危険薬物密輸の組織犯罪、「ゾンビたばこ」エトミデートで香港、台湾の次に狙われた沖縄
沖縄では昨年秋ごろから笑気ガスが広がり始め、特にナイトクラブやバーの個室などで使用が広がっていた。
「フェンタニル乱用」の被害は対岸の火事のように思っておられる方々が多いかもしれませんが、実は日本でも同様の被害が起こり始めていました。
「ゾンビたばこ」エトミデートです。
この物質は海外では主に麻酔薬として使用されているが、近年、香港、台湾、タイなどの地域でその乱用が深刻な問題となって、沖縄でも若者の間で乱用被害が拡大しつつあるそうです。
海外では医療現場で使用されている鎮静剤の主成分ですが、日本では医療現場でも承認されていませんし、乱用被害への懸念から今年の5月には、医療目的以外の所持や使用を取り締まりの対象とする指定薬物とされました。
8月と9月には、九州厚生局麻薬取締部と大分県警がインドからシンガポール経由でエトミデート約100グラムを輸入したとして、中国籍の20代の男3人が逮捕されています。
麻薬取締部によると、3人は千葉県船橋市、埼玉県川口市などに居住し、SNSで注文を受け、粉末エトミデートを自宅で液体状にしてカートリッジに詰め、首都圏で対面での販売を繰り返したとみられている、と報道されています。
■名古屋が中継点になっていた「フェンタニル」の密輸
中国発の危険薬物フェンタニルが米国に密輸され、その乱用によって年間7万人の若者が死亡するという被害が拡大したため、2017年10月に当時のトランプ大統領が、オピオイド危機を「公衆衛生上の非常事態」を宣言し、対策を強化するよう指示したのが本格的な取り締まりの始まりで、翌2018年には米国麻薬取締局(DEA)がフェンタニル関連物質の分類を一時的に変更し、法律に基づく取り締まりを暫定的に実施。2019年7月にはフェンタニルの違法流通を厳しく取り締まる「フェンタニル規制強化法 (Halt Fentanyl Act)」が成立。
これにより、これまで規制対象外だったフェンタニルの原料となる化学物質も規制薬物「1類」(ヘロインやLSDと同等)に指定され、不正生産や密輸の摘発が強化され、更に、2019年12月オピオイドの不正取引に関与する外国人への制裁を規定する「フェンタニル制裁法」が制定された。
これらの法整備と並行し、中国に対しフェンタニルの規制を強く要請するなど、国際的な供給網への対策も進められた。
■名古屋を中継点にしていた事実
昨年には、中国発のフェンタニル密輸貿易の中継点に日本の名古屋が利用されていることを日経新聞が報道。
欧州の調査報道機関「ベリングキャット」や米麻薬取締局(DEA)による捜査や、日本の税関による摘発事例で 押収された薬物や通信記録、資金の流れなどのデータを分析した結果、名古屋市に設立された法人が集配送や資金管理の指示を出していたことが判明したようです。
■「ゾンビたばこ」エトミデートの密輸犯罪
エトミデート(Etomidate)は、海外では医療現場で全身麻酔の導入、脱臼の整復、気管挿管、カルディオバージョン(電気的除細動)、電気けいれん療法 など、主に短時間処置の際の麻酔導入や鎮静のために静脈麻酔薬として使用される鎮静剤の有効成分だが、日本では未承認。
その原薬(API)は、世界各国の複数の企業によって製造されており、主な製造国はインド、中国、米国(ノースカロライナ州)、ベルギー(ヤンセン ファーマ)など。
国内では沖縄などでエトミデートの乱用による被害が起こったため、厚生労働省は2025年5月にエトミデートを指定薬物に指定し、所持や使用、販売などを禁止している。
- エトミデート、エチル=1-(1-フェニルエチル)-1H-イミダゾール-5-カルボキシラート
特徴として、作用発現が速く(投与後5~15秒)、血圧低下や呼吸抑制が他の麻酔薬に比べて少ないため、血行動態が不安定な患者などに適しているとされているようですが、その乱用が社会問題化している。
日本ではこれまでは医薬品としては流通していなかったが、近年、エトミデートを含む液体が電子タバコ用のリキッドに添加され、「ゾンビたばこ」や「合法風ドラッグ」などと呼ばれる危険ドラッグとして若年層を中心に乱用が広がっており、社会問題化しています。
乱用時の主な症状としては、手足のけいれんや震え、体が硬直し、立っていられなくな、、激しい眠気、意識不明の状態といった症状が挙げられ、 その異様な外見から「ゾンビ」という俗称で呼ばれ、エトミデートは「ゾンビたばこ」と呼ばれている。
