DAZNサッカー「月980円表示」だけじゃない!? 主要アプリ「9割」に“だましの罠”ありのデータも
蔓延する「ダークパターン」仕掛ける側の言い分
サッカーワールドカップの開催を前に、365日サッカープランと銘打ったDAZN サッカーが発売された。しかし、この広告に紛らわしい表記、表現があると6月に入って物議を醸した。
【図表】インターネットゲームに関するトラブルが起きる要因・課題
「1年間の契約であること」「最初の3か月だけ特別料金であること」「途中解約不可であること」が初見ではわかりにくく、W杯を見終わったらいつでも解約できる、サッカーを視るだけなら980円で済むなどと誤認する人が続出。
消費者を意図的にだます表記・表現や仕組みである「ダークパターン」なのではないか、と訴える声がSNSをはじめネット上で続々とあがり、炎上状態となったのだ。 なぜ、消費者に不利益をもたらす仕組みが蔓延してしまうのか。その背景や原因、そして対策や規制の動
きなどをリポートする。(ITジャーナリスト:井上トシユキ)
ユーザーをだます仕組みが蔓延する背景
ダークパターンとは、WebサイトやアプリのUI設計などによって、ユーザーや消費者を購入や申し込みへ半強制的に誘導するための、意図的に設計されたトリック(=だましの仕組み)のことを指す。
DAZNの事案では結果的に、わかりにくい表記・表現だったことを認めて謝罪、即時解約と直近1か月分の料金の返金を行うと発表。事態は沈静化へと向かった。 実は同時期、東京都が2025年にあった悪質商法について通報件数を公開していた。
このなかでも、ダークパターンは多くの通報があったケースとして取り上げられていた。
また、国民生活センターが行った未成年者の消費者トラブルに関する昨年のアンケート調査では、「インターネットゲームに関するトラブルが起きる要因・課題」として「不当表示やダークパターン等への規制が追い付いていないこと」(76.1%)が全体の4番目に挙がるなど、その深刻な状況が明らかになっている。
2023年には、東京工業大学(現、東京科学大学)が、日本国内のショッピング・SNS・ゲームなど主要アプリの9割にダークパターンが使われている、4割強がダークパターンに引っ掛かったことがあるなどという調査結果を公表し、世間を驚かせたこともあった。 消費活動を混乱させるダークパターンは、なぜなくならないのか。
ダークパターンの代表例
その理由を探る前に、まずは代表的なダークパターンを整理しておこう。
◾️紛れ込ます=注文時に不要なオプションが勝手に追加されている →過去に問題となったケースでは、高齢者が携帯電話の契約を行う際、不要なアプリやサービスが勝手に入れられているといったことがあった。
◾️誤認させる、ステルス定期購入=無料や安価と大きく表示しておきながら、サブスクリプションが前提となっていたり、「無料で購入」といったボタンをクリックすると勝手に定期購入にも同意したことになったりと、実際には想定外の料金がかかってしまう →今回のDAZNでは、このパターンなのではないかと疑いが持たれてしまった。
◾️解約手続きが複雑=解約の方法がとてもわかりにくい、解約時に解約金がかかる、解約を申し出てもあれこれとぼけられてなかなか承諾されない、アンケート画面がいくつもあって手続きに膨大な手間がかかる →以前にも「解約はホームページから」と案内しておきながら解約ページが見つからなかったり、たどり着くのにいくつもページを遷移してわからなくなったりといった事例があった。
現在では発信者側に料金がかかる有料電話が用いられることも多いが、長く待たされたりしているうちに通話料が高額となり、この有料電話による解約自体がダークパターンではないか、との指摘さえある。
◾️ネット広告で、「×」を押しても広告が消えなかったり別のサイトへ飛ばされたりする、ブラウザのバックをクリックしたら一度広告が並んだページの経由を強制される、広告を消すためにクリックするボタンの存在が非常にわかりにくい、広告が消えない、別サイトへ意図せずに飛ばされるのは中国系のショッピングサービスが代表。 →ブラウザバックで広告ページに飛ばされるのは、今年4月にGoogleがスパム扱いを宣言、実質的にダークパターンだとして、検索結果で冷遇することもあると警告している。
なぜダークパターンはなくならないのか
では、ダークパターンがなくならない理由は何か。これまでに取材をしてきたなかから推察されるのは次の2点だ。
①注意して契約書の中身を読んでいない方が悪い、といった自己責任論の悪用にあぐらをかいている
②シェアを取るために、目を引くキャンペーンや優遇、割引を過剰に行い、その費用の回収を急ぐため また、広告の出稿や制作、掲載を行う側でも、「広告の閲覧回数、広告に関連したサイトへのアクセス数を増やさなければならないから、なりふり構っていられない」と開き直られたことがあった。
「とりあえず公開して、問題があれば後から修正したり引っ込めればいいじゃない」と、ITやネットで使われる「ベータ版カルチャー」を言い訳にする声も聞いた。 いずれにせよ、ユーザー本位ではなく、ビジネスサイドの都合を優先した結果、行き着く先がダークパターンなのでのである。消費者にとっては許しがたい理由といえるだろう。
諸外国におけるダークパターンの対策や規制の現状
消費者に多大な不利益をもたらすダークパターンへの対策や規制はどうなっているのか。海外ではすでにダークパターンの規制が実施されている。
韓国では、6つのダークパターンを定義して規制、罰則も細かく規定している。EUでもデジタルサービス法や一般データ保護規則で規制し、さらにソーシャルメディアのダークパターンに関するガイドラインまで公表し、だましのインターフェースや仕組みの取り締まりを強めている。
そのほか、アメリカでは連邦法と州法の両面で、イギリスやインドでも規制強化が図られている。 また海外では、特に「自動更新」の取り扱いもダークパターンとして問題視されている。
事前にユーザーに知らせずに自動更新してしまうと即違反とされ、罰則が適用されたり、裁判にかけられてしまう。
日本ではサブスクリプションや契約の自動更新は当たり前で、途中解約を申し出ても1年間の料金を払わされたり、違約金と称して何か月分かを取られたりと、筆者も経験があるが、まさに「だまされた気分」になることが多い。
日本でも法改正への動き
そんな日本でも、特定商取引法が改正されて2022年6月1日に施行、ネット上の取引についても詐欺的な商法の規制がスタートした。
その後も、消費者契約法や特定商取引法、景品表示法などによってダークパターンを具体的に規制する方向で改正の議論が進められている。
今年の夏をめどに中間報告がまとめられる予定だが、
・新法をつくるのか、既存の法律の改正で対応するのか
・ダークパターンの具体的な定義をどうするか
・海外の規制との整合性をどう取っていくか
・企業側が萎縮し過ぎない責任の持たせ方、さらにビジネスサイドの
自主規制にどこまで期待するか
といった点が議論されており、どのように取り扱われるかが注目されている。
今回のDAZN事案では、ダークパターンに泣き寝入りさせられた経験がこれでもかとネット上に投稿され、多くの「おかしい」との声があふれた。
ユーザーが表立って「おかしい」と声をあげ、ボトムアップで企業側にプレッシャーをかけていく。そうした行動により、法改正が進み、企業の不正が糾される。 DAZNの一件は、ダークパターン撲滅への確かな一歩となったようだ。
井上トシユキ



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