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この夏、日本を過去最大級のエルニーニョ現象が襲う…

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エルニーニョ 異常気象

この夏、日本を過去最大級のエルニーニョ現象が襲う…

「猛暑・大雨・台風」のトリプルパンチが引き起こす“命の危機”への備えを気象予報士が徹底解説

今年の夏は「猛暑・大雨・台風」のトリプルパンチとなりそうだ。今年はエルニーニョ現象が発生しており、過去最大級となる可能性もある。さらにインド洋でも「正のインド洋ダイポールモード現象(IOD)」が発生する可能性があり、二つの海洋現象が重なることで、異常気象が引き起こされるおそれもある。似た構図は、記録的な猛暑となった2023年にもみられた。この年も世界各地で異常な高温や天候不順が相次いだ。今年も厳しい暑さに加え、大雨や台風の影響が重なれば、被害は熱中症や災害だけにとどまらない。国産野菜や輸入食品の価格、冷房による電気代の増加など私たちの食卓と家計を直撃する可能性がある。

過去最大級のエルニーニョ発生か 今夏も記録的猛暑のおそれ

今年も、記録的な猛暑となる可能性がある。気象庁の3か月予報では、7〜9月の平均気温は東〜西日本と沖縄・奄美で平年より高い見込みだ。また、北日本も平年並みか高い予想となっている。近年は予報で「高温」とされていても、実際には従来の平年を大幅に上回るケースが珍しくない。2025年夏の日本の平均気温は、統計を開始した1898年以降で最も高くなった。2023年と2024年も、それまでの最高記録に並ぶ暑さだった。つまり日本は、3年連続で記録的な猛暑に見舞われたことになる。今年も高温となれば、もはや猛暑は「異常な夏」ではなく、毎年のように警戒しなければならない現象になりつつある。

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(3か月予報(気温) 提供:ウェザーマップ)

そこへ重なるのが、エルニーニョ現象だ。気象庁は、2026年春からエルニーニョ現象が発生しているとみられ、秋にかけて続く見込みを100%としている。エルニーニョの強さを示す指数予測や海外機関の見通しをみると、今後さらに発達し、過去最大級となる可能性もある。ただし、エルニーニョが発生すれば、必ず日本が猛暑になるわけではない。一般的にエルニーニョ時の日本の夏は、太平洋高気圧の張り出しが弱く、気温が低くなる傾向もある。それでも今年、高温が予想されているのは、地球温暖化によって気温の土台そのものが上がっているためだ。かつての「エルニーニョ=冷夏」という経験則は、もはや単純には当てはまらない。

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(各月のエルニーニョ監視海域の監視指数(海面水温の基準値との差)の5か月移動平均値が各カテゴリーに入る確率(%) 出典:気象庁)

エルニーニョと正のIOD 2023年にも起きた同時発生

今年は太平洋だけでなく、インド洋の海面水温にも注目が必要だ。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、夏から秋にかけて「正のインド洋ダイポールモード現象(IOD)」が発生する可能性を示している。正のIODとは、熱帯インド洋の西部で海面水温が平年より高くなり、インドネシアに近い南東部で低くなる現象だ。数年に一度の頻度で発生する自然な気候変動だが、東西の水温差によって大気の流れが変化し、世界各地の天候に影響を及ぼす。一般に、インドネシアやオーストラリアでは雨が少なくなる一方、東アフリカでは雨が多くなる傾向がある。

エルニーニョと正のIODが同時に発生すること自体は、決して珍しくない。ただ、注目したいのは、記録的な猛暑となった2023年にも二つの海洋現象が同時に発生していたことだ。この年、日本の夏の平均気温は当時として過去最高を記録し、世界各地でも記録的な高温や干ばつ、大雨が相次いだ。もちろん、今年も2023年と同じ天候になると決まったわけではないが、今年も太平洋とインド洋で2023年と共通する海面水温の変動が予測されていることは、今後の天候を考えるうえで見過ごせない。

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(正のIODの模式図 出典:気象庁)