「The Japan Times」の2025年9月25日の記事より。
沖縄の若者の間で「ゾンビタバコ」の乱用が懸念
昨秋、沖縄県南部のショッピングモールの駐車場で、20代の女性がいわゆる「笑気ガスベイプ」を吸入し、病院に救急搬送された。彼女は徐々に意識を失い、倒れ込み、頭を地面に強く打ち付けた。
救急車で病院に運ばれた際、彼女は激しい頭痛に襲われ、意識が朦朧とした。以前にもこの物質を試したことはあったが、この出来事で彼女は動揺し、「本当に危険なものでした」と語った。
彼女が吸入した薬物は、沖縄で10代から20代を中心に笑気ガスとして知られている。エトミデートという麻酔成分が含まれている。エトミデートは日本では未承認の成分で、政府は5月16日に規制薬物に指定。海外では「ゾンビタバコ」などの別名で知られ、乱用が深刻な問題となっている。
女性によると、沖縄では昨年秋ごろから笑気ガスが広がり始め、特にナイトクラブやバーの個室などで使用が広がっていた。当時は規制がなく、好奇心から知人に「一服だけ」と頼んで試してみたという。
この薬物はカートリッジに入ったフレーバー付きの液体で、電子タバコに似た器具を通して蒸気として吸入される。見た目からすると、疑われることは殆どないが、使用者は、最初はまるで浮いているかのようなめまいを感じ、しばらくすると制御不能な震えに襲われると報告している。頭の中では言葉が浮かんでいても、話すのが困難になり、感情的に不安定になることもある。
効果が切れると、頭が重く感じたり、吐き気がしたりして、そのため、不快感を紛らわすために繰り返し服用されることなどありり、過剰摂取すると、奇妙で不安定な行動を引き起こす。「まるで殺虫剤を散布された虫がもがいているのを見ているようです」と彼女は語った。この薬物は事故や争いを引き起こすことさえあり、彼女の知人の中には、運転中にこの薬物を吸入して交通事故を起こした人もおり、薬物代金をめぐる暴力事件など、口論に巻き込まれた人もいると語った。
女性はその危険性を察知していたが、大麻とは異なり、笑気ガスの所持や使用は当時、法律で罰せられていなかった。
入手しやすく、怪しまれることもなかったため、沖縄の若者の間で急速に広まったと彼女は語った。
5月、当局がこの物質にエトミデートが含まれていることを確認した後、日本の法律で禁止薬物に新たに指定された。
女性によると、この規制に関するニュースはソーシャルメディアを通じて瞬く間に広まり、那覇市と浦添市の一部のバーでは、笑気ガスの使用が見つかった場合は即刻退店させるという警告が掲示されたという。しかし、この禁止令が出されても、一部の若者が笑気ガスを使用し続けるのを止めることはできていない。
女性はその後、使用をやめた。「両親にこれ以上迷惑をかけたくないんです。このままだと誰かが死んでしまうんです」と彼女は言った。
捜査当局は、沖縄の若者の間で薬物が急速に蔓延している背景には、組織犯罪グループの関与があるとみている。
エトミデートは台湾などでも流通しており、乱用が社会問題となっている。警察関係者によると、海外に繋がりを持つ犯罪組織は 沖縄への密売ルートを持っている可能性があるという。少なくとも1人の組員がブローカーとして働き、対面での取引を仲介していたとみられるという。
昨年秋、この薬物の価格は当初1セット1万円以下だったが、最終的には2万円台にまで高騰し、一部の若者が売人として活動するようになった。売買をめぐる争いに関連した暴力事件も報告されており、当局は薬物取引が組織犯罪グループの収入源になっているとみている。
取引は知人を介して、またはテレグラムなどの暗号化されたアプリを通じて行われることが多く、供給ルートを追跡することが困難になっている。
2月頃、沖縄県警は笑気ガス乱用事件の認知を開始した。犯罪現場や事故現場では、若者たちが叫び声を上げたり、激しく痙攣したり、四つん這いになったりしているのが見られた。
しかし当時、警察には法的措置を取る手段がなかった。薬物使用者は尋問を受ける前に簡単に薬物を捨てることができ、また、その効果は短期間であったため、尿検査では検出できなかった。
薬物の急速な蔓延に危機感を抱いた沖縄警察は、押収品の分析を実施し、エトミデートが含まれていることを確認しました。沖縄警察の要請を受け、厚生労働省はエトミデートを正式に禁止薬物に指定し、所持、使用、販売を禁止しました。
