「ナフサショック」で今夏にも倒産急増か…4万6741社を襲う「調達危機」の深刻度【最新調査】
今年夏ごろから倒産が急増する恐れがあり2027年も続く
帝国データバンクが、ナフサ(粗製ガソリン)関連製品のサプライチェーンを分析したところ、国内製造業の3割にあたる全国4万6741社に、ナフサ不足に伴う「調達リスク」に直面する可能性があることが分かった。自社データベースをもとに、国内の主要な化学製品メーカー52社を頂点とした「ナフサ由来の基礎化学製品(=エチレンや合成ゴムなど)」の商流について、2次取引先まで調査・分析した。ナフサやナフサ由来製品の供給制限や価格高騰は、川下に位置する多くの製造業に影響が及びやすい。今後は価格転嫁が難しい中小製造業を中心に、“ナフサショック”関連倒産の多発に警戒する必要がある。(帝国データバンク大阪支社 情報部情報課長 内藤 修)
ナフサ関連の製造業は4万6741社 中東情勢悪化で高まる倒産リスク
「仲間内では『ナフサショック』と呼んでいる。製品の値上げや納期未定の連絡が、毎日のように届き、しかも、内容は一方的で交渉の余地がないものばかり。終わりのない見えないコスト増や工期延長は、自社の資金負担に直結するため死活問題だ」――。
ナフサ関連のサプライチェーンに連なる、関東地区のある木造建築工事業者は厳しい現状を訴える。
ナフサショックの足音が日本経済にも広がり始めるなか、業歴50年を超える地場プラスチック製品メーカー「柏井産業」(奈良県橿原市)は3月31日、約14億円の負債を抱えたまま事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。
同社は1974年の設立以来、プラスチックメーカーや容器・トレーメーカー向けに食品用トレーやポリ容器、衣装ケース、車内装飾品など、さまざまな種類のプラスチック製品を製造・加工。近年は積極的な設備投資により生産能力を増強するなか、大手プラスチックメーカーの需要を取り込み、2023年9月期には年売上高約27億円を計上していた。
しかし、物価高の影響により仕入れコストが上昇するなか、価格転嫁が追いつかず収益性が悪化。既存得意先からの受注も落ち込み、2025年9月期の年売上高は約17億円に減少していた。その後は金融機関の協力の下で、経営再建に向けた計画を進めていたが、収益性の改善は厳しく、資金繰りも限界に達したことから事業継続断念に追い込まれた。
このケースは、今回のナフサショックによる影響を受けた倒産ではないものの、同社のようなプラスチック関連製品を扱う業者の倒産は今後相次ぐおそれがある。景気の変動に遅れて動く、典型的な「遅行指標」である企業倒産件数の特性からすると、「中東情勢の悪化による直接、間接の影響を受けた倒産多発」に警戒が必要である。
ナフサ高騰の影響を 最も受ける製造業は
冒頭で紹介した、ナフサ不足に伴う「調達リスク」に直面する可能性がある国内製造業4万6741社を企業規模別にみると、資本金「1000万〜5000万円未満」が2万7956社で最も多く、全体の59.8%を占めた。「5000万〜1億円未満」(6321社)を含め、資本金1億円未満の中小企業が4万1417社を占め、全体の約9割にのぼっている。
製造業態別にみると、サプライチェーン上の社数が多く、最もナフサ高騰による影響を受けやすい(ナフサ依存度が高い)業種は「化学工業、石油・石炭製品製造」で、集計可能な約4700社のうち3148社(67.2%)が該当した。このうち、プラスチックや合成繊維・染料、医薬品や化粧品、農薬などの原料・中間体を製造する「環式中間物製造」が最も高く、88.4%が該当した。
このほか、酢酸ビニル樹脂やエポキシ樹脂を原材料とした合成接着剤を含む「ゼラチン・接着剤製造」(87.3%)、洗濯洗剤や自動車用塗料などに幅広く使用される「界面活性剤製造」(84.0%)も高く、集計可能な25業種のうち「ナフサ依存度」が50%を超えた業種は23を占めた。
次いで高い業態は「ゴム製品製造」で、約1600社のうち817社(51.5%)と、半数を超える企業がナフサ関連の商流に該当した。なかでも自動車や船舶、航空機用のゴム製部品製造を担う「工業用ゴム製品製造」(53.9%)が最も高かった。防振用ゴムなど土木・建築用から、自動車向けシーリング材、医療・工業用グローブ(手袋)などの産業用、輪ゴムをはじめとする民生品など幅広い製品群を含む「他のゴム製品製造」も51.2%と半数を超えた。
ナフサショックで今夏頃から 企業倒産が急増する懸念も
帝国データバンクが4月上旬に行った企業向けアンケートによれば、中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰や供給不安が経営に「マイナス影響がある」とした企業の割合は96.6%に上り、ほぼすべての企業で悪影響が及ぶことが判明した。
あわせて、原油高がどれほど続けば主力事業縮小につながるか聞いたところ、4割超の企業が「6カ月未満」と回答した。特に「製造業」では22.8%が、3カ月未満でも経営に重大な影響が及ぶとみており、「値上げを全面的に受け入れても調達不安が解消される保証はなく、極めて異常な状況である」(化学品製造)といった声もあがるなど、事態は深刻さを増している。
今後は原油高騰のあおりを受けて、燃料や化学品だけでなく、プラスチック製品、建材、アパレル資材、飼料など幅広い分野で価格が上昇し、企業の仕入れコストが増加する懸念が広がっている。原油供給量の減少が続けば、幅広い分野で減産や生産中止に陥り、サプライチェーンの断絶リスクも高まる。
手元資金の乏しい企業にとっては調達が困難となり、経営が立ち行かなくなる可能性も出てくる。同業者間でも、経営基盤の安定性やコスト上昇への対応力、価格転嫁の可否などによって優勝劣敗がさらに進んでいくことは避けられない。
2年連続で1万件を超え、すでに高水準が続く企業倒産は、ナフサショックで夏頃から急増する懸念もあり、2026年度(2026年4月〜2027年3月)も増加局面が続く可能性が高い。
内藤 修



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