IT大手GMOが「脱マスク」宣言 社内の活力低下に危機感

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IT大手GMOが「脱マスク」宣言 社内の活力低下に危機感

マスクがない方が相手の表情が見え情報伝達力が増す。逆は大幅に低下し危機感を抱き元に戻した。

IT(情報技術)大手のGMOインターネットグループが、いち早くオフィスでの「脱マスク」に踏み切った。新型コロナウイルス禍によるコミュニケーション不全で、社内の活力低下に危機感を募らせたからだ。この動きにクラウドソーシング大手のクラウドワークスも追随した。ウイルスの重症化率が大幅に低下する中、素顔で快活に話せる職場に戻す動きは広がるか。

東京・渋谷のGMOの本社オフィス。一室をのぞくと、3割ほどの社員がマスクを外してデスクワークをしていた。「マスクなしだと快適で仕事がしやすい。コミュニケーションも弾む」と財務を担当する稲垣法子グループ執行役員は話す。同社が9月20日に「新型コロナウイルス感染対策緩和宣言」を公表して以降、自席ではほぼ素顔でいるという。

社員の6割弱が「不要」

同宣言では、オフィスでのパーティション設置や消毒などの対策は続けながら、社外関係者が出入りする共有スペースや社外を除き、これまで必須としていたマスク着用を個人の自由とした。社内アンケートを実施したところ、パーティションがある場合、6割弱の社員が「着用は不要」と回答したという。「在宅勤務とマスクを続けていたらビジネスでは勝てない」。同社の熊谷正寿会長兼社長は公表当日、ツイッターでこう発言。ネット上では賛否両論渦巻いたが、「好意的な受け止め方が大半だった」という。

とはいえ、大半の企業でまだマスク信仰が根強い中、なぜ、熊谷氏は「脱マスク」に舵(かじ)を切ったのか。

「コロナ禍の2年半、コミュニケーションの機会も質も定量化できないくらいに落ちた。表情が分からない。何を言っているのか聞き取りにくい。笑いも消えた。このロスは計り知れないほど大きい」と熊谷氏は眉をひそめる。グループ社員約7200人に広がるコミュニケーション不全に危機感を抱き、「第7波」が収束気味となったタイミングで感染対策を緩和した。

同社の2022年12月期連結決算をみると、1~6月期は売上高、純利益ともに過去最高を更新している。だが株式売却益が寄与している面があり、絶好調かといえばそうも言い切れない。マスクの有無が業績に及ぼす影響について定量的なデータはないが、熊谷氏はマスクの着用や長引く在宅勤務によって「素顔で向かい合う対話が減ったことによるマイナス」を気にかけていた。

同社はコロナ禍初期にいち早く在宅勤務体制に移行したが、足元の出社率は6割にまで戻っている。出社率6割のオフィスでマスクフリーにしたことで感染リスクが高まる懸念はあるが、熊谷氏は「第7波はピークアウトしており、重症化率、致死率は極めて低い」と意に介さない。「(BA.5など)今流行中のウイルスは弱毒化しており、『天然のワクチン』ともいえる」とまで言い切る。すべて医療関係者からの情報収集をよりどころにした判断だ。

「欧米ではコロナは過去の話」と話す熊谷氏

「マスクはいらないと言い続ける」

国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授は「BA.5の重症化率・死亡率は武漢型などと比べ80分の1まで低下している」と分析。「少なくともインフルエンザより低く、通常の風邪と変わらないレベル」という。熊谷氏は8月に米国、3月に欧州に足を運んだ。ほぼノーマスクの人々を前に「欧米ではコロナは過去の話になっている」と痛感したといい、そうした見聞も今回の決断を後押ししたようだ。

クラウドソーシング大手のクラウドワークスは、1日から社員のマスク着用を任意とした。9月30日に社員に一斉に通知した。吉田浩一郎社長は、厚生労働省がすでにマスク着用の基準を緩和していることを念頭に「率先して日常を取り戻す。日常を取り戻すことが経済の活性化にも寄与する」と強調。ツイッターを通して社内外に「一つ一つやっていきましょう」と呼びかけた。

吉田社長が脱マスクに突き動かされたのは、この夏の欧州での滞在経験だ。「街中やビジネスシーン、美術館など屋内施設でも(ノーマスクで)人々から笑みがあふれている風景を目の当たりにした」。

また、日本の航空会社だけが乗客にマスク着用を指示したり、日本の空港で防護服を身につけたスタッフに案内されたりする光景の「異常さに触れた」。この彼我の差から吉田社長は「(日欧との間で)経済成長だけでなく、子どもたちの教育や体験にも大きな差が生まれる」と危機感を覚えたという。

日立製作所も5月、従業員のマスクの着用基準を緩和した。熱中症リスクを表す暑さ指数が一定値を超えた場合、工場ではノーマスクで作業ができる。オフィス勤務者は屋内で会話するとき以外、人との距離が2メートル以上離れていればマスクは不要とした。コロナ禍で染みついた習慣を変えようとする動きは今後、産業界で広がる可能性がある。

「私の仕事は7200人の社員の業務パフォーマンスを上げ、顧客に喜んでもらうこと。そのためにマスクはいらないと言い続けないと、当社だけでなく社会全体が変わらない」。熊谷氏はこう言ってはばからない。無論、マスクは任意だ。だが、コロナのリスクレベルを見極めながら現実的な対応をとらなければ、すでにマスクから解放され自由闊達なコミュニケーションを取り戻した欧米企業との差は開きかねない。

(日経ビジネス 上阪欣史、八巻高之)

マイコメント

とてもいいことだと思うし、今後こうしたマスクの弊害に気付く企業が後追いしてくれれば日本の
脱マスクが進展していくと思います。

しかし、記事の中に在るように会社が音頭を取ってもマスクを外した人が3割弱しかいないという
ことはやはりマスクを外すことに抵抗感をしてしている人が多いことを示しています。

今後はこれをどうしていくかが課題だろうと思います。

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