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日本の負担は年間5000億円?

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ホルムズ海峡 エネルギー

日本の負担は年間5000億円?

泥沼のイラン情勢が生むホルムズ海峡「通航料」恒久化のあまりに恐ろしすぎるリスク

停戦合意でも事態はなお混沌

2月28日にアメリカとイスラエルがイランに奇襲攻撃をかけて以来、さまざまなことが起きた。事態はアメリカとイスラエルの当初の想定どおりには進展せず、むしろ悪化へと向かった。

イラン国内で反政府運動が起こり、新しい政権が成立するという、ドナルド・トランプ大統領の当初のもくろみは、ついえ去った。4月3日には、アメリカ軍のF-15E戦闘機がイラン上空で撃墜されるという衝撃的なニュースが伝えられた。これはイランの防空力が、少なくとも部分的には、健在であることを何よりも明確な形で示したものだ(その後、乗員はイランの山岳地帯で救出された)。

このように、事態は収束に向かって進んでいるという気配はなく、むしろ逆に悪化しつつあるとも見える状況にあった。

ところが日本時間の8日、「一時停戦」のニュースが世界を駆けめぐった。トランプ大統領はイランへの大規模攻撃を2週間停止することに同意し、今後はパキスタンの仲介の下で協議を行うと報じられた。

ただし、イランが示したとされる条件の中には、ホルムズ海峡のコントロールなど、容易には認めがたい難題も含まれている。日本の立場から見て、問題は決して解決されたわけではなく、むしろアメリカとイランのこれからの停戦交渉によって決まる部分が多い。

アメリカは、国内にテキサスやアラスカの油田がある。さらに、ベネズエラなどの原油を輸入することもできる。こうして、原油の確保という意味では、少なくとも量の確保という意味において、同国はほとんど問題を持っていない。中国も、国内の原油産出量は限られているが、イランによる友好国扱いによって供給面で問題は緩和されている。

それに対して日本は、韓国などと並んで、原油の確保という意味で極めて深刻な問題に直面する国だ。原油価格が上昇することはもちろん問題だが、供給が途絶することになれば、考えるだけで恐ろしい状態に陥りかねない。

産業活動が重大な影響を受ける。また、医療のシステムにも深刻な影響が及ぶおそれがある。私は、日本がこうした事態には陥ることはないと、これまで考えていた。だが、最近の状況を見ると、そのような考え方はあまりに楽観的ではないかと考えるようになった。

現実味を帯び始めた「カネで解決」

そして、4月に入って状況が変化した。ホルムズ海峡を通過しようとする船舶の国籍が友好国か否かをイランが判断し、友好国船舶に対しては通過を認めるという方針を始めたのだ。友好度をランク付けして5段階に分け、友好度の高い国はより有利な条件で通航を認めるという。

中国、ロシア、インド、パキスタン、フィリピンなどの船舶がすでに通過した。通過する船舶に対しては、積載する原油1バレルごとに1ドル程度の通航料を課していると報道されている。大型原油タンカーは200万バレル程度の積載能力を持つので、約200万ドル(約3億2000万円)のコストが上乗せされる。

日本の船舶の通航が認められたとのニュースも伝えられた。1隻は商船三井とインド企業が共同保有するLPG(液化石油ガス)のタンカー「GREEN SANVI」で、ホルムズ海峡から約100キロメートルのペルシャ湾内に停泊していた。もう1隻は、ホルムズ海峡経由ではなく、イラン対岸のオマーン近海を航行したとの話もあり、報道はやや混乱している。

なお、オマーンとイランが4日、ホルムズ海峡の通航について協議した。船舶がホルムズ海峡を円滑に通航できるようにするにはどのような選択肢があるのかを協議したと報じられている。

こうして、通航料を受け入れることによって海峡の通過を認めてもらうという方式が、1つの解決策として浮かんできた。

イランとしては、いつまでも膠着状態を続ければ国際的な批判が強まるだけ。それよりは、通航を認めて通航料を徴収するほうがよい。一方、日本などの原油輸入国にとっても、供給が途絶してしまうよりも受け入れやすい。

ただし、こうした通航料を認めるのが「航行の自由」の原則からして大問題であることは、言うまでもない。国連海洋法条約は、貿易に不可欠な「国際海峡」については、他国の領海であっても一定の条件下で船舶が自由通過できる「通過通航権」を認めている。イランは批准していないが、日欧などはこれまで同条約を根拠に海峡の開放を要求する考えだった。

このような問題があるにもかかわらず、通航料方式を導入せざるをえないというのが現実だ。われわれは、こうした現実から目を背けてはならない。

通航料は日本経済にとってどれほどの負担か

もう1つの問題は、いったん通航料を認めれば、今後事態が解決した後も通航料が継続する可能性があることだ。これは、日本経済にとってどの程度の負担になるだろうか。

中東産の原油は現在1バレル当たり120ドル程度なので、1バレル当たり1ドルの通航料は原油価格の1%弱になる。ただし、これはイランが日本を「友好国」と認定した場合だ。認められない可能性もあるし、認められるにしてもどの程度の通航料を要求されるのかは、まったくわからない。

そこで、通航料を仮に原油価格の5%としよう。2025年における日本の中東からの原油・粗油の輸入額は約9兆6207億円だったので、通航料の負担額は年額9.6兆円の5%=約5000億円となる。

国家予算でいえば、 高校授業料の無償化などに関する予算規模が年間5000億円程度だ。その程度の額が日本に新たな負担として加わる。つまり、「高校授業料の無償化ができなくなる」程度の負担が加わるのである。

以上の状況を前にして日本として取り組むべき課題は、第1には産地の分散化(アラスカ産原油の可能性など)だ。これにはさまざまな技術的困難が指摘されているが、それを乗り越える努力が必要だろう。

第2には、再生可能エネルギーの増大など、エネルギー供給源の分散化だ。そして、第3に、省エネ的経済構造への転換だ。こうしたことを通じて、日本経済の構造を改革していくことが必要とされる。

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