す平均初婚年齢(夫31.1歳、妻29.8歳) も、根本的な人口動態の危機を覆い隠すことはできないでしょう。

令和6年の人口動態統計を紐解くと、あまりにも過酷な日本の未来が見えてきました。しかし、目を背けていては、事態は悪化の一途をたどるばかり。少子高齢化と人口減少はもはや有事であり、この国に生きるすべての世代が当事者意識を持って立ち向かうべき、喫緊の課題といえるでしょう。

もはや小手先の対策や弥縫策では、この国難を乗り越えることはできません。今こそ、社会のあり方、経済システム、そして私たち一人ひとりの生き方そのものを見つめ直し、大胆かつ実効性のある国家的な行動が求められています。

[参考資料]

厚生労働省『』