「本名は6800円、住所は1万2500円」個人情報を売りさばく”特定屋”がネット上に蔓延るワケ

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「本名は6800円、住所は1万2500円」個人情報を売りさばく”特定屋”がネット上に蔓延るワケ

マイナンバーカードの実用化後に必ずこうした輩が出てくる

依頼を受けるとネット上の情報から住所や電話番号などの個人情報を割り出す。そんな「特定屋」として活動する人があらわれている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「副業として気軽な気持ちで活動している人もいるが、ストーカーなどの犯罪に悪用された場合は共犯の罪に問われる可能性もある。特定屋になることも、利用することも避けたほうがいい」という――。
 
ハッカー攻撃
写真=iStock.com/anyaberkut

見知らぬ男から「いつも見ている」

「電車で知らない男にしつこくナンパされて。急いで逃げたのに、インスタのDMで『○○線で会ったよね。運命だと思うし、付き合わない?』と連絡が来た。アイコンの写真が確かにあの男で、気持ち悪くてアカウントは削除してしまった。それからは電車に乗る時間をずらすようにしたけど、また会うかもと思うと怖い」

ある20代女性は通勤電車が怖くなってしまったという。「でも、なんでアカウントがわかったのかな。怖すぎる」

話を聞くと、車内でインスタを更新したり、コメントに返信したりしていたそうだ。スマホに覗き見防止フィルムなども貼っていないそうなので、覗き見られてアカウントを特定された可能性がある。

ある30代女性は、会社の最寄り駅で知らない男に声をかけられた。男は、「○○さんでしょ。フォローしていつも見ている。これからどこかに行かないか」と言ってきたため、驚いて怖くなったという。

「怖かった。自分ではそんなに個人情報を出していたつもりはなくて、なんでわかったんだろうって。会社への行き帰りも怖くて、家が近い同僚にワケを話して、なるべく同じ時間に行けるようにしている」

「特定代」はわずか2000円~1万円

女性のアカウントを見せてもらうと、グルメ好きという彼女はさまざまな店で食べたランチの写真をアップ。お気に入りスポットでの自撮り写真も投稿しており、会社の最寄り駅がわかりやすい状態となっていた。残念ながら、このように無自覚に特定されるような投稿をしている人は多い。

これを利用したのが「特定屋」だ。特定屋とは、依頼を受けて誰かの住所などの情報を割り出すことを請け負う人のことだ。ネット上では、わずか2000円~1万円程度でさまざまな情報を特定代行する特定屋が見つかる状態だ。

顧客とのやりとりを公開する特定屋チームも

「詐欺にあわれた方助けます。特定屋やってます。住所、電話番号、SNSアカウントなどを特定します。先払い2000円。成果が出なければ先払い金お返しします。お申し込みはDMまでお願いします。#特定代行 #特定します #詐欺 #詐欺師」

Twitterではこのような投稿が多数見つかる。もちろんInstagramでも多い。

Instagramに、依頼者のやりとりを画像で公開しているアカウントがある。数名でチームを組んで特定代行業を営んでいるようで、実際に行っている証拠として顧客とのLINEでのやりとりを、個人情報を伏せた形で公開している。特定代行を引き受けながら、実際はお金をもらうだけで何もしない詐欺行為も横行しているためだろう。

本名を特定するには6800円、住所は1万2500円、現在地は1万4000円といった価格で引き受けているようだ。

「特定屋」と依頼者のやりとりの一部。現在地は1万4000円で特定するという
筆者提供
「特定屋」と依頼者のやりとりの一部。現在地は1万4000円で特定するという

好奇心だけの人の依頼にも応じている

やりとりを見ると、「詐欺にあったため詐欺師を特定したい」というものが目立つ。その他、「振り込みをしたのに商品が送られてこないため特定したい」「夫の複垢(複数アカウント)を特定してほしい」「なりすまし被害にあっているので特定したい」などの依頼もある。

特定したいものはInstagramやTwitter、ゲームのアカウントなど。支払い方法はPayPay、LINEPay、コンビニ払い、メルペイが多く、たとえばPayPayは「受け取りリンク」払いにしている。ネットだけで完結し、相手にIDや携帯番号を教える必要がないためだろう。

依頼の中には、「単純に好奇心で素性を知りたい」というものも混じっていた。好奇心というだけの割には、本名や住所、年齢、職場や学校、経歴や家族構成、他のSNSアカウントまで依頼したため、結果的に特定代は5万円近い金額に上ったようだ。

このように明らかに不審で、正当な理由のない依頼も請け負って特定していることから、犯罪などに悪用される可能性も十分に考えられる。

写真や動画は個人情報の宝庫

特定のやり方は難しくない。SNSの投稿やプロフィール、名前、アカウント名などからは多くの情報が取れる。特に写真や動画は個人情報の宝庫だ。しかも複数のSNSを使っていれば、さらに得られる情報は多くなる。

SNS
写真=iStock.com/FreshSplash

一つのSNSアカウントがわかれば、IDが同じ他のSNSのアカウントを特定したり、相互フォローしている関係からサブ垢を特定したりすることも難しくない。SNSのアカウント名から本名を特定し、他のSNSアカウントや個人情報を把握することもある。