県警幹部は「沖縄から本土への拡散を防ぐ必要があったため、異例の速さで規制を実施した」と説明した。
捜査官たちは、日本で他の物質が出現する可能性があると警告している。「新たな事例が発生する前に、サプライチェーン全体を解明する必要がある」とある捜査官は述べ、フェンタニルのような合成オピオイドの乱用が多くの欧米諸国で社会問題となっていることを指摘した。
厚生労働省麻薬取締部沖縄支部の松尾健介支部長によると、沖縄以外ではエトミデートの大規模な乱用事例は報告されていない。
この物質は海外では主に麻酔薬として使用されているが、近年香港、台湾、タイなどの地域でその乱用が深刻な問題となっている。
松尾氏は、エトミデートは短時間作用型の麻酔薬であるため、効果は比較的限定的だが、乱用者は繰り返し使用する傾向があると説明した。沖縄でエトミデートが蔓延している一因として、乱用が問題となっている地域に近いことが考えられるが、正確な理由は依然として不明だと付け加えた。
松尾氏はまた、沖縄では薬物乱用者に占める若者の割合が日本の他の地域と比べて「非常に高い」と指摘した。若者は違法薬物に対する精神的な障壁が低いため、松尾氏は沖縄に流入する可能性のある他の薬物が急速に広がることを懸念している。
5月の禁止以来、笑気ガスの販売を宣伝する疑わしいソーシャルメディアの投稿は減少している。
松尾氏は、規制がある程度の効果をもたらしたことを認めつつも、油断すべきではないと警告した。「他の合成ドラッグと同様に、製造業者は法の網を逃れるために化学構造をわずかに改変する可能性があります」と松尾氏は述べた。
「私たちは常に警戒を怠らず、動向を注意深く監視しなければなりません。」
11月5日付の日経新聞より
「ゾンビたばこ」、若者中心に摘発相次ぐ まん延の恐れ
若年層を中心に、指定薬物「エトミデート」の乱用が広がりつつある。海外では医療用として使用されるが、過剰摂取すると、手足がけいれんすることなどから「ゾンビたばこ」とも呼ばれる。今年に入り沖縄県を中心に摘発が相次いでおり、密輸グループも逮捕。首都圏で売りさばいた疑いがあり、捜査当局は全国でまん延する可能性もあるとみて、警戒を強めている。
エトミデートは海外の麻酔手術などに使われる鎮静剤で、脳の中枢神経に働きかけて神経の働きを抑える。意識を失ったり、立っていられなくなったりする場合もあり、日本では5月に指定薬物として規制され、使用や所持、輸入などが原則禁止された。
乱用拡大の中心といわれる沖縄。指定薬物となった5月以降、県内の初摘発は7月で、9月末までにエトミデートの所持で10人が逮捕、書類送検された。ほとんどが10、20代の若者で、高校生もいた。交通事故を起こしたケースもあった。
秘匿性の高い通信アプリには広告も出ているといい、「SNSを介して広がっている」(捜査関係者)。リキッド(液体)を電子たばこで吸引するケースが多く、味付き、味なしなどがあり、1個2万数千円で販売されている製品もあるという。
警察庁によると、規制開始から9月末までのエトミデートを巡る摘発者は沖縄が10人で最多だが、それ以外でも大分3人、三重2人、福岡1人と、各地に飛び火しつつある状況が浮かび上がる。
九州厚生局麻薬取締部と大分県警は、インドからシンガポール経由でエトミデート約100グラムを輸入したとして、中国籍の20代の男3人を8、9月に逮捕した。
麻薬取締部によると、3人は千葉県船橋市、埼玉県川口市などに居住。SNSで注文を受け、粉末エトミデートを自宅で液体状にしてカートリッジに詰め、首都圏で対面での販売を繰り返したとみられる。
捜査関係者は「当初は局地的な広がりと思っていたが、その後の捜査などで、日本にもエトミデートの市場ができつつあることが分かった」と危機感を示す。警察幹部も「乱用者が交通事故を起こして大ごとになる恐れもある。関係機関と協力しながら警戒を強めていく」と強調した。
香港、台湾、沖縄、・・そして日本全体にもエトミデートの乱用による被害を拡大させようとしていた中国人達が日本国内居住していたこと。
これは当然ながら、背後にはまだ逮捕されていない犯罪組織がおり、これもまた、中国による「超限戦」のひとつであるとみるべきなのかもしれません。









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