アメリカの分断と内部抗争を激化させるための銃撃事件
アメリカ人の分断が極端なレベルに
9月10日に銃撃され亡くなったチャーリー・カーク氏という人については、私などは、その事件まで人物そのものさえ知らなかった存在です。
しかし、事件後、保守派からは悲劇のヒーロー的な扱いが拡大する一方で、左派などの人たちは、この狙撃事件を賞賛するような主張が相次いでいまして、
「もともと分裂していたアメリカの分裂がさらに決定的になった」
とは感じます。
左派の人たちなどによる「事件への賞賛」については、たとえば、以下のような記事が、現在、アメリカのソーシャルメディアで起きているということを伝えてくれます。
ブランドン・スミスという人が書いたもので、2024年のブログ記事「大量飢餓の時代」で彼の文章を取り上げたことがあります。
愚か者か悪人か? チャーリー・カーク殺害を正当化する左翼たちの主張
Brandon Smith 2025/09/12
もしあなたが私と同じように、チャーリー・カーク暗殺事件の進展をニュースフィードやソーシャルメディアでチェックしているとすれば、保守派のチャーリー・カークの死を祝福するネット上の不穏な左翼勢力に遭遇したことがあるだろう。
笑いながら祝う人々の投稿には、何万もの「いいね!」が集まっている。コメントの数だけではない。コメントを支持する狂信的な人々の群れも、まさにその狂信的な集団なのだ。
この堕落したサイコパスの山々に私が見ているのは、まさにその証拠だ。私を含め多くのアナリストたちが長年警告してきたように、西洋世界の残骸をめぐる争いは二つの戦線で起こるだろう。
それは、頂点に立つグローバリストと、底辺に立つ左翼の大群だ。
グローバリストが NGO や企業を通じて「目覚めた」集団に資金提供することはよくあるが、彼らは単に、すでにアメリカを滅ぼす意志と意図を持つ者たちに援助を与えているに過ぎない。
つまり、「偽りの左派/右派パラダイム」という考え方はもはや通用しない。ピラミッドの底辺には、暴力的な意図を持つ狂気の人々が何百万と存在し、意見が合わないからといってあなたを殺そうとしている。
グローバリストがいなくなっても、彼らは消えないだろう。彼らはグローバリストと同等の脅威を呈しているのだ。そうではないと考える人たちは本当に妄想に陥っている。私はもうそんな愚かな行為には我慢ができない。
こう考えてみてほしい。「目覚めた」運動は死のカルトだ。どのカルトにも、言われたから悪事を働く、役に立つ愚か者がいるのは確かだが、意識的に悪事を働く者もたくさんいる。
純粋な悪を見たいなら、カーク氏の死に対する活動家たちの数え切れないほどのグロテスクな反応を一瞥してみてほしい。ソーシャルメディアにはカーク氏の殺害を称賛する投稿が後を絶たない。
民主党は議会でカーク氏のために黙祷を捧げるのを阻止しようとしている。目撃者によると、ユタ州では左翼の抗議活動家たちがカークの銃撃直後に歓声を上げたという。これらの恐ろしい出来事の数々は、想像を絶するほどだ。
あなたが進歩主義カルトの本質に疑問を抱いているなら、彼らがいかに血に酔いしれているかを見れば、理解できるかもしれない。彼らは人間ではなく、モンスターだ。そして今、彼らは政治的な殺害をしても罰せられないと確信し、非常に大胆になっている。
典型的な例は、カーク氏暗殺を正当化するために彼らが提示する数々の議論だ。ソーシャルメディアにはそのような議論があふれており、何千もの投稿が何十万人もの人々に支持されている。私がやりたいことは、最も一般的な議論のいくつかを分析し、それらの考えが愚かなのか、それとも邪悪なのか(あるいはその両方なのか)を解明することだ。
ここまでです。
この後、ブランドン・スミスさんのこの記事は、左翼の人たちの主張をひとつずつ取り上げて、それを、「邪悪」「愚か」「邪悪と愚かの両方」に分類しています。
それはともかくとして、このブランドン・スミスさんの文章自体が、非常に感情的になっていることがおわかりだと思います。
ちなみに、チャーリー・カーク氏暗殺に対する左派の人々の賞賛の投稿の数々は、私も少し見ましたが、確かに、人の死に対しての反応としては、もう普通の神経状態ともいえない感じで、言えば……
