アベノミクスの10年、労働者にツケ…「意外。教科書にはなかった」 元首相の指南役・浜田宏一氏インタビュー

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日米貿易摩擦 政治・経済

アベノミクスの10年、労働者にツケ…「意外。教科書にはなかった」 元首相の指南役・浜田宏一氏インタビュー

今になってアベノミクスは失敗だったと言われても国民の失われた30年は戻ってこない。後は衰退していくだけの日本

大規模な金融緩和を中心とした安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の指南役として、当時内閣官房参与を務めた浜田宏一米エール大学名誉教授(87)が本紙のインタビューに応じた。浜田氏はアベノミクスの10年間について、大企業で利益が出ても中小企業や労働者に恩恵が波及しなかったことに「意外で、いびつな状況」との見解を示した。主なやりとりは次の通り。(原田晋也)
 

安倍晋三元首相

 —過去に「アベノミクスはトリクルダウン」と発言していた。
 「私がアベノミクスの性質を十分に理解していない時、トリクルダウンのようなことをやっていると誤解した。反省している。最近の私はアベノミクスはトリクルダウンではなかったと思っている。今、トリクルダウンを信じてはいない」
 「私が安倍首相(当時)に『政府が、企業が思う以上に賃金を上げろと言うのは難しいのでは』と言ったところ、『企業は労働者の生活を考え、国民の総需要が不足しないように十分に賃金を払わなければいけない』と強く反論された。反論されたのはあの時が唯一だ。このことで、首相がトリクルダウンの考え方ではないとはっきり分かった」

 トリクルダウン 英語で「徐々にしたたり落ちる」という意味で、大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも富が波及し、国民全体が豊かになるとの経済理論。小泉政権などで取り入れられたとされ、アベノミクスも開始当初、政権の政策顧問や閣僚らがこの考え方を説明していた。

 —大規模な金融緩和で大企業の収益が改善したのに、賃金が上がらなかったのはなぜだと考えるか。
 「長いデフレが続いたことで、みんな物価上昇に悲観的になった。(企業の行動が)出血してでも(低価格で)ものを売るような商売になってしまった。消費税増税でも企業が商品に価格転嫁できず、労働者などの川下にツケが回ったのではないか」
 —「ツケが回る」とは、大企業がもうけても下請けの中小企業は取引価格を上げられず、労働者の賃金も上がらない状況のことか。
 「そうだ。いびつな状況だといえる」
 —10年間たっても賃金があまり上がらなかったことは予想外だったのか。

オンラインでの取材に答える浜田宏一氏

 「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。安倍首相もそう思っていたと思う。賃金がほとんど増えないで雇用だけが増えるようなことに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。ツケを川下の方に回すようなシステムで調整されるなんてことは書いていない。意外で、望ましくない方向にいっている」
 —安倍氏は、最初からトリクルダウンを意図していなかったのか。
 「(アベノミクスで)雇用が増えるとは思っていただろう。だが、それによってみんなが豊かになるだろうと思っていたかは、分からない」
 橘木俊詔たちばなきとしあき・京大名誉教授の話 アベノミクスは金融緩和をすれば日本が経済成長に向かうという期待が強すぎた。しかし中小企業への価格転嫁や非正規労働者の処遇改善などの政策は掛け声だけで終わり、トリクルダウンが起きるための環境整備ができなかった。岸田政権は当初、分配重視を掲げたが、党内の反発を恐れてか最近は言わなくなった。安倍路線からの変化はあまりみられない。
 橋本健二・早稲田大教授の話 安倍政権期に大企業や富裕層への所得の分配が強化された一方、人々の実質賃金は下がった。トリクルダウンは全く起きていない。批判が増えたので「トリクルダウン政策ではなかった」と、口先だけ軌道修正している。最低賃金の引き上げは民主党政権の路線に沿ったもので、格差を縮小させる効果がある独自政策はほぼ何もしていない。

 はまだ・こういち 東大卒。東大教授や米エール大教授、内閣府経済社会総合研究所の所長を経てエール大名誉教授。第2次安倍政権の2012年〜20年に内閣官房参与を務め、大規模な金融緩和を提唱した。

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特に第一の矢である金融緩和によって円という通貨の価値を切り下げたことで(つまりは円安に誘導したことで)、日本の企業は息を吹き返したように語られています。しかし、実はこうした通貨切り下げ策が中長期的に一国の経済を成長させたことは一度としてありません。

確かに金融緩和によって株価は上がりました。円安によって、一部の企業も恩恵を受けています。

しかし、円安になったり、株価が上がったりしたことで、日本人の生活や暮らしはよくなっているでしょうか。綿、銅、食品など日本が輸入に頼っている製品の価格が上昇したことで、庶民の生活費はむしろ上がったのではないでしょうか。建設コストや製造コストが上がったことで、苦しめられている企業が出てきていないでしょうか。

現実をよく見れば、1億人を超える日本人のほとんどが幸せにならずに、一部のトレーダーや大企業だけが潤っている。それが果たしてよい政策といえるでしょうか。安倍首相の答えは「イエス」でも、多くの日本人にとっては「ノー」でしょう。

3月11日の会見で日本銀行の黒田東彦総裁は慌てて否定をしていましたが、いま日銀が追加の金融緩和をするのではないかと囁かれています。これも馬鹿げた話です。

追加緩和を実施すれば株価が上がるので株のトレーダーはまた大喜びするでしょうが、多くの日本人にとってはコストアップという形でより首を絞められることになるだけです。追加緩和への期待感がマーケットでしか騒がれていないことが、いかにも象徴的です。

そもそも、安倍首相や黒田総裁は、「2年で2%」というインフレ率を達成できると息巻いていますが、政府というのはそんなに利口ではありません。むしろインフレ率が2%を超えて制御不能になるシナリオのほうが現実的ではないでしょうか。その暁には、ただでさえ厳しい生活コストがさらにアップすることになるわけです。アベノミクスの恐ろしさが少しは理解していただけたでしょうか。


マイコメント

誰が何を言おうと失われた30年は戻ってこない。

今の日本になるように仕向けたのは米国でしょう。

当時に円の強さに恐れをなした米国とDS、Wall Streetがどうやったら日本を衰退させ
二度と金力をもたないよう画策し続けた結果がそうだったということです。

すべては日本の政治家と官僚の力がないからです。

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