猛暑だけではない 大雨・台風リスクも高まる

今年の夏に警戒すべきなのは、猛暑だけではない。気象庁の3か月予報では、6〜8月の降水量は全国的に「ほぼ平年並み」とされているが、北〜東日本の太平洋側と沖縄・奄美では、多雨となる確率が40%とやや多雨側に傾いている。夏全体の降水量が平年並みでも、災害級の大雨が起きないとは限らない。短期間に雨が集中したあと、晴天と猛暑が長く続けば、期間を通した雨量は平年並みに収まることもある。高温によって大気中の水蒸気量が増えたところに前線や台風が重なれば、危険な大雨の増加や激化につながるおそれがある。

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(3か月予報(降水量) 提供:ウェザーマップ)

台風の動向にも注意が必要だ。典型的なエルニーニョ時には、積乱雲の活動域が太平洋中部へ移り、フィリピン付近では対流活動が弱まる傾向がある。ところが今年は、正のIODの発生も予測されている。正のIODに伴ってモンスーン西風が強まると、フィリピンの東海上では暖かく湿った空気が集まり、積乱雲の活動が活発になりやすい。気象庁の予測でも、今夏はフィリピンの東から太平洋中部にかけて、積乱雲の発生が平年より多いとみられている。この海域は台風の主要な発生域でもある。大気下層の低気圧性循環も強まる予測で、台風の卵となる熱帯擾乱が生まれやすく、台風活動が活発になる可能性がある。

(7〜9月の大気の特徴 出典:気象庁)

高騰する国産野菜と輸入食品 食卓への影響は

こうした猛暑や台風は、食卓にも影響する。まず注意したいのが国産野菜だ。レタスやキャベツなどの葉物野菜は、高温で品質や収穫量が低下しやすい。トマトやきゅうり、ピーマンなども、暑すぎると花が落ちたり、実がつきにくくなったりする。実際、猛暑の影響が大きかった2023年には、東京都区部のキャベツ価格が平年を大きく上回り、一時は前年同月比で3〜4割程度高くなった。猛暑に台風による農作物の損傷や物流の乱れが重なれば、スーパーに並ぶ野菜の量が減り、価格が急上昇することも考えられる。

影響は国内だけにとどまらない。エルニーニョが発生した2023〜24年には、アジア各地で干ばつへの懸念が強まり、国際市場で砂糖価格が上昇した。FAOの砂糖価格指数は2023年9月に前年同月比で約48%高い水準となっている。正のIODが発生すると、インドネシアやオーストラリアでは雨が少なくなる傾向があり、2019年にはオーストラリアの小麦生産量が前年から約1割減少した。海外の農作物価格が上がれば、円安や輸送費も重なって、パンや菓子、食用油、コーヒーといった身近な商品の価格にも時間差で波及する。

冷房なしでは過ごせない夏 電気代の負担も増加か

食費とともに家計を圧迫しそうなのが、電気代だ。猛暑が長引けば、エアコンを使う時間が増えるだけでなく、外気温が高いほど室内を冷やすために多くの電力を消費する。政府は2026年7〜9月使用分の電気・ガス料金を支援することとし、標準的な家庭では3か月で計5000円程度の負担軽減を見込んでいる。ただ、記録的な猛暑となれば、支援による値下げ効果の一部が、冷房使用量の増加で相殺される可能性もある。とはいえ、電気代を惜しんで冷房を控えるのは危険だ。2025年の5〜9月に熱中症で救急搬送された10万510人のうち、発生場所が「住居」だった人は3万8292人と、全体の38.1%を占めて最も多かった。自宅だから安全とは言えない。特に高齢者は暑さを感じにくく、節電を優先して冷房を控えることで重症化するおそれもある。節電は無理のない範囲にとどめ、命を守るためにエアコンを適切に使うことが大前提となる。

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(出典:消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」をもとに筆者作成)

「遠い海の現象」が家計を直撃する

エルニーニョや正のIODは、太平洋やインド洋で起きる一見遠い現象だ。しかし、その影響は大気の流れを通じて日本の猛暑や大雨、台風となって現れ、やがて野菜売り場や毎月の電気料金にも及ぶ。もちろん、現時点ですべての食品が値上がりし、台風が相次ぐと決まったわけではない。だが、記録的な暑さに天候不順が重なれば、農作物の生育や物流、エネルギー消費が同時に揺さぶられる可能性がある。今年の夏は、気温や降水量だけを見ていては足りない。二つの海洋現象が日本の天候をどう変え、その影響が食卓や家計へどう波及するのか。遠い海の変化を、暮らしに直結するリスクとして注視する必要がある。

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