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ナフサショックで着工後「数百万円」追加請求も…注文住宅に潜む”スライド条項”という時限爆弾

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注文住宅 社会問題

ナフサショックで着工後「数百万円」追加請求も…注文住宅に潜む”スライド条項”という時限爆弾

契約後に追加負担を要求されるケースもあり、違法ではない。

ナフサショックとは何か?住宅建築とのつながり

ナフサとは原油を蒸留して精製される無色透明の液体で、エチレンやプロピレンを経てプラスチックや合成ゴムなどさまざまな製品に加工されます。このナフサの価格が、2026年2月末に中東で起きた軍事衝突を引き金に急騰しました。ホルムズ海峡という重要な海上ルートが封鎖され、世界のナフサ供給が途絶えたためです。

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ナフサのアジアの代表的な指標であるMOPJは、2026年2月の1トン600ドル弱から、5月には1,000ドルを超える水準にまで跳ね上がりました。

このナフサショックが、住宅建築の現場にも重大な影響を及ぼしています。塩ビ管などの配管、断熱材、防水シート、塗料、接着剤といった、住宅資材の多くがナフサ由来の石油化学製品だからです。ナフサの高騰や供給不足は、住宅価格の値上がりや、工期の遅れなどを招いています。

資材の値下げは、すぐには期待しにくい

米国とイランは2026年6月、「イスラマバード覚書」で戦闘終結に向けて合意し、ホルムズ海峡の開放も一度は宣言されました。しかしその後、イランが停戦合意違反を理由に再封鎖を表明するなど、海峡の通航は開放と封鎖を繰り返す不安定な状態が続いています。地政学リスクの火種は消えておらず、通航が正常化するまでにはなお時間がかかると見られています。

仮に原料価格が下がっても、それが建材や住宅設備の値下げに反映されるまでには、大きなタイムラグがあります。ナフサを原料とする建材の価格は原油や原料価格が下がってもすぐには動かず、流通在庫の入れ替わりや価格改定の周期を経て、ゆっくりとしか下がりません。住宅資材の高止まりは2026年内、あるいはそれ以降まで長引く可能性が高いといえるでしょう。

「スライド条項」で追加負担のリスクも

では、この住宅資材の値上げリスクは、施主にどのような形で降りかかるのでしょうか。注文住宅の契約後に資材が再高騰した場合、そのリスクを施主と住宅会社でどのように分担するかは「スライド条項(価格変動条項)」によって定めます。

スライド条項はもともと公共工事の契約約款で使われてきた呼び名で、「着工後であっても、あらかじめ決めたルールに従って、工事費が追加(または減額)されうる」という取り決めです。建設業法第19条において、工事請負契約の契約書に必ず記載しなければならない必須記載事項となっています。

スライド条項は2026年のような資材高騰の局面では、施主にとって見過ごせない意味を持ちます。契約時に取り決めた価格が、工事の途中で上振れする可能性があるからです。

では、追加負担はどの程度の規模になるのでしょうか。

増額の対象になるのは、これから施工する部分、つまり「工事代金残額」です。契約の直後は残額が大きいため、価格上昇の影響も最も大きくなります。残額とコスト上昇率から、追加負担のおおよその目安を示したのが、以下の表です。

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たとえば残額2,000万円で全体が10%上昇すれば200万円、15%なら300万円の追加負担です。これまでに断熱材、塗料、屋根防水がそれぞれ40%から50%以上値上がりしてきており、全体で5%から15%という想定は決してありえないとはいえません。

注文住宅は簡単には「引き返せない」

注文住宅の怖さは、いざ資金が足りなくなっても、簡単には引き返せない点にあります。

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ここにスライド条項による増額が重なると、資金繰りは一気に苦しくなります。しかも、着工後に住宅ローンの借入額を増やすことは、ほぼ不可能です。

それなら契約をやめればよいかというと、そう簡単ではありません。施主は自分の都合でいつでも契約を解除できますが(民法第641条)、その場合、すでに施工された分の出来高に応じた代金に加え、施工事業者が得られたはずの利益(逸失利益)まで賠償する義務を負います。「未完成だから一円も払わない」という理屈は通らず、精算額をめぐって施工事業者と争いになるケースもあります。着工後の中途解約は、簡単にはできないと心得ておきましょう。

増額には耐えられない、かといってやめるにも費用がかかるという「逃げ場のなさ」こそが、注文住宅の資金ショートを深刻にします。だからこそ、資金面では二段構えの備えが要ります。

第一に、そもそも無理をしないことです。手元の自己資金に余裕がないのであれば、契約を急がず、資金準備をしっかりしてから出直すのも賢明な判断といえます。また、注文住宅そのものにこだわらず、販売価格が基本的に確定している建売(分譲)住宅や新築マンションに切り替えれば、このような着工後の追加費用のリスクを避けられます。

第二に、先に進むと決めたなら、資金計画に余裕を持たせることです。手持ち資金をすべて建物本体に充てるぎりぎりの計画は避け、外構や家具・家電に充てる予算を、いざというときには本体の追加支払いに回せる予備費として確保しておきます。あわせて、万一払いきれなくなったときに、どの設備のグレードを下げ、どの工事を後回しにするか、削減の優先順位を家族と施工事業者で事前に共有しておくと、慌てずにすみます。

 

契約書のどこを確認するか

これから注文住宅の契約を結ぶ際は単にスライド条項が入っているかだけでなく、「実際に使える具体的なルールになっているか」を確認することが重要です。建設業法で算定方法の明記が義務づけられているとはいえ、すべての契約書が公正な内容で運用されているとは限りません。

建築工事請負契約書に盛り込むべき主な要素は以下のとおりです。

・何が値上がりしたときに適用するか(例:主要な建築資材、石油系建材など)

・どれだけ値上がり(値下がり)したら発動するか(例:残工事代金額の10%を超える変動があった場合など)

・増額分を誰がどう負担するか(例:増額分のうち、1%を超える部分は施主と施工者で50%ずつ折半する、など)

・価格変動を認知した日から何日以内に話し合いを始めるか

・値上がりを証明する書類(見積書や請求書)をどう提出するか

価格変動で忘れがちなのが、値下がりの局面です。増額だけでなく、減額にも触れているかを忘れずにチェックしましょう。

建築工事請負契約におけるスライド条項の明文化は、法律上の原則です。しかし、その内容の妥当性については施主側のチェックが必要であり、ナフサショックの資材高騰局面において、重要な防衛策となります。

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