「国家間の戦争状態などで、敵国の主要な幹部が殺害される」
ときのような反応とも言えるでしょうか。敵が殺害されたことに対して、楽しく踊って大爆笑して中傷するというような反応ですね。
憎悪の応酬
ここまでの状態になっていると、もうアメリカの分断は緩和されることはないなと思いますけれど、一方で、トランプ政権は、
「チャーリー・カーク氏の暗殺を祝った外国人のビザ取り消し手続きを開始するための拡大スクリーニングを開始するよう命じた」
と ABC ニュースが報じています。
この「拡大スクリーニング」というのが、具体的にはどんなものかはわからないですが、ソーシャルメディアにこのような投稿をした人物を、おそらく AI を使って人物を特定し、ビザの取り消しや海外追放という運びとなるのだとは思います。
あるいは、国内のアメリカ人であっても、人物を特定することは、ある程度は可能だと思いますので、何らかの処置が下される可能性もあるのかもしれません。
これは、以前ご紹介したラザフォード研究所のジョン・ホワイトヘッドさんの文章にある以下のような概念です。
> もはや、政府が命令に従わなかったアメリカ人を投獄するかどうかではなく、いつ投獄するかが問題となっている。
この全文は、以下のブログ記事にあります。
・「独裁政治に入り込む夢遊病」:法を超越する怪物たち
In Deep 2025年2月8日
これもこれで、さらなる混乱と憎悪の発生源となり得るものですけれど、それ以上に、さらに現在、
「左派のソーシャルメディア投稿に次の標的がリストアップされ続けている」
ようです。
アメリカのメディアが記事で取り上げていました。ポッドキャスターのジョー・ローガン氏や、ハリー・ポッターの著者J・K・ローリング氏、保守派の政治評論家ベン・シャピロ氏、マット・ウォルシュ氏などが含まれているそう(それぞれ、私はよく知らないですが)。
そして、
「実際の内戦への導入はどのようになされる可能性があるか」
ということについて、米 Yahoo! ファイナンスが、デクリプト誌の記事を引用して書いていました。
その文章をご紹介して締めさせていただきます。
なお、この記事には「ボットネットが内戦の呼びかけを増幅させている懸念」という表現がありますが、ボットネット、というのは、一般的には、不正なソフトウェアに感染したコンピュータによるサイバー攻撃のことですが、ここでは「多数の類似したコンテンツが一斉にソーシャルメディアに現れる」的な意味だと思います。
チャーリー・カーク殺害事件後、ボットネットワークが「内戦」の呼びかけを増幅させているのではないかという懸念が高まる
Concerns Grow That Bot Networks May Be Amplifying Calls for ‘Civil War’ After Charlie Kirk Killing
finance.yahoo.com 2025/09/12
水曜日 (9月10日)にユタ州のイベントでチャーリー・カーク氏が暗殺された数時間後、ソーシャルメディアプラットフォーム、特に X は敵対的な言論であふれ返った。
右派系の投稿はたちまち「戦争」「内戦」を煽り立て、リベラル派、民主党員、そして「左派」への報復を要求した。
これらの中には、一般的な経歴、MAGA スタイルの記号、愛国的な画像、ストックまたは特徴のないプロフィール写真など、驚くほど類似した特徴を持つアカウントの集合体があった。
こうしたパターンから、ボットネットワークが右翼の内戦呼びかけを増幅するために使用されているのではないかという疑念が高まっている。
これまでのところ、この事件に関連したボットによる組織的なキャンペーンが行われたことを裏付ける決定的な外部報告書や機関は存在しない。しかし、状況証拠、過去の前例、そして X における偽アカウントの性質に関する研究は、懸念すべき理由があることを示唆している。
証拠が示唆するもの
研究者やユーザーは、短い期間内に多くの投稿に繰り返し同じ表現(例えば「左派が代償を払うことになる」、「これは戦争だ」、あるいは「これから何が起こるか分からない」といった警告)が見られることを指摘している。こうした投稿の多くは、デフォルトまたは一般的なプロフィールを持つ、エンゲージメントの低いアカウント (それまで投稿なやシェアなどのアクションが少ないアカウント)から発信されている。