SNSのアカウントが匿名であっても、フォロー先ややりとりする相手から、所属先や居住地はわかる。たとえばフォロー先が慶應大学の関係者ばかりなら慶應大学所属や出身である可能性が高いし、やりとりする相手は実生活でつながりがあることが多いためだ。

投稿内容でも多くの情報がわかる。投稿内容に「期末テスト」「成績」「文化祭」「レポート」などの学生しか使わない単語が使われていたら学生の可能性が高いし、投稿しているランチの店が赤坂近辺なら会社は赤坂付近の可能性が高くなる。

「他人を垣間見るスリルかな」

たとえ本人が匿名で鍵垢(鍵付きアカウント)にしていても、安心はできない。

フォロワーやフォロー関係の中には、必ず本名で所属を明らかにした状態で使っている人が混じっている。その人の他のSNSアカウントを見つければ、フォロー関係から探したい人物のアカウントが見つかる可能性がある。

プロフィールやアイコンなどを見れば、所属や趣味などがわかることが多い。そこで、相手と共通点があったり、好感を持ちそうなアカウントになりすましてフォロー申請をする。フォロー申請を許可してもらえれば、鍵垢の中身も見られるというわけだ。

特定屋に依頼してくるのは、大学生や会社員、主婦などさまざまな属性の人たちだ。特定屋をしている人もさまざまだ。私が調べた限りでは、ごく一般的な「普通の人々」が多いようだ。

普段は会社員をしているという30代の女性は副業感覚で、3000円程度の特定代で引き受けている。

「もともと趣味で色々な情報を特定していた。彼氏の情報も特定したことがあるし、コツさえ分かればそんなに難しいことじゃない。公開されている情報から特定することは違法ではない。自分がやらなくても誰かがすると思う」

なぜ続けているのかをさらに聞くと、しばらく首を傾げた後、「特定できたときの達成感とか、他人を垣間見るスリルかな。あとはお小遣い。それだけ」

口座番号→名前→SNS→住所を特定

特定屋がストーカー事件に悪用された事例もある。2020年6月、埼玉県の30代の男が20代の女性に対するストーカー規制法違反容疑で逮捕された。男は、特定屋に女性のSNSアカウントを特定させていた。

男は出会い系サイトで女性と知り合い、交際を断られていた。慰謝料を払う名目で口座番号を聞き出し、振込先から女性の名前を把握。ネットで見つけた復讐屋、つまり特定屋に依頼して女性のSNSアカウントを特定し、投稿内容から住所を突き止め、郵便物を勝手に転送したり、水道を止めたりする嫌がらせを繰り返していたのだ。

一般に公開されている情報で個人を特定すること自体は罪ではない。そのため特定屋が罪に問われることはこれまでなかったが、ストーカーなどの犯罪に悪用された場合は、共犯の罪に問われる可能性もあるのだ。

利用者も特定屋と匿名でやりとりできるため、安心して依頼してしまうのかもしれない。しかし上記の例も、個人情報を知ったことでストーカー化して逮捕されるに至ったが、知らなければそのまま諦められていたかもしれない。

時差投稿やフェイクを混ぜる対策が有効

このように、写真や動画、固有名詞などでは多くの個人情報が特定されてしまう。投稿時間で行動時間帯がわかることもある。

顔、背景などには特に注意して、気になるものはスタンプなどで隠して投稿することも大切だ。リアルタイム投稿はせず、時差を付けて投稿するのもいいだろう。固有名詞や場所、所属がわかるものなどは、あえてフェイクを混ぜて投稿するのもいい。

アカウントに鍵をかけたり、投稿の公開範囲を友だちなどに限定したりするのも効果的だ。ただし、前述のように絶対に安心ではないので、制限しつつも特定につながるような内容は投稿しないようにしたい。

われわれの多くは複数のSNSを利用し、既に多くの投稿をし、個人情報を公開してしまっている。特定は決して他人事ではないのだ。少なくとも、投稿する度に見返して、問題がないか確認してから投稿する癖をつけるようにしてほしい。

マイコメント

特にFACEBOOKは顔写真、住所、血液型などが公開されているので特定しやすいでしょう。
でも、インスタなどのアカウントから氏名、住所、電話番号などを割り出すことが出来る時代に
なったんですね。

本当に注意しないといけないことです。

そして、マイナンバーカードの番号は本来誰にも教えてはならないものですが、免許証や
保険証に適用された場合、何かの書類を書くときに必ず求められるのが本人確認です。
その時にコピーを取らせてもらいますけど良いですか?と聞かれる時があると思いますが
今と違い、マイナンバーも同時にプリントされているので簡単にコピーされます。

そのコピーが悪用される可能性はゼロではありません。
特にお金に困った第三者が裏業者に売りさばくことも十分考えられます。

例えば、将来的にマイナンバーカードがないと買い物ができないという時代が到来した
ときにマイナンバーを持てない人も必ず出てきます。
そうしたときに「マイナンバー売ります」という裏広告が出てくるでしょう。
マイナンバーがあれば買い物ができるわけですから当然買い手が出てきます。

犯罪とはそうしたもので、必ず需要があるところに犯罪が現れます。

また、技術が発達すればそれまで不可能とされたマイナンバーのスキミングも可能に
なってくるでしょう。

マイナンバーカードを安易に考えてはいけません。


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