子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する埼玉県虐待禁止条例改正案について、提出した自民党県議団は10日、改正案を取り下げることを決めた。

 同県議団はこれまでに、子どもだけの登下校や短時間の留守番なども「虐待」にあたるとの見解を示し、批判を呼んでいた。

 

 自民県議団は10日午後に記者会見を開き、田村琢実団長の名前で書面を配布。「私の言葉足らずにより、県民の皆様はもとより全国的に不安と心配の声が広がり、多くの県民・団体等より、県議団に対し様々なご意見を頂戴した」と説明。条例運用にあたっては趣旨が十分理解され、社会全体で子供の安全を守る機運につながることが重要だとして「こうした観点から、本議案については取り下げさせて頂きます」とした。

 改正案は、全国で相次ぐ置き去りによる子どもの死亡事故を受け、同県議団が4日、県議会に提出した。6日の県議会福祉保健医療委員会で自民、公明両党県議団の賛成により可決され、13日の議会最終日に採決される予定だった。

 改正案の内容は、罰則は設けないが、成人の養護者が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、4~6年生については努力義務とし、県民には通報を義務づけるというもの。

 禁止行為について、委員会で提案者を代表して答弁した自民県議は、子どもだけでの登下校や短時間の留守番も「放置」にあたり、虐待とみなすとの考えを示した。他会派からは「保護者を追い詰める」などと批判の声が上がった。

 田村氏は6日に、将来的に罰則を設ける可能性について「今後子どもを放置するような状況がたくさん出てくるようなことがあれば、再考する必要がある」と述べていた。

 県内では保護者らの反発が高まり、さいたま市PTA協議会(市P協)は6日に反対の署名活動を始めた。(西田有里)