サンディエゴ大学の政治学教授ブラニスラフ・スランチェフ氏は X に以下のように書いた。
チャーリー・カークの暗殺を受けて、事実上、米国で内戦を煽ろうとするアカウントが多数出現するだろう。これには怒りを煽る最高責任者のイーロン・マスクも含まれるが、ロシアと中国のボット軍団と西側諸国の忠実なサクラも含まれる。
スランチェフ氏は、報復的な暴力を主張するボットユーザーと思われる X の投稿を集めた話題になっているスレッドを引用した。
投稿者たちは「それらの半数は AI 生成のプロフィール写真、ありきたりのくだらない自己紹介、そしてありきたりのバナーを使っている」とスランチェフ氏は指摘した。
このようなパターン、つまり多数のアカウントに類似したコンテンツが急速に出現するパターンは、既知のボットネットによる連携やメッセージの増幅と一致している。
これらはこれまでの体系的なデータというよりもユーザーの観察に基づいているが、既知のボットの行動との一貫性は、疑惑をさらに強固なものにしている。
過去の研究は、X 上でボットによって増幅された政治コンテンツがどのようなものかについての基準を提供している。 2月に発表された Plos One の論文では、イーロン・マスク氏が 2022年後半に Twitter を買収して以来、ヘイトスピーチが増加し、偽アカウントや「ボットのような」アカウントの活動は減少していないことが明らかになった。
グローバル・ウィットネス社による昨年夏の別の調査では、ボットのようなアカウントの小規模なグループ(あるケースでは 45アカウント)が、党派的、陰謀的、または虐待的なコンテンツで合計 40億回以上のインプレッションを生成していたことが明らかになった。このような拡散は、こうしたネットワークの潜在的な影響力を示している。
最後に、国家や組織がボットネットやトロールファーム (政府がプロパガンダ拡散や意思決定に干渉する目的のために組織した投稿プロ集団)を展開し、米国の政治的二極化を悪用してきた歴史がある。
例としては、ロシアのドッペルゲンガーキャンペーンや「スパムフラージュ」(中国政府と関連)などが挙げられる。また、米国のユーザーを模倣したり、AI によって生成または操作されたコンテンツを利用したり、政治的影響力を得るために分断を煽る言説を展開したりした他のキャンペーンも挙げられる。
まだ決定的なことは何もないが
今のところ、信頼できるサイバーセキュリティ企業、政府機関、学術団体のいずれも、カーク氏の死後に起こった「内戦」騒動の原因が、海外または国内のボットネットワークであると高い確信を持って公に主張したことはない。
また、投稿のうち、自動化されたものがどれだけあり、オーガニックなもの(実際のユーザー)がどれだけなのかも明らかではない。さらに、こうした拡散がトップダウンの指揮系統(つまり中央集権的な調整)に基づいているのか、それともより臨機応変なのかも定かではない。
そして、Xには、左派による内戦や暴力的な攻撃を呼びかける右派の認証済みの影響力のある人々が多数存在する。
それでもなお、昨日の銃撃事件のような国家的悲劇に見舞われると、政治的分極化を悪用した実績を持つグループが、その機会を捉えてきた。
ロシアのボットファーム(例:インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)や「ストーム」のような活動)は、以前から警戒されているものだ。中国とつながりのある偽情報ネットワーク(例:スパムフラージュ)は、ソーシャルメディアの拡散やコンテンツファーミングを利用して米国の世論に影響を与えたことが記録されている。
AIを活用したコンテンツ生成の台頭により、ボットネットワークは人間らしく、説得力のある投稿を大規模に作成することが容易になっている。調査によると、人間の言語、タイミング、そして変化を模倣するアカウントは、ボット検出をますます困難にしている